窓から見える夕焼けがぼんやりと滲んだ。
海辺の小さな町に少女リイカは住んでいた。
岸壁の上の灯台下にある白い土壁の小さな家。
そこが彼女の家だった。
暗闇鳩の時計が月凪時を告げると、彼女はカップに入っていた冷めた甘雪糖を飲みほした。
扉を開けて灯台の外壁にそった階段を上がる。
てっぺんにある魔法あかりに火をともすのが毎日の日課だ。
精霊式原動機のハンドルを力いっぱい回すと、三段レンズ付き真空ガラスの中を青い光が走る。
ぼぅ…。
灯台にあかりがともる…。
この高さから見ると、はるか遠くにシトイダの町が見える。
この町から遠く、遠く離れたその町は、どの星よりも遠い別世界だ。
水平線に浮かぶ青い太陽は、もう沈みかけている。
今夜は快晴。うっすらと三つの月が空に浮かんでいる。
ふと下を見ると、灯台に続く道を大きなリュックを背負ったコートの男が歩いてくる。
階段を駆け降り、部屋に彼を迎え入れた。
コートを脱がし壁の取っ手にそれをかける。
彼はこの世界の外れにある灯台に、星より遠い町の香りをいつも届けてくれる。
輝月花の香りがほのかに漂う少年の名前はバイダオ。
リイカより五つは上の歳だ。
少年は、南方式月光キセルに火をつける。
長い夜の始まり…。
少年はみた事もない遠い世界の話をしてくれる。
初めて聞くはずなのに懐かしいその話。
そして朝、疲れて寝てしまった少女を置いて少年は出発する。
一瞬、少女の寝顔を見る彼の眼が悲しげに見えたのは気のせいか…。
彼女が目を醒ましたのは昼過ぎだった。
空渡鳥の卵焼きと、干した豚牛の肉で朝昼兼用の食事をすませると、窓の外に青い光が満ちてくる。
カップに温かい甘雪糖を注ぎ、一口…。
何回も何回も、繰り返す時間のループ。
ここは世界の果て、閉じた世界。
遠い町も、人々で賑わう市場もすべては夢の世界。
窓から見える夕焼けがぼんやりと滲んだ。
海辺の小さな町に少女リイカは住んでいた。
岸壁の上の灯台下にある白い土壁の小さな家。
そこが彼女の家だった。
暗闇鳩の時計が月凪時を告げると、彼女はカップに入っていた冷めた甘雪糖を飲みほした。
扉を開けて灯台の外壁にそった階段を上がる。
てっぺんにある魔法あかりに火をともすのが毎日の日課だ。
精霊式原動機のハンドルを力いっぱい回すと、三段レンズ付き真空ガラスの中を青い光が走る。
ぼぅ…。
灯台にあかりがともる…。
この高さから見ると、はるか遠くにシトイダの町が見える。
この町から遠く、遠く離れたその町は、どの星よりも遠い別世界だ。
水平線に浮かぶ青い太陽は、もう沈みかけている。
今夜は快晴。うっすらと三つの月が空に浮かんでいる。
ふと下を見ると、灯台に続く道を大きなリュックを背負ったコートの男が歩いてくる。
階段を駆け降り、部屋に彼を迎え入れた。
コートを脱がし壁の取っ手にそれをかける。
彼はこの世界の外れにある灯台に、星より遠い町の香りをいつも届けてくれる。
輝月花の香りがほのかに漂う少年の名前はバイダオ。
リイカより五つは上の歳だ。
少年は、南方式月光キセルに火をつける。
長い夜の始まり…。
少年はみた事もない遠い世界の話をしてくれる。
初めて聞くはずなのに懐かしいその話。
そして朝、疲れて寝てしまった少女を置いて少年は出発する。
一瞬、少女の寝顔を見る彼の眼が悲しげに見えたのは気のせいか…。
彼女が目を醒ましたのは昼過ぎだった。
空渡鳥の卵焼きと、干した豚牛の肉で朝昼兼用の食事をすませると、窓の外に青い光が満ちてくる。
カップに温かい甘雪糖を注ぎ、一口…。
何回も何回も、繰り返す時間のループ。
ここは世界の果て、閉じた世界。
遠い町も、人々で賑わう市場もすべては夢の世界。
窓から見える夕焼けがぼんやりと滲んだ。