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12月B定期(下野竜也 指揮)

2007年12月12日 | N響公演の感想(~2016)
12月12日(水)下野竜也 指揮 NHK交響楽団
《12月Bプロ》 サントリーホール

【曲目】
1.フンパーディンク/歌劇「ヘンゼルとグレーテル」前奏曲
2. プフィッツナー/ヴァイオリン協奏曲 ロ短調 作品34
 【アンコール】
バッハ/無伴奏ヴァイオリンパルティータ第1番~プレリュード
Vn:ライナー・キュッヒル
3. R. シュトラウス/交響詩「死と変容」作品24
4. フンパーディンク/歌劇「ヘンゼルとグレーテル」から「夕べの祈り」「夢のパントマイム」

下野竜也の名前は最近よく見かけるが、実演に接するのは恐らく初めて。冒頭の「ヘンゼルとグレーテル」の柔らかなホルンのハーモニーに続いて弦が入ってくるところの立体感がとても新鮮で能動的だと感じた。全体にあたたかくふくよかなハーモニーで充実した音響がとても印象的。

そんな好印象は「死と変容」で更に確かなものに。下野は音のバランスと響きに対してとても敏感で、オケが最も美しく響き良く鳴るポイントを的確に押さえているように感じる。そして息の長い歌、川が上流のせせらぎから大河となり海へ流れ込むまで続いているのを見るような一貫した大きな流れ、クライマックスへ向かうときのエネルギーの充溢の目の覚めるような鮮やかさ。

シュトラウスの一連の自画像的な作品(他に「英雄の生涯」とか「家庭交響曲」)は、シュトラウスの「虚栄」みたいなものへの反発が邪魔して、個人的に純粋に音楽を楽しめない部分があるのだが、そして今夜もそんなことを考えながら聴いていたのだが、終盤の輝かしい盛り上がりではそんなことも忘れて聴き入ってしまった。熱い血流が脈々と通った若々しい肉体が、しなやかで美しい動きを見せるような演奏。均整のとれた外観と熱くたぎる内面とのバランスの素晴らしさ。

今の季節にふさわしい「ヘンゼルとグレーテル」を最初と最後に置いたプログラミングも含め、見事な下野竜也のN響デビューとなった。もちろんそんな下野のデビューを完璧な演奏で応援したN響の功績も忘れてはいけない。今夜のコンマスはゲストということでヤーノシュ・セルメチが担当した。経歴がわからないが、たまにこうしてゲストを迎えるのはオケにとっても良い刺激になっているように感じた。

プフィッツナーのヴァイオリン協奏曲は以前FMで流れているのをたまたま聴いて、すごくいい曲だと感じてCDまで買ったのだが、その後は殆ど聴いていなかった。今夜久々に、そして初めて生で聴いた印象はあのFMを聴いた時のような感動はなかったが、キュッヒルの端整で職人気質(コンマスがソリストをやるとこういう印象が多いのだが…)な美しいヴァイオリンには好感を持った。更に、アンコールでやったバッハは晩秋の響きと情景がひしひしと伝わってくるような沁みる演奏だった。

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3 コメント

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ゲスト・コンマスのヤノーシュ・セルメチさん (一静庵)
2007-12-13 23:16:01
昨年、まろさんがブタペストで御一緒に室内楽をなさった方のようですね。ブタベスト・フェスティバルオーケストラのコンサートマスターとあります。昨日は、まろさんも客席で聴いておられたようです。
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ブタペストでの (一静庵)
2007-12-13 23:19:03
室内楽は今年の3月だったようです。失礼致しました。
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Re: ブタペストでの (pockn)
2007-12-16 00:45:36
この日のN響の弦は音が違って聞こえました。N響の弦はもちろんいつもいいのですが、いつもとはまた一味違った魅力を感じました。コンマスの実力というのは一度や二度の客演では発揮できないにしても、煌めきのある人だといい刺激になるというのはあると思いました。
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