絵じゃないかおじさん

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あ@仮想はてな物語(逸話) 道成寺と白いヘルメット(1/3)

2019-02-04 09:56:31 | 仮想はてな物語 

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 * 道成寺と白いヘルメット(027)


 私は、元来白いヘルメットを被っていた。
 純白な感じがして、年と共にくっついてくる柵の汚さから、
 気持だけでも逃れたい。
 白のヘルメットを選んだのは、そんな心の現われからだった。

 道成寺は、42号を白浜方面に向かって走ると、
 御坊市のすぐ手前にある。
 初秋の夕方であった。
 ドライブ用のガイドブックに、
 江戸時代から続く径山寺味噌の老舗が載っていたので、
 ツーリングも兼ねて買いにきたのだ。
 Oさんの好物でもある。


 その帰りに道成寺に寄ってみた。
 改築中なのか境内は工事現場と化していた。
 風情も何もあったものではない。
 夕方近くなので参拝の人も居ない。


 私は、3重の塔の前に、
 何気なく白いヘルメットやバッグを置いて、
 寺のなかを歩いてみた。
 予備知識に乏しいので身体で感じるのみである。

 一通り見終わって、白ヘルメの傍で一休みしようと思って、
 メットの方に近づいた。

 何と!!


つづく




あ@仮想はてな物語  道成寺と白いヘルメット(2/3)


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 白ヘルメを軸にして蛇がとぐろを巻いているではないか。
 鎌首を擡げて眼を血走らせ、私を睨みつけている。
 大きさはそれほどでもなかったが、私はその場に立ち竦んだ。
 これは、もしや清姫蛇の子孫ではないのかと思った。


 安珍を釣鐘のなかで黒焦げに焼き尽くした
 清姫の話は私でも知っている。
 その子孫が延々と情炎を燃やし続けながら、
 今に生き続けているのではないか。
 このだらけ切った現代の男女間の軽い風潮を嘲り、
 憤りを感じながら、
 その存在の重さを訴え続けているのではないか。
 私には、蛇がそう主張しているように思えた。

 サヤカは、62段もあるという石段の下に置いてあるので、
 蛇と話をする手段はない。

 [蛇よ、オレはお前と同類だ。
  オレがOさんを想う気持とお前が安珍を想う気持と、
  どちらが強いか勝負だ。]

 私は、蛇の睨みに負けないように、Oさんのことを想い続けながら
 睨み返す。
 負けるものかと、Oさんへの一途な気持を蘇らせる。


 もう私たちは、年を取り過ぎて、姿・形は社会の種々雑多な垢に
 塗れてしまった。
 しかしながら、心の片隅からは初心の知り合った頃の、
 あの清い心が消え切ってはいない。
 いや、年を取れば取るほど、
 ダイヤモンドのように光り輝いてくるのだ。




つづく




あ@仮想はてな物語  道成寺と白いヘルメット(3/3)



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 心のその部分に神経を集中させる。
 そのことだけを念じこむ。

 数10分も、そういう状態が続いただろうか?


 蛇のヤツがスルスルと、とぐろを解いたのだ。
 眼の光は穏やかである。
 少なくとも私への敵意は消えていた。


 立ち去る時、蛇のヤツ何を思ったのか、何とVの字形になって、
 私にVサインを送ってきたのだ。
 ヤツが消えてメットを見てみると、
 白ヘルメットが黒ヘルメットに変わっていた。


 ヘルメを焦がしていったのだ。
 所々、斑になっていた。


 その時から、私のメットは、黒いヘルメットに変わったのである。


 清姫よ、お前の気持はよくわかった。


 白ヘルメ 黒く焼き焦がす 情念の
  熱き炎よ この地球(たま)を包みこめ!! 
                               ち ふ


                   
  この項おわり




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