今回は,少々耳の痛い話かもしれません。
世の中いろんな社会問題があり,候補者はすべてのジャンルについて選挙公約を掲げています。
その中に,例えば多くの自治体で社会問題となっている「待機児童問題」なども掲げられていると思います。当然,これもその地域の候補者は,ほぼ全員選挙公約にしているはずなのです(裏選挙マニュアルにも書いたように,公約は広く浅くというルールもありますので。)。
ところが,この問題が大きく改善されたという話はあまり耳にしません。なぜでしょうか?
もちろん,法規制の問題や縦割り行政の弊害,場所や人の確保や予算問題などいろんな問題点があるテーマなので,そう簡単に進まないというのも理由としてあげられるでしょう。
しかし,一方で,同様の問題を抱えている高齢者福祉施設は意外と早く建設されるなど,さくっと進んでしまうような施策も結構あるのではないでしょうか。
もっというと,「こども手当」について,ばらまきだなどといわれてものすごい反対意見が殺到し,事実上止める縮小する方向になりつつありますし,また母子手当なども削減する方向に進んでいますが,一方で,高齢者向けの給付金については,あまりそんな激しい議論が発生していませんし,後期高齢者医療制度は早速に改善する方向で検討されているようですし,自治体によっては,いろんな名目で給付金の増額すら検討しているところが多いのではないでしょうか(もちろん,これらの検討や実施が悪いという意味ではありません。誤解のないように。)。
なぜ,待機児童問題が解決しないのか,また,こども手当等のような子育て支援施策方面だけ批判の矢面になり,どんどん削られてしまうのでしょうか?
もちろん,政策それ自体に問題があるという点も否めませんが,ここが実は選挙経営学が大きく絡んできている話なのです。
政治家の選挙公約は,幅広く主張はしていますが,それはあくまでも見てくれだけの問題です。当然,中身がなければ活動はできません。のみならず,政治家のもう一つの活動として「後援会挨拶」があります。ここを固めないと当選しないからです。とすると,後援会受けする話を中心に政治活動をしていかなければなりません。
また,現実的な問題として,議員は体ひとつなので,たくさん公約を主張しても,実際行動できるものは限られていますから,当然,優劣をつけざるを得ないことになります。
では,どういう優劣を議員はつけるのでしょうか?
建前は,「重要課題」なので,まっとうな政治家であれば,現状分析などをきちんと行ったうえで,必要性を吟味して重要課題の優劣をつけることになります。ところが,選挙経営学のみに基づく残念な政治家の場合,単純に「いちばん票が取れるものから取り組む。」という発想になるのです。そして,一番票が取れる施策というのは,端的に言うと,「誰が選挙に行っているか?」という点に尽きるのです。もっと言うと,選挙経営学では,選挙に行かなそうな人に対して,いろいろやってもそれはどぶに捨てるに等しい,っていう発想になるのです。
そこで,「票が一番取れる施策」は何かという点をさらに素因数分解してみると,それは「どんな人が一番投票に行っているのか」ということになるのです。選挙に行く=票だからです。よって,選挙経営学からすると,候補者はそこを重点的に狙えばがっぽり票を稼げるから,一番選挙に行く人たちメインに重要施策を考えればよい,っていうことになるのです。
それらをふまえて,今の投票の実情をみると,投票率が高い年代は50代以上になります。逆に,20代30代は極端に投票率が低いです。また,後援会に所属している方々の大半は,やはり50代以上ということになります。
ってことは,濡れ手で粟の大もうけをするには,「50代以上の有権者にこびを売れば十分」っていう発想になるのです。これこそ,選挙経営学鉄板の手法!
なので,高齢者関連に関しては,非常に関心もあり,かつ50代以上の人がたくさん投票してくれるということから,必然的にそっちの活動を優先する訳です。それで票が十分取れるからです。
逆に,待機児童問題や,少子化対策,教育問題などといった主に20代30代の方々が困っている問題については,「どーせがんばっても,選挙行かない人たちだから,票にならないことはやーらない!」っていう発想になり,活動は劣後債権になるのです。
すると,必然的に,子ども手当や母子手当など子ども関連施策は,「どうせ削っても,ネガティブ票にすらならないから大丈夫!」ってことで,ある意味やりたい放題になるわけです。
おそらく,究極の選択として,「高齢者と児童,手厚く守るのはどっち?」というカードを見せられたとしたら,まっとうな政治家はいろんな要素を考慮してどちらかを選択するでしょうが,選挙経営学を駆使する政治家は,迷わず「高齢者!」を選択するでしょう。そっちの方が圧倒的に票が取れるからです。
「でも,施策を計画するのは官僚では?」という疑問を抱く方も多いと思います。そのとおりなんですが,官僚も人の子ですから,政治家からプレッシャーがかかれば,当然,そっちを重点的に実施せざるを得なくなります。まあ,建前として,憲法上は,民意を反映した議員や首長の施策を実現させるのが官僚の役割ですから,当然といえば当然です。
また,実際問題としては,官僚としても,どこかの国の鉄道省同様,自分の施策を推進して予算をたくさんもらうということが実績になりますので,政治家がそっち方面にシフトしているなら,むしろそうした政治家を利用して,その施策を実現させていくのです。逆に,バックに政治家がいない施策は,どうしても財務省等企画財政サイドで削られやすくなるため,施策推進が困難になるのです。
こうした事情から,政治家が重点的に行っている施策に官僚は追従する(またはその逆に官僚に政治家が追従する)ことになるのです。
誤解のないように言いますが,決して高齢者福祉施策にシフトすることがけしからんという意味ではありません。これは重要施策であることは当然なので,いろいろな検討を加えて推進していくことは非常に大切です。ただ,その判断基準が,「票が取れる」という選挙経営学だけであるという点が,民意を反映していないといわれる元凶になりうるのです。
選挙経営学の議員が皆無になるか,または20代30代の投票率が50代以上の人以上の投票率にならない限り,日本中の待機児童問題等子供に関する諸問題が完全に解決するということはないでしょう。
今日のまとめ
選挙経営学重視の政治家は,選挙に行く人しか主眼に置かないため,投票率の低い20代30代の意向というものが政治に反映されにくい。のみならず,若年層を犠牲にする施策が進む理由も,票にならない人に対してであれば痛くも痒くもないため,何でもあり,っていうことになるからである。選挙に行かない若年層については,他の世代並みに選挙に行く状況にならない限り,自分の意向が政治に反映されることはなく,いくら声だけあげても改善は進まないのである。
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世の中いろんな社会問題があり,候補者はすべてのジャンルについて選挙公約を掲げています。
その中に,例えば多くの自治体で社会問題となっている「待機児童問題」なども掲げられていると思います。当然,これもその地域の候補者は,ほぼ全員選挙公約にしているはずなのです(裏選挙マニュアルにも書いたように,公約は広く浅くというルールもありますので。)。
ところが,この問題が大きく改善されたという話はあまり耳にしません。なぜでしょうか?
もちろん,法規制の問題や縦割り行政の弊害,場所や人の確保や予算問題などいろんな問題点があるテーマなので,そう簡単に進まないというのも理由としてあげられるでしょう。
しかし,一方で,同様の問題を抱えている高齢者福祉施設は意外と早く建設されるなど,さくっと進んでしまうような施策も結構あるのではないでしょうか。
もっというと,「こども手当」について,ばらまきだなどといわれてものすごい反対意見が殺到し,事実上止める縮小する方向になりつつありますし,また母子手当なども削減する方向に進んでいますが,一方で,高齢者向けの給付金については,あまりそんな激しい議論が発生していませんし,後期高齢者医療制度は早速に改善する方向で検討されているようですし,自治体によっては,いろんな名目で給付金の増額すら検討しているところが多いのではないでしょうか(もちろん,これらの検討や実施が悪いという意味ではありません。誤解のないように。)。
なぜ,待機児童問題が解決しないのか,また,こども手当等のような子育て支援施策方面だけ批判の矢面になり,どんどん削られてしまうのでしょうか?
もちろん,政策それ自体に問題があるという点も否めませんが,ここが実は選挙経営学が大きく絡んできている話なのです。
政治家の選挙公約は,幅広く主張はしていますが,それはあくまでも見てくれだけの問題です。当然,中身がなければ活動はできません。のみならず,政治家のもう一つの活動として「後援会挨拶」があります。ここを固めないと当選しないからです。とすると,後援会受けする話を中心に政治活動をしていかなければなりません。
また,現実的な問題として,議員は体ひとつなので,たくさん公約を主張しても,実際行動できるものは限られていますから,当然,優劣をつけざるを得ないことになります。
では,どういう優劣を議員はつけるのでしょうか?
建前は,「重要課題」なので,まっとうな政治家であれば,現状分析などをきちんと行ったうえで,必要性を吟味して重要課題の優劣をつけることになります。ところが,選挙経営学のみに基づく残念な政治家の場合,単純に「いちばん票が取れるものから取り組む。」という発想になるのです。そして,一番票が取れる施策というのは,端的に言うと,「誰が選挙に行っているか?」という点に尽きるのです。もっと言うと,選挙経営学では,選挙に行かなそうな人に対して,いろいろやってもそれはどぶに捨てるに等しい,っていう発想になるのです。
そこで,「票が一番取れる施策」は何かという点をさらに素因数分解してみると,それは「どんな人が一番投票に行っているのか」ということになるのです。選挙に行く=票だからです。よって,選挙経営学からすると,候補者はそこを重点的に狙えばがっぽり票を稼げるから,一番選挙に行く人たちメインに重要施策を考えればよい,っていうことになるのです。
それらをふまえて,今の投票の実情をみると,投票率が高い年代は50代以上になります。逆に,20代30代は極端に投票率が低いです。また,後援会に所属している方々の大半は,やはり50代以上ということになります。
ってことは,濡れ手で粟の大もうけをするには,「50代以上の有権者にこびを売れば十分」っていう発想になるのです。これこそ,選挙経営学鉄板の手法!
なので,高齢者関連に関しては,非常に関心もあり,かつ50代以上の人がたくさん投票してくれるということから,必然的にそっちの活動を優先する訳です。それで票が十分取れるからです。
逆に,待機児童問題や,少子化対策,教育問題などといった主に20代30代の方々が困っている問題については,「どーせがんばっても,選挙行かない人たちだから,票にならないことはやーらない!」っていう発想になり,活動は劣後債権になるのです。
すると,必然的に,子ども手当や母子手当など子ども関連施策は,「どうせ削っても,ネガティブ票にすらならないから大丈夫!」ってことで,ある意味やりたい放題になるわけです。
おそらく,究極の選択として,「高齢者と児童,手厚く守るのはどっち?」というカードを見せられたとしたら,まっとうな政治家はいろんな要素を考慮してどちらかを選択するでしょうが,選挙経営学を駆使する政治家は,迷わず「高齢者!」を選択するでしょう。そっちの方が圧倒的に票が取れるからです。
「でも,施策を計画するのは官僚では?」という疑問を抱く方も多いと思います。そのとおりなんですが,官僚も人の子ですから,政治家からプレッシャーがかかれば,当然,そっちを重点的に実施せざるを得なくなります。まあ,建前として,憲法上は,民意を反映した議員や首長の施策を実現させるのが官僚の役割ですから,当然といえば当然です。
また,実際問題としては,官僚としても,どこかの国の鉄道省同様,自分の施策を推進して予算をたくさんもらうということが実績になりますので,政治家がそっち方面にシフトしているなら,むしろそうした政治家を利用して,その施策を実現させていくのです。逆に,バックに政治家がいない施策は,どうしても財務省等企画財政サイドで削られやすくなるため,施策推進が困難になるのです。
こうした事情から,政治家が重点的に行っている施策に官僚は追従する(またはその逆に官僚に政治家が追従する)ことになるのです。
誤解のないように言いますが,決して高齢者福祉施策にシフトすることがけしからんという意味ではありません。これは重要施策であることは当然なので,いろいろな検討を加えて推進していくことは非常に大切です。ただ,その判断基準が,「票が取れる」という選挙経営学だけであるという点が,民意を反映していないといわれる元凶になりうるのです。
選挙経営学の議員が皆無になるか,または20代30代の投票率が50代以上の人以上の投票率にならない限り,日本中の待機児童問題等子供に関する諸問題が完全に解決するということはないでしょう。
今日のまとめ
選挙経営学重視の政治家は,選挙に行く人しか主眼に置かないため,投票率の低い20代30代の意向というものが政治に反映されにくい。のみならず,若年層を犠牲にする施策が進む理由も,票にならない人に対してであれば痛くも痒くもないため,何でもあり,っていうことになるからである。選挙に行かない若年層については,他の世代並みに選挙に行く状況にならない限り,自分の意向が政治に反映されることはなく,いくら声だけあげても改善は進まないのである。
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