日本は放射能汚染水の海洋放出問題でごまかしをやめるべき

福島県双葉郡双葉町で撮影した福島第1原発。(3月6日撮影、福島=新華社記者/張笑宇)

 

 【新華社東京6月9日】日本の福島第1原子力発電所を運営する東京電力はこのほど、同原発近くの港湾内で捕獲したクロソイから、日本の食品衛生法が定める基準値の180倍となる1万8千ベクレルの放射性セシウムが検出されたとの検査報告を発表した。

 日本が福島第1原発の放射能汚染水の海洋放出事業を急ピッチで進める中、これは非常に重視されるべき情報のはずだ。東電は放射能汚染水に関する情報の透明性を常に主張してきたが、このクロソイに関する情報を見つけ出すのは容易ではなかった。

 記者は、東電の公式ウェブサイトでこの検査報告書を探そうとしたが、入り組んだ迷路に迷い込んだかのような感覚を覚えた。東電公式サイトの「プレスリリース」欄にはこのクロソイに関する情報は見つからず、代わりに色彩の渦のようなトップページからまず、「処理水ポータルサイト」のリンクアイコンを探し出さなくてはならない。クリックした後、「多核種除去設備(ALPS)」を宣伝する大量のアイコンの中から、今度は「海域モニタリング」というリンクを見つけ出す。さらにクリックすると、図表によるモニタリングポイントの説明を中心とするページが表示され、中ほどに「詳細な分析結果はこちら」という小さな文字が並んでいる。それをクリックすると、はじめて6月の採取地点別放射性物質の分析結果を一覧で表示する「福島第一原子力発電所周辺の放射性物質の分析結果」というページにジャンプする。そしてページを一番下まで追っていくと、ようやく福島第1原発港湾内の魚介類の分析結果の速報のリンクにたどり着く。

 報告のリンクをクリックし、やっとこのクロソイに関する報告を目にすることができた。検査報告書の中身は非常にシンプルで、このクロソイの検体が5月18日に福島第1原発1~4号機の海側で採取されたことを示している。検体中の「セシウム137」および「セシウム134とセシウム137の総和」はいずれも1キロ当たり1万8千ベクレルに達し、日本が定める基準値の180倍を超えていた。

 つまり、外部の人間が東電の公式ウェブサイトからこのクロソイに関する情報を見つけるには、相当な労力を要する。日本の主流メディアのほとんどが、暗黙の了解でもあるかのように、このクロソイの件を無視している点も考えさせられる。

日本は放射能汚染水の海洋放出問題でごまかしをやめるべき

東京電力福島第1原発の汚染水タンク。(資料写真、東京=新華社配信)

 福島原発事故の第一義的な責任者の東電は、このように重要な検査記録を控えめに、ほとんど「かくれんぼ」のような方法で公表することが多い。これは東電が放射能汚染水の「無害さ」を宣伝する場合の力の入れ具合とは対照的であり、情報の公開性と透明性に対する同社の誠実さと信頼性に疑問を抱かざるを得ない。日本のネットユーザーの中には、東電は汚染水の海洋放出という目的を達成するために、不利な情報はいつもごまかしてやり過ごそうとすると怒りの声を上げている人もいる。

日本は放射能汚染水の海洋放出問題でごまかしをやめるべき

東電本社前で放射能汚染水の海洋放出計画の中止を求める市民ら。(5月16日撮影、東京=新華社記者/張笑宇)

 日本の放射能汚染水の海洋放出計画は、海洋生態系や人の健康を軽視するもので、福島原発事故で散々苦労してきた日本の漁業関係者らは強く反対しており、近隣諸国や太平洋島しょ国の人々も日本に対し、放出計画が環境や人の健康に与える影響を明らかにする前に放出することがないよう繰り返し求めている。このクロソイの検査結果は、国際社会の懸念を裏付けるものだ。

 日本はこのほど、太平洋諸島フォーラム(PIF)事務局および専門家と新たな対話を行った。専門家はコンクリート固化による処分などの代替案を提案したが、日本は取り合わず、海洋放出の持論押しつけに終始し、国際原子力機関(IAEA)の技術作業チームを隠れみのにした。周知のように、同技術作業チームは実質的に日本の国際広報部であり、耳目を混乱させる手段でもある。決して日本の海洋放出決定の正しさを保証するものではない。

 6月8日は世界海洋デーだった。日本が責任ある海洋国家でありたいなら、放射能汚染水の海洋放出問題でこれ以上、ごまかしを続けるべきではない。