copyright (c)ち ふ
絵じゃないかおじさんぐるーぷ
平成はじめのころです
4人は、川原の向う岸にいた。岸から、10mぐらい離れた木の周りを囲んでいる。岸には携帯用コンロにかけられた鍋が白い蒸気を吹き上げていた。川幅は1~2m、浅瀬である。大男が3人と中ぐらいの男が1人、2人1組になって交互に杉の木の黒く膨らんだ所を叩いている。私は、プルアルとプルスチをそっと取り出した。
{頼んだゾ!}
渾身の力を込めて、彼らを杉の木に向かって投げつけるや否や、
「こらーっ! お前ら何をしているんだー。人呼んでくるからなー」と、叫ぶやいなや、一目散で逃げ去った。足がもつれてうまく走れない。サヤカに飛び乗り急発進する。ハンドルが宙に浮いた。心臓が早鐘を打っている。もう逃げるのみ。彼らの仕返しが恐いので後を振り返りながら走ったが、車は追いかけては来なかった。きっと反対方向に去ったのだろう。
{オッさん、うまくいったようよ}
{そうかい、よかった}
{彼、お礼言ってるわよ}
{気をつけろよ、と伝えておいて}
私が逃げた後の様子をサヤカに聞いてもらった。
4人組はとにかくびっくりしたらしい。まさか人が来るなど思ってもいなかったようだ鍋を川原の中に蹴飛ばし湯を捨て、コンロやシートを抱えて、彼を放ったらかしにして、飛ぶように逃げ去ったという。その後、プルスチとプルアルに、縛りつけていたロープを切り取ってもらった。頭や背中が痛むし、腹も内出血をおこしているが、生命に別状はなさそうだと言う。
よかった!
彼に会って、見舞いの言葉の一言もかけて帰りたかったが、どこでどう4人組に出会うかもしれないので、そのまま帰ることにした。彼に、アカメオサンの名前を進呈した。
165号へ出てからも、後から黒いワゴン車が来ると気が気でなかった。別に悪いことはしてないのだが食い物の恨みは恐ろしい。どんなイチャモンつけて、襲いかかられるか分かったものではないからだ。
それにしても、いくら食物に食い飽きたからといって、ゲテ物ばかり追い求める姿勢には承服しかねるのだが・・・
食すべき食物あふれ あふれ来て
有りはがたきが そはそに過ぎぬ
ち ふ
おわり