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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

また来た少年法の厳罰化では、非行もいじめも虐待もなにも解決しない 求められるのは愛と寛容と理解

2012年08月24日 | 子ども未来法律事務所通信

 

 最近、大津で中学生によるいじめというもおこがましい事件が発覚し、裁判になっても教育委員会や学校がいじめ自体といじめと自殺の間の因果関係を隠ぺいする、言語道断な出来事が次々と明るみに出ています。

 大津の教育長などの心無い言動の数々で、善良な市民が怒り心頭に発し、これに便乗する政治家やジャーナリストが雨後の竹の子のように現れて、あることないこと言いふらして、地域社会と教育環境を致命的に破壊しています。最大の被害者はなくなったお子さんと、ご遺族とご友人たちなのに、パフォーマンス優先の政治家たちは被害者そっちのけで、自分が目立つことに必死です。

 

 そして、かつて、こんな少年の大事件が起こるたびに、少年法の小手先の「改善」が行われてきましたが、ほとんど功をを奏していません。法務省と警察庁と裁判所のアリバイ作り、権益拡大でしかありません。

 

 

 

 新聞報道によると、罪を犯した少年に対して言い渡せる有期刑を最長で懲役(禁錮)15年までとしている少年法の規定について、法務省は、より厳しくする方針を固めるそうです。その言い分としては、犯罪被害者や裁判員裁判を経験した市民らから「少年犯罪が成人と比べて軽すぎる」との指摘があるためで、懲役年数の引き上げを想定しているのだそうです。

 

 かつて、神戸須磨連続殺傷事件(いわゆる酒鬼薔薇聖斗事件)が起こった時に、社会は「理解できない青少年の狂気」に恐怖し、少年法改悪など、さまざまな厳罰化がおこなわれました。

 

 しかし、それ以前から半世紀ちかくも非行少年の凶悪化が減少し続けていることは無視しされ、逆に小手先の厳罰化では、子どもたちの生き辛い世の中が余計に苦しくなることはあっても改善することはありあせんでした。

 ですが、1960年と2010年を比べると、たとえば少年による殺人事件はなんと3分の1になっています。とても少子化では説明できない激減です。また、少年犯罪の異常化も言われましたが、須磨事件で起きた被害者の少年の首が切られるという犯罪は、ずっと以前の少年事件でも起こっているのです。

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 殺人・強盗・強姦などの事件も減り続けています。しかし、子どもたちの自殺は増えているのです。

 今を生きる少年たちは凶悪化しているのではない。絶望しつづけているのです。いま、子どもたちの命を守るために必要なことは、安直な少年犯罪の厳罰化ではありません。

 また、根本的なことを言えば、いじめをする子供たちの多くは、自分のやっていることをはっきりとはいじめだとか犯罪だとかさえ思っていないことがあります。「そこに、人間としてやってはいけないことはやるべきではない」という規範意識の働きようがないのです。そこに厳罰化を持ってきても自分の問題としてとらえる力がないでしょう。

 子どもの心を育てることが肝要で、罰には教育的効果は乏しいのです。

 まあ、大人が選挙で選んだ政治家が嘘を平気で言う世の中ですから、大人が子供に言う資格がない情けない現状ではあります。

 いま、本当に考えないといけないことは、正しいことが通らず人が踏みつけにされていること、それでどうしていいかわからない子どもたちの日常が息苦しく、生き辛くなっている、ということなのです。

 そして、19~35歳の青少年の死因の第一位が自殺になってもう数年たちました。


 青少年自殺の原因の一部はいじめ自殺でもあるでしょう。しかし、それだけでは説明できないです。

 だれに自殺を強要されるのでなくても、凶悪犯罪をされるのでなくても、子どもたちは社会とコミュニケーションを取れないまま、孤独に追い込まれていき、自死さえしてしまうのが今の社会です。

 消費税が2%上がっただけで年間自殺者数は3万人を超えたままです。このまま消費税が倍になったら、数年後、大人も含めて自殺者が急増するでしょう。

 正論が正論として通らず、生きる希望が持てないのが最大の問題なのです。

 それでもあきらめず、私は無い知恵を絞ってこれだけ具体策を書いてきました・

厳罰化では少年事件の再犯は防げなかった 「非行」少年に暖かい目を 子ども未来法律事務所通信13

歩いていこう 人生は結果じゃない 過程だ  子ども未来法律事務所通信15

いじめでなく、リンチでもなく 子ども未来法律事務所通信20

我が子をいじめで失わないために 子ども未来法律事務所通信23

子どもたちの命を守るために教育委員会は廃止でなく教育委員公選制に 子ども未来法律事務所通信21

児童虐待相談・通報件数過去最高 いじめ・虐待対策は地域ぐるみで子どもを育てること 子ども未来通信24 

児童虐待を止められない親御さんに あなたはやめられる  子ども未来法律事務所通信8

「がんばろう日本!」と言うのはもう止めよう 子ども未来法律事務所通信14

消費税のために「人質」にとられた幼保一体化 「総合こども園」は要らない 子ども未来法律事務所通信16

「情けはサルのためならず」 チンパンジーはお節介を焼かない 子ども未来法律事務所通信17

文科省がいじめ問題でできることはいじめ調査の基準つくり 政治家と官僚のパフォーマンスは要らない!

などなど

 

 

 子どもが希望を持てない社会に生きていて、大人たちも楽しいですか。

 老人が人生の最後を楽しく過ごせないとわかっていて、青少年が将来に夢が持てますか。

 このまま、だらだら、ジリ貧に堕ちていく日本なんて私は拒否します。

 厳罰化よりも、子どもたちに寄り添う物的人的援助をお願いします。



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少年事件の有期刑、引き上げ 法務省、9月にも諮問

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成人と少年の刑の関係

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少年事件と刑の厳罰化

 罪を犯した少年に対して言い渡せる有期刑を最長で懲役(禁錮)15年までとしている少年法の規定について、法務省は、より厳しくする方針を固めた。犯罪被害者や裁判員裁判を経験した市民らから「成人と比べて軽すぎる」との指摘があるためで、年数の引き上げを想定している。

 早ければ9月にも法相が法制審議会に諮問し、来年の通常国会に改正案を提出する方向で検討している。少年の立ち直りを重視する少年法の理念との兼ね合いが論議を呼びそうだ。

 少年法には18歳未満の少年には死刑を宣告できないようにするなど、成人より量刑を軽くする規定が設けられている。有期刑については、判決時に20歳未満の少年に対して3年以上の懲役か禁錮の有期刑を宣告する場合には「○年以上○年以下」という形の不定期刑とし、最長でも10年までとする▽犯罪時に18歳未満だった少年に無期刑を言い渡すべき場合には、代わりに10年から15年までの間の有期刑に刑を減らすことができる――としている。

 一方で、成人については、2004年の刑法改正で上限が引き上げられ、単独の罪では20年まで、二つ以上の罪を犯した場合には30年まで言い渡せる。

 成人であれば30年の罪に問われるような重大な犯罪でも少年ならば最長10年まで、成人が無期刑を言い渡される罪でも少年なら15年までとなり得る「格差」の拡大は、刑法改正の段階から指摘されていた。さらに、少年事件の被害者らの「成人との差が大きすぎるのではないか」とする批判や、09年にスタートした裁判員裁判を経験した市民からは「少年事件で思ったような量刑が選択できない」といった不満が出ていた。

 法制審では、不定期刑の上限の10年を引き上げるほか、無期刑の代わりに有期刑を言い渡す場合の上限である15年についても引き上げる方向で議論されるとみられる。ただし、犯罪時に18歳未満だった少年に死刑を言い渡すべき場合に無期刑に減刑するという現在の規定については、見直しを想定していないという。

 このほか、同省は少年の権利保護を強化するため、少年審判で少年に弁護士をつける「国選付添人制度」の対象拡大も検討している。有期刑の引き上げとともに、諮問内容に盛り込む方向で調整している。(田村剛)



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27 コメント

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Unknown (K)
2012-08-24 18:15:32
厳罰化はともかく刑事未成年の規定(年齢による一律責任阻却規定)は廃止すべきではないかとも思います。
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勉強になります (せきと)
2012-08-25 00:21:40
的確なデータ、深く明晰な理論、そして熱いヒューマニズム、一つひとつの記事に、「自分も何かしなくては」と突き動かされるようです。
しばしば、私のブログに紹介させて頂きますことをお許し下さい。
返信する
過分のお褒めのお言葉ありがとうございます (ray)
2012-08-25 00:42:38
拙文で良ければ、これからもどうかお使いくださいませ。
返信する
本質の議論が必要ですね (村中花火)
2012-08-25 02:25:03
少年法の厳罰化に賛成の立場ですが、貴ブログを拝見し、たとえ少年法を廃止してもイジメが無くなることは無いと思い至りました。
私の堕ブログに、貴ブログ記事を紹介させていただきます事ご容赦ください。
返信する
Unknown (AS)
2012-08-25 12:13:44
「社会を明るくする運動」の標語“防ごう非行 助けよう立ち直り”が虚しく響く政策ではありますね。
少年法をあれこれいじるなら引き換えに、少年に成人に準じる権利を付与すべし。
返信する
子どもちの学校生活は、昔とは違います。助けてください、子どもたちを (横浜の母)
2012-08-25 12:32:03
今時の学校は、昔とは違います。

受験教育にご熱心な親御さんたちと文部科学省との協奏で形作られた能力主義の学校と化しています。
それに輪をかけて…

経費削減の折から、学校の人手が足りず
学校によっては先生がたが走り回っておられます。(歩いている余裕がなくて)

また、少子化と…少子化ゆえの孤育て化で
子ども社会も崩壊。
これが大きな問題!

クラスメイトがいじめに遭っていても、子どもたちには苛められている仲間を助け出す力がありません。そういう力が育っていないのです。

だからこそ、先生がたには、しっかりとしていただきたいのですがねえ…

日本の学校教育は、昔のまま。
管理と能力主義が厳しくなるばかりで、教育の根本的な改革がなされていないので、

「既存の学校には行かせない、既存の教育をえらばない」……

経済的に余裕のある御家庭では、そういう傾向が。

なぜ経済的に余裕が必要か?
それは、文部科学省が…国が…
そういう新しい教育を認めないから、だから、国からの予算は下りないからです。

いくら表面的なところをいじくったところで
日本の学校は変わらない。
なぜなら地域の公立中学校から高校に進むには
高校入試があるのですから、その手法も昔とほとんど変わっていないですしねえ…
公立と私立の定員割合に取り決めがあったり。

これで、よく黙っておられますよね、日本人は

日本の親御さんたには。。

もっと皆さん、国に対して怒ってもいいのでは?怒ったらいいんだよ。

原発反対運動と同じように。

私は、たまーに文部科学省に対して文句を言いに言っていますが、、

そうでもしないことには、学校なんて変わらない。

教育委員会は文部科学省の下請けです。

返信する
少子化地域での子育ては難しい。 (横浜の母)
2012-08-25 12:54:25
もう、いい加減に

友達を蹴落とす のではなくて…

周りの人たちと、どうやったら

うまく共存していけるか…

そういう教育に変えていただきたいものです。

世の中には、色んな人たちがいる・色んな考え方や感じ方があるということを教えるのが
社会に出る前の準備をする学校ではなかったかな?昔は。

それが、今や、排除されたり不登校状態に追いやられたり…
だから今、特別支援学校がマンモス化。

嫌な時代ですが…

私は、屈しませんよ!!



返信する
釈迦に説法ですが (時々拝見)
2012-08-25 13:21:55
少年犯罪データベースで少年による殺人事件の増減を調べたことがあります。(~年には1年の誤差があります。)
1.戦後、事件は増加の一方でした。最初は統計さえ残っておらず、打つ手なしの状況でした。
2.一転、真教育基本法から8年、事件は減少に転じます。最初から戦後教育を受けた世代が事件の最低95%多くは98%以上を占める14歳以上に達した年です。その世代が義務教育を終えたのが次の年です。今より、義務教育だけの方が多かったはずです。
3.二転、減少一方だった事件が、赤狩り(逆コース)から8年、再増加に転じます。
この、絶望的な状況を救ったのが、戦後教育ですが、覚えているのがここまでなので、データを確認しておきます。
返信する
先にも述べましたが、 (浪速姫)
2012-08-25 14:58:57
「子どもの権利条約」に集約的に提示された「子どもの権利」が十全に保障されていない状況を放置しておいて、小手先の法改正で「イジメ」・少年の「犯罪」がなくなるはずはありません。

 原因をなくさぬ限り、同じ現象は防げません。拙い譬えですが、軟弱な地盤をそのままにしておいて、いくら家を建て直そうがその家が傾くのは防げません。

 子どもたちが育つのは、家庭であり地域であり、そして学校であるわけですが、本来、最も平等で安全で、多くの人・ものと触れあうことが、これから社会人となるすべての子どもに保障された場が公教育を担う「学校」です。

 個人と同じく家庭や地域には様々な差異・違い・個性―必ずしも格差とは限りませんがーがあるのは当たり前のことです。 むしろそうあるべきですが、それを貫いている普遍的法則を、共に生きる社会を知り、共に社会を形成してゆくために必要な知識、そしてあり方を等しく身につけてゆくことを保証された環境が「学校」であるはずです。

 その学習環境・そこでの生活環境が果たして整備されているのかーそれは施設や設備の問題以上に、「教育」の本来の目標を実現するにふさわしい体制が構築されているかどうかです。教育する側・教育を受ける側がともに活気を持って活動できる場となっているかどうかです。

 はたして文部科学省・中央教育審議会、はたまた国会、さらに各地方自治体の教育委員会で、そうしたことが検討されているかどうか。

 「イジメ」の加害者に関し、感情として、「そんなことをした奴は厳しく罰するべきだ」という思いを持つことは被害者の受けた痛苦を考えれば、ある意味ふつうのことです。
 加害者には、それなりの責任があり、上記の状況が、「社会が・学校が悪いからだ」と彼らを免罪する理由にならないのは事実です。
 しかし、そうした結果論よりも「加害者」を生まない状況こそ、今論議されるべき課題です。

第一 「厳罰」化は、「罰が嫌だからやめておこう」ということにつながるのか? 「罰せられないようにすればよいんだ」という事態を加速するだけではないのか?「罰が嫌だからしないでおこう」は、その人物が他者の人権を尊重する姿勢を持ったことを意味しません。

また 「厳罰を科すことで問題は解決しない」は、加害者の擁護・免責を意味しません。 大切なのは彼らが「イジメ」をしない状況、その過ちを真摯に省みる状況を作り出すことです。
 その努力は、それ以前に、権利を守られない子どもー「被害者」を生まないという、子どもたちへの配慮から始まります。

 そうした意味で、「加害者」の処罰のほうにのみ目をやる方策は、「子どもの権利を守る」という本来の方向を等閑にすることにつながらないだろうか。
 

 

 

  

 

 

 
返信する
民自公とアーロン (村石太レディ&ルフィ&ウソップ)
2012-08-26 07:23:19
消費税増税で 自殺者も 増えるという推測ですね。消費税増税反対 で プログ 検索中です。消費税が これ以上 上がれば きつい生活になると思う。フリーターが多く 定年制もなくなってきている。(ボーナス 退職金) 思えば消費税5%に なってから 時間を経て増加したように思える。(あの頃のマイカーブーム~工員~経済~労働時間~) そういう社会になったようにも思える。民営化も 関係するのだろうか。中流家庭の土地財産が 守っていけなくなる~企業は 社員を 売り上げと利益の中で 守れていけるだろうか~リストラ~失業者~
まだ 消費税増税阻止 できるのだろうか?
政治研究会(名前検討中
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