あれは,あれで良いのかなPART2

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よく分かる(?)シリーズ 株式会社と企業買収について(その2)

2005年10月15日 20時52分49秒 | よく分かる(?)シリーズ
前回に続きます。
前回は,株式会社とはなんぞや,についてその法律上の基本構造を中心に説明しました。
さて,今回は,それを踏まえて,企業買収の本題に入りたいと思います。

第2 上場企業と非上場企業
1 上場の理由

  まず,なぜ株式会社は上場しようとするのでしょうか。これは,簡単に言えば,「資金が集まりやすい」からです。
  株式を上場するということは,各株式会社の株式が店頭に展示されていて,それを誰でも自由に買うことができる状態,すなわち「株のスーパーマーケット」であるといえます
  したがって,誰でも株を買えることができるということは,会社への出資を誰でもできることとなり,会社から見れば,資金が簡単に集まるということになるわけです。

2 上場のメリット・デメリット
  上場することで,資金集めが容易になるということのほか,上場していること自体が,会社の信用,すなわちステータスになります。
  上場するためには様々な条件をクリアしなければなりません。その条件をクリアして上場しているということは,それだけで「この会社は,上場できるくらいすごい会社なんだ」ということをアピールでき,普通の取引などでも優位に立つことも可能となります(上場会社なんだから,ちゃんと支払ったり売ったりしてくれるだろうなど)。
  一方,問題点としては,株式を1人で全部持つ,ということができなくなります。一般の人に買ってもらうという前提である以上,これは当然のことでしょう。
  また,会社の意に添わない株主が入ってくる可能性もあります。これまた,誰でも買えるようにしている以上,宿命といえるでしょう。

3 知らない株主が入らないようにするためにはどうするか
  では,「うちの会社は,知らない人が株主になるのはまっぴらごめんだ」という場合,どうすればよいでしょうか。
  実は,商法ではそのような手法を手当てしてあります。発行している株式を他の人には原則譲ることができないという「株式譲渡制限」を設定することができます。
  もちろん,一定の手続きをとれば譲渡もできますが,原則としてこれならば知らない株主は入ってきません。
  ただし,譲渡制限がある場合,当然上場することはできませんし,また他から広く資金を集めることも難しくなります。
  ちなみに,日本の90%以上の会社はこの譲渡制限を設定しています。なぜなら,ほとんどの株式会社は,家族3人程度で構成されている「さんちゃん会社」だから,第三者に介入してほしくないためです。

第3 企業買収
1 企業買収の方法

  では,企業買収とはどのように行うのでしょうか。複雑なケースもありますが,ここでは単純なケースをいくつか説明します。
(1) 会社自体を直接買収する
  まず,基本的には,直接株式会社を金で買い取ります。
  しかし,後述のとおり,株式を買わなければ,ほとんど意味がないため,今日このような直接的な買収を行う人はいません。
(2) 会社の重要な営業部門を買収する
  いろいろな顧客やノウハウを持っている会社の場合,その重要な営業を買い取ることで,実質的に企業を買収するという手法があります。買収される会社から見た場合,これを「営業譲渡」と呼んでいます。
  この手法は,あくまでもある事業部門に関心がある場合のやり方であり,会社自体を買収するわけではないため,厳密には企業買収とは異なりますが,ある分野だけ力を入れたい会社は,この手法をとる場合があります。
(3) 株式を買い取る
  前回説明したように,株式の数に応じて会社への発言権が変わってきます。そして,基本的に半分持てば,役員すべてを自分の意志で選べることになりますので,株式半分を買い取ることで,事実上会社を買収したことになります。
  この手法は,非上場会社では,前述のとおり譲渡制限があることなどから難しく,ほとんどは上場会社の場合に使われる手法です。

2 株式の買い取り方
  では,たくさん株式を買い取るにはどうすればよいでしょうか。これもいろんな裏技があるみたいですが,ここでは単純な手法を紹介します。
(1) 証券会社で買う(株式市場からの購入)
  上場会社の株を,普通の投資家のように購入します。
  一番手っ取り早いですが,50%近くも買おうとすると,だんだん市場にその会社の株が売られなくなってくるため,必然的にだんだん株式の価格が高くなってきます。したがって,かなりの資金が必要になるばかりか,急に株が高くなると,その会社の経営者も「かるくやばい」と危機感を持って対策を講じてしまう恐れもあります。
(2) 大口株主から買う
  株式市場ではなく,大口株主から直接購入します。
  こうすることで,株式市場には直ちに金額が繁栄されないため,その会社にはすぐにばれません
  ただし,大口株主は,そもそもその会社に友好的である場合が多いため,単純に「はい,売ります」となるとは限りません。また,市場価格より高額にしなければ当然売らないわけで,やはりかなりの資金が必要となります。
(3) TOB(公開買い付け)
  上記各種法の折衷策として,TOBがあります。
  これは,簡単に言えば,「株主の方,10月31日までに私に株を売ってください。そうしたら,1株5000円で買い取ります。」と公告するのです。この場合,例えば,この会社の株式が3000円くらいで取り引きされているのであれば,当然5000円で売れば得をすることから,多くの株主が応じてくる可能性が高くなります。
  もちろん,これはその会社にも当然ばれてしまうばかりか,市場価格より高く設定しなければ誰も食いつかないわけですから,かなりの資金が必要となります。
  とはいえ,確実に大量株式を取得することが可能となります

2 どのような企業が買収されるのか
  これは,「会社の価値が高いのに,会社がその価値を活かした経営を行っていない」とか「会社の業績に対して株価が低い」など,会社経営と会社財産との間にアンバランスが生じている場合,非常に狙われやすくなります。理由は次のとおりです。
  まず,業績がよい会社で,かつ会社資産や株価がそれに応じている企業であれば,株価も高いため,簡単に過半数を取得することはできません。つまり,相当な資金が必要となることから,無理して買い取っても,元を取るのに時間がかかります。
  ところが,この辺にアンバランスがある企業の場合はどうでしょうか。会社資産を活かしていない企業であれば,買収してその資産を他に売ったり,またはそれを有効に活用することで,簡単に増収が期待でき,投資した資金の取り戻しが容易となります。また,このような企業は,株価がそんなに高くないことから,そもそも買収資金がそんなに必要ありません。さらに,株価と業績がアンマッチの会社の場合,大量買い付けが簡単であるばかりか,株価を適正価格にまで戻すことも容易であり,そこで全部売却すれば,それだけでもかなり儲けることができます。
  以上の理由から,バランスの悪い会社は狙われる,ということになります。

3 なぜバランスの悪い会社は存在するのか
  ここは私見になります。
  株式には,配当があるということを前回説明しましたが,日本では,これまでは株式配当について関心が低かったです。つまり,投資家も配当よりも株価の上昇のみに視点を置き,一方企業も配当に回せる金はすべて会社の増資や役員の報酬に回すなどしており,株主に還元しようという気持ちがあまりありませんでした
  しかし,本来ならば業績に応じて株価も上がるわけですから,本来なるべき価格と現状の価格との間に大きな差が出てしまうようになったわけです。
  つまり,バランスの悪い会社とは,経営者側に会社経営について危機意識や先を見る目がなく,単に従前どおりの経営をすればよいと思っていたような経営者がいるところに多いといえるでしょう。

第4 企業買収の防衛策
1 経営面

  まず,企業買収を阻止するためには,「上場しない」ということです。
  しかし,それでは,資金集めが大変になります。
  次に,「株価の適正化を図る」ことです。これは,これまでないがしろにしていた株式配当など株主に本来還元されるべき利益を積極的に還元していくことです。いうなれば,「当たり前のことをやる」だけのはなしですが,これにより,株価がかなり上昇するため,企業買収も困難となります。
  さらに,「経営者は常に先を考える」ということです。時代は変化しているため,従来どおり単純にやっていては,あっという間に回りから取り残されます。そうすると,会社は倒産するか,または買収の矛先になることでしょう。それよりも,「時代のニーズ」「これから先の会社経営のありかた」等について,常に考えて行動する必要があります。まあ,言い方を変えると,これも「当たり前のこと」なのですが。
  つまり,企業買収に対する防衛策とは,「当たり前のことを当たり前のようにやる」こと,これに尽きます。

2 法制度
  企業買収を禁止する法律はありませんし,これを制限してしまうと,海外投資家から見放されてしまい,日本経済は一気に崩壊します。
  現状の法制度としては,「種類株式の発行」になります。議決権制限株式を発行したり,拒否権付与株式を発行するなどして,投資家の経済活動の確保と企業防衛の確保の両面を図ることができます。
  しかし,ここからは私見になりますが,これもやりすぎると投資家から見放され,また種類株式は企業防衛というよりも「役員防衛」的要素が強いため,本当に会社のためになるかどうかは微妙ともいえる場合があります。
  したがって,法制度で企業買収を制限するというのは,ナンセンスなのではないかと思います。

第5 まとめ
  以上,株式会社と企業買収について簡単に説明しました。簡単と言いながら,長文になってしまいましたが,まとめるとこうなるでしょうか。
  株式会社は,一般の人から多くの資金を集めるために作られる会社であり,その出資した資金に応じて,会社に対する発言権が強くなります。したがって,時にはたくさんお金を出した人が,会社の役員に取って代わり経営権を牛耳ることも可能となります。このように,株式会社が買収されるというのは,会社の制度自体の宿命といえるでしょう。
もし企業買収に合いたくなければ,普段から健全経営に心がけ,会社の価値を高めるなど,当たり前のことを当たり前のようにしていればよいのではないでしょうか。


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よく分かる(?)シリーズ 株式会社と企業買収について(その1)

2005年10月15日 15時07分11秒 | よく分かる(?)シリーズ
ここ数日,阪神電鉄やTBSの株式を大量保有していたなどとして,村上氏や三木谷社長が矢面に立たされています。中には,「企業買収なんてけしからん」という論調で批判している人さえもいます。
しかし,株式を購入することは誰でもできるわけですし,そもそも商法において株式会社について様々な規定がされています。
そこで,今回は,株式会社の基本構造の概要を説明すると共に,株式会社の企業買収について,ある程度客観的に検証してみたいと思います。ただし,今回の記事は,現行商法をベースにしており,来年施行予定の新会社法とは話が違う部分もありますので,その点はご注意ください。
なお,一部私見が入るところもありますが,その場合は,私見である旨明示します。

第1 株式会社の基本
1 会社の所有者は誰か。

  まず,議論になっているのは,「会社は誰のものか」です。
  これについて,いろいろ議論があるものの,商法では,「会社の実質的所有者は株主である。」と考えられており,それに基づいた規定になっています(254条3項はそのこととを裏から規定したものといわれています。)。

2 株式会社ってそもそも何
  次に,株式会社ってそもそも何,という点については,一言で言えば,「多くの人からお金を集めて会社を作る形態」をいいます。
  イメージがわきにくいでしょうから,実例を挙げて簡単に説明します。

3 実例「株式会社おかにゃんラーメン」のすべて(もちろん,この会社は完全に架空のものですので,このようなラーメン屋は存在しません)
(1) 株式会社にする理由

  仮に私が「ラーメン屋が儲かる」と考えたとします。しかし,ラーメン屋を開業するためには5000万円かかるが,私は自分でお金が100万円しかなく,他に資産も信用もないため,銀行からの融資も受けられません。そうなると,折角ひらめいたラーメン屋構想を,お金がないために,泣く泣く手放すことになります。
  そこで,私はこうみんなに声をかけます。「お金をもっている人,私のラーメン屋企画に一口乗りませんか。私のラーメン屋は絶対儲かります。一口乗ってくれた人には,売り上げに応じた配当を出しましょう。」と。
  すると,「なるほど,こりゃ儲かるかもしれない」と考えた人が「よっしゃ,その話し乗るぞ。100万円出す。」などといって,出資者が集まってきます。
  この出資者が株主であり,その出資の証が株式になります。
  これで,仮に10人から合計1000万円の出資金が集まった場合,この資金で「株式会社おかにゃんラーメン」を立ち上げるわけです。これが株式会社です。そして,会社になれば,銀行も多少信用をしてくれます(銀行も,この会社の事業儲かるかどうか,という点を審査しますので。)。すると,銀行も5000万円を貸してくれるわけです。
  それで,私はめでたくラーメン屋を経営できることになります。
  つまり,株式会社にすることで,「たくさんのお金を集めることができ,資力がない人でも会社を経営するチャンスが生まれる」ということになります。

(2) 会社経営と株主の地位や権利
  次に,私のラーメン屋が儲かれば,約束どおり,一定の配当を株主に出します。これが「株式配当」です(ちなみに,日本ではこれが長年軽視されていました。)。
  また,会社経営について,代表取締役(社長)と取締役(役員)が必要となります。これは,ラーメン屋の経営方針や仕入れ先,営業時間や味などといった会社の今後の行き先を考える上で重要なことを考える人たちの集まりです。ここでの方針が狂えば,ラーメン屋はたちまち倒産してしまいますし,逆にここで良い方針を打ち出せば,もっと売り上げが上がり,さらには2号店,3号店と店舗拡大の可能性だって出てきます。
  すると,出資した株主はこう思うはず。「倒産したら自分の出資金が返ってこない。だから倒産させるような社長は交代させよう。逆に,社長があの人だったら,人脈もあるし,過去にラーメン屋を成功させた実績もある。そしたら,社長か役員に別の人を入れたら,自分の出資金も安泰だし,配当ももっと増えるかも。」とか「今の経営はいいんだけど,私の会社の人間が経営に参加すれば,私の会社を取引先にして,私の会社ももうかるなあ。うっしっし。」と。
  そこで,株主は,役員人事に口出しができるようになっています。取締役は株主総会で選任し,代表取締役は取締役会で選任されるのです。その際,お金をたくさん出している人ほど,会社経営方針による利害は大きくなるわけですから,役員を選ぶ際は,株主の人数による多数決ではなく,出資金額の割合,すなわち株式の保有数に応じて,議決権があることになります(株式数の過半数の賛成で選任できます。)。
  もちろん,同様な理由から,取締役をクビにする権利も,株主にはあります。この場合,株式数の3分の2以上の賛成が必要となります(俗に「株式の3分の1以上持ったことで拒否権が行使できる」と言われるのは,このような役員をクビにしたりとか,会社の定款(会社の目的)を変更するなど重大なことを議決するためには,3分の2以上の賛成が必要なことから,3分の1以上持っていれば,少なくともそれを阻止することが可能になる,という意味です。)。

(3) 会社側の株主に対する本音と建て前
  ここで私(社長)の立場から,株式会社を見てみましょう。
  会社もできたことだし,経営もとりあえず順調なのだから,出資者たる株主にとやかく言われたくありません。
  そこで,私はどうするのがよいでしょうか。
 ア 連日株主を接待して,言うことを聞いてもらうようにする
 イ 株主から文句言われないようにラーメン屋の実績を上昇させる
 ウ 自分が会社の株式の半分以上を持つ

  だいたいこのくらいが思いつくでしょうか。
  しかし,アは説明するまでもなく,ダメ社長です。イについては,正論なのですが,株主は「もっと儲かる人がいる」と思えば,私をクビにすることもあり得るため,絶対安全とはいえません。ウについては一番確実ですが,自分がそんなに資金があれば,そもそも人からお金集めて株式会社なんて作らなかったはずなので,非現実的です。
  そこで,実は,このアからウをすべてミックスした手法を使って経営安定を図ります。つまり「自分の息のかかる大口株主を筆頭株主として,安定経営を図る」というものです。
  こうすることで,私は,この大口株主に対して,連日媚びを売り,私の意向どおり議決をしてもらうように働きかけるとともに,会社経営を健全化することで,この大口株主も含めた株主全員が満足行くような経営を行っていくことになり,結果的に私の地位は安泰するわけです。
  もちろん,大口株主からは,見返りとして「自分の気に入った人間を役員にしてくれ」と言ってくるわけで,それは当然私としても受け入れざるを得ません。つまり,大口株主は役員を送り込むことで,会社の経営にかなり口出しができるようになってくるわけです。
  以上から,経営者としては,経営の安定と自分の椅子を守るため,一方で株主をないがしろにしながら,もう一方で大口株主のいいなりになることで,絶妙なバランスを保とうとするわけです。

4 まとめ
  以上を簡単に整理すると,「株式会社とは,多くの人から資本を集めて会社を設立する。そのかわり,経営者は株主の意見に従って会社を経営する義務がある。」ということになります。

あ,会社の基本構造だけでこんなに長くなってしまいました。
本題については,次回に続きます(次回部分をクリックしますと,その2の記事にジャンプします)。

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