5月22日(金)クラウディオ・アバド指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
ベルリン・フィルハーモニー
【曲目】
1.シューベルト/劇音楽「キプロスの女王ロザムンデ」から
バレエ音楽第1番~亡霊の合唱~間奏曲第3番~羊飼いの合唱~ロマンス「満月は輝き」~バレエ音楽第2番~狩人の合唱
2.マーラー/歌曲集「子供の不思議な角笛」から
「高き知性への賛歌」/「トランペットが美しく鳴り響くところ」/「ラインの伝説」
MS:アンゲリカ・キルヒシュラーガー(1,2)/合唱:ベルリン放送合唱団(1)
3.ドビュッシー/交響詩「海」
去年の7月、アバドのホームページ con graziaのオーナーであるYUKOさんからこのアバドの演奏会の情報をうかがい、今回の永年勤続記念の旅はこの公演に合わせて全体を計画した。そのアバドの公演の当日を迎えた。チケットは発売日(3/29)に売り出し30分以内で完売、 開演1時間以上も前からホール入口付近には「Suche Karte(チケット求む)」の紙を持った人たちがたくさん立っていた。会場はもちろん超満員。
アバドが割れんばかりの拍手に迎えられてとても元気そうにステージに登場、そして長々と感想を書くことが憚られるほど次元を超えた夢の時間が始まった。
アバドは益々神様の領域に入ってしまったかのようだ。音楽の魂を伝えるのに余計な力や仕草や呼吸は全く不要。でもそれでどうやって音楽の魂を伝えられるのか?それはアバドだけに神様から授けられた御業ではないか… そんな風に感じる演奏。
指揮棒を持たずにオーケストラに「啓示」を伝えるアバドの両手は神様の手を見ているよう。その手とベルリン・フィルの間から産み出される音楽は、天上から優しく降りてくる。
アバドの「ロザムンデ」は録音でも親しんでいて、その録音から感じる新鮮な命が生まれ来るような喜びを追体験するだけではなく、録音では伝えきれない、或いはその録音当時よりも更に高みへ上がってしまったアバドからのこの上なくデリケートで極上の優しさに満ち溢れたメッセージに触れていると、たまらなく熱いもので胸が満たされる。
明るい陽光が降り注ぐ山上の花園に色とりどりの花々が健気に生き生きと咲き誇り、そこを流れる冷たく澄み切った水の流れが陽光をキラキラと反射する。そんな眩しく優しく命に溢れた世にも美しい場所で疲れた体と心が芯から癒される感覚… 何と瑞々しく透明なオーケストラの響き、何と優しく豊かな合唱のハーモニー、そしてその響きに共鳴しつつ浮かび上がるキルヒシュラーガーの歌声。まさしく桃源郷。
続くマーラーは合唱団がそのまま着席したまま続けて演奏され、シューベルトの世界を引き継いでいるかのように自然の息吹に溢れた天上の音楽!でも「ロザムンデ」では気にならなかったキルヒシュラーガーの歌声を、やっぱりこういう音楽では背中からではなく前から聴きたかった(このステージ左横のEブロックの席からだとステージ前方に立つ歌手は背中しか見えない…)。
後半は「海」一曲のみ。アバドが指先をちょっと動かしただけでオケはそれに敏感に、海綿に水がサーッと染み込むように反応し、アバドならではの命の鼓動に溢れた演奏が生まれる。うねる波の表面にできる細かな筋の表情まで見えるほどに描写は鮮やかだが、全ては「自然」に運ぶ。第3曲終盤でアバドがファンファーレを投入したのは意外だったが(アバドは「入れる派」だったのですね)、アバドが入れたファンファーレはインテンシヴな効果ではなく、重く垂れ込める暗雲の隙間からかすかに漏れてくる光の筋のような効果を与え、これがまた神の啓示のように感じ、更に最後の場面での眩いばかりの閃光をより鮮やかに輝かせた。
それにしても… あっけない。終わってしまった… という感じ。もっともっとこのアバドの世界に浸っていたかった。後から知ったのだが、「ロザムンデ」は序曲をはじめ、当初もっとたくさん演奏する予定だったというし… 会場は怒涛のような盛り上がり。オケが上がったあとも呼び出されるアバドに拍手を送っている自分が今どこにいるのかわからないくらい別の世界にいる状態… 旅行中は旅行者気分で演奏会やオペラのカーテンコールで写真を撮っていたが、アバドにはカメラを向けられないでいたが、オケが引き上げる直前に登場したときにワンショット。会場の盛り上がりを想像して頂けるでしょうか。
そしてこのあと夢のような出来事が… このアバドの公演のためにずっと家に飾ってあったアバドの写真パネルをダメ元ではるばるベルリンまで持ってきたのだが、1時間近く出待ちしてそのパネルにアバドにL’ho portato di Giappne!(これ日本から持ってきたんです!)と言って差し出すと、少し間をおいてからそこにサラサラとサインしてくれたのだ!!! Che una gioia!!! 疲れきったマエストロにサインをねだるなんてルール違反だったかもしれないけれど、どうか許してください。これは一生の、いや末代までの家宝。
アバドが出てくる場所を教えてくれた一緒に出待ちをしていた日本人のお二人とそのあとソニーセンター内のレストランで祝杯を上げた。ようやく現実の世界に戻っておいしいお酒とシュニッツェルとおしゃべりを楽しむことができた。
サイン入りパネルを早速ホテルの自室に飾った
アバド指揮ベルリン・フィル チケット入手物語
アバド指揮ルツェルン祝祭管弦楽団(06.10.13)
アバド指揮ルツェルン祝祭管弦楽団(06.10.19)
ベルリン・フィルハーモニー
【曲目】
1.シューベルト/劇音楽「キプロスの女王ロザムンデ」から
バレエ音楽第1番~亡霊の合唱~間奏曲第3番~羊飼いの合唱~ロマンス「満月は輝き」~バレエ音楽第2番~狩人の合唱
2.マーラー/歌曲集「子供の不思議な角笛」から
「高き知性への賛歌」/「トランペットが美しく鳴り響くところ」/「ラインの伝説」
MS:アンゲリカ・キルヒシュラーガー(1,2)/合唱:ベルリン放送合唱団(1)
3.ドビュッシー/交響詩「海」
去年の7月、アバドのホームページ con graziaのオーナーであるYUKOさんからこのアバドの演奏会の情報をうかがい、今回の永年勤続記念の旅はこの公演に合わせて全体を計画した。そのアバドの公演の当日を迎えた。チケットは発売日(3/29)に売り出し30分以内で完売、 開演1時間以上も前からホール入口付近には「Suche Karte(チケット求む)」の紙を持った人たちがたくさん立っていた。会場はもちろん超満員。
アバドが割れんばかりの拍手に迎えられてとても元気そうにステージに登場、そして長々と感想を書くことが憚られるほど次元を超えた夢の時間が始まった。
アバドは益々神様の領域に入ってしまったかのようだ。音楽の魂を伝えるのに余計な力や仕草や呼吸は全く不要。でもそれでどうやって音楽の魂を伝えられるのか?それはアバドだけに神様から授けられた御業ではないか… そんな風に感じる演奏。
指揮棒を持たずにオーケストラに「啓示」を伝えるアバドの両手は神様の手を見ているよう。その手とベルリン・フィルの間から産み出される音楽は、天上から優しく降りてくる。
アバドの「ロザムンデ」は録音でも親しんでいて、その録音から感じる新鮮な命が生まれ来るような喜びを追体験するだけではなく、録音では伝えきれない、或いはその録音当時よりも更に高みへ上がってしまったアバドからのこの上なくデリケートで極上の優しさに満ち溢れたメッセージに触れていると、たまらなく熱いもので胸が満たされる。
明るい陽光が降り注ぐ山上の花園に色とりどりの花々が健気に生き生きと咲き誇り、そこを流れる冷たく澄み切った水の流れが陽光をキラキラと反射する。そんな眩しく優しく命に溢れた世にも美しい場所で疲れた体と心が芯から癒される感覚… 何と瑞々しく透明なオーケストラの響き、何と優しく豊かな合唱のハーモニー、そしてその響きに共鳴しつつ浮かび上がるキルヒシュラーガーの歌声。まさしく桃源郷。
続くマーラーは合唱団がそのまま着席したまま続けて演奏され、シューベルトの世界を引き継いでいるかのように自然の息吹に溢れた天上の音楽!でも「ロザムンデ」では気にならなかったキルヒシュラーガーの歌声を、やっぱりこういう音楽では背中からではなく前から聴きたかった(このステージ左横のEブロックの席からだとステージ前方に立つ歌手は背中しか見えない…)。
後半は「海」一曲のみ。アバドが指先をちょっと動かしただけでオケはそれに敏感に、海綿に水がサーッと染み込むように反応し、アバドならではの命の鼓動に溢れた演奏が生まれる。うねる波の表面にできる細かな筋の表情まで見えるほどに描写は鮮やかだが、全ては「自然」に運ぶ。第3曲終盤でアバドがファンファーレを投入したのは意外だったが(アバドは「入れる派」だったのですね)、アバドが入れたファンファーレはインテンシヴな効果ではなく、重く垂れ込める暗雲の隙間からかすかに漏れてくる光の筋のような効果を与え、これがまた神の啓示のように感じ、更に最後の場面での眩いばかりの閃光をより鮮やかに輝かせた。
それにしても… あっけない。終わってしまった… という感じ。もっともっとこのアバドの世界に浸っていたかった。後から知ったのだが、「ロザムンデ」は序曲をはじめ、当初もっとたくさん演奏する予定だったというし… 会場は怒涛のような盛り上がり。オケが上がったあとも呼び出されるアバドに拍手を送っている自分が今どこにいるのかわからないくらい別の世界にいる状態… 旅行中は旅行者気分で演奏会やオペラのカーテンコールで写真を撮っていたが、アバドにはカメラを向けられないでいたが、オケが引き上げる直前に登場したときにワンショット。会場の盛り上がりを想像して頂けるでしょうか。
そしてこのあと夢のような出来事が… このアバドの公演のためにずっと家に飾ってあったアバドの写真パネルをダメ元ではるばるベルリンまで持ってきたのだが、1時間近く出待ちしてそのパネルにアバドにL’ho portato di Giappne!(これ日本から持ってきたんです!)と言って差し出すと、少し間をおいてからそこにサラサラとサインしてくれたのだ!!! Che una gioia!!! 疲れきったマエストロにサインをねだるなんてルール違反だったかもしれないけれど、どうか許してください。これは一生の、いや末代までの家宝。
アバドが出てくる場所を教えてくれた一緒に出待ちをしていた日本人のお二人とそのあとソニーセンター内のレストランで祝杯を上げた。ようやく現実の世界に戻っておいしいお酒とシュニッツェルとおしゃべりを楽しむことができた。
サイン入りパネルを早速ホテルの自室に飾った
アバド指揮ベルリン・フィル チケット入手物語
アバド指揮ルツェルン祝祭管弦楽団(06.10.13)
アバド指揮ルツェルン祝祭管弦楽団(06.10.19)
ついにクライマックス、マエストロの登場ですね。
指揮棒を持たなくなったんですね。
短めのプログラムながら、中身の濃さはアバドならではですね。会場の素晴らしい盛り上がりが思い浮かびます。
それでも、その場に居合わしたpocknさんに感激たるや、うらやましさを通り越してこちらも共有してしまいそうです。
ウィーン時代のマエストロのパネルへのサインは、まさに神様がくれた贈り物ですね!
アバドの表情もよく見えたし、音はステージから立ち上ってくるように体感でき(ソロ以外は)Eブロックはエー(独)席でしたよ。
そしてそして、パネルへのサインがいただけて本当によかったですね~っ!!! 我がことのように嬉しいです(v^-^v)。今度、また美味しいお酒を飲みながら是非アバドのお土産話を沢山聞かせて下さいね。楽しみにしています♪