あれは,あれで良いのかなPART2

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原発の災害対策は十分だったか?

2007年07月16日 16時04分53秒 | 災害・危機管理
新潟中越地震では,柏崎・刈羽原発がもろに地震のあおりを受けました。この地震で,刈羽原発は緊急停止をしましたが,3号機主変圧器から発火するという火事が発生し,およそ1時間後に消化しました。この火災による放射能漏れの心配はないとのことでした。

柏崎・刈羽原発は鎮火、放射能の漏出なし(読売新聞) - goo ニュース

消防待ち?

まずこの問題,おそらく今後話をごちゃ混ぜにして「いかにも原発は危険」というコメントをするテレビコメンテーターが出てくるかと思いますので,まず問題点を整理しておきます。その上で,私が気になった点を指摘するという形にします。

1 原子炉は大地震対策は取られている
  今回の地震で,原子炉自体は無傷でした。どの程度の地震に耐えられるかは別にして,原子炉は大地震(少なくとも震度6強)に耐えられる構造になっているということは今回の地震を通じて明らかになったといえます。

2 放射能漏れの可能性があるのは,原発の中のごく一部の施設
  放射能を扱うのは,原子炉及びその周辺及びウラン貯蔵庫くらいです。そして,それらは前述のとおり厳重な構造で管理されているはずです。
  したがって,仮に原発の施設で災害が発生したとしても,それが即「放射能漏れ」につながるとは限らないということです。
  もちろん,逆に言うと,「即放射能漏れ」となりうる施設があることも事実ですが,少なくともそのような施設は屋外に露出していません。

3 変圧器と発電機は別物
  原発の構造は,ごく簡単に言えば,ウランが核分解したときの発熱で水を沸かして発電機のタービンを回すというものです。つまり,放射能漏れが一番起こりうるのは,この発電部分なのです。例えば,発電機のタービンが燃えたとかいうのであれば,かなりの危険性が発生してきます(もちろん,その点も実際は十分な対策は講じられています。)。
  一方,変圧器とは,発電された電気をある一定のボルトに変える機械です。これは基本的に発電機から電線でつながっているだけです。したがって,変圧器に異変があったとしても,それが放射能漏れにつながるという可能性は限りなく0です。
  したがって,「そんな危ないものを屋外に置くのはおかしい」なんてテレビで叫んでいるコメンテーターがいたら,「おかしいのはどっちだよ」と突っ込みましょう。

以上の前提から,今回の変圧器の火災は,直接は放射能漏れにつながるということはほとんどあり得ないということになります。

ただ,問題なのはここからです。
確かに,構造上安全であることはこれまでの東京電力の説明や,また今回の地震からも明らかであるといえます。
しかし,原発の防災対策がまだまだ不十分であったといわざるを得ない点もあります。すなわち,「自衛消防隊」がなく,変圧器を燃やしたまま1時間近く事実上放置してしまった,という点に,原発の安全管理上の問題があるといえます。
例えば,空港には自衛消防隊がいて,緊急時には消防署の到着を待たずに消火などの対応をします。そうしなければ被害が拡大するからです。また,大きな工場でも同様の消防隊を持っています。
ところが,刈羽原発では,簡単な消火活動をはじめたものの,その後は消防待ちとなりました。しかし,大地震により消防車はなかなか来ませんでした。結果,変圧器の消火が遅くなったのです。
しかも,テレビの映像から判断するに,初期消火は簡易ポンプを使用したに留まっており,しかも,早々に消火活動を断念したように見えました。おそらく,この装備では手に負えなかったものと推測されます。すなわち,その程度の装備しかなかったと推測されます。

今回は,結果的に重大な影響を及ぼす施設ではなく,放置しておいても実害の少ないものだったため,この程度で済みましたが,仮に原子炉に影響を及ぼしかねない施設での火災だったとしたらどうだったでしょうか。例えば,原子炉のある建物内部から発火したとしたらどうだったでしょうか。
「施設内部にはスプリンクラーがあるから大丈夫」というのは,安全対策としては不十分です。すべての基本は「確実な初期消火」にあるのです。建物の外部の火災だから原子炉は絶対大丈夫,というのも非常に危険な論理です。火がどこに飛び火して何に引火すのか,これは想定外のことが起こりうるからです。

原子力発電所は,いってしまえば「大爆弾の固まり」の施設です。当然,火力発電所も同じです。とすれば,万全な初期消火対策を講じておくべきといえるでしょう。今回のように消防車が来るに来られないということが想定されます。のみならず,放射能漏れの可能性の有無で使える消防施設も違うはずです。自衛消防隊でこのような場合に対応する消防車などを用意しておけば,消防士に対する被害も最小限にすることができるでしょう。

原発の防災対策,本当にこれで十分といえるのか,電力会社や保安院などで今一度見直してみる必要があるでしょう。当然ながら,この対策を怠った場合,周辺住民への被害が計り知れないのみならず,まず第一の被害者となるのは,「そこで働く人」ですから,社長としては当然安全配慮義務違反が問われることになるでしょう。

(7月17日追記)
徐々に放射能漏れ情報が発表されてきました。
問題なのは,「施設よりもそこに携わる人の対応」ではないのかなあ,っていう気がしてなりません。

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4 コメント

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安全かどうか任せておけない (ぢょや)
2007-07-17 01:49:11
水漏れから放射能が検出されたって言ってますし、本当に大丈夫なんでしょうかね?

危険を煽るコメンテーターもいるかもしれませんが、煽りたくなるくらい情報を出し渋る原発側の体制もあるってところが怖いと思います。
今回の火事も外から見えるからちゃんと公表してますが、果たして中で見えないものだったら、公表するのはどのくらい時間が経ってからだったのだろうか、なんて考えると、信頼を築いてこなかった原発側に、多少マスゴミに煽られてもしょうがないというものを感じます。

それにしても。火災があれだけ長引いてるのを放置せざるをえないところにもさらに不信感が。
日本も何かあったら即IAEAの査察官が飛んでくるくらいのことがあったらいいのに、とか思ってしまいました。
返信する
ぢょやさま,コメントありがとうございました (おかにゃん)
2007-07-17 19:55:20
こんばんは。
今回の問題点は,初期消火だけではなく,毎度の「情報提供のあり方」も徐々に問題点が明らかになってきましたね。
原発が安全である,と強くいいたいのであれば,こういうときこそ「こうだから安全だよ」と堂々とアピールするべきだと私も思います。
この点が後手に回るから,尾ひれが付く議論に巻き込まれるだけなんですよね。
返信する
根本的に。 (silverjihn)
2007-07-17 22:58:44
おかにゃん様、トラバありがとうございます。

http://www.chuden.co.jp/torikumi/atom/more/jishin_taishin.html
http://contest.thinkquest.gr.jp/tqj2000/30295/mechanism/earthquake/pands.html

刈羽について、Wikiには“2004年の新潟県中越地震の際も、すぐ近くの刈羽村役場では震度6弱が観測されたにもかかわらず、発電所の基礎部は震度4の揺れしか観測されなかったと言われている[要出典]。”と書いてある訳ですが、これは耐震対策の奏効によるのとともに、活断層が近い直下型の場合には、縦揺れと横揺れがほぼ同時に届くだけに、被災地への損害が大きくなってしまったのでしょう。

阪神淡路大震災で、一般家屋を破壊したのが縦揺れ、一本のコンクリ柱で支えられていた阪神高速道路を薙ぎ倒したのが横揺れのようですが、地震による想定外の損害が出る可能性もあるわけで、「直下型に強いデザイン」の開発も進めるべきじゃないかなあ、と思います。

肉眼で確認可能なレベルの地割れが発生しない小型の地震であっても、頻発によって、隣接地域の大きな活断層に悪影響を与える可能性があるだけに、地震対策には予断を許さない状況が続くのではないでしょうか。
返信する
silverlihnさま,コメントありがとうございました (おかにゃん)
2007-07-18 00:01:30
こんばんは。
原発が地震に強いとされる説明は,岩盤にまで基礎を打ち付けていることを根拠にしています。
確かに,横揺れには相当強いと思いますが,縦揺れにどの程度強いかは実は未知数です(理論上震度7の縦揺れも大丈夫とはされていますが)。
しかも,原発の最大の弱点,それは「屋根」にあるという話もあります。
今回は大惨事にまでなりませんでしたが,常に「今回は大丈夫だけど,次回はどうか」などという検証をしっかり行うことは大切でしょうね。
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