産経新聞 金曜討論 「緊急事態条項」 西修氏、徳岡宏一朗氏
9条と並んで憲法改正の最優先課題とされる緊急事態条項。東日本大震災の発生で、その必要性が認識されるようになってきた。来るべき巨大地震や外 部からの武力攻撃、大規模テロといった事態に現行憲法で十分に対処できるのか。駒沢大の西修名誉教授と弁護士の徳岡宏一朗氏に見解を聞いた。(溝上健良)
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≪西修氏≫
生命財産を守るため必要
--そもそもなぜ緊急事態条項か
「国家の最大の任務は国の独立を守り、国民の生命・身体・財産を守ることだが、今の憲法は緊急事態の発生を予期していない。そして緊急事態の際には一時的 に、基本的人権を制限する可能性が出てくる。立憲主義を守るために一時的に立憲主義を制約することはありうるわけで、これは憲法で規定すべきだ。世界のほ とんどの国の憲法で緊急事態条項が設けられており、これは常識といっていいだろう」
--現行憲法に条項がない理由は
「制定当時の日本には主権がなく、米国の方針として日本が将来、米国と世界の平和を脅かさないようにしておく必要があった。その流れの中に憲法が位置づけられていたことが大きい」
--もし緊急事態条項があったら、東日本大震災への対応も違っていたか
「それは政府の対応や国民の意識などが違っていたはずだ。予期せぬことが起きることを前提として、それにどう対処するか、ということだから」
--予期せぬことが起こる以上、条項の規定は包括的なものであるべきか
「その通り。だから『国民の憲法』要綱でも武力攻撃や内乱などを例示した上で『その他の緊急事態』と盛り込んでいる。
諸外国の憲法をみても『どんな場合に、どんな機関が、何をするか』を大まかに定めており、産経の要綱もそうなっている」
--諸外国の憲法の潮流は
「1990年から昨年までに憲法を新たに制定した100カ国は、すべて緊急事態条項を定めている。国家には必ず置くべき条項だといえるだろう」
--護憲派からは、緊急事態における人権の制約への懸念が強い
「東日本大震災でもあったが、ある場所に居住できないとか移転が必要ということは一時的にありうることだ。国民の生命・財産を守るため、一時的に人権を制 限するのは当然のことだ。そうでないと人権がすべてで何もできないことになりかねない。緊急時には物価統制ということも考えられ、ドイツなどは1968年 に憲法で緊急事態条項を定めるとともに、個別法で細かく規定している。不安や混乱を最小限に抑えるための法体制が必要だ」
--これまでと同様に、今後も緊急事態条項は不要との声もある
「東日本大震災でも本来は災害対策基本法に基づいて災害緊急事態の布告をすべきだったし、安全保障会議も開くべきだった。震災直後にはロシア軍機や中国軍機の不穏な動きもあった。自然災害以外にもいろいろな事態が考えられ、条項は必要になってくる」
--人権の制限を憲法でなく法律で規定すれば十分という見解もあるが
「憲法で定められた人権を法律で制限していいのか。そこは憲法できちんと歯止めをかけておく必要がある」
≪徳岡宏一朗氏≫
憲法で人権を制限するな
--憲法に緊急事態条項は必要か
「東日本大震災と原発事故でも首相の強権発動は必要なく、条項は不要だと立証されたと考える。浜岡原発の停止については自民党は『強引すぎる』と批判した 一方で、今度は強権発動をできるようにしようとしているのは、矛盾している。法的拘束力のない行政指導で浜岡原発を止められたわけで、現状で首相の権限は 十分に強く、憲法に新たに加える必要性はない」
--例えば今後、原発事故で「撤退は許さない」と作業員の人権を制約するような命令を出す場合、法的根拠が必要ではないか
「だからといって憲法に緊急事態条項を設けて人権を制限すべきでなく、法律で綿密に規定しておけばいい。原発事故が想定外で法的に不備があったために大混乱したわけで、憲法改正に直結させる話ではないだろう」
--世界の憲法では緊急事態条項を盛り込むことが主流になっているが
「日本の場合、条項をつくると乱用される恐れが大きい。通常、各国では条項を発動するのは国がひっくり返るような事態に対してで、産経の『国民の憲法』要 綱にあるような『内乱』程度では条項は発動しないものだ。要綱では『大規模自然災害』も例示しているが、例えば大洪水なども該当するのか。これではいつ緊 急事態が宣言されるかわからず問題だ」
--原発テロなどの場合、強制的に住民を避難させる措置が必要では
「残っていたい人をむりやり移動させるのは居住の自由を奪うことになりやり過ぎではないか。一見、人命を考えているようではあるが、行き過ぎが生じかねない。選択肢は住民側にあることが大事で、強制的に出ていけ、ということはすべきではない」
--南海トラフ巨大地震などの際の国会議員任期延長の是非について
「緊急事態宣言が出ている限り議員でいられることになり適当でない。無能な議員が残り続けることにもなる。やはり緊急事態下でも選挙は必要だ。巨大災害でも被災地以外では選挙ができるはずで、そのための特別法をつくっておく必要はあるだろう」
--想像できないような事態に対処することが国の責務ではないか
「東日本大震災の津波も過去に同じような津波があり実際には『想定内』だったわけで、法律で事前に対処法を規定しておくべき問題だった。国会で事前に綿密 に検討して、法律をつくって対処するというのが正道だ。国には各分野の専門家がおり、さまざまな事態を網羅することは可能だろう」
--緊急事態条項を導入せず、基本的に法律で対処すべきということか
「そうだ。やむをえず人権を制約する必要がある場合、法律で要件を明確にして規定すべきだ」
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【プロフィル】西修
にし・おさむ 昭和15年、富山県生まれ。73歳。早稲田大大学院博士課程修了。政治学博士、法学博士。昭和55年から平成23年まで駒沢大教授。「図説 日本国憲法の誕生」など著書多数。
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【プロフィル】徳岡宏一朗
とくおか・こういちろう 昭和37年、兵庫県生まれ。51歳。東大法学部卒。平成3年、弁護士登録。龍谷大客員教授。16~22年に関西学院大法科大学院教授。「宮武嶺」名義で執筆活動を行っている。
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緊急事態条項が国民の生命財産を守るために必要だってカイケン派は言うけど、自民党のカイケン案って、国民の生命財産を政府が守らずに放置しても違憲ではないように、責任をとらずに済むように出来ているんでしょう。政府が人権を制限してなんでもかんでも好きなようにできるようになっていたら、それはもはや憲法ではないですね。
それに、どうして人権を制限しなければいけないのか、西氏の話は具体的な説明になっていないのですけど。
「そこは憲法できちんと歯止めをかけておく必要がある」って、自民党が暴走を始めたら歯止めなんて絶対きかないでしょうし。だって、基本的人権を自分たちの好きなように制限したい政党ですから。
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20130730-OYT1T00050.htm?from=main1
これが日本国の総理大臣をやった男のいうことか!!!!
戦前の「特高警察・ゲシュタポ」が闊歩する世の中に逆も取りさせてはいけない。
麻生も結局、世襲ボンボン総理の安倍と同じということらしい・・・・・・・
最近お忙しいようで、記事の更新が少なく、ちょっとさびしいですが、暑さに負けぬようお祈りいたします。
いつも外国との比較の場合はOECD諸国などが例に引かれる場合が多いのですが、それらの国々では具体的にどういう条項が定められているのか、正確な訳文で読みたい気がします。
徳岡さんのお話も、具体的な実例を引きながら説明していただいたほうが説得性があったと思います。
これ、麻生氏はワイマール憲法が改正されたという不正確な知識を前提にしてますね。
その文脈で「手口を学んだらどうか」を捉えなきゃいけないのでやけにややこしい上に、
発言全文読んでもイマイチ何が言いたいのかわからないのと相まって、
要約次第で正反対の意味に解釈可能になってます。
とりあえず言えるのは、この記事だと発言飛ばし過ぎで、記事の趣旨が意図的すぎますね…。
なんだか麻生氏の擁護みたいになってしまいましたが…
麻生元総理の肉声が以下で聴くことが可能です。
それを聴いて麻生元総理がどんなニュアンスでしゃべったか判断されればよろしいと思います。
「記事の趣旨が意図的」とは私は思いません。
http://www.youtube.com/watch?v=lCDW5W8Bt1o
また、科学技術がつねに進歩していますし、国際情勢や気象も動いていますから、かつて起こりえなかったことが今日は起こるということもありえます。専門家は自分の専門分野で過去に作られた文献や理論で将来を予測しようとしますから、意外とシロウトが気付くような目の前の変化や専門外の情報に疎いこともあるでしょう。そして細かい要件を書けば書くほど本質から離れるという事もあるのではないでしょうか。
例の東北大地震と津波の復興が大幅に遅れたのも、「今が政権奪還のチャンス」と足を引っ張ったことが大きいのではないですか。国難だからといってみんなが自動的に団結するとは限らず、むしろ「またとないチャンスだからさらに混乱を大きくしよう」と考える人たちも、立派な代議士先生方やその支持者の中には多いのです。「ここで政権が倒れることが国益だ」という考えも見方によっては成り立つからです。だから、想定外の状況の中で国が取り返しのつかないようなダメージを受けないような一定の歯止めは必要だと思います。外国ではその乱用を防ぐためにどのような規定があるのか、運用の例とともに紹介していただければありがたいです。
http://www.ndl.go.jp/jp/data/publication/document/2003/1/20030104.pdf
イギリス、アメリカの英米法国は規定なし。
まあイギリスは慣習法の国ですしね
アメリカは規定はないものの、大統領権限が大きい上に、
実情に応じて司法が融通を利かせるってかんじ?
大陸法の国はだいたいあるみたいですね。
フランスは例にでていました。
> 「東日本大震災と原発事故でも首相の強権発動は必要なく、条項は不要だと立証されたと考える。
今必要で無ければ、将来も必要無いという"絶対"の確証など何処にも無いでしょうに。
>残っていたい人をむりやり移動させるのは居住の自由を奪うことになりやり過ぎではないか。一見、人命を考えているようではあるが、行き過ぎが生じかねない。選択肢は住民側にあることが大事で、強制的に出ていけ、ということはすべきではない
住人の命の価値は住人自身で決めると言う事なのでしょうが、命の危険が迫っている状況で、それを説得もせず、「死にたいんじゃ」「はい分かりました」の2つ返事で見殺すのを是とするこの意見には納得しかねます。
一体日々自殺を食い止める為にどれだけの人が苦労している事か…。
避難先も無しに出て行けでは問題有るでしょうけど。
>緊急事態宣言が出ている限り議員でいられることになり適当でない。無能な議員が残り続けることにもなる。
どの議員が無能かは実績と歴史が決めるのであって、貴方ではないでしょう。
それとも、貴方は誰が有能で誰が無能か、緊急事態の混乱の中にあって100%正確に判断が下せる人ですか?
>やはり緊急事態下でも選挙は必要だ。巨大災害でも被災地以外では選挙ができるはずで、そのための特別法をつくっておく必要はあるだろう
被災地の民意は完全に無視して構わないという特別法を制定するんですか。
そりゃ被災している最中に選挙などしている場合では無いでしょうが、それは被災地以外でも同じではないのですか?
質問では南海トラフ大地震を想定してますけど、他ならぬ東京が巨大災害で被災したらどうするんでしょうね。
選挙やってる場合じゃないでしょうに。
>東日本大震災の津波も過去に同じような津波があり実際には『想定内』だったわけで、法律で事前に対処法を規定しておくべき問題だった。
上の方では住人の居住の自由を奪うなと言っておきながら、では法律で対処法を定めるとどのような規定になるのか明言しないという・・・。
文脈から「海沿いの居住を制限する法律」になる事は明らかだから、自分の発言と矛盾する為に、明言を避けているとしか思えず、卑怯だと思います。
>やむをえず人権を制約する必要がある場合、法律で要件を明確にして規定すべきだ
法律で基本的人権という最高法規の条文を制限出来るんでしょうか?
公共の福祉でしょうか?