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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

司法修習生 給費制度 存廃アンケート

2010年09月17日 | ロースクール・司法試験・法曹養成
アンケート


司法修習生は、司法試験に合格した法律家(裁判官、検察官、弁護士)の卵です。新司法修習の場合、司法修習生は、法律家として働きはじめる前に、1年間の司法修習を受けなければなりません。修習は平日フルタイムで行われ、司法修習生のアルバイトは禁止されます。
これまで司法修習生全員に対して、給与が支払われてきました(給費制)。これが、今年の11月から必要な者に対し生活資金を貸し付ける制度(貸与制)に切り替わります。
2004年の裁判所法改正によって給費制廃止・貸与制導入が決められ、その施行期日が2010年11月1日とされているためです(以上、日弁連ホームページより)。

法曹養成の問題は実務法曹を目指す皆さんはもちろん、国民全体の福利にとって大切な問題だと考えます。なじみのない話だとは思いますが、この機会に下の資料もごらんになってアンケートにご協力ください。


参考資料1
最高裁が日弁連に質問状…司法修習生給与問題
 司法修習生に国が給与を支給する「給費制」が10月末に廃止されるのを前に、「富裕層しか法律家になれなくなる」として給費制の継続を訴えている日本弁護士連合会(日弁連)に対し、最高裁がその根拠となるデータを示すよう求める質問状を出したことがわかった。
 日弁連の主張について、最高裁が文書で説明を求めるのは異例で、今後、激しい議論が交わされそうだ。
 司法修習生には現在、1年間の修習期間中に、国から毎月約20万円の給与が支給されている。しかし、政府は2004年、司法制度改革で法曹人口の増加が打ち出されたことから、修習期間中に国が貸与した資金を修習終了後に無利子で返済させる「貸与制」への切り替えを決め、裁判所法を改正した。9日発表された今年の司法試験合格者から実施されることになり、貸与申請の手続きも始まっている。

(2010年9月12日03時04分 読売新聞)


参考資料2
給費継続は変だ
2010/9/17付 日本経済新聞社説

 司法研修所で法廷実務を学ぶ修習生に国が給料を出す制度を、今のまま続けるための法改正を民主党が考えている。おかしな動きである。
 今年の司法試験合格者が研修所に入る11月から、給費制をやめ貸与制に切り替えるのは一連の司法改革と連動して6年前に決められた。「法科大学院新設、裁判員制度導入など、司法改革によって財政支出・国民負担が増えるなか、給費制を継続するのは国民の理解を得られない」のが理由で、民主党も賛成した。
 給費制は、司法修習制度が始まった1947年には、戦後の経済混乱の中で修習生に生活の心配をせずに研修に専念させる手立てとして合理性があっただろう。しかし現在の納税者の目には、理屈に合わない国費支出と映るのではないか。社会的にも経済的にも恵まれた法曹(裁判官、検察官、弁護士)になる人々が専門職訓練を受ける間の生活を支えるのになぜ税金を使うのか、国民が納得する理由は見いだしづらい。
 民主党が給費制継続に向け動きだしたのは、日本弁護士連合会から強い働き掛けがあったからだ。
 「法科大学院の学費に加え研修中の生活費が自己負担となると、経済的に余裕のある人しか法曹を目指せなくなる」との主張だが、司法修習を所管する最高裁は「合理的かつ実証的な理由、根拠」を明らかにするよう求める質問書を日弁連に出す異例の反発をみせた。
 貸与といっても、返済条件は緩く「無利息、5年間据え置き、その後10年までの分割」である。最高裁が指摘するとおり、給費制の継続は国民の理解を得られまい。
 今年の新修習生約2千人に給費を続けるには年に約100億円要る。それだけの予算があるなら、資力のない人を援助する民事法律扶助や国選弁護の制度を拡充するとか、司法過疎地で働く弁護士の待遇を改善するとか、あるいは裁判員の日当を上げるなど、より広い範囲に利益が及ぶように使うべきだ。
 給費制継続には心配な“副作用”もある。司法試験合格者を大幅に増やすのに、財源難というもう一つのハードルが加わることだ。ただでさえ遅れている法曹人口の拡大が、さらに難しくなってはいけない。


参考資料3
中国新聞社説 '10/9/17
 裁判官や検事、弁護士の卵にあたるのが司法修習生である。その生活の面倒を国がみる「給費制」が10月末で廃止の期限を迎える。
 与党民主党は今週の法務部門会議で、とりあえず継続する方針を打ち出した。現状維持を強く求める日弁連に配慮したようだ。臨時国会で与野党協議を急ぎ、必要な法改正をしたいという。
 年間で60億円以上の税金を投じる制度だ。この際、司法修習制度の在り方も含めてしっかり議論してもらいたい。
 司法制度改革によって司法試験の合格者を3千人に増やす目標が閣議決定された。これまで月20万円余りを修習生に支給してきたのをやめ、生活資金を希望者に貸し付ける方式に改めることが決まった。財源に限りがあるというのが国の言い分である。
 廃止を定めた裁判所法の改正は6年前にさかのぼる。野党時代の民主も賛成した。ただ日弁連が猶予期間を求め、実際の施行が今年まで先送りされてきた。
 ここにきて日弁連が廃止反対の声を強めるのは、司法修習を終えた若者たちが経済的に厳しい状況に直面しているからだ。
 いま修習生は約2千人とかつての4倍。増えた分、弁護士事務所にはなかなか就職できない。裁判官や検事の採用も横ばいだ。
 修習生へのアンケートによると、法科大学院に在学中、平均で300万円余りの奨学金を借りていた。修習中はアルバイト禁止なので、貸与制になればさらに借金がかさむことになる。
 これでは安心して学べず、いずれ裕福な人しか法曹界を目指せなくなる。そんな日弁連の指摘はもっともといえる。
 かといって「国が出して当然」という主張が、すんなり納税者の理解を得られるだろうか。
 1年にわたる修習中には裁判所や検察庁、弁護士事務所を回り、実地経験を積むという。公務にも携わる一方で、自らが資格を得るための研修、という見方ができなくもない。
 修習の実情を知る国民は少なかろう。税金で生活保障するなら、中身をオープンにし、位置付けをはっきりさせてもらいたい。
 当面、給費制を続けたとしても財源が限られる以上、遠からず見直しは避けられまい。
 全額国費にこだわらず、法曹界全体で負担していく。奨学金のような仕組みを作って生活に困る場合や、過疎地の弁護活動を志す人などには返済を猶予するか免除する。そうしたやり方も検討しておくべきではないか。
 今年の司法試験は合格率が25%と一段と低下し、合格は2千人余りにとどまった。政府目標には遠く及ばない。法曹の人材養成システム自体が揺らぎつつある。
 給費制の是非のみにとどまらず、司法制度改革で浮かんできたさまざまな課題を見直すきっかけにする必要があろう。法曹界の身内だけの論理には限界がある。国民の視点に立った幅広い議論が何より欠かせない。



参考資料4 日弁連ホームページより
日弁連が取り組む重要課題
司法修習給費制維持を!

司法修習生への給与が、2010年11月から打ち切られます

司法修習生は、司法試験に合格した法律家(裁判官、検察官、弁護士)の卵です。新司法修習の場合、司法修習生は、法律家として働きはじめる前に、1年間の司法修習を受けなければなりません。修習は平日フルタイムで行われ、司法修習生のアルバイトは禁止されます。

これまで司法修習生全員に対して、給与が支払われてきました(給費制)。これが、今年の11月から必要な者に対し生活資金を貸し付ける制度(貸与制)に切り替わります。

2004年の裁判所法「改正」によって給費制廃止・貸与制導入が決められ、その施行期日が2010年11月1日とされているためです。
日弁連は、貸与制導入の見直し・給費制の維持を求めます

現状でも司法修習生の半数に「借金」があります

日弁連が2009年11月、司法修習入所予定者(新63期)を対象に実施したアンケート結果によれば、回答者1528名中807名(52.81%)が法科大学院で奨学金を利用したと回答し、そのうち具体的な金額を回答した783名の利用者が貸与を受けた額は、最高で合計1200万円、平均で318万円に上りました。

修習費用の貸与制が導入されれば、これに約300万円の債務が上乗せされることになります。

法律家を目指す人が減っています

試験・就職等のリスクや経済的負担の大きさが敬遠されて、法律家を目指す人が減っています。

法科大学院適性試験の志願者数について、2003年と2009年を比較すると、大学入試センターでは4分の1、日弁連法務研究財団では半分以下と、大きく減っています。また、法科大学院への社会人入学者の割合は、5割弱(2004年)から3割弱(2008年)へと減少しています。

貸与制導入の見直しを

2004年の裁判所法「改正」に際し、衆参法務委員会附帯決議は、「経済的事情から法曹への道を断念する事態を招くことのないよう」関係機関が十分に協議をすることを求めていました。多くの修習生が多額の借金を負担していること、法律家を目指す人が減少していることなど、当時は予想していなかったことが、現実に起こってきています。これらの問題について、関係機関が十分に協議するために、貸与制の導入を見直すことが必要です。

給費制の維持を

裁判官・検察官・弁護士は、対立する立場から互いをチェックし、裁判が適正に行われるようにします。裁判においては、多くの人の権利が絡み合う問題を解決しなければならないからです。単に私利や感情を満足させるのではなく、権利を守り正義を実現しなければなりません。法律家は「権利の守り手」です。給費制によって、すべての法律家の資格は国民の負担において与えられたもの、となります。法律家の仕事の公共性・公益性ゆえに国民が法律家を育てるのであり、給費制は法律家に対し公共心と使命感を求める制度でもあります。
リーフレット「明日の権利の守り手を育てるために」(PDF形式・204kB)
説明資料「明日の権利の守り手を育てるために!」(PDF形式・128kB)
パンフレット「司法修習生に対する給費制の存続を!」(PDF形式・371kB)
決議等

第61回定期総会・市民の司法を実現するため,司法修習生に対する給費制維持と法科大学院生に対する経済的支援を求める決議 (2010年5月28日)



日弁連は、給費制維持を求める運動に取り組んでいます

給費制の維持を求める運動は、市民の・市民による「明日の権利の担い手を育てる」運動の支えがなければ、本当の力にはなりません。市民のための司法をつくることが、目的だからです。市民団体、労働団体、消費者団体の皆さんとともに、この運動を進めていきたいと思います。また、法律家を目指す人が置かれている状況、実態を明らかにすることが何より重要です。法科大学院生、司法修習生の皆さんの生の声を、お寄せ下さい。

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9 コメント

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新司法試験合格を目指している立場から (やまけん)
2010-09-17 19:20:20
貸与制は無利子で返済条件も緩いことを考えれば、給費制が貸与制に変わったからといって、司法試験をあきらめるでしょうか?
司法試験に合格した人が給費制から貸与制に変わったからといって、法曹になるのを辞める人がいるでしょうか?

確かに、今新司法試験合格を目指している人たちにとっては貸与制が導入されるかについて非常に関心は高いとは思いますが、しょせん合格してからの話で、まず目先の合格が第一の関心事だと思います。

ぶっちゃけ、給費制や貸与制の議論より、受験制限等の合否に直結する議論をもっとしてほしいです。そして、早く迷走から脱却してほしいです。
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最近は (なるみ)
2010-09-17 20:39:20
ロースクールで公務員に進路変更する人が増えています。ローの教員も推奨しているようです。少なくとも自分の周囲でも、7,8人は公務員に合格しています。もちろん最初は法曹になりたくてローに入学したのだと思いますが、学部からの奨学金+ローの奨学金でいっぱいいっぱいなのです。給費維持すれば、少なくとも、修習費用を稼ぐために修習延期する人が減るのではないでしょうか。
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Unknown (tetsu)
2010-09-17 21:43:17
私も「なるみ」さんの意見の賛成です。
できるだけアグレッシブな弁護士活動を行うには、返済すべき金額が大きすぎますね。
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Unknown (ken)
2010-09-18 02:56:52
医師の新臨床研修制度などと比較してみれば、司法修習生の給費制が特別でないことはわかるはずです。
(劣悪な研修環境に置かれた研修医が問題だとして、新たな制度が発足したのは有名ですよね)

国家・制度を維持するためにはコストがかかります。
例えば、政党交付金は民主主義のコストであることを大義名分として年間300億以上も費やしているのに、大多数の国民は文句を言っているでしょうか?

日本は司法制度にコストをかけなさすぎではと思うのです。
大切なのは、司法制度が我々国民にとってどれだけ大切であるかを法曹三者が説明していくことだと思います。
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ロー卒の特権こそ問題 (サウナ泉里♪)
2010-09-18 06:23:37
給 費 制 維 持 か 貸 与 制 導 入 か は、瑣 末 な 議 論 だ と思 い ま す。

貸 与 制 では富 裕 層しか法 曹になれなくなるとの理 由を大 上 段から振 り か ざすなら、そもそもロースクール卒 業 生しか合 格 率が大 幅に優 遇された新 司 法 試 験を受けられなかったこの数 年 間の状 況について、貸 与 制 反 対 者(日 弁 連、法 科 大 学 院 関 係 者、ロ ー 生 及び ロ ー 卒 業 生)はど う総 括 されるのか?

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Unknown (fb)
2010-09-18 14:41:50
貸与制が廃止できないのであれば、以前のように修習期間を2年に戻してほしいと思います。
今のロースクールではどうせ修習の一部を担ってないわけですから。
ノキ弁、即独が増加しているので、修習期間を延ばせばそのような方々にも利益になると思います。
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Unknown (孫悟空)
2010-09-19 09:26:01
修習期間を2年にすることにより、借入金の金額が2倍になる不利益を考えていないのは、法的思考力が全く欠如している。
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給費生維持に賛成です (受験生)
2010-09-20 12:46:43
もちろん経済的負担の問題も重要ですが、より重要なのは修習専念義務との関連だと思います。国家が国民を無給で、しかもアルバイトも禁止して1年も拘束することなど許されるのでしょうか。それならば修習を任意にして国民全体がその不利益を甘受する、という方が筋は通っている気がします。
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Unknown (ろっと)
2010-09-20 13:35:11
事実上の門前払いが可能になるような制度変更には反対です。

その意味で、ローも事実上の門前払いだと思いますが。
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