両手寄抜は、旧•科目表では3級科目で修得する龍王拳の抜き技で、初の両手技です。両手技とは攻者が両手で守者の両手(攻者左手は守者右手を、右手は左手)を掴んでくる場合です。
両手技は基本法形としては対構えから始めますが、開き構えからと勘違いしているひともたまに居ます。これは片手技で守者が足を差替えて鉤手守法に入るのが、身体に染みついてしまっているからなのかなとも思いますが、開き構えから取りに行くのは攻者が不利になってしまいますので、基本的にはやらないと考えます。
勿論、実際にはそういう事もあり得るかも知れないので、開き構えからの取り方を攻者側が研究する事自体は良いと思います。
組演武で見せる場合などでは、攻者が開き構えから、差替え足を踏込みながら一回目は取りに行き、「取らせない!」で払われてその儘対構えになる、という構成なら良いのではないかと思います。
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両手寄抜で一番注意すべき点は、最初の抜きからの当身反撃は、目打-中段逆突の段突である、という点です。ここは「何故段突なのか」「何故最初の当身が目打なのか」「何故<両手>寄抜ではそのような反撃をするのか」という事を考えなければなりません。
これらについては開祖や本部からの公式見解は出ておりませんので(ご存命中の講習会では説明されているのかも知れませんが...)、諸先生方にもそれぞれの回答があろうかと思います。きっとそれぞれ理由付けをなされていると思いますが、指導の現場で余り積極的な理由付けを聞いた事はありません(恐らく先生方も各自の解釈を尊重されているのだろうと推測します)。
ただここで「時より見かける恐らくは間違いであろうと思われるやり方」がありますので、指摘させていただきます。
それは奥手からの最初の抜きの後、腰を入れた目打を入れ、その儘後腰が返った状態で手突きの中段突を入れる、というものです。以前は特に少年部でこのような演武を非常によく見掛けました。詰まり一生懸命頑張る子供ほど、最初の目打から思い切りやってしまい、その後にオマケとして「段突と言われたから段突」として手だけの動きで中段を突いているのです。これでは全く意味がありません。
ですからここではまず、(1).体勢はほとんど動かさずに手首-肘-肩のしなりだけで目打ちを放ち、(2).満を持して腰が入った中段逆突を突き込む、というのが正解です。
ではどうしてまず目打ちを入れるのか(そして段突するのか)。勿論私には自分なりの理由付けがありますが、まずは皆さんもご自分で考えていただくのが良いと思います。
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もう一つ、指導者として両手寄抜で留意している事は、二つ目の抜きの抜き方です。
①最初の抜き-反撃(中段突)の時点で、守者の後ろ腰は返った(入った)状態になっています。基本法形としては、この時に攻者は中段逆突を受けて後ろに一歩開き退がって逃れます。そこで守者は腰が返った勢いの儘一歩差し替えて、追い込む形で二つ目の抜きから当身を行ないます。この当身は旧来は両手寄抜では上段直突(正拳)とされていましたが、最近では直突 or熊手突のどちらでも良い事になっています。
この場合、足を差し替えて最初の前手は後ろ手になってますから、二つ目の寄抜は片手寄抜とほぼ同じ処理をする、という事になります。
(☝︎ここでは中段突を入れた後、その勢いで差替え足と述べましたが、攻守の体の入れ替えがデフォルト化してきますと、中段突自体が差替え順突に(俗にいうナンバの突き)なってくる場合も多いようです。まぁ「ナンバの動きでドーンと突き込むから攻者が開き退がるんだ」「それによって反対の手も寄り抜きが出来るんだ」という説明もアリかな、とは思います)
②ただ教範の記述もそうなのですが、開祖の頃には攻者が大きく開き退がって逃れる事をせずに、従って守者も後ろ足を差し替える事なく、二つ目の抜きの後は順上段(直)突で反撃、というやり方も指導されていたようです。
私が学生で習った時も、まず「こうやるところが多いな」とまず①法を習い、「でも本当はこうやって一気にやるんだ」と②法を習ったように記憶しています。
どうしても①法は、足の差し替え時にダンスの様なリズムになりがちで、子供には良いと思いますが、一般部では段階的に②法を目指した方が良いのだと思います。
そうすると「前手での鉤手守法とは」「前手での寄抜とは」「片手寄抜では抜いたら熊手突だったのに、何故開祖は両手寄抜では2本目は正拳突と指定されたのか」など検討項目が出てきます。勿論私には自分なりの理由付けがありますが、これらについても、まずは皆さんもご自分で考えてみては如何でしょうか。
【宗門の行としての少林寺拳法】龍王拳 両手寄抜 金剛禅総本山少林寺 公式YouTubeチャンネルより
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