Everyone says I love you !

弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

ICJ(国際司法裁判所)がイスラエル政府に対してガザでのジェノサイド(集団殺戮)行為を防ぐ「全ての手段」を講じるよう仮保全措置(暫定措置)を命令!イスラエル軍の即時撤退を要求しよう!!

2024年01月27日 | イスラエル・パレスチナ戦争

久々に上下とも1位になりました!が抜きつ抜かれつです。

出来ましたら今日もクリックしてくださると大変うれしいです。

 

 

 国際司法裁判所(ICJ)は2024年1月26日、パレスチナ自治区ガザ地区への攻撃を続けるイスラエル政府に対し、ジェノサイド(集団殺害)行為を防ぐ「全ての手段」を講じることなどの暫定措置を命じる仮保全命令を言い渡しました!

 特定の民族や人種への殺害や暴行を禁じるジェノサイド条約は、皮肉なことに、第2次世界大戦中のナチスドイツによるユダヤ人に対する大虐殺(ホロコースト)を機に1948年に制定された条約です。

 同条約ではジェノサイドを

「特定の民族や人種、宗教集団の全て若しくは一部を破壊する意図を持って行う行為」

と定義しています。

 今回のICJでの審理は、イスラエル軍によるガザ地域の市民への攻撃が同条約が規定するジェノサイドにあたるとして、アパルトヘイトを克服した経験を持つ南アフリカ共和国政府が提訴し、仮保全命令と判決を求めていたものです。

 親露派でロシア軍によるウクライナ侵略後もロシア軍と共同演習をしているような南ア政府ではありますが、このイスラエル政府に対する提訴に関してはグッジョブとしか言いようがない、国際人道法の確立に対する大貢献と言えます。

 

 

 この日、ICJのドノヒュー裁判長は

「この地域で繰り広げられている惨劇を痛感しており、人命の損失と人々の苦悩が続いていることに深く憂慮している」

と述べ、イスラエルにジェノサイドの防止と関連の証拠の保全を命じました。

 この命令にはジェノサイドの扇動を防止する手段を講じることや、ジェノサイドが疑われる行為の証拠保全、そしてガザの人々への人道支援を供給するために、有効な方策の即時実施も含まれています。

 そして、ICJはイスラエル政府に対してこれらの措置について1か月以内に報告するように命じました。

 ちなみに、イスラエル政府に対してこの命令に従わせる強制手段はないものの、この仮保全命令には法的拘束力があり、従わなければそれ自体が違法すなわち国際法違反です。

「ジェノサイドの煽動」とは例えばこういう発言を指している。

イスラエルのネタニヤフ政権の閣僚がガザへの核兵器の使用も「選択肢の一つ」。ガザへの人道支援物資の搬入に反対してパレスチナ市民は「砂漠にでも行け」。非道の限りを尽くすイスラエル軍はガザから即時撤退せよ。

 

 

 当ブログでもご視聴をお勧めした2024年1月11日の口頭弁論で、南アフリカ高等法院のテンベカ・ングクカイトビ弁護士が弁論し、イスラエルが「集団虐殺の意図」をもっていることは、「軍事攻撃の実施方法から明らか」で、「ガザを破壊する意図は、国家最高レベルで醸成された」としました。

 同じくアディラ・ハシム氏は、

「パレスチナの人々の生命、財産、尊厳、人間性が毎日、回復不能なほど失われ、それが積み重なっている」

「そうした苦しみを止められるのは、この裁判所からの命令だけだ」

と述べました。

 さらに、南アフリカのロナルド・ラモラ法相はこの日の法廷で、イスラエルが受けたどのような攻撃も、

「(ジェノサイド)条約違反を正当化もしくは擁護するものではない」

と訴えました。

【本日2024年1月11日午後6時から!】国際司法裁判所(ICJ)でイスラエル軍のジェノサイドを裁く、南アフリカ対イスラエルの口頭弁論が日本語字幕付きで中継されます!

 

 

 これに対して、イスラエル側はガザへの軍事作戦は自衛だと繰り返し主張して

「イスラエルが始めたわけでも、望んだわけでもない」

「ジェノサイド的な行為があるとしたら、それはイスラエルに向けられているものだ」

として、2023年10月7日のハマスの越境攻撃が原因だと強調しました。

 さらに、イスラエル軍の作戦停止を南アフリカ政府が求めたことについて

「市民を守る義務を果たすために必要なイスラエルの能力を否定する試みだ」

「イスラエル固有の自衛する権利を妨害しようとしている」

と述べました。

イスラエル、国際司法裁で「集団殺害企図したのはハマス」と主張 - 産経ニュース

国際司法裁判所の前ではパレスチナとイスラエルのそれぞれの支持者グループがデモ行動をした(11日)

国際司法裁判所の前ではパレスチナとイスラエルのそれぞれの支持者グループがデモ行動をした(1月11日)

 

 

 これに対してICJは冒頭に述べたように、イスラエル政府に対してジェノサイド(集団殺害)行為を防ぐ「全ての手段」を講じることなどの暫定措置を命じたものの、南アが求めたイスラエル軍の作戦中止までは踏み込みませんでした。

 ICJはこれまで国家の行為をジェノサイドだと認定したことはなく、本裁判での認定にはジェノサイドの意図を立証する必要があるので、最終的な判断までには数年かかるとみられます。

 今回のICJの暫定措置命令ではジェノサイドの認定は伴わず、長期化が見込まれる裁判の審理が継続する間、緊急的に人々を保護するための仮処分命令を出しました。

 しかし、このICJの判断について、パレスチナ外務省は「いかなる国家も法を超越することはできない」ことを改めて示す判断として歓迎し、南ア政府は法の支配にとり「決定的な勝利」と称賛しました。

 2週間ほどの審理で、国連で最高の司法機関でこの命令が出たことの意義は限りなく大きいです。

 普段からイスラエル・アメリカびいきの産経新聞でさえ、

国際法廷、イスラエルにジェノサイド防止命令 日米欧の「自衛支援」にブレーキ

という記事を出して

『「作戦は国際法を順守している」というイスラエルの主張を事実上、退けた。』

『日米欧など先進7カ国(G7)はイスラエルの「自衛権」を支持したが、作戦続行を支えることは難しくなった。』

と書いています。

 また、ロシア政府がウクライナに侵略した直後に同じく仮保全命令を出したICJが、今度はアメリカ合衆国の庇護を受けてきたイスラエル政府にジェノサイドを止めるように同じ命令を出したということで、国際法と国連機関への世界の市民からの信頼と期待を裏切らなかったという点でも歴史的で画期的な命令が出たと言えるでしょう。

南ア対イスラエルでラグビーをやったくらいの南アの圧勝。

 

国際司法裁判所がロシアに対し、ウクライナでの軍事行動を即時停止するよう命じる仮保全措置命令(法的拘束力あり)。「ロシアによる武力行使は国際法に照らして重大な問題を提起しており、深い懸念を抱く」

 

2024年1月4日、ガザ境界に近いイスラエル側から撮影したガザ北部の様子(ガザ=新華社配信)。
これはジェノサイド以外の何物でもない。

イスラエル軍のガザ攻撃開始から3か月。住宅の7割が破壊され2万数千人が死亡。ガザ市民220万人のうち190万人が避難し「ガザにいるすべての人が空腹だ」(国連)。イスラエル軍は即時無条件に完全撤退せよ。

 

 

 さて今後、世界の市民や学者の間で議論になるであろう、ICJがイスラエル軍に作戦中止までは求めなかったことについて、現時点での私の見解を述べさせてもらうなら、それは瑕疵ではあるが大きな問題ではないと言いたいです。

 前回の記事でもご紹介したように、私はICJで1996年7月に言い渡された

「核兵器の威嚇と使用は一般的に国際法違反である」

という勧告的意見を勝ち取った「世界法廷運動」の一員として、その言い渡し期日にも大法廷で立ち会いました(その時の通訳がうちからブログをリンクしている国境なき通訳団ののら猫 寛兵衛さんでした)。

 しかし、実はこの勧告的意見には「抜け穴」がありました。

 核兵器の威嚇と使用は一般的に国際法違反である、ただし、一国の存立が脅かされるような事態での自衛手段としての核兵器の使用については

「判断しない」

という但し書きの例外がついていたんです。

 この部分は、前回の記事で書いたように核保有国であるフランス政府が読んできた学者証人であるソルボンヌ大学の教授が強調した部分だったんですね。

 しかし、核保有国は自衛の場面、特に国家の存亡がかかった自衛のため核兵器の使用が合法だと言い張ったのですが、非同盟中立国や反核市民運動が押し込んだ結果、その場合の核兵器使用の違法性についても、国際司法裁判所に「判断しない」としか言わせなかったのが、実は大きな成果だったんです。

国際司法裁判所で証言する平岡敬広島市長。

それを見上げる外務省の審議官がこれが悪い奴で(笑)、平岡市長と長崎市の伊藤一長市長が証言する前に「両市長の発言は日本政府を代表するものではありません」とわざわざ言いやがった(怒)。

 

 

 私は、このようにこの勧告的意見がいかにこれからの核廃絶運動に有効であるかを押し寄せてくる記者たちに説明し、またホテルに帰って日本で報告を待つ反核運動の仲間たちに必死で伝えました。

 けれども、いかなる場合でも核兵器の使用は絶対的に違法だ、というのが我々反核運動家の信念であり望んでいた勧告的意見でしたから、ちょっとでも例外があるということを、特に被爆者の方たちは許せなかったんですね。

 後掲の勧告的意見25周年の中国新聞の社説に

『被爆地にとっては、物足りなさが残る内容だった。国家存亡に関わる状況下での自衛に関して、核兵器の使用が「違法か合法か結論は出せない」と明快な判断を避けたからである。核兵器を持つ国々に「言い訳」の余地を残してしまった。煮え切らない結論だと、被爆地が当時、反発したのも無理はなかろう。』

と書いてあるのが、当時の日本の市民運動の空気感を良く表しています。

 しかし、同社説にも続けて

「それでも、核兵器の違法性について国際社会が初めて示した司法判断である。

 今年発効した核兵器禁止条約の土台を築くことにもなった。

 法的な拘束力がないとはいえ、その歴史的な意味を軽んじてはなるまい。」

とあるように、核兵器の威嚇と使用だけではなく実験も製造も運搬も保管も、およそ核兵器に関わる全ての行為を禁止して違法化した核兵器禁止条約が発効して今や国際社会のスタンダードになろうとしている、そのスタートがこの勧告的意見だったんです。

核兵器裁判 (NHKスペシャル・セレクション)
NHK広島核平和プロジェクト (著)
日本放送出版協会

国際司法裁判所に核兵器の違法性について勧告的意見を求めた世界法廷運動についての個人的思い出

 

 

 さて、今回ICJがイスラエル政府に命じた仮保全命令と違い、核兵器の違法性に関して出した勧告的意見には法的効力もなく、一種の宣言にしかすぎませんでした。

 それでも、この意見を勝ち取った世界の市民運動の理論の構築と経験が、後の核兵器禁止条約に結実しています。

 まして、今回の仮保全命令には法的効力があります。

 さらに判決まで行くと敗訴することが確実だということで本裁判からは逃げてしまったロシア政府と違って、イスラエル政府は南ア政府からの提訴を受けて立っているので、これから判決へ向けての審理が続きます。

 国連安保理と違って国際司法裁判所の米国の判事は1票を持っているにすぎず、拒否権はありません。

 数年後と予想される判決も我々が油断なく支援していけば、十分中身が期待できます。

 そして、我々地球市民は今回のICJの仮保全命令を生かして、イスラエル政府とアメリカ政府などイスラエル擁護にこだわる政府を包囲して追い詰め、早期にイスラエル軍の早期撤退を勝ち取る努力を続けるべきです。

 さらには、今回のガザ市民の犠牲と戦争という悲劇を無駄にすることなく、イスラエル政府にイスラエル国とパレスチナ国という二カ国共存を改めて認めさせていくことが大切です。

日本の市民も遠い国の他人事と思っていたら大間違いだし、恥でもある。
イスラエル軍によるガザ攻撃での死者が2万5000人を超える。岸田文雄首相は石油危機で米国の言いなりにならなかった田中角栄首相の独自外交に学び、イスラエルとパレスチナの2カ国共存を強く主張すべきだ。

 

 

国際刑事裁判所(ICC)と国際司法裁判所(ICJ)を混同して(-_-;)、とにかく国連の裁判所なんてアメリカに支配されているから信用できないと言っていた親露派や反米派の人たちも、今回の命令で少しは認識を改めてくれるといいのですが。

不完全でも、不満があっても、不公平に見えても、今ある国際法や国際機関を改善しつつ使って、ちょっとずつでも国際社会を前進させるしかないんです。

国内でも国際的な問題でも、市民がシニカルになったり投げやりになったら、それこそ権力者や大国の思う壺なのですから。

上下ともクリックしてくださると大変うれしいです。

 

 

イスラエルに集団虐殺防止措置命令 国際司法裁、停戦踏み込まず

審理に臨む国際司法裁判所の判事ら=オランダ・ハーグで2024年1月12日、AP

 イスラエルがパレスチナ自治区ガザ地区で続けている戦闘は「ジェノサイド」(集団虐殺)にあたるとして、南アフリカが戦闘停止などを求めた訴訟を巡り、オランダ・ハーグの国際司法裁判所(ICJ)は26日、イスラエルにジェノサイドを防ぐ「あらゆる措置」を取るよう求める仮保全措置(暫定措置)命令を出した。命令には法的拘束力があるが、イスラエル側の反発が予想される。

 この他、ジェノサイドを扇動する行為の防止や処分▽ジェノサイドが疑われる行為の証拠保全▽ガザの人道状況の改善――を命じた。1カ月以内にICJに報告するよう求めている。一方で、即時停戦には踏み込まなかった。

 訴状によると、南アはイスラエルがガザで集団虐殺を意図した行為を続けており、ジェノサイド条約に違反していると指摘。ICJに対し、イスラエルがパレスチナ人の殺害をやめ、ガザへの支援物資の制限などを解消することなどを求めている。

 一方、イスラエルはハマスがガザ市民を「人間の盾」として使っており、ガザの人道危機はハマスの責任だと反論。またイスラエル側は攻撃の際、市民の被害を最小限にするように配慮していると主張している。

 ジェノサイド条約は第二次世界大戦中のユダヤ人大量虐殺(ホロコースト)を受けて採択された。特定の民族の一部、または全体を破壊する意図で殺害する行為などを「ジェノサイド」と定義している。

 イスラエルの行為がジェノサイドにあたるかどうかを判断する判決が出るまでには、数年かかる見通し。【エルサレム三木幸治】

 

 

イスラエルにジェノサイド防止命令、国際司法裁 戦闘停止には触れず

国際司法裁判所(ICJ)は26日、イスラエルに対し、パレスチナ地区ガザでジェノサイド(大量虐殺)を防止するためにあらゆる措置を講じるよう命じた。写真はICJ前でのデモ。(2024年 ロイター/Piroschka van de Wouw)
[ハーグ/ガザ 26日 ロイター] - 国際司法裁判所(ICJ)は26日、イスラエルに対し、パレスチナ地区ガザでジェノサイド(大量虐殺)を防止するためにあらゆる措置を講じるよう命じた。ただ、ジェノサイドであるかどうかの判断は示さず、戦闘停止についても言明しなかった。
南アフリカは昨年末、イスラエルがジェノサイド防止に関する条約に違反していると提訴し、イスラエルに戦闘停止の緊急措置を命じるようICJに求めていた。
ICJは、ジェノサイド防止やガザにおける人道状況改善に向けた措置を講じ、1カ月以内に進捗状況を報告するようイスラエルに命じた。ジェノサイドに関する判断には数年を要する見通し。また、イスラム組織ハマスパレスチナ武装勢力に対しては、戦闘の引き金となった昨年10月7日のイスラエル攻撃で拘束した人質を解放するよう求めた。
命令を上訴することはできないが、ICJには命令を執行するメカニズムはない。
イスラエルのネタニヤフ首相は、ICJが戦闘停止に踏み込まなかったことについて、イスラエルの「基本的自衛権」を剥奪する「法外な要求を正当に拒否した」と指摘。同時に、イスラエルがジェノサイドを行っているという主張は「虚偽か言語道断」で、「IJCがこうした主張を議論することに前向きであることは不名誉」という認識を示した。
 
パレスチナ外務省は「いかなる国家も法を超越することはできない」ことを改めて示す判断として歓迎。ハマス高官はロイターに対し、今回の決定は「ガザにおける犯罪の暴露」に寄与すると語った。
南アは、国際法の支配にとり「決定的な勝利」と称賛し、イスラエルが命令順守に向けた行動を取ることを望むとした。
昨年10月のハマスのイスラエル奇襲では1200人が殺害され、240人以上が人質となった。その後、ガザにおけるイスラエル軍とハマスの戦闘では2万6000人超が死亡している。

 

 

国際法廷、イスラエルにジェノサイド防止命令 日米欧の「自衛支援」にブレーキ

2024/1/27 00:43 産経新聞
26日、パレスチナ自治区ガザ南部のラファで、戦闘を逃れて避難したパレスチナ人らのテントが並ぶ一角(ロイター)

ICJが暫定措置を出したのは、パレスチナ人の「ジェノサイドから保護される権利」を重視し、緊急措置をとる必要性を認めたため。「回復不可能なリスク」を招く恐れがあると判断した。攻撃停止には踏み込まなかったが、「作戦は国際法を順守している」というイスラエルの主張を事実上、退けた。ICJは国連機関で、命令は拘束力を持つ。

ICJの暫定措置は、イスラエルがジェノサイド条約に違反したか否かの判断とは関係がない。それでも、南アが同条約を根拠にICJに提訴し、イスラエルの軍事作戦に法的歯止めをかけたことで、停戦圧力が高まるのは必至だ。南アの提訴にはアルジェリアやブラジル、マレーシアなどグローバルサウス諸国が支持を表明。暫定措置を受け、スペインは歓迎を表明した。

ICJは今回、紛争に関係しない第三国でもジェノサイド阻止のために法的介入できると示した。ウクライナやパレスチナなど各地の紛争をめぐり、先進国とグローバルサウスと呼ばれる途上国・新興国の対立が深まる中、「ジェノサイド裁判」は今後、新たな外交の武器となる可能性がある。ICJは2020年にもガンビアの訴えを受け、ミャンマーに少数民族ロヒンギャへのジェノサイドを防止するよう命じている。

今回、南アフリカがイスラエルを提訴したのには、歴史的な理由がある。1994年まで続いた人種隔離政策(アパルトヘイト)時代、経済ボイコットにあえぐ白人政権をイスラエルは武器輸出で支えた。民主化後の南ア政府は、イスラエルのパレスチナ占領をアパルトヘイトに重ねて批判してきた。(三井美奈)

 

国際司法裁判所、ガザ即時停戦求めず…イスラエルはハマスの行為がジェノサイドと反論

 【ブリュッセル=酒井圭吾】オランダ・ハーグの国際司法裁判所(ICJ)は26日、パレスチナ自治区ガザに侵攻するイスラエルがジェノサイド(集団殺害)条約に違反するとの南アフリカの提訴を受け、暫定措置を出した。イスラエルに同条約の順守措置を強く要求する一方、南アが求めた「戦闘の即時停止」は含まれなかった。イスラエルへの停戦圧力は限定的なものになりそうだ。

26日、オランダ・ハーグの国際司法裁判所で、イスラエルへの暫定措置を決定した裁判官ら=ロイター
26日、オランダ・ハーグの国際司法裁判所で、イスラエルへの暫定措置を決定した裁判官ら=ロイター

 暫定措置は6項目に及び、イスラエルに対し、▽ジェノサイドを直接実行したり、扇動したりする全ての行為を防止する措置▽人道的な支援提供を確保するため、迅速で効果的な措置――などを取るよう要求した。これらの措置に関する報告書を1か月以内に作成することも求めた。

 ICJの裁判官は暫定措置を発する理由として、ガザの市民生活を「悲惨な状況」とした上で「裁判所が判決を下す前に壊滅的な状況がさらに悪化する深刻な危険がある」と説明した。

 ICJの判決は通常数年~10年かかるため、南アは戦闘停止など9項目の暫定措置を出すようICJに求めていた。イスラエルは侵攻を「自衛権の行使」として請求棄却を求めていた。

 ICJは国連の最高司法機関と位置付けられ、国家間の紛争を仲介する。決定を当事国や第三国に執行させる能力はもたない。2022年3月には、ウクライナを侵略したロシアに対し、侵略開始から約1か月で戦闘停止を命じる暫定措置を出したが、ロシアは応じなかった。

 

 

 

「核兵器」司法判断25年 国際法違反、今や明白だ

社説

 「核兵器の使用と威嚇は一般的に国際法に違反する」。画期的といわれた勧告的意見を国際司法裁判所(ICJ)が出して、きのうで25年になった。

 被爆地にとっては、物足りなさが残る内容だった。国家存亡に関わる状況下での自衛に関して、核兵器の使用が「違法か合法か結論は出せない」と明快な判断を避けたからである。核兵器を持つ国々に「言い訳」の余地を残してしまった。煮え切らない結論だと、被爆地が当時、反発したのも無理はなかろう。

 それでも、核兵器の違法性について国際社会が初めて示した司法判断である。今年発効した核兵器禁止条約の土台を築くことにもなった。法的な拘束力がないとはいえ、その歴史的な意味を軽んじてはなるまい。

 核軍縮は、被爆者の願う速さでは進んでいないようだ。しかし、核兵器がいかに非人道的か、被爆地の訴えは国際社会に着実に浸透してきている。

 勧告的意見にも、被爆地の声が反映されている。広島、長崎の両市長は陳述で、いかなる場合でも核兵器は国際法違反だと訴えた。米国の「核の傘」に依存する日本政府の圧力にも屈することなく、堂々と主張した。

 平岡敬広島市長は、他のどんな兵器より核兵器は残酷で非人道的だと指摘した。伊藤一長・長崎市長は、原爆で黒焦げになった少年の写真を示し、罪なき子どもたちの犠牲を強調した。

 こうした被爆地の訴えとそれに共鳴する多くの国や市民、非政府組織(NGO)の後押しがあったからこそ、限界はあるものの、評価に値する勧告的意見を引き出せたのではないか。

 核兵器の非人道性について、ICJという国際司法の場に判断を迫ることができたのも、被爆地と国際NGOなどとの連携が原動力となっていた。

 さらに、4年前に採択された核兵器禁止条約という実も結んでいる。使用や威嚇だけではなく、保有や開発まで含めて禁じており、いかなる場合でも核兵器が国際法違反だという段階にまで達している。勧告的意見の限界を突き破り、被爆地の長年の訴えを形にしたと言えよう。

 核兵器禁止条約は、保有国による「妨害」があったにもかかわらず、今年1月、発効にこぎ着けた。人類の未来に核兵器は必要なく、むしろその存在は地球環境にとっても害悪であろう。そんな考えから核なき世界を求める人たちは今や、国際社会で多数を占めている。その証しが、禁止条約だろう。

 冷戦終結に伴い、米国とロシアは核兵器を大幅に減らした。それでもまだ、人類を何度も絶滅できる量が地球上に存在している。偶発的事故や人間の引き起こすミスなどによって核兵器が使われるリスクは、廃絶しない限りゼロにはならない。

 核戦争には勝者がいないことを米ロの指導者は先月、再確認したばかりだ。それなら、核なき世界を目指す輪に加わるべきではないか。核兵器保有という自分たちの「特権」にあぐらをかき続けることは許されない。

 「核の傘」に依存している日本政府も保有国と同様、地球規模の視野を欠いている。核なき世界の実現に向け、核兵器禁止条約に署名、批准することが、なぜできないのか。まずは真剣に被爆地の訴えに耳を傾けなければならない。

 

 

上下ともクリックしてくださると大変うれしいです。

コメント (3)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 米連邦議会上下院の外交委員... | トップ | 戦場ジャーナリスト安田純平... »
最新の画像もっと見る

3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (津木野宇佐儀)
2024-01-27 02:44:27
やはり
ネタニヤフもプーチンも戦犯として国際社会が裁かないといけませんね。
ハードルは高く、国際社会ができなくても、両被告とその取り巻き達を、世界の市民が裁きにかける、これは絶対にやらなければならないことだと思います。
返信する
Unknown (非自民)
2024-01-27 06:47:45
イスラエル(ユダヤ人)は自分達の先祖がホロコーストに会い大虐殺された歴史があるのにパレスチナをジェノサイドするのですね。ユダヤ人が大逆殺された事を学校で習ってないのかな?先祖の苦しみとパレスチナ人の苦しみ同じでしょ。自分達がしてる事が恐ろしいことに気がついて欲しいですね。

イスラエルがハマスを支援していたらしいですが双方が繋がっていたのが気になります。イスラエルへの支援はまたアメリカですね。
うんざりします。 イスラエルは何度もパキスタンを侵略してきたくせに、自分がやられると相手をテロ認定するっておかしいですよね?アメリカもイスラエルも相手から見ればテロ組織ですよ。ネタニヤフは悪魔か?

ガザの人たちが気の毒だ。ハマスとイスラエルの争いに巻きこまれて。ハマストップはパレスチナ以外の安全な場所にいるのがムカつく😒💢。この戦いもいつまでも続くのか?
ガザの壊滅状態と疲れきって希望もない、インフラもないし餓死寸前の人々の気持ち考えると、これ以上やめてって人間なら思うよね。ネオコンと大資本の人を除いては。

戦争は儲かるが武器輸出国の間で言われているけど、残酷で無責任な強欲が資本主義なんだね。戦争を望んでる。平和を憎んでる。日本も参加するなんて信じられないね。

日本のニュースからガザの状況やウクライナの戦争の悲惨さをほとんど見れなくなっているのが心配です。これからの日本の事を考えたら、みんなガザやウクライナの情報に触れていた方がいいと思いますね。

戦争ってやらされてるだけなんだよ。お役人から強制されて。勝っても負けても一般人の利益はないよ。生き残ったとしても悲しみを背負いながら餓死するかもね。小さくて大陸に囲まれた離島の日本ではまた核を落とされて、進化した核兵器で日本滅亡も有るかもよ?

戦争させない政治が必要でしょ。
タガタメ戦った?戦って誰かった?みたいな歌を歌うと国税からいちゃもんつけられTVから干される政治が今の政権です。
返信する
日本は“シオニスト”と距離を取れ! (ロハスな人)
2024-01-30 10:01:30
☆ネタニエフ首相『 我々は肉食動物・野生動物を見た。ハマスを粉砕し、破壊する 』『 報復攻撃は始まりに過ぎない 』『 我々は力強い復讐をする 』
ヘルツォーグ大統領『 責任はガザのパレスチナの民間人にある。関与していないというレトリックは通用しない 』『 ガザには罪のない民間人はいない 』
ガラント国防相『 私はガザ地区の完全封鎖を命じた。電気も食料も燃料も許されない。我々は人間以下の動物と戦っている 』 >

こんなどう見ても“正常な思考回路が壊れている”人達の証言だけを元に“明白な証拠がない”ままパレスチナ支援の国連組織のUNRWAへ資金拠出停止をするアメリカはじめとする九か国(日本も)の首脳陣の頭の中は本当に大丈夫なのでしょうか?

あの“凶悪なトルコの独裁者”エルドアン大統領からすら非人道的と酷評されるポンコツ集団に成り下がった日本やアメリカ他の首脳陣は本当に救いがたいですね。

※イスラエルを主導する“民族浄化すら是とする”シオニストたちと『普通の善良なユダヤ人たちは全く別物』であることをさらに周知するのは必須なのでしょうね。

https://johosokuhou.com/2024/01/29/72240/
☆日本政府もUNRWAへの資金拠出停止!国連スタッフがハマス攻撃に関与とイスラエル情報 アメリカに歩調を合わせる
2024年1月29日 情報速報ドットコム
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

イスラエル・パレスチナ戦争」カテゴリの最新記事