ぽんぽこノート

いつだって今がスタートライン。
行動しなくては何も始まらない。壁にぶつかったところから新しい道がひらける。

近未来ボーカロイド「初音ミク」の今

2011-07-08 | 生活・色々


画像/7月3日Los Angeles公演


■ 3D立体投影はここまで進んでいたか!
人間とほぼ同じ滑らかさで踊り歌う初音ミク。その名称くらいは聞いたことがある人も多いだろう。アニメーションではないく、ただのCGでもない。そこに存在すると言っても過言ではないくらいのリアリティと個性を持った「歌い手」である。

「なんだオタク話か」と思うかもしれないが、それで読むことを止めてしまうかどうかはあなたの可能性が試されるところだ、と意地悪く言っておこう。しかしながら人間の進歩の基礎たる部分の多くは好奇心であることも間違いではない。オリコンチャート1位も記録するなど、すでに音楽シーンの新たな分野にもなっており、知るべき今がそこにある。



初音ミク Los Angeles公演
中国の無料動画サイト「土豆网」なので日本からは見られないかもです。





画像/ボーカロイドNo.1 初音ミク(はつね みく)


そんな私も、最近になって初めてまともな初音ミクの映像を見た。私の予想を大きく超え、そこには驚くべき近未来リアルボーカロイドの存在があった。最近のニュースでも宣伝されていたので知っている人も多いかと思うが、7月3日にLos Angelesにて「ミクノポリス」と題したライブイベントが開催されていて、中国のネット上にも早速フル動画がUPされているが、それを観たわけだ。

私も初音ミクという存在を知っていたのだけど、オタク趣味のひとつくらいにしか思っていなく、今まで特にオススメしてくれた人もいなかったのでよく知らなかった。オススメしてくれていたら試しに見たと思う。だが、そのときは、なんだか人気あるみたいだなくらいだったのだ。しかし見えてみたらこれだ。もうこんなことになってるなんて凄すぎる。こういうものが存在していること自体が素直にかっこいい。これがCOOLってことですね。

ニコニコ動画などでも、初音ミクを使用したユーザーの曲や動画が大量にUPされているようだが、ここにはどうもピンと来ない。やはり今回のLos Angeles公演でのボーカロイドたちの完成度はかなり高い。曲もいい曲が多いし、振り付けも凝っている。70年代ビーチボーイズから現代のクロスオーバーな曲まで大量に聴いてきた私でも、素晴らしい曲が多いと思う。

私は元々近未来的な題材が好きとう土台があるのも手伝ってかもしれないが、これはかっこよすぎる。こういうものが存在しているということがかっこいい。なんと言ってもメガネなしで見ることが出来る3Dの立体映像が歌うわ踊るわで、その完成度が高すぎるのが凄い。ダンスも歌もライブバンドの演奏と完璧にタイミングが合っている。しかもほぼ完全に人間の動きをしている。

タイミングを合わせる方法はプログラムをリンクすれば難しいことではないことはわかるが、それにしてもダンスが自然すぎる。よく見ると表情も豊かで口パクは下手な韓国アーティストよりも自然だ。瞳の動きや眉毛にも動きがあるし目線も動く。なんと言っても髪の毛の動きも自然だ。CGでは髪の毛の表現が最も難しい分野だとされているらしいが、こうまで自然な動きのある束感を出すとは圧巻。今まで観たどんな映画のモーションキャプチャ映像よりも、さらに高い次元でそこに実在するということを感じさせてくれる。いやホントにすごい。



画像/ボーカロイドNo.3 巡音ルカ(めぐりね るか)


この前の上海万博の台湾オフィス用品販売企業のオーロラ館で小さな3D投影をありがたがって見たのは記憶に新しいが、初音ミクに比べるとあれはちゃちかったなと思わせられてしまう。つまり、この初音ミクは十分万博レベルの代物と言ってもいいくらいで、日本で万博が開催されるさいには、これはもう初音ミクを出さないわけにはいかないのではないか。サブカルチャー代表として世界に誇れる日本の土壌が生み出した近未来を象徴する現代文化であり先端技術であると思う。

ちなみに、ボーカロイド(VOCALOID)というのは、歌詞とメロディーを入力するだけで歌声を合成する技術などの総称でヤマハが開発したものだ。現在はVOCALOID2までが発売されていて、今年後半にはVOCALOID3の発売が待たれている。歌声を合成と聞くと、なんだかロクにメロディアスな曲を作れないのではないかとか、自然な歌声にならないのではないかと思うかもしれない。

しかしその機能は「実際に収録した人の声を音声ライブラリとして合成するため、より自然な歌声を合成できるほか、ビブラートやこぶしなど歌声に必要な音程変化や抑揚を指定でき、表情豊かな楽曲を手軽に作れるのが特徴(WikiPedia)」とされていて、合成したとは思えないほどの自然な歌声が聴ける。それでいてVOCALOIDならではの、一度シンセサイザーを通過したようないわば少々「機械的」でクールな歌声が近未来を連想するに十分な音で魅力的だ。このような音の領域にある歌声をどう受け止めるかは、聴いた人の感受性や想像力によるところが大きいと思う。

このVOCALOIDが一躍有名になったのは、2007年に北海道のクリプトン・フューチャー・メディアという会社からVOCALOID2の応用製品であるDTMソフトの初音ミクが発売されたことによるものだろう。このボーカロイド応用製品をただの音楽制作ソフトという位置づけではなく、「キャラクターに歌わせる」という方向で打ち出して大成功を収めたのが初音ミクをはじめとするクリプトン・フューチャー・メディアのDTMソフト「キャラクター・ボーカル・シリーズ」だ。それぞれのキャラクターの元の声は実在の声優が担当していて、得意な声域やスピードがあり、ソフト(キャラクター)ごとに個性が出ているという仕組みとなる。

この手のDTMソフトとしては異例の発売後2週間だけで3,500~4000本が売れたという。年間1,000本売れれば大ヒットとされるところがこの売れ行きで、発売1年後には42,000本が売れたという。この数年で北海道からも世界に影響力を持つ会社で出てくるとはすごいことだ。2000年後半に入ってからでは、北海道で最も注目されている企業なのではないだろうか。

これらのソフトは2万円もしない価格で買える上に操作も比較的簡単。これに3DのMikuMikuDanceとモーションキャプチャを可能にするXboxキネクトがあれば、初音ミクを歌って躍らせることが可能になる。この場合は、あくまでディスプレイの中だけとなるが。しかしこういうことが個人レベルで可能だってまあすごい時代になったもんだと思う。戦後まだ70年も経っていないのに。次の70年はどうなっていることやら。



画像/こうして演奏者の立ち位置と比べてみるとリアルさがわかる。


初音ミクの登場は世界のサブカルチャーに衝撃を与えた。アニメ「マクロスプラス」のシャロン・アップルよろしく初音ミクは実際に人間の目の前で視認できるところまで来た。例えその時点では仮想だとしても、そこに存在していると言っても過言ではないレベルに到達している。今の時点では、反射板のような素材を使用しての立体投影だが、最近のニュースでは何も無い空間上に完全な立体投影を可能にする「fVisiOn」というシステムが開発されたようなので、より高度でリアルな初音ミクが登場するのもそう長い時間はかからないのだろう。

初音ミクという「歌い手」をはじめとするボーカロイドたち。ボーカロイドと初音ミクは製品名ではあるが、このボーカロイドの存在は、近未来をまざまざと見せ付けられているようで、そこにある種のCOOLさを感じずにはいられない。日本サブカルチャーの標語としてJAPAN COOLという言葉もあるが、まさに今もっともそれにふさわしい存在が初音ミクではないだろうか。う~ん、その存在がかっこよすぎる。

日本の先端技術とサブカルチャーの融合。他国が同じ技術を持っていたとしても(PC向けパッケージ製品のボーカロイドはイギリスZERO-Gが先に発売)このような形態で具現化することはできなかっただろう。初音ミクは日本の土壌が作り出したハイパーアイドルであり、近未来と今を確実につなぐ、現代サブカルチャーと日本の先端技術が融合した新世代分野を大いに開拓する存在だと思う。