「くわぁぁぁぁ」
大きな欠伸をしてハンドルを握る男がいた。軽トラックを運転してるその男は夜の暗い道を車のライトで照らして慎重に進んでた。なぜにこんな時間にその男が車を運転してるのかというと、ただ単に昼が熱すぎるからだ。昼が熱いから、夜に農作業をやってるのだ。
日が沈んでから畑にいって、日が回ったくらいでまた別の畑に移動しようとしてた。なのでとても狭い道をガタゴトと進んでる。スマホからお気に入りの音楽を流しつつ、慎重に運転してたその男はいきなり吹いてきた強風に思わず車の進行を止めた。
まるで軽トラックが吹き飛ばされるかもと思うような風にその男はビビったのだ。実際大きく軽トラックの前部分が浮いた気がした。
人も乗ってる部分が真っ先に浮くなんておかしいが、実際そうだったのだ。それにそれからも窓をガタガタと揺らす……いや窓なんて狭い範囲ではなく容赦なく軽トラック全体を揺らすような強い風が吹いてた。
「な、なんだぁ?」
さらに聞こえてくるのはズドドドドドドド――なる物騒な音だ。まさか地すべりでも起きたのか男は思った。だが雨も降り続いてない、寧ろ最近は快晴が続いてたような日々だ。それなのに地すべりなんて起きやしないだろう。
なら地震だろうか? ハンドルを抱きしめるようにしてた男は何が起きてるのか確かめるためにわずかに頭を上げる。するとそれをみた。
森の木々が吹き飛んでいく光景。そして何やらデカい……サルの様だが、サルよりも何倍もデカい生き物が森から飛び出してくる。
大きく口を開けて呆ける男。サルたちも別に男に気づいてなんて……でも次の瞬間グルんとそのまま通り過ぎようとしてた化け物の顔が男の方を向く。
サルのような顔だが真っ赤で凶悪だった。深く刻まれた皺は、まるで人への憎しみをもってるような……それを感じる男。でも……次の瞬間、男の軽トラックとサルたちの間にズガアアアン!! と大きな音とともに何かが走った。するとサルたちはあわてるように去っていく。
「いったい……何が……」
恐る恐る外に出てみる男。風もいつの間にか収まってる。けどそこで男はみた。道路に深く刻まれて、いや、道路だけじゃなく、まるで山を穿つかのように刻まれたその傷跡を。彼はその後、興奮してその事をネットに書き込んだという。
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