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庭園想楽第二回演奏会

2021年10月08日 |  pocknのコンサート感想録2021
10月6日(水)庭園想楽第二回演奏会
~メンデルスゾーン特集~
日本福音ルーテル東京教会
【曲目】
1.ベートーヴェン/弦楽四重奏曲第15番イ短調 Op.132~第4、5楽章
2.メンデルスゾーン/「問い」Op.9-1(弦楽四重奏版)
3.メンデルスゾーン/弦楽四重奏曲第2番イ短調 Op.13
♪ ♪ ♪
4.ファニー・メンデルスゾーン/星谷丈生編曲/「山の喜び」Op.10-5
5.ファニー・メンデルスゾーン/星谷丈生編曲/「喪失」
6.ファニー・メンデルスゾーン/星谷丈生編曲/「南へ」Op.10-1
7.メンデルスゾーン/弦楽四重奏曲第6番ホ短調 Op.80

【演奏】
Vn:尾池亜美、石上真由子/Vla:多井千洋/Vc:伊東 裕/S: 首藤玲奈


演奏会とレクチャーを行いながら音楽を日々研究しているという「庭園想楽」の主催によるメンデルスゾーンを特集した演奏会。メンデルスゾーンが影響を受けたベートーヴェンと、姉のファニーの作品も聴きながらメンデルスゾーン像に迫るというコンセプトと演奏者の顔ぶれに引かれて出かけた。客席は6人掛けの長椅子の両端にだけ座らせるという、コロナ後に再開された直後の演奏会並みの感染対策。ちょっとやり過ぎ?

ミニレクチャーに続いて、若きメンデルスゾーンに大きな影響を与えたというベートーヴェンのカルテットの一部が演奏された。ファーストヴァイオリンはこの曲だけ石上が受け持ち、ダイナミックで能動的な演奏を聴かせた。押しが強い場面では4人のベクトルが一致してパワーを発揮する一方で、思索的な場面ではどこを目指しているのか、何を表現しようとしているかがわからないこともあった。ただ、メンデルスゾーンとの比較のために一部を紹介した演奏としては上出来。

次にメンデルスゾーンの歌曲から「問い」が演奏され、2番のカルテットにつなげた。歌が醸し出した空気を引き継ぎ、穏やかな中にメランコリーや憧れを表現。4人は互いのパートを聴き合い、歌を共有して潤いのあるアンサンブルを聴かせた。カルテット全体が一体となって語りかけ、若々しい熱気もたぎらせ、愛の歌を奏でた。第4楽章はレクチャーでの話の通り、確かにベートーヴェンと曲想もパッションもよく似ているが、この曲の根底には常に「問い」で歌われる憧れがあるところが大きく異なる。

後半ではまずファニーの歌曲が3曲。どれも雄弁でハートがありロマンチック。「失ったもの」は、シューマンの「詩人の恋」の「もしも花たちが・・・」の歌詞だったのにちょっとビックリ。ハイネの詩を、ファニーはメランコリックで叙情味溢れる歌に仕上げた。詩を素直に詠んだロマンチックなアプローチだが、これを聴くとなおさらシューマンの歌が伝える一人の若者の苦悩と焦燥感が特別な魅力を放つ。首藤の歌は瑞々しく潤いのある声と、明快で伸びやかな表現が魅力だが、一つ一つの言葉が感情を伴ったメッセージとして伝わって来なかった。長い残響のために言葉が明瞭に聞き取れなかったせいかも知れない。

最後はメンデルスゾーン最晩年のカルテット。これがとびきりの名演となった。緊迫感、熱量、バワーはハンパなく、アンサンブルとしての構築力も抜群。尾池の物怖じしない、溢れるスピード感で強力なイニシアチブを発揮するヴァイオリンがアンサンブルに火を付け、焦げ臭いほど。死の淵に立ったメンデルスゾーンの最期のメッセージがリアルに伝わってきた。緊張の糸は一瞬たりとも緩むことなく聴き手を音楽の深淵に引きずり込んだ。パワーと抒情豊かな歌の対比も見事で、これぞメンデルスゾーンの真骨頂。去年のスゴすぎた「フィレンツェの思い出」を追体験するようだった。今夜の演奏には、あのときのメンバーが3人入っている。常設カルテットではないが、同じ志を持って集まり、価値観を共有する名手達が繰り広げる演奏は聴き応えあり過ぎ。このメンバーでこれからもやって欲しい。

会場となった教会は雰囲気も響きも良いが、同じ建物内のバンドの音?がズンズン響くのが気になった。防音ではないので仕方ないが、僕の真後ろで配信用?のパソコンのファンが演奏中に急に回り始めてとても気になった。こうしたことは是非ご配慮願いたい。

今こそ音楽を!弦楽六重奏の喜び(Vn:尾池亜美ほか)~2020.6.23 ハクジュホール~

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