セリカ魂

「初代セリカに乗りたい!」
ゆっくり旧車ライフの備忘録

十戒

2025年03月12日 11時07分38秒 | 読了

夕木春央「十戒」読了。
ミステリに嵌るきっかけは綾辻行人の「十角館の殺人」だが、それを更に加速してくれたのが本作者の前著である「方舟」だった。
大どんでん返しの方舟体験は「未読が人生の損」と断言できる程に強烈だった。


舞台は和歌山県の白浜沖に浮かぶ枝内島。島を所有する大室修造が不慮の事故で亡くなって、遺された島を観光リゾート地にしようと集まった関係者が下見に向かう船上で物語は始まる。

幼い頃に伯父・修造と島を訪れたことがある主人公・大室里英と、里英の父親、開発会社の沢村と綾川、工務店の草下と野村、不動産会社の藤原と小山内、修造の友人・矢野口の九人が登場人物。

無理矢理感に溢れた戒律により脱出不能な離島で不可解な連続殺人事件が発生。相変わらず句読点が頻繁に使われていて読むのに苦労した。頑張って構築したであろうトリックだが、お陰で面白さ半減したのが残念だった。

中卒だから、大学の文学部を出ていないからこんな文体になるのかとつい思ってしまい、それは学歴差別でナンセンスだと自戒することが多々あった。うまい文章、読み易い文章を書ける才能は多分に先天的なセンスによるが、読書量や上手な作家をお手本にすることで後天的に補えるので今後に期待したい。

余計な作者プロフィールは作品を読む上で邪魔になる事もあるが、本作のタイトルだけでなく終盤で語られる宗教的な概念を思い付いた素養に生い立ちの境遇があるのかも?とより理解を深めることに繋がったので良し悪しだな。

本作の醍醐味は殺人トリックなどではなくてP.285の一行目の台詞で予感をさせ、ラスト2頁の見開きの「*」以降で明かされたある人物の素性なのだが、残念ながらSNSで薄っすら知っていたせいで衝撃は軽かった。もしその情報を知らずに読んでいたら「おぉ!」と狂喜乱舞していただろう。それでもラストの描写は作者のセンスの良さを感じるものでニヤリとさせられた。それだけでも読む価値はあったし、周回を重ねれば新たな気付きを楽しめそうだ。

そこには触れられないので何も語れないけれど、敵に回したらダメな人物と運悪く同行してしまった被害者らには同情を禁じ得ない。合掌。



最新の画像もっと見る