すぐには答えの出ない因果関係もある

2012-06-25 07:37:32 | 自然と環境のこと


昨日はこの写真で予想外に多くの反応がありました。これは櫛型山でみた伐採の跡です。朝まだ10時まわっていないのに、山仕事の人がたくさん軽トラに乗せられて下山中で林道ですれ違った車は20台以上ありました。

この森は、どこかの会社の所有林で45年生で伐採となったそうです。

このように山をまる裸にすることを皆伐というのですが、かいばつはいいのか悪いのかよく分かりません

パッと見悪そうだけど…ダメという学者もいるし、森林ギャップが出来て草原性の動植物には生存チャンスができるともいうし・・・。(今は草原性の昆虫や植物は絶滅危惧種が多いのだそうです)

とりあえずこのような伐採跡をみたら写真をとってしまいます。

すると参加しているフェイスブックのグループで宮崎カメラマンからコメントが。「(とりあえず写真をとることで)いいんじゃあ、ないですか。とにかく、撮影しておいて、10年後、20年後、40年後…に「検証」していくことが、大切なこと、なのです。」と。

この方は何十年も同じ山を見つめられて写真集を出している方なのです。つまり実践者。実践者が言う「いい」は重みがあります。 山、ビフォー・アフター、因果関係は未知数

いいのか、悪いのか分からない。分からないということ。 つまり答えが出るまでにものすごく時間がかかると言うことです。それこそ何十年も。

「世の中には時間をかけないと分からない答えがある」

■ ペンディング中の課題の問題

そうした場合に考えられる問題点は…

① 責任の所在
一般にビジネスという学問は、正解がないビジネス大海原の中での航海術です。そういう世界では、分からないということは棚上げではなく、とりあえずその時点で最善と思われる解を出します。もし間違っていたら後で挽回する羽目になる。そのリスクを取るのが経営者ということになっています。

山の場合、もし間違っていた場合、結果の落とし前をつけるのは誰なんだろう?

② 首尾一貫性のなさ Inconsistency
  
周辺の人たちに聞くと、鹿さんにとってはこうした開けた場所は格好の餌場になり、後ろの暗い森は格好の逃げ場と住まいを提供してくれるらしいです。 つまり鹿にとっては有利に働きます。
一方では、鹿柵を設置し、鹿は今害獣扱いです。捕獲に税金投入中。

つまり、害獣を増やしながら捕獲。一貫性がなく、非常に非効率的なことをしているように思えるのですが…。ビジネス戦略でもっとも重要なことは整合性とされています。ビジネスで首尾一貫性が無い=売り上げが減るということ、であり、その責任は経営者にあります。

山の場合、この整合性のなさの結果責任は誰が取るのだろう? 税金の出所は少なくとも国民です。


■ 本質的に貴重なものを捨てた

でも、実は解を 昔の人は知っていたんじゃないだろうか???  

お料理の世界でも同じことを感じましたが、今という時代は、本質的にものすごく価値があった生活知識を、戦後の高度経済成長による経済的繁栄礼賛の考え方に染まる途中で、「こんな古臭い考え方イラナイ!」と価値を省みず、ポイっと捨てて、そしてその結果、問題が山積みになり…にっちもさっちも行かなくなって、第一瞬目、みたいな時点に立っているのではないでしょうか?

何十年もかけないとどうすべきか分からないような問題の因果関係に関する知識をまるでゴミのようにポイッと捨てちゃった?

それは料理の世界に例えると、”かつおぶし削り器を捨てて味の素にした”みたいなことです。

捨てちゃったので、かつおが塊で売っているということも知らず、かつおぶし器で削ると言うことも知らず、さらにはかつおぶし器の存在すら知らず、というようなことに陥ってしまった。

さらに私が疑問なのは、自分の祖母を含め、昔の人って一体誰?って感じだということです。

誰にその知識を請えばいいのか? 私の祖母は86で去年亡くなりましたが、完全に味の素派の人でした。母もそうです。例えば味噌や梅干やパン種の作り方なんてたぶん私のほうが詳しいくらいです。私が一般品よりも高いお金を捻出して、熱処理されていない麹菌が生きている味噌を求めたり、手作りしたりする一方、祖母も母もそういうものを手作りしないで住む生活を夢見ていたのではないでしょうか…。

ということは、長い期間に渡って観察をしなければ知りえないような物事の因果関係を知っていたような世代は少なくとも86歳よりは上の世代ということなのでしょうか?戦前の人?

先人が何十年どころか何百年もかけた観察で得た知見を次の世代に伝承してきた…その知見を絶やしてしまった、というのは一体金銭に換算するといくらになるでしょう???

少なくとも鹿対策に掛かる費用はそこに入る気がします。あるいは私は赤ちゃんの頃からアトピーなのですがこれまでアトピー治療にかかった費用は確実に入っている気がします(笑)

この大きな失敗の落とし前をつけるのは…一体誰なのでしょうか??? 

今を生きている人は観察者第一号ですから、数世代先までは手探り状態が続くのでしょう。数世代先って何十年?

■ ヒトの進化 退化?

先日は図書館で土木工事という専門雑誌を拾ってきました。クリエイティビティを高める技の一つに
まったく自分が興味が無い門外漢の雑誌を読む、という結構有名な方法論があります。それで。

でその本は2005年の特集記事で『津波対策』特集。なんと、05年で既に東北の沿岸地域の住民が津波に対して無警戒状態に陥っており、逃げない、という問題が学術的に大きく指摘されていました。防波堤の上に乗って波を見ている、なんて本末転倒なことが普通に行われていたのだそうです。識者達は警鈴を鳴らすも聞かれなかった、ってわけですね。ま、この本は専門誌なので多くの人の目に触れるとは思えませんが。

人とはこのように学ばないもの、ということなのか?

危機や危険を察知する能力、というのは生存には大変重要な能力です。そうした能力が退化していったといすると、ヒトという種のダーウィニズム的進化は、この100年は進化ではなく、退化の時代だったのではないか…そんなことを思わずにはいられない原因と結果の因果関係です。

人の成長には色々な側面があると思いますが、豊かさということを多面的に捉えず金という物差しで一面的にしか捕らえなかったということも、人としての種の保存能力という面から見れば、進化ではなく退化ではないのだろうか…? 

何しろ日本人は世界で一番個人の金融資産が大きい国民なのです。カネを持っていても豊かではない、という事実は証明済みの事実。

ということは、今後予想される経済的没落のプロセスにおいて日経ビジネスとかで皆が大いに心配しているカネの問題は、大局的にはあまり重要ではないのではないか?と思ったりします。








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