ザルツブルク SALZBURG
旅もいよいよザルツブルクとウィーンでそれぞれ2泊を残すのみとなった。どちらもこれまで何度も訪れているが、今回はpocknがこよなく愛して止まないモーツァルトの生誕250年にちなんで、モーツァルトに焦点を絞っての滞在と決めていた。この記念すべき年に、モーツァルトとは切っても切り離せない2つの町で、思いっきりモーツァルトを感じ、モーツァルトに浸りたかった。 【ザルツブルクの町】 「絵のように美しい」とはまさにザルツブルクの町のこと、と思えるほどにザルツブルクの旧市街は美しい。町全体が世界遺産ということだが、一つ一つの建築物がどれも芸術品。それらが建ち並ぶことで醸し出されるハーモニーが町の雰囲気を引き立てる。山の上にたたずむ城砦「ホーエンザルツブルク城(Festung Hohensalzburg)」が、光線の具合でいろいろな色を見せつつ、町全体の風景に奥行きを与える。夕暮れにお城が赤く染まる頃はとりわけ美しい。さらに背景にはオーストリアアルプスの山並みが連なり、すべてが出来すぎたように調和している。旧市街に入ったときちょうど雨が上がり、大聖堂(Dom)に虹がかかった。 ザルツァッハ川の対岸は新市街と呼ばれているが、こちらも町並みは美しい。新市街のミラベル宮殿の庭園を前景とし、そこから眺める城砦を頂点とした旧市街の眺めも素晴らしい。 決まった時刻がくるとホーエンザルツブルク城から響き渡る大オルガンの音響、モーツァルト広場ではグロッケンシュピールの鐘が奏でる「ドン・ジョヴァンニ」の仮面パーティーの場面のメロディー。ヴィジュアルな風景だけでなく、音の風景が一層この町を印象づける。 ゲトライデ通り(Getreidegasse)は旧市街のメインストリート。お土産やカフェ、レストランが並び、世界中から集まった観光客たちでいつも賑わっている。Mozartkugeln(モーツァルトボール)と呼ばれるモーツァルトの肖像の銀紙で包まれた丸いチョコレートは、ザルツブルクのお土産の定番で、通りのあちこちのお店で売られている。チョコの中は三層になっていて、一番核の部分はピスタチオ風味のマジパンが入っている。このチョコ買うならスーパーに行った方がずっと安いのだが… 祝祭劇場(Festspielhaus)付近からのスケッチ。次々にやってくる観光馬車がちょうどこの辺りでUターンしていく。石畳を踏む馬の蹄の音が周りの建物に反響してノスタルジックな気分を誘う。 賑わっているのは、しかしこのゲトライデ通りとその周辺だけで、道をひとつ外れると静かな散歩道が続く。旧市街の外れからNonnberggasseという坂道をのぼり、ノンベルク修道院(Stift Nonnberg)を通ってホーエンザルツブルク城まで歩いた。坂道を登りきったところで見下ろした旧市街のたたずまいと雪を頂いた山々の眺めが素晴らしい。修道院の静まりかえった礼拝堂に入れば祈りのひとつぐらい捧げたくなる。Festung(城砦)へ入るには入場料が必要。今回はここはやり過ごし(一見の価値はあります)、古びた城壁の残る森の中の道を通り、ふたたび旧市街に下りて行った。 この散歩コースは町と見晴らしと自然を楽しめて良いが、同時にザルツブルクはやっぱり小規模な町だなぁ、と思う。駅周辺にはもちろんもっと大きな町が広がっているが、昔からあるザルツァッハ川周辺の観光エリア内では若者が大勢集まるような店もあるにはあるが、昔はきっと何にもなかったのだろう。モーツァルトが退屈したというのもわかるような気がする。 この辺りではお店やレストランなんかでドイツ語で話しかけても、相手は大抵英語で返事してくる。世界中から観光客が訪れるからの親切心かも知れないが、何となく居心地の悪さを感じることもある。モーツァルトが嫌気をさして去って行った厳格で退屈なカトリックの田舎町の気質が今日まで受け継がれているのかも。
2日目の終演後はちょっと雰囲気の良さそうな近くのAlt Salzburgというレストランに入ってみた。 メニューをみるとなかなかのお値段… 隣のテーブルの男二人がイタリア語をしゃべってたので、久し振りにイタリア語で話しかけてみた。すると彼らはシチリア出身! 「シチリアはうちらも行きましたよ!カターニャ、シラクーサ、タオルミーナ… どこもとっても良かった!」なんて話で少し盛り上がりかけたとき、向かいのテーブルに日本のご婦人方が座り、何やら注文で困っている様子。すかさず「お手伝いしましょうか。」と注文するのを助けてあげた。 少ししてそこの女性が僕のところに来て「良かったらご一緒しませんか?」と誘ってくれた。うーん、こっちのイタリア人との話も楽しそうだけど、なんかこのお二人の男性、ちょっとソフトな雰囲気でとても仲睦まじそうだったので、二人にしてあげたほうがいいかも。それにせっかく誘ってくれたんだし… ということで、3人のご婦人のテーブルに同席させて頂いた。 3人は個人でザルツブルクに1週間も滞在中とか。そのうち一人は一足早くドイツのバイロイトでワーグナーの音楽祭も楽しんだそうだ。今夜の演奏ではおれと共通する感想を持っていて話が弾んだ。 「おばさんでごめんなさいねぇ、、、」なんておっしゃっていたが、音楽のことも詳しく、やっぱり個人旅行でこうして来る人達には光るものがあって楽しかった。オードブルのチーズをご馳走になり、帰りはみなさんがお泊りの駅の近くのホテル・ルネサンスまでタクシーに乗せてくださった。ありがとうございました! ホテル・ルネサンスから僕のホテルまでは更に暗い夜道を十数分歩く。途中で若い女性に「Bahnhofstraße(駅前通り)はどこかわかりますか?」と聞かれた。「それなら僕が泊まっているホテルの道だから案内しますよ。」ということで2人で歩いていたら、彼女もそのホテル(Gasthof Auerhahn)に泊まる予定とのこと。スイスから来た人で、明日ウィーンである親戚のお葬式に出てきたそうだ。スイスも旅してきたことや、今夜のコンサートのことなどいろいろおしゃべりをしているうちにホテルに到着。「ありがとう。助かりました。」とお礼を言われた。 こういう風に知らない人と気軽におしゃべりができるのは楽しい。でもこんな夜道で見ず知らずのアジア人の男に道を案内されて全く平気そうだったが、おれって善良そうに見えるんだろうか… 明日はいよいよウィーンだ。 ウィーンへ pockn 2006夏のヨーロッパ旅行 メニューへ 最新の画像[もっと見る]
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