安倍政権が、交渉参加を決断する方向で調整しているTPP=環太平洋パートナーシップ協定について、すでに交渉を開始している国々の実務者による16回目の交渉が、2013年3月4日、シンガポールで始まりました。
そして、時事通信によると、 安倍晋三首相は3月5日、環太平洋連携協定(TPP)交渉参加について、13日にも正式表明する意向を固めたと政府関係者が明らかにしたそうです。
しかし、みなさん、ご存知でしょうか。
いまだ、交渉に参加していない日本に、交渉の中身はわかりません。それなのに、交渉に参加しようとしたら、すでに合意された内容をそのまま受け入れなければなりません。何が条件に入っているかわからないのに丸呑みしなければならないのです。
現に、2012年6月18、19日のG20サミットでメキシコとカナダのTPP交渉への参加が既参加9か国から承認されましたが、メキシコとカナダが参加のために突きつけられた条件は以下のようなものでした。
1 現行の交渉参加9か国がすでに合意した条文はすべて受け入れる。
2 将来、ある交渉分野について9か国が合意した場合、両国は「拒否権」を持たず、その合意に従わなければならない。
3 米国議会への通告から90日までの期間に9か国が合意した内容はすべて受け入れる。
4 両国はまだ妥結されていない分野では交渉できるが、交渉分野の追加や削除はできない。
このように、あとから参加した国にこれまでの交渉結果をくつがえされないように、まるで文句を言えないようにしているのがTPPの恐ろしさです。さらに、TPP交渉の特徴の一つは、徹底した秘密主義で、交渉文書や各国の提案などは、TPP発効後も4年間は伏せられたままになります。日本が参加しないまま少なくとも16回行われた交渉で何が決まったかわからないまま、日本は丸呑みしないといけないのです。
こんな協定に今から参加しようという安倍政権の対米従属は常軌を逸しています。
安倍首相がオバマ大統領にTPP交渉参加を約束し、国民皆保険・解雇規制など国民を守る制度を米国に売り渡す
さらに、TPPにはいわゆる毒素条項と言われる内容がいくつも入っていますが、その代表的なものがISD条項とラチェット規定です。
まずISD条項=「Investor(投資家) State(国家) Dispute(紛争) Settlement(解決)」=「国家と投資家の間の紛争解決手続き」とは、ある国家が自国の公共の利益のために制定した政策によって、海外の投資家が不利益を被った場合には、世界銀行傘下の「国際投資紛争解決センター」という第三者機関に訴えることができる制度です。
確かに紛争解決手続きを前もって決めておくのは重要なのですが、問題はこのワシントンにある紛争解決センターが世界銀行傘下であることです。国際通貨基金=IMFはEU系の国際金融機関ですが、世界銀行はアメリカの支配下にあります。
現に、これまでにISDを使って46件の提訴がありましたが、31件が米国企業が原告で、中には米国企業がカナダとメキシコから多額の賠償金を勝ち取った例がありましたし、逆にISD条項が発令された紛争で米政府が負けたことは一度もありません。
アメリカが訴訟上手なうえに、審判がアメリカ寄りなのですから、勝負になりません。
この点、日本はこれまで24か国とISD条項の入った貿易協定を結んでいますが、その相手国はいずれも発展途上国でしたから日本は一度もこの条項により訴えられたことがありません。しかし、訴訟大国アメリカが相手では、米政府からも米企業から激しく訴訟を起こされるのは必定でしょう。
現に、2012年3月に発効したばかりの米韓FTA(自由貿易協定)にはISD条項が盛り込まれており、心ある韓国国民は懸念していたのですが、12月にはさっそく米投資ファ ンド「ローンスター」が外換銀行の売却で不当な損失を被ったとして、ISD条項に基づき韓国政府を「国際投資紛争解決センター」に提訴しているのです。
アメリカ政府や企業は、カナダや韓国のような先進国相手でも容赦なく訴訟を起こすことが、これでますます明らかになりました。
しかも、また、この制度では審査の結果に不服があっても日本は上訴できないのです。つまり、仮に審査結果に法解釈の誤りがあったとしても、日本の裁判所はこれを是正することができないので、事実上、司法権という日本の主権が制限されることになります。
TPP参加でアメリカの医療保険会社が我が国の医療に乱入し、国民皆保険制度と日本人の健康が崩壊する
もう一つの有名な毒素条項、ラチェット規定のラチェットとは、一方にしか動かない爪歯車を指します。そこから転じてラチェット規定とはすなわち、いったん進展した自由化よりも後退を許さないという規定です。締約国が、後で何らかの事情により、市場開放をし過ぎたと思っても、規制を強化することが許されない規定なのです。
日本が参加する前にすでに決められていた自由化を丸呑みしなくてはならず、しかも元には戻せないのですから、こんな危険な賭けはありません。
また、NVC条項(Non-Violation Complaint条項)=非違反提訴という条項もあります。これは、米国企業が日本で期待した利益を得られなかった場合に、日本がTPPに違反していなくても、アメリカ政府が米国企業の代わって国際機関に対して日本を提訴できるというトンデモない条項です。
日本に違反が無くても、米国企業が日本で期待した利益を得られなかった場合にも提訴できるというのですから、例えば、アメリカの保険会社が公的な健康保険分野などで参入などがうまくいかないと、日本が提訴されて、国民健康保険などの公的保険制度が不適切として改変を求められるということもありうるのです。
さらに、米韓FTAには、自動車分野で韓国が協定に違反したり、米国製自動車の販売・流通に深刻な影響を及ぼすと判断された場合、米国だけが自動車輸入関税撤廃を無効にすることができる「スナップ・バック条項」という、ひどい不平等条項も入っていましたが、TPPにもおそらく入っているだろうと言われています。
TPP参加で日本の健康と安全をアメリカに売る安倍首相と、もっと売れと迫る橋下維新の会から日本を取り戻せ
いかがでしょうか。TPPはアメリカの、アメリカによる、アメリカのための・・・明治維新後の日米修好通商条約に匹敵するような不平等条約であることがわかっていただけたでしょうか。
このTPP交渉の中で関税撤廃の例外が「聖域」としていくつか認められたとしても、アメリカの狙っている保険・金融・労働などの日本の優れた保護制度が、貿易の自由化を邪魔する非関税障壁としてやり玉に挙げられ、以上のような毒素条項が地雷のようにいくつも仕掛けられていて、日本はハゲタカのようなアメリカ企業に食い荒らされてしまうのです。実は上の画像のように、弁護士分野も狙われています。
関税問題しか報道しない日本のマスコミは、腐っているとしか言いようがありません。
そして、自民党は2012年末の総選挙で、TPPについて「国民皆保険制度を守る」「食の安全安心の基準を守る」など6項目を公約しました。ところが、安倍首相は国会で、これらを明記した自民党政策集「Jファイル」を「公約ではない」と言い出しました。なんと、公約は「『聖域なき関税撤廃』を前提にする限り、交渉参加に反対する」だけだと言うのです。
ここまでして自分の党と国民を欺いてまでTPPに参加しようとしている安倍政権は、無謀というより、日本国民をアメリカに売り渡す政府なのだ言わざるを得ないのです。
あえて言いたい。売国奴政権と。
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TPP参加、来週表明=安倍首相
安倍晋三首相は5日、環太平洋連携協定(TPP)交渉参加について、13日にも正式表明する意向を固めた。政府関係者が明らかにした。
安倍首相、TPP交渉参加表明へ…来週にも
安倍首相は、来週中にも環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への参加表明を行う意向を固めた。
17日の自民党大会前の平日(13~15日)に、安倍首相が記者会見を開く方向だ。
米国との事前協議では、自動車分野の一部の項目などをめぐって調整が続いている。日米両政府は、日本がTPPへの参加表明をした後で、難航している部分は切り分け、引き続き協議する方向になった。日本政府は、来日中の米通商代表部(USTR)のカトラー代表補らと、詰めの協議を続けている。関係者によると、米国の自動車関税(乗用車2・5%など)については、一定の猶予期間をおいて段階的に撤廃することで合意する見通しだ。
一方、米国車については、簡単な手続きで日本に輸入できる外国車の上限を現在の年間2000台から5000台以上に引き上げる案が浮上。保険分野については、米国は日本郵政グループのかんぽ生命保険が、がん保険分野などに参入しないことを求めている。
自民党が先の衆院選で掲げた環太平洋連携協定(TPP)の交渉参加に関する六項目の判断基準をめぐり、党側と安倍晋三首相の間の認識に、ずれが生 じ始めている。衆院選公約の本体の内容を詳しく説明するため同時発表した「総合政策集」が、本体と同じ重みを持つのかが焦点になりつつあるのだ。
自民党外交・経済連携調査会は二月下旬、TPP交渉で守るべき国益として(1)米、麦、牛肉、乳製品、砂糖などの重要品目を(関税撤廃からの)除 外、再協議の対象に(2)排ガス規制、軽自動車優遇などわが国固有の安全、環境基準を損なわない(3)医療機関経営への営利企業参入や混合診療の全面解禁 を許さない-など六項目を決定。首相に申し入れた。
公約本体には「聖域なき関税撤廃を前提にする限り、交渉参加に反対する」との一項目しかないが「関税撤廃」の除外対象に農産品を明示し、さらに総 合政策集の五項目も具体化して六項目に仕立てた。先に議員約二百四十人からなる「TPP参加の即時撤回を求める会」が決議した内容と全く同じで、党内反対 派の意向が反映された。政策集は「本体と同じ公約」というのが反対派の主張だ。
首相もオバマ米大統領との会談で、六項目すべてに言及するなど反対派に配慮する姿勢は見せた。
しかし、首相は二月二十八日の衆院予算委員会では、政策集の位置付けに関し「正確には公約ではない。目指すべき政策だ」と表明。六項目を同列視しない考えを強調した。
各国との交渉入りを前に、細かい制約を受けたくないとの本音がにじむが、党内には品目、分野ごとに足かせをはめておかなければ、見えないところで政府が妥協しかねないとの懸念が根強い。反対派は「六項目は同列」と主張し続け、首相に圧力をかけていく構えだ。
(清水俊介)
安倍政権が近く参加表明するTPP(環太平洋連携協定)は「ヒト・モノ・カネ」の行き来を活発にするため、関税の引き下げに加えて企業の投資や知 的財産の保護などのルールづくりも協議している。中でも参加国の交渉では「ISD条項」の扱いが焦点となっていて、日本国内でも注目度が高まっている。ど んな仕組みなのか。 (岸本拓也)
Q ISD条項って何。
A 英語の「Investor(投資家) State(国家) Dispute(紛争) Settlement(解決)」の頭文字の略称で、「国家と投資家の間の紛争解決」という意味になる。要するに企業などの投資家を保護するためのルールだ。
具体的には外国企業が投資先の国の対応によって損害を受けた場合、国連の仲裁機関などを通じてその国を訴えることができる。
制度が利用されるケースで想定されるのは、日本企業が新興国で建てた工場などに対し、その国が急に法律を変えて没収(国有化)する場合など。企業はその国に対し賠償金を求めることができる。
Q 外資企業が差別されないための仕組みなのかな。
A ISDがないと企業は投資先の国で不利益を被っても「泣き寝入り」の恐れがある。だから日本が経済連携協定(EPA)や投資協定を結んだ二十 四カ国との間にはISDがある。例外はフィリピンとのEPAだけだ。これまで日本政府が訴えられた例はないが、世界各国での訴訟件数は二〇一一年末時点で 四百五十件に上る。
Q そのISDが、なぜTPPでは問題視されるの。
A 訴訟大国の米国の存在が大きい。日本の「TPP反対派」は「米国企業が、日本政府を次々と訴えるのでは」と心配している。「訴訟乱発によって 日本独自の厳しい環境規制や食品安全規制が脅かされる」との見方もあり、ISDを「米国の毒まんじゅう」と批判する有識者もいるよ。
Q 心配しすぎでは。
A 「反対派」は米国と北米自由貿易協定(NAFTA)を結ぶカナダ、メキシコの例を挙げている。これまでにISDを使って四十六件の提訴があっ たが三十件が米国企業が原告。中には米国企業がカナダとメキシコから多額の賠償金を勝ち取った例がいくつかあった。逆に米国政府が負けた訴訟はなく 「ISDは米国優位」と指摘されている。ただ、米国企業の敗訴は十一件あり一概に米国有利の仕組みとも言えない。
Q TPPでのISDの交渉はどうなっているの。
A 豪州はTPPにISDを盛り込むことに反対しまだ決着していない。安倍晋三首相は「国の主権を損なうようなISDは合意しない」と主張しているが、日本が交渉に参加した場合、主張がどこまで通るかは見通せないのが現実だ。
日本のTPP参加を左右する「毒素条項」 韓国で初のISD条項発動
2012.12.12
連載:森岡英樹の金融スクープ
日本のTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)参加を占う上で、ネックとなりかねない動きが隣国韓国で浮上している。
米投資ファ ンド「ローンスター」が外換銀行の売却で不当な損失を被ったとして、ISD条項に基づき韓国政府を仲裁機関である「国際投資紛争解決センター」に提訴した のだ。ISD条項は今年3月に発効した米韓FTA(自由貿易協定)に盛り込まれ、国際協定で先進国がISD条項で訴えられるのはあまり例がない。同条項は 日本が参加を目指すTPPにも盛り込まれる可能性が高く、懸念の声が上がっている。
ISD条項は経済連携した国の間で投資に関して不利益を被った場合、国や投資家が相手国に訴訟を起こせる権利を定めている。韓国は他国と7件のFTAを結び、うち6件に同条項が盛り込まれている。
今回の訴訟はローンスターが2003年に外換銀行を買収、9年後の昨年末に売却手続きを終える過程で韓国当局から妨害され、売却時期が遅延したこと。さら に韓国の国税当局から恣意的に課税され損出を被ったというもの。ローンスターが今年5月に駐ベルギー韓国大使館に送付した予告文書では「韓国政府の恣意的 かつ差別的な法執行で数十億ユーロの損害が発生した」と主張した。
ISD条項は2010年まで計390件発動され、ほとんどは発展途上国が対象。そもそも同条項は投資ルールが整備されていない途上国で、先進国の投資家の利益を守るのが目的のためだ。それが韓国で初適用されたインパクトは大きい。
米国は米韓FTA締結に熱を入れた。オバマ大統領は昨年10月に訪米した韓国の李明博大統領をバージニア州の韓国料理店に誘い、夕食を共にしている最中に 米議会は米韓FTAを批准した。晩餐会翌日にはデトロイトのゼネラルモーターズの工場を訪問、韓国製品が使われている新車の運転席に両氏が仲良く乗り込ん だ。さらに李大統領は、米大統領への機密説明が行われる「ザ・タンク」と呼ばれる米国防総省内の特別会議室で、国防長官と統合参謀本部議長からブリーフィ ングを受けた。まさに異例の厚遇。経済面でライバル視される韓国との親密ぶりをアピールし、「日本もTPPに参加しなければ大変なことになる」とブラフを かけているようなものであった。
一方、韓国内では米韓FTA締結について懸念する声が根強かった。その象徴が、今回のISD条項をはじ めいったん規制を緩和すると元に戻せない「ラチェット条項」。自動車分野で韓国が協定に違反したり、米国製自動車の販売・流通に深刻な影響を及ぼすと判断 された場合、米国の自動車輸入関税撤廃を無効にする「スナップ・バック条項」などの存在であった。韓国国内では一連の協定を「毒素条項」と呼んで警戒して いた。
懸念が図らずも現実となった。米韓FTAは、日本のTPP参加の試金石とみられているだけに、今回の訴訟の行方が注目される。
■森岡英樹(もりおか・ひでき) 1957年、福岡県出身。早大卒。経済紙記者、埼玉県芸術文化振興財団常務理事などを経て2004年4月、金融ジャーナリストとして独立。
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冷たくて良いから日本の国柄・国益はしっかり守って欲しいです。
しかしTPPは怖いなぁ~。
昨日のTVタックルで自民党の西田昌司参議院議員がTPPのメリットは「ない」と断言していましたが、本当に賛成派は何考えてるのか理解に苦しみます。
本記事の内容は知らなかった為、読んで衝撃を受けました。
元々TPPのメリットが見えず、不安を感じていたのですが、解りやすく問題点を指摘していただき理解出来ました。
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日本、どうなっちゃうんでしょう…
政権復帰が目的だったので、TPPを推進しようが
反対しようがどうでもいいのかと思います
理屈の世界ではなく、感情の世界なので
気にしないのです。
消費税アップを参議院選挙前に発言した管直人は
さんざん叩かれました。
他方、消費税アップもTPPも民主党よりもさらに
積極的になっていたとしても、多くの国民は感情で判断するのでどうでもイイのです。
管さんは無能力、安倍ちゃんや橋下さんは
よくやっている
多くの人たちは理屈でなく、マスコミのイメージで
判断するのです(苦笑)
たぶん、マスコミが批判しないから、合格点なんです
考える力がないから、どうでもイイのです
無個性な名前は駄目、というルールがあったのですね。そのルール、実は賢いルールですねー。
僕はそれをちゃんと読んでなくて・・・。それに、ちょっと不躾なコメントを書いてしまったような・・・。
まあ承認されなくても良かったので、今度いつかお邪魔するときは、ちゃんとするようにしようと思いました。(承認されたくない場合でも、きちんとそう記入するなり)
あ、もちろんこのコメントも承認しなくて結構です。弁護士さんには、こんなきちんとした方がおられるんですね。あ、ちなみにですがkojitakenの日記は、結構怪しいと自分は見ています。なぜか特定の人物に関してはいちいち攻撃的になるんですよねー。