どシリアスなマヌケの日常

毎日毎日、ストーリー漫画を描き、残りは妄想.,いや構想の日々の日記。

イノセント後編4〜好事魔が刺す〜

2023-01-04 09:43:00 | 日記
ヒカルは父の書斎で祖父セキに手紙を書いていた。そこに妻のミホがやって来て「カイ様がお帰りになっていますがお部屋に閉じこもってしまわれています」と告げた。

ヒカルがカイの部屋を訪ねると下界の服装のまま寝台に突っ伏して泣いていた。
「どうしたのだ?双子は生まれたのか?」カイは、しゃくり上げながら「私は役立たずです。見守りさえできない。」
「何があったのだ?私に報告にも来ないで泣いていること自体、子供のすることだ。まずは、何があったか話せ!」ヒカルは、冷静にカイを促した。
カイは話し始めた。
「妊娠34週でエリカも病院に入院しました。早川総合病院です。そうです。我らの拠点の一つです。ただ、分家となって下界降りしている高天原のものは、メンタルクリニックの方へ看護師として紛れております。だから、2人が入院した総合病院には人間しかおりません。でも、そんなこと気にもとめていませんでした。2人とも経過は順調で、入院した日も私は修のワゴン車に2人の荷物を運んでいました。大輝が私に「留守番を頼む。帰ったら男3人で酒を飲もう。」と言ってくれて、今日は家族だけで居たいのだなと私は思い、病院への同行はご遠慮いたしました。
エリカもはるもニコニコして手を振ってくれました。私も手を振りました。帰りを待っていますと言いながら。」


「それから3時間くらい後、大輝から電話がありました。はるが事故に遭って意識不明だと言うのです。私も病院に駆けつけました。階段から転落して踊り場で倒れていたそうです。その20分ほど前、病室から10メートルほど廊下をいったところに「飲み物買ってくる」と言って、はるは1人で病室を出たそうです。大輝が自分が買いに行くと言ったそうですが、はるは「少しは歩かないとヤバいよ」と言って病室を出て行って、それで。。。戻って来ませんでした。私も一緒に行けばよかった。私が買いに行ったのに。。。」そこまで話すと、またカイは泣き出して話せなくなってしまった。
ヒカルは静かな声で「はるの気はどうだったか?汚れた気に包まれていなかったか?」とカイに尋ねた。
カイは「私が行った時には何も見えませんでした。お腹に子供がいるので、重い脳挫傷を負っていても、はるは全身麻酔をかけて開頭手術をすることができません。はるという人間の人格は既に感じませんでした。残っている気は体の方に回されていました。私は、信じられない。はるは慎重な性格なのです。出会ってから階段を使うことはなかった。一度も。」

「事故ではない。魔物の仕業だ。大輝が危ういのは魔物に付けいられやすいのだ。だから、母上は力を与えた。」とヒカルが言うとカイは「危ういとは、そう言う意味だったのですね。」驚いた。ヒカルは「もっと、説明しておかなかった私も愚かだ。カイ。大輝は気の色が見える。事故の直後だったら、大輝は魔物の色を見ているはずだ。大輝に話しに行け。魔物とは言っても恐らく人間の魔物だ。大輝には魔物の正体が分かるかもしれない。カイ。我らは見守る神だ。いい時も悪い時も見守る神。泣くのではない。大輝のそばに戻り、魔物の色について話してくるのだ。」ヒカルは、なるべく感情を表に出さないでカイに命令した。
妻を亡くす。もしも私だったらミホがいなくなったら。。。大輝の気持ちを考えると胸が詰まった。

カイが、病院に姿を表すと修が「どこに行ってたの?」と聞いてきた。「兄に相談して来ました」はるが事故にあってから2日が過ぎていた。「はるさんの容体は?」とカイが修に尋ねると修は「体が機能しているうちは、子供たちのためにこのまま生き続ける。何日持つかだな。。。エリカは知らないんだよ。事故のことも。言葉には気をつけてくれるかな。」と答えた。その時、エリカの病室から60代の女性が出てきた。「修さん、この方は?」ハーフの女性。黒髪の青い目。カイはすぐ分かった。「早川 界です。」シャインは目を大きく開けると涙をポロポロこぼし出した。「あかりちゃん。。。」界はいきなり土下座をすると「私の力不足です。申し訳ありません。」と詫びた。
シャインは、界の手を握って立たせると「2人のお手伝いをいっぱいしてくれたんだってね。ありがとう。」と言った。シャインは72歳には見えなかった。「西の神界人」になる人だと界は直ぐに気がついた。

大輝は、はるが必死に子供たちを意識がなくても育てているところをガラス越しに見ていた。そこに界が近づいてきて言った。
「はるさんが事故にあった時、汚い色に包まれていませんでしたか?」
「うん。汚い色が纏わりついてた。」
「はるさんは事故ではありません。魔物に襲われたんです。その魔物の色は見たことがあるのではないですか?」
「ああ。。見たことある。そうか、魔物か。」大輝はつぶやいた。

イノセント後編5に続く





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