現代美術って作家の意図を知るのにこちら側も努力が必要。
ただ眺めてるだけでは想いもメッセージも汲み取れない。
敗北感を味わっていたら、ガイドツアーがあることを知った。
豊田市美術館は今日14時からやるので早速行ってみた。
定員は20名程度でガイドボランティアさんが案内してくれます。
多過ぎで断ったことはないそうで、今回は10名ほどの参加者。
「この作品をどう理解するのが正解といった説明はしません」
「どんな作品なのか、みんなで意見を交わすツアーです」
「そして、今日のテーマは“ユートピアとは?”です」
トリエンナーレ入口から階段を上がって3Fへ向かいます。
途中の踊り場に最初の作品であるレリーフが飾られていた。
この作品、前回訪れた時は完全にスルーしてました・・
「何に見えますか?」とガイドさん。
「宇宙飛行士」「潜水士」などの意見が出た後にヒント。
「右の人の被ってる物に注意して下さい。これ網ですね」
そうか養蜂家か!すると二人が持ってる板状の物は蜜蝋だ!
作品のタイトルがシャレてて「ミッションからの帰還」w
多くの人が第一印象とタイトルからアルマゲドンなどを連想。
宇宙規模の壮大なストーリーを思い描くに違いない?
でも実際は「蜜の収穫」で、そのギャップに思わずニヤリ。
作者はT06a アンナ・フラチョヴァー。
あぁ、緑の部屋のあの作家さんか。面白い!
続いてT07 シール・フロイヤー「Fallen Star」
空にあるはずの星が地上にある不条理さを表現と思ってた。
子供は頭が柔らかいね「空と地面が逆。ひっくり返ってる」
素直に色々と意見を言ってくれます。
「天井の鏡で反射してるはずだけど鏡が光ってない」
言われて見ると確かに。光の筋も見えない。なんで?
てっきり反射させてるものと思い込んでいたけど。
「これはスライド映写機です」
「音がしてますね。何の音だと思います?」とガイドさん。
よくよく考えると映像って拡大されるはずだけど?
そういう細部はこだわらなくていいのかな。
作品名を訳すと「落ちた星」「人気のなくなったスター」
今や殆ど使われなくなったスライド映写機のこと?
T08 タリン・サイモン
「隠されているものと見慣れぬものによるアメリカの目録」
ガイドツアーで取り上げたのがこちらの写真。
「これ、何だと思いますか?」
「フードシェアリング?」「背の高い植物が気になる」
「手術室の解剖台?」などの意見が出た。
「これはJFK空港で持ち込もうとして没収された物です」
アメリカで最も多く国外からの旅客が訪れる空港。
華やかなターミナルの裏側にはこんな光景が。
作品の背景を知ると作家性の理解も進みます。
T09a 高嶺格「NIMBY(Not in My Back Yard)」
旭日旗をあしらった品のない金屏風のデザインから反日臭が。
なので前回はスルー気味に通り過ぎた作品です。
備え付けのコインを入れると1分間映像が見れた。
全部で6つあるので6回入れる必要があります。2回でめげた。
360°カメラで撮った沖縄基地の抗議集会の映像?
旧豊田東高プールのインスタレーションは素晴らしいけど・・
T10 レニエール・レイバ・ノボ「革命は抽象である」
床から「労働者とコルフォーズの女性」の槌と鎌の一部。
天井から「ガガーリン像」の手の一部が覗く奇妙な空間。
2つの像が隣り合って立ってると仮定?
相対的な高さの関係性をこの部屋で再現してる?
壁の図面を見るとそれぞれの像の高さが分かります。
部屋の天井高が不明なので目分量だけど誤差はありそう。
少女像の展示中止に抗議して、槌と鎌は黒いビニールが覆う。
これはこれで面白い表現だと思います。瓢箪から駒ですね。
絵の方は少女像の記事が載った新聞で覆われていた。
こちらもこれはこれで面白い表現ですね。
やはり瓢箪から駒?災い転じて福となす?棚からぼた餅?
京アニの記事の方が目立ってる気がしないでもないけど。
T06b アンナ・フラチョヴァー「アセンション・マーク1」
「顔には何がありますか?」とガイドさん。
「アイロン」と「髭剃り」ではないかとの意見が出た。
アイロンは「しわ取り」を、髭剃りは「無毛」を暗示とか?
不老不死?でも手首から先がない。横に置いてあるし。
これら奇妙な姿は何を伝えようとしてるのだろう。
人類がフォトンベルトを通り高次元へ上がった姿をイメージ?
「究極に便利な未来。人はそのままでいられる?」
「果たしてこの姿は幸せなのでしょうか?」
ガイドさんが「ユートピアとは?」のテーマを再び問うた。
ガイドツアーも最後。T11 スタジオ・ドリフト「Shylight」
花の就眠運動の動きを再現した美しい作品です。
促されてみんな寝そべって見上げしばし見とれていました。
「この動きはオランダで制御されているんですよ」
なんと!遠く離れた海の向こうでこの動きを?
エラーになった時もオランダから遠隔操作で直したらしい。
ある意味テクノロジーをツールにすることがテーマなのね。
人工的に再現された就眠運動。
それでも本物の花と同様に、来場者を惹きつけていた。
雨が少し降っていたけど旧豊田東高へ。
再びのT09b 高嶺格「反歌:見上げたる 空を悲しもその色に 染まり果てにき 我ならぬまで」とっても長いタイトルです。
「もっと知りたい!」と思ったきっかけの作品がこれ。
この「高さ」はトランプが作る「メキシコの壁」と同じ。
そんな情報を目にしたから。
適当に切り出したのではなかった。
「高さ」にこそメッセージを込めていたのだ。
それを知って眺めると「こりゃ高いな」としみじみ思う。
乗り越えるのは容易ではない。
目の前に立つ「高さ」こそが民族分断の象徴なのだ。
居たスタッフさんに「高さ」について確認してみた。
「はい。そう言われていますね」
「でも実は違うって噂も・・」え、どっちなんだ?w
この高さも「9m」とか「12m」とかネットでまちまち。
掲示されている銘板をみると「26m×33m×12m」ってある。
え、これ何の寸法だ?
立ってる部分のサイズにしてはおかしくない?
プールサイドなど付随する部分も含めた「全体」の寸法かな?