では,いよいよ本音に入ります。
第2 道路完成に至る道(本音)
前回の流れは教科書にもあるような理想的な道路工事でして,現実にはなかなかこうは進みません。では,現実はどう進むのでしょうか。
1 古い都市計画
都市計画道路については,一度計画が認可されると,簡単に変更することはできません。ところが,実は今の都市計画道路の大半は昭和30年代に作られたものが多いのです。したがって,時代の変化にマッチしていない計画のままである可能性も残っています。
もちろん,計画の見直しを丁寧に行っている地域もかなりありますが,大半は「昔の計画」に従って粛々と道路を造っているというのが実情なのです。
2 計画道路よりも要望道路優先の原則
都市計画道路は,計画通り進んでいくと思いきや,議員や有力者,さらにはその時の首長の一存で順序が大幅に変わることがあります。つまり,「結構場当たり的」な工事もあるのです。特に国の大規模道路の場合,議員の力関係が道路工事の順序を決めるといっても過言ではありません。道路族議員が選挙に強いのは地元住民にも,業者にも,官庁にも幅をきかせているからです。
また,場合によっては変更の難しい都市計画を強引に変えてしまうことすらあります。これは「施設建設」や「想定通行台数」の算定を変えるなどして,「とにかく事情が変わった」などと強く主張するというパターンが多いです。
一方,地方道路である生活道路については都市計画道路ではないため,ある程度自由がききます。そうなると,どこにどんな道路を造るかはやはり議員や有力者の声を優先せざるを得なくなるのです。
こうして,都市計画道路は「都市無計画道路」になってしまうのです。究極は,「同じ道路を何度も繰り返し工事する」という事態に陥ってしまうのです。
3 予算は青天井
さて,事業認可された場合,通常であれば先に総予算を決めてそれに見合った事業を行います。ところが,実際は逆で,まず設計してみて,そこから予算を決めていくのです。しかも,一度決まると「道路作らなければならない」というmustの法則が働くため,総予算を決めたところで「そんなの関係ねぇ!」となってしまい,どんどん増額していくのです。
なぜでしょうか?それは「要望道路」だからです。要望でできることが決まると,今度は中身に対する要望がどんどんふくらんでいくからです。
また,詳しくは後の回で説明しますが,道路を造る際の基準となる「道路構造令」がどんどん変更され,道路の規格が徐々に大きなものになっていることも,当初計画を超えた道路建設が進んでしまう要素になっているのです。
こうして,当初計画予算は絵に描いた餅となり,予算要求額もどんどん増えていくのです。結果,入札の予定価格も当然高くなってしまいます。
4 契約は実質随意契約
このからくりは後の回で説明しますが,道路工事の場合,大半は「競争入札の形を借りた随意契約」となってしまいます。もちろん,この業者は首長や議員の息のかかったところです。
そうすると,形式的な入札しか行わないため,予定価格ぎりぎりで落札することになります。ただでさえ高い予算を組んでいたところにこの結果,当然安くはなりません。
5 道路設計は業者任せ
例えば高速道路のような大規模道路の場合,設計や調査はすべて専門の業者に委託します。それはそれでやむを得ないところですが,実は小さな道路の場合も,調査や設計を業者に委託していることが多いです。もちろん,これが直ちに悪いと言うことではないのですが,業者の設計の場合,いろいろなオプションがついている場合が多いため,役所でちゃんとチェックをしなければ「ゴージャス道路」となってしまうのです。
設計がすべてのキモなので,ここを仕切れない役所は道路予算が増加しやすくなります。
6 予算が足らなくなったらすぐ補正予算
実際に工事に着手しますと,普通の契約ならばその契約の範囲内の金額で予定どおりの工事をすることになります。
ところが,なぜか突然「予算が足らない」と業者が言い出してきます。普通ならば,こんな要求は無視するところですが,一応それなりの理由がついている場合,役所側も道路を完成させるために業者の言い分を聞かざるを得ず,予算の増額(変更契約)を結ぶことになります。
そして,補正予算において予算増額の審議を議会に通しますが,道路工事という単語がついているだけで,議会は通過しやすいという事情(ここも詳しくはあとで説明します。)から,補正予算はほぼスルーパス状態となります。
こうして,当初予算以上のお金を業者に払うことになります。
第3 本日のまとめ
以上が道路工事に伴う本音と建て前です。
本音部分について,なぜそうなるのかは次回以降さらに構造を説明しますが,いずれにしても,「計画がありそうで実は無計画な道路」となっている点が,道路が無駄だといわれる最大の理由でもあります。
あとは,業者の言いなり道路も費用がかさむ理由となっています。なぜ言いなり道路ができるのか,それは今後のお楽しみ!
第2章へ
インデックスに戻る
よろしければ1クリックお願いしますm(__)m→人気blogランキングへ
第2 道路完成に至る道(本音)
前回の流れは教科書にもあるような理想的な道路工事でして,現実にはなかなかこうは進みません。では,現実はどう進むのでしょうか。
1 古い都市計画
都市計画道路については,一度計画が認可されると,簡単に変更することはできません。ところが,実は今の都市計画道路の大半は昭和30年代に作られたものが多いのです。したがって,時代の変化にマッチしていない計画のままである可能性も残っています。
もちろん,計画の見直しを丁寧に行っている地域もかなりありますが,大半は「昔の計画」に従って粛々と道路を造っているというのが実情なのです。
2 計画道路よりも要望道路優先の原則
都市計画道路は,計画通り進んでいくと思いきや,議員や有力者,さらにはその時の首長の一存で順序が大幅に変わることがあります。つまり,「結構場当たり的」な工事もあるのです。特に国の大規模道路の場合,議員の力関係が道路工事の順序を決めるといっても過言ではありません。道路族議員が選挙に強いのは地元住民にも,業者にも,官庁にも幅をきかせているからです。
また,場合によっては変更の難しい都市計画を強引に変えてしまうことすらあります。これは「施設建設」や「想定通行台数」の算定を変えるなどして,「とにかく事情が変わった」などと強く主張するというパターンが多いです。
一方,地方道路である生活道路については都市計画道路ではないため,ある程度自由がききます。そうなると,どこにどんな道路を造るかはやはり議員や有力者の声を優先せざるを得なくなるのです。
こうして,都市計画道路は「都市無計画道路」になってしまうのです。究極は,「同じ道路を何度も繰り返し工事する」という事態に陥ってしまうのです。
3 予算は青天井
さて,事業認可された場合,通常であれば先に総予算を決めてそれに見合った事業を行います。ところが,実際は逆で,まず設計してみて,そこから予算を決めていくのです。しかも,一度決まると「道路作らなければならない」というmustの法則が働くため,総予算を決めたところで「そんなの関係ねぇ!」となってしまい,どんどん増額していくのです。
なぜでしょうか?それは「要望道路」だからです。要望でできることが決まると,今度は中身に対する要望がどんどんふくらんでいくからです。
また,詳しくは後の回で説明しますが,道路を造る際の基準となる「道路構造令」がどんどん変更され,道路の規格が徐々に大きなものになっていることも,当初計画を超えた道路建設が進んでしまう要素になっているのです。
こうして,当初計画予算は絵に描いた餅となり,予算要求額もどんどん増えていくのです。結果,入札の予定価格も当然高くなってしまいます。
4 契約は実質随意契約
このからくりは後の回で説明しますが,道路工事の場合,大半は「競争入札の形を借りた随意契約」となってしまいます。もちろん,この業者は首長や議員の息のかかったところです。
そうすると,形式的な入札しか行わないため,予定価格ぎりぎりで落札することになります。ただでさえ高い予算を組んでいたところにこの結果,当然安くはなりません。
5 道路設計は業者任せ
例えば高速道路のような大規模道路の場合,設計や調査はすべて専門の業者に委託します。それはそれでやむを得ないところですが,実は小さな道路の場合も,調査や設計を業者に委託していることが多いです。もちろん,これが直ちに悪いと言うことではないのですが,業者の設計の場合,いろいろなオプションがついている場合が多いため,役所でちゃんとチェックをしなければ「ゴージャス道路」となってしまうのです。
設計がすべてのキモなので,ここを仕切れない役所は道路予算が増加しやすくなります。
6 予算が足らなくなったらすぐ補正予算
実際に工事に着手しますと,普通の契約ならばその契約の範囲内の金額で予定どおりの工事をすることになります。
ところが,なぜか突然「予算が足らない」と業者が言い出してきます。普通ならば,こんな要求は無視するところですが,一応それなりの理由がついている場合,役所側も道路を完成させるために業者の言い分を聞かざるを得ず,予算の増額(変更契約)を結ぶことになります。
そして,補正予算において予算増額の審議を議会に通しますが,道路工事という単語がついているだけで,議会は通過しやすいという事情(ここも詳しくはあとで説明します。)から,補正予算はほぼスルーパス状態となります。
こうして,当初予算以上のお金を業者に払うことになります。
第3 本日のまとめ
以上が道路工事に伴う本音と建て前です。
本音部分について,なぜそうなるのかは次回以降さらに構造を説明しますが,いずれにしても,「計画がありそうで実は無計画な道路」となっている点が,道路が無駄だといわれる最大の理由でもあります。
あとは,業者の言いなり道路も費用がかさむ理由となっています。なぜ言いなり道路ができるのか,それは今後のお楽しみ!
第2章へ
インデックスに戻る
よろしければ1クリックお願いしますm(__)m→人気blogランキングへ
続編を期待しています。
正確に言えば,「自分たちで計画をぐちゃぐちゃにしたから予定通り進まない」ということだと思います。
少なくとも,議員が「計画が古い」から計画の変更を求めているのではなく,「選挙対策のために道路の予定を変える」という発想で計画を変更しているのであれば,即時辞めてほしいものです。っていうか,みんなの力でくびにするべきでしょう。