SSF 光夫天 ~ 詩と朗読と音楽と ~ 

◆ 言葉と音楽の『優しさ』の 散歩スケッチ ◆

「雪」 ~暴風雪 同じ雪でも風流じみた思いは消し飛んでしまいます・・・~ 3月1日

2016-03-01 13:11:34 | 「尾崎喜八を尋ねる旅」

今朝、南側に位置する中学校校庭にも、ちらほら雪が舞い、「冬の寒さ」に布団から出るのがおっくうに。
またニュースでは、北の地域の「暴雪風」と「その被害」を報じています。
明後日からは、春の訪れの様相ですが・・・。

3月1日撮影:大阪府豊中市



「雪」 自註 富士見高原詩集(尾崎喜八)より

急に冷え込んで来た一日の

暗い午後がとうとう雪になった。

私は思う、

去年の初雪はいつだったかと。


冬ごとに最初の雪を迎える心は

管絃楽の演奏会で

しずかに現れてくる主題につづく

華麗な展開部を待つ思いだったが、


今それは しだいに濃く はげしく、

白い寂寞(せきばく)を作ってたそがれてゆき、

何か知らぬが避けがたい切実なものとして

まっくらな夜のひろがりを押し流れている。

【自註】
同じ雪でも野山をうっすりと白くする「初雪」ならば、
珍しくもあり、趣きもあり、音感もいいが、
それが時間の経過と共に思いがけない大雪になり、

たそがれから夜に移るや
いよいよ暴風雪の相を呈してくると、
もう田園歌や風流じみた思いなどは消し飛んでしまう。

こんな筈ではなかったがと思っても始まらない。

濛々(もうもう)と吹き寄せる雲のような、この豪雪の威力の前には手の出しようも無く、
主題の華麗な展開どころか、ただおとなしく小さくなって布団へもぐり込むだけである。

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【寂寞(せきばく)】 ひっそりとして寂しいさま。

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暴風雪(イメージ写真)



北アルプスの春の「残雪」やこの詩にもある「初雪」は私にとって、『珍しくもあり、趣きもあり、音感もいい』ですが、「暴風雪」は、風流じみた思いは消し飛んでしまいます。
「土地」 ~この眺めは、「ずっしりと重い大きな貴重な本」にも等しい~
*よろしければ、ご覧ください。(2016年2月24日掲載)
(写真:大王わさび農園 2014.5.26撮影)