“坂の上の雲”

登っていく坂の上の青い天に、もし一朶の白い雲が
輝いていてもいなくても、また坂を登っていきます。

アイヌを知るために⑦

2023-04-11 | 四方山話

表題の“アイヌを知るために”をいろいろと読み進めていくと、当然ながら

北海道の歴史をよく知らなければならないことがわかります

 

 

幼少期から学校を卒業するまでの間は、北海道の歴史はたかだか100年ぐらい

しかないと思っていたので、歴史の教科書のわずか数ページに関心が湧くはずもなく、

日本史に蝦夷という言葉やアイヌが登場してもピンときませんでした

なので、概ね北海道の人は北海道のことをよく知りません。

 

自分だけでなく、友人に「黒田清隆の像が大通り10丁目にあるって知ってる?

と聞いたら「黒田清隆って誰だっけ?」と答えが返ってきます。


ということで、今回は三冊の小説から目からウロコの北海道史とアイヌの置かれた当時の

状況を考えてみました。

 

黒田清隆(1840~1900年)は、薩摩藩出身の明治期の政治家で、維新後に北海道開拓次官、

同長官を歴任し、北海道開拓使に尽くすが1881年に開拓使官有物払い下げ事件で世論の

攻撃を受け、開拓使の廃止後は農商務省から首相にまでなった人です。

授業で習ったことはすっかりと忘れていました

 

前回「アイヌを知るために⑥」で取り上げた松浦武四郎は、アイヌの目線で当時の蝦夷

(えみし)と和人の融和を考えた人。一方、黒田清隆は、開拓使長官として、また一国の

宰相としてロシアの南下侵略を危惧して、蝦夷(えぞ)にもともと住んでいたアイヌを和人

に同化させる政策を考えた人といって良いのだと思います。

 

同じ蝦夷でも“えぞ”と読むとそれは今の北海道から択捉という地域を指し、

えみし”と読めば、それは大和王権から観た(東北以東、以北に縄文時代から住む)先住民

を言います。

 

なので、

和人(日本人)から観た黒田清隆とアイヌ民族から観た黒田清隆は、人物像として真逆に

評価される人ということになります。

 

つまり、ロシアに対して「蝦夷(えぞ)はもともと日本の国の一部」という既成事実を

つくるためには「アイヌは同化されている日本人」という体裁が必要だったのです。

その体裁を整えるための屯田兵の移入(明治維新で失業した士族に対する救済=士族授産

対策)であったり、本州から北海道への保護移民制度、さらにはアイヌに対する撫育制度

はすべて、ロシアの侵略を警戒して(幕末から続く)日本政府のとった政策の一環だった

のです。

はい、ここではその政策の良し悪しを論じるのではなく

ここ数カ月の間に読んだToshiの本、乃南アサの3冊のご紹介です。

地の果てから

②ニサッタニサッタ

③チームオベリベリ

 

ニサッタニサッタの前半はなかなか読み進めにくい本ではあるけれど、読み終えた後は

地の果てから”との関係性(同書の続編)、人と人との繋がりや縁というものの不思議さ、

マイノリティが抱える生き辛らさが理解できる良書です。

地の果てからは、明治時代から続く開拓移民政策で移り住んできた家族の苦労が描かれ

ていて「何故、こんな地の果てまで移り住んでくる必要があったのか?」に思いを致すと

、中学時代に亡くなった祖母の顔が目に思い浮かんで泣けました

チームオベリベリも同様、北海道入植を志した人の夢や希望、挫折や筆舌に尽くしがたい

苦労がアイヌとの出会いの中で生き生きと描かれているとても良い本でした。

(オベリベリ=帯広)

 

はぁ~、それもこれも、アイヌ民族の蜂起や艱難辛苦の歴史にに比べれば・・・

 

チームオベリベリは、昨年山友のナジャさんから紹介を受けたのに、読むのがこんな

時期にまでなってしまいました

次回は、夏目漱石が徴兵令が未施行となっていた北海道岩内に22年間住んでいたとい

うことに関係する北海道移民誘導政策とアイヌの関係について触れたいと思います。

 

また今度

 


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2 コメント

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Unknown (ナジャ)
2023-04-11 20:00:42
「地のはてから」は私も読んでました。Toshiさんにすすめたのも私かも。どうも本や人の名前が覚えられなくなってやんなっちゃいます。
「ニサッタニサッタ」がこの続編とは知らなかったです。読んでみようと思います。
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Unknown (Toshi)
2023-04-11 21:23:28
ナジャさん

有り難うございます。
実は、チームオベリベリを昨年図書館に予約を入れたらば、何と30人以上も予約が詰まっているではありませんか。
待てど暮らせど連絡メールは入って来ません。
なので図書館に寄るたんびに乃南アサさんの他の短編小説をいくつか読んだりしていましたが、予約していることは忘れていたぐらいです。
地の果てからは、そのタイトルを見て思わず手に取ったのかもしれません。
自分も“やんなっちゃう”暮らしが状態化してるので、こちらもナジャさん情報だったかわかはなくなっていました(笑)
ニサッタニサッタは、続編と言っても話の内容が続いているわけではありません。
あるところで繋がっているのだと聞かされないと“続いていること”はわかりません。
そこが繋がっていると分かったとき、しみじみと湧き出るような温かさを感じました。
是非読んでみてください!
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