今朝見て、目が真ん丸になったのが、日本テレビの次のごく短い報道です。
女性自衛官のブログ 自民党が問題視
2015年7月9日 00:40 日本テレビ
女性自衛官のブログが自民党で問題視されている。
かつて慰安婦についての報告書を国連・人権委員会に提出したクマラスワミ氏と昼食をともにしたことを、現役の女性自衛官がブログで「光栄なこと」と書いていた。
クマラスワミ氏の報告書は事実と異なる内容を多く含む事などから、7日の自民党国防部会で、複数の議員が「軽率だ」などと批判した。
防衛省は「誤解を招いた点について反省する」などの記述をブログに加えるよう調整している。
この報道を見て、まず一番に驚いたのが、自民党が自衛官が書いているブログの内容を批判して、おまけに書き直させようとしていることです。
これではいつ削除・訂正させられるかわからないので、このブログを調べて、末尾に全文を転載させていただきました。
次に驚いたのが、日本テレビの報道の仕方です。
普通は、
「クマラスワミ氏の報告書は事実と異なる内容を多く含むとして」
と、自民党がそう考えているというように報道すると思うのですが、このニュースでは
「クマラスワミ氏の報告書は事実と異なる内容を多く含む事などから」
としており、はっきり、日テレがクマラスワミ報告書が事実と異なる内容を多く含むと判断し、断言してしまっています。
また、2015年7月7日に自民党の国防部会で防衛省の防衛白書に不満が続出して、了承を見送るという異例の事態になった時に、
『出席者の一人は白書が紹介した女性自衛官がネット上で公開している文書が不適切だと問題視した。文書は旧日本軍の従軍慰安婦を「性奴隷」とする国連報告書をまとめたクマラスワミ氏との会談を「光栄」と記している。』
と問題になったと日経が報道しています。
このブログは調べてみると、今の段階ではすぐにわかりました。
在ベルギー大使館のHPにあるブログで、NATO事務総長特別代表(女性、平和、安全保障担当)補佐官として出向されている栗田千寿さんのブログ「chizuの部屋」でした。
彼女の「第1回 NATOにやってきました」という記事によると、栗田さんは
『条約機構(NATO)本部に派遣され、12月1日、ブリュッセルに赴任してきました。ヨーロッパに来たのはこれが3回目。しかも、日本人初のNATO勤務という栄えある機会を頂き、正直言ってとても緊張しています。
今回の派遣は、2014年5月の安倍総理とラスムセン前NATO事務総長の首脳間の合意に基づくものです。
安倍総理は、これまでに「女性の輝く社会の実現」を国内外で強調しており、この中には途上国の女性支援という面と、日本女性の社会での活躍拡大という面が含まれています。
つまり、日NATO協力の進展と、国際的課題である「女性分野」での日本女性による取り組み、という二つのニーズから実現した派遣ということになります。』
ということでNATOに赴任したのだそうです。
してみると、今回の騒動では、
「安倍総理の「女性の輝く社会の実現」という公約のために、国際的課題である女性分野での日本女性による取り組みというニーズから実現した派遣」
というところがキーワードになりますね。
ところで、クマラスワミ氏とその報告書とはどういうものか、この自衛官、栗田さんのブログ「第3回 NATOへの来訪者」から引用したいと思います。
『さて今回は、NATO事務総長特別代表(女性、平和、安全保障担当)オフィスへの来訪者についてご紹介します。1月のことになりますが、当オフィスにとっては貴重な方々がNATO本部を訪問されました。
まずは、ラディカ・クマラスワミ氏。彼女は、1996年に女性に対する暴力とその原因及び結果に関する国連の報告書(「クマラスワミ報告」)を担任したことで有名です。その後は、国連事務次長や国連事務総長特別代表(子どもと武力紛争担当)等を務めた人物です。』
ここに書いてある通り、このクマラスワミ報告書(全文はこちら)は、「従軍慰安婦」を戦時性奴隷と断罪した国際的な最初の文書ということで、非常に有名です。
クマラスワミ報告とは、国連人権委員会が第50会期における1994年3月4日の決議(1994/45)に基づき、スリランカ出身のラディカ・クマラスワミを特別報告者に任命し、毎年同委員会へその調査結果を提出させた女性に対する暴力とその原因及び結果に関する報告書です。
この報告書については、1996年4月国連人権委員会で「作業を歓迎し、内容に留意する」という決議が行われており、その後も、国連人権委員会は調査したうえで、この「従軍慰安婦」=戦時性奴隷制度について、日本政府が対処するように求めています。
「従軍慰安婦」は「慰安婦」ではなく、まさに「強制的な性的奴隷(enforced sex slaves)」だ
ですから、結論から言うと、自民党はそんな報告書を書いた方と昼食を共にし、そのことを「光栄」と書くとは何事かと怒っているわけです。
安倍政権の歴史修正主義(歴史的事実を都合よく歪曲する)的な体質が、実によく現われた事件だと思います。
さらに、これも先回りして言うと、自民党と日本テレビがクマラスワミ報告書について「事実と異なる内容を多く含む」と書いているのは、先ごろ、朝日新聞が誤報であったとして謝罪した吉田清治氏の「慰安婦を自ら強制連行した」という証言が、事実認定のための証拠の一つになっていることを指しています。
しかし、もちろん、末尾のブログ記事にあるように、クマラスワミ報告書の中で吉田証言は数多い証拠のうちの一つとして取り上げられたものに過ぎず、吉田証言が間違いであったことで同報告書の価値が損なわれたというような評価は、国際的には全くされていません。
ところが、日本政府は朝日新聞が吉田証言について誤報と認めたことから、2014年10月14日、佐藤地女性人権人道担当大使(世界遺産委員会で明治の産業革命遺産を世界遺産に登録するよう尽力した人ですね)に命じて、報告書の訂正を求めたことを、16日に菅官房長官が認めています。
日本政府も18年も前に認めた文書を今になって訂正しろと、報告者個人に申し入れに行くなんて非常識極まりない行為ですから、もちろん、クマラスワミ氏はこれに応じませんでした。
というわけで、「慰安婦」は戦時性奴隷だとする国際世論に反抗したい安倍自民党としては、国際社会でその認識を定着させる先駆けとなったクマラスワミ氏と自衛官が会って、自衛官が光栄だと感激するだなんてことは許さん!というわけです。
だからって、大使館のHPの中とはいえ個人のブログに、防衛省を通じて「誤解を招いた点について反省する」と書けと言わせるなんて、国際的には恥の上塗りもいいところです。
ちなみに、栗田さんのブログの該当箇所を読むと、非常に謙虚に喜びを綴っており、普通の人から見れば好感が持てる書きぶりだと思います。
『今年2015年は、国連安保理決議1325号「女性、平和、安全保障」(2000年)から15周年の節目に当たり、国連は1325号の履行状況に係る総括報告を予定しています。
彼女は、この報告の筆頭著者(Lead author)として今年秋の国連での発表に備え、成果収集等のため関係機関を訪問しているのです。NATO本部にはこのたび1月に訪問し、アフガニスタンのジェンダーアドバイザー等を経験した軍人等との懇談に加え、NATO加盟各国やパートナー国等からの参加を得て、1325号の履行状況等について意見交換をしました。
私は、光栄なことにNATO特別代表とともにクマラスワミ氏と昼食に同席する機会を頂きました。
スタッフレベルの私にとって昼食への参加は特例だったので、恐縮しつつではありましたが、もてなしの気持ちだけでもお伝えしたいとテーブルに星や季節の花の折り紙を置いたところ、ちゃんと日本の物だと気づいて下さいました。
そして、
「自分もアジア出身(スリランカ出身)だから、NATOで日本人が勤務していることに親近感を持った。日本にはジェンダー分野で将来アジアを引っ張る立場を期待している」
との言葉を頂きました。
女性の処遇には依然厳しい環境の南アジア出身で、またアフリカを始め紛争影響国の現場を数多く見てきたはずの彼女は、とても穏やかで徳が感じられる方でした。
NATO本部の訪問はわずか半日でしたが、NATOの取組みと成果についてのインプットを得られたようです。発出予定の総括レポートでは、NATOの取組みだけでなく幅広い成果に触れられることを期待しています。』
そもそも、栗田さんを安倍首相が肝煎りでNATOに派遣したのは、最初に見たように
安倍総理の「女性の輝く社会の実現」という公約のために、国際的課題である女性分野での日本女性による取り組みというニーズから実現した
ものです。
そんな栗田さんが
国連安保理決議1325号「女性、平和、安全保障」の履行状況の報告書
の筆頭筆者であるクマラスワミ氏と会食するのは、日本の「国益」に資することであり、
「NATO特別代表とともにクマラスワミ氏と昼食に同席する機会」を「特例」
で与えられたことを「光栄なこと」と表現するのは当たり前です。
また、クマラスワミ氏について、
「女性の処遇には依然厳しい環境の南アジア出身で、またアフリカを始め紛争影響国の現場を数多く見てきたはずの彼女は、とても穏やかで徳が感じられる」
と表現できる栗田さんという女性スタッフが日本にいたことは、きっと、有形無形に日本の良さを海外にアピールすることに役立ったでしょう。
だからこそ、クマラスワミ氏は栗田さんに
「自分もアジア出身(スリランカ出身)だから、NATOで日本人が勤務していることに親近感を持った。日本にはジェンダー分野で将来アジアを引っ張る立場を期待している」
と言ってくれたわけです。
それに対して、クマラスワミ氏と会食できたのは光栄だと書いたのはけしからん、とばかりに、ブログを書きなおせと日本政府が言っていることが表に出たら、というか今回完全に表に出ましたが、どれだけ日本の国際的信用を落とすか、安倍内閣にはわからないのでしょうか。
安倍政権は、このような言論統制は絶対にやめるべきです。
また、自民党と全く同じ認識を示した日本テレビも、報道機関としてあまりにも情けないと言わなければなりません。
中曽根元首相も関与した「慰安婦」強制を安倍総裁と橋下市長が否定すべく河野談話を破棄しようとしている
追記
栗田さんが3月に書いたこのブログを4か月も経った今頃になって自民党が問題にして、日本テレビが報道したのは、上の極右雑誌「WiLL」2015年8月号にに柿谷勲夫元陸将補が、
「自衛隊二佐に問う 『クマラスワミ』との昼食は『光栄』ですか」
と題して、次のような文章を書いたからです。
すなわち、柿谷元陸将補は、自衛隊OBなどで構成される隊友会が発行する新聞「隊友」(4月15日付)に、NATOに事務総長特別代表補佐官として出向中の栗田さんが寄稿の記事の中で、
過日、NATO本部を訪問したラディカ・クマラスワミ氏と昼食をともにしたことを「光栄」と書いている
ことと、当該記事を掲載した「隊友」の編集者及び理事長を批判したのです。
この8月号って、安倍首相がマスコミに呼んでもらえなくて、思うままに語れるのは、ニコニコ動画とこの雑誌しかない!と、戦争法案を「私が丁寧にご説明します」という記事を寄稿した号です。
つくづく、こっぱずかしい安倍政権。
女性に対する暴力をめぐる10年 | |
ラディカ・クマラスワミ 著 | |
明石書店 |
国連人権委員会の「女性に対する暴力、その原因と結果に関する特別報告者」であるラディカ・クマラスワミの最終報告書、及び各国を調査した付属文書を収録。国際的、地域的、国家的なレベルでの主要な発展を記録する。
政府もマスコミも、真の「国益」とは何かがわかっていない。
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防衛白書、異例の了承見送り 自民国防部会
- 2015/7/7 19:50 日本経済新聞
2015年版の防衛白書を審議した7日の自民党国防部会で「中国の活動に関する記述が少ない」などと不満が相次ぎ、了承を見送った。防衛白書が了承されないのは異例で、防衛省は文言修正も視野に調整する。
佐藤正久部会長は日本政府が抗議している東シナ海での中国のガス田開発について「記述がほとんどない」と指摘。南シナ海での岩礁埋め立ての写真を増やすべきだとの声も上がった。
出席者の一人は白書が紹介した女性自衛官がネット上で公開している文書が不適切だと問題視した。文書は旧日本軍の従軍慰安婦を「性奴隷」とする国連報告書をまとめたクマラスワミ氏との会談を「光栄」と記している。
同日開いた公明党の外交・安全保障部会では特に異論は出なかった。
首相、安保法案でぼやき
安倍晋三首相は6日の自民党役員会で、安全保障関連法案に対する国民の理解が進まない現状について「(説明のため)テレビ番組に出たいが、どこも呼んでくれない」とぼやいた。夜には党のインターネット番組に出演して同法案の必要性を訴えたが「戦争法案だとか、怖い法案だというイメージが残念ながら広がってしまった」と認めた。
ネット番組では「備えあれば憂いなしだ。戸締まりをしっかりしていれば泥棒や強盗が入らない。助け合いができている町内は犯罪が少ない」と、地域の防犯に例えて法案の意義を強調した。
首相の党ネット番組への出演は6日から13日までの間に計5回。
【共同通信】
NATO事務総長特別代表
(女性、平和、安全保障担当)補佐官
栗田 千寿
2015年3月12日
皆さん、こんにちは。
こちらに来て早3カ月が過ぎました。来た当初は朝9時でも暗かったのですが、最近はより日が長くなり、通勤時にも朝の雰囲気が感じられるようになりました。冬の灰色の曇り空は相変わらずですが、青空の見える日も増えてきたように思います。春が待ち遠しいです。
NATO本部はブリュッセルの北東に位置し、少し郊外にあります。周囲にはレストランもお店もありません。その分、敷地内には銀行、スーパー、ジムなどがあります。ベルギーの通貨はユーロですが、NATO敷地内の銀行で両替ができます。この銀行支店内の電光掲示板には7種の通貨の両替レートが表示されていて、その中には、北欧通貨や米ドルに交じって、アジアで唯一日本円が表示されているのです。おかげで、日々のレートが把握できます。たまに用もなくその掲示板を覗き見し、今日も日本は健在だ、と一人喜んでいます。一体この支店で1年に何回円が取り扱われるかは不明ですが、こうしてNATO本部内でも円がユーロに両替できるとあって、我々日本人には大きく門戸が開かれているような気がしています。やはり、NATOにとっては「アジアでは日本が一番」なんだな、と前向きに解釈しています。
さて今回は、NATO事務総長特別代表(女性、平和、安全保障担当)オフィスへの来訪者についてご紹介します。1月のことになりますが、当オフィスにとっては貴重な方々がNATO本部を訪問されました。
まずは、ラディカ・クマラスワミ氏。彼女は、1996年に女性に対する暴力とその原因及び結果に関する国連の報告書(「クマラスワミ報告」)を担任したことで有名です。その後は、国連事務次長や国連事務総長特別代表(子どもと武力紛争担当)等を務めた人物です。
今年2015年は、国連安保理決議1325号「女性、平和、安全保障」(2000年)から15周年の節目に当たり、国連は1325号の履行状況に係る総括報告を予定しています。彼女は、この報告の筆頭著者(Lead author)として今年秋の国連での発表に備え、成果収集等のため関係機関を訪問しているのです。NATO本部にはこのたび1月に訪問し、アフガニスタンのジェンダーアドバイザー等を経験した軍人等との懇談に加え、NATO加盟各国やパートナー国等からの参加を得て、1325号の履行状況等について意見交換をしました。私は、光栄なことにNATO特別代表とともにクマラスワミ氏と昼食に同席する機会を頂きました。
スタッフレベルの私にとって昼食への参加は特例だったので、恐縮しつつではありましたが、もてなしの気持ちだけでもお伝えしたいとテーブルに星や季節の花の折り紙を置いたところ、ちゃんと日本の物だと気づいて下さいました。そして、「自分もアジア出身(スリランカ出身)だから、NATOで日本人が勤務していることに親近感を持った。日本にはジェンダー分野で将来アジアを引っ張る立場を期待している」との言葉を頂きました。女性の処遇には依然厳しい環境の南アジア出身で、またアフリカを始め紛争影響国の現場を数多く見てきたはずの彼女は、とても穏やかで徳が感じられる方でした。NATO本部の訪問はわずか半日でしたが、NATOの取組みと成果についてのインプットを得られたようです。発出予定の総括レポートでは、NATOの取組みだけでなく幅広い成果に触れられることを期待しています。
そして、この直後にNATO本部の当オフィスを訪れたのは、まさしく地球の裏側からの来客で、日本や自衛隊にとってもなじみの深い方でした。豪州国防軍司令官のビンスキン空軍大将です。この方は、日本通であるとともに日豪防衛協力にも大変熱心な人物です。東日本大震災の発災直後、当時豪州空軍本部長だったビンスキン司令官は、岩崎元統合幕僚長(当時航空幕僚長)に直接電話で「豪州空軍のC-17を送る」と派遣を申し出たとのエピソードが残っています。今回お会いした際、岩崎元統幕長がC-17のエピソードに繰り返し言及されていたことや、日豪防衛協力の重要性等についてぜひ言わねば!と張り切っていたところ、ビンスキン司令官は私の話をひとしきり聞いて下さり、「ロッキーとは昨日もメールしたよ」とさらりと言われました。そうでした。岩崎元統幕長とはニックネーム(パイロットのタックネーム)で呼び合う懇意の仲なので、今でも個人的なやりとりを続けられているようです。
ビンスキン司令官のNATO本部訪問は、NATOの国軍司令官会議への参加のため。これはNATO各国の軍人トップが一堂に会する会議です。豪州はNATO加盟国ではないのですが、アフガニスタンのISAFに部隊を派遣していた関係で、NATOのパートナー国かつ兵力貢献国として豪州軍司令官もこの会議に参加したのだそうです。この会議の後、豪州側からの要望でスクールマンNATO特別代表(女性、平和、安全保障担当)とビンスキン司令官の懇談が実現しました。
豪州は、「女性、平和、安全保障」にも積極的に取り組んでおり、アフガニスタンに軍人のジェンダーアドバイザーを派遣した実績もあります。ちなみに豪州陸軍本部長(陸軍トップ)のモリソン中将は、2013年以降、国際会議等を通じて、性的暴力に反対するコメントを公表しています。同分野の取組みが進んでいる欧州の各国と比べても、軍高官(男性)による明確な発言という部分では豪州は進んでいると言えます。「レイプは許さない」と男性が明言するからこそ、この対外発信は効果的なのです。しかも、武力集団である軍のトップクラスの発言は、軍人だからこその重みと軍内部の意識改革の面でも大きな意義があるようです。
今回の豪州からの軍高官の訪問は、当特別代表にも大きなインパクトを与えたようです。「ジェンダーの問題は、しばしば女性のものだとみなされがちだが、男性特に軍高官の理解を得た場合は、当該軍内外に対する大きな効果が期待できる」ということを体感した形です。性的暴力対応への軍の取り組みは、性的暴力が問題になっている地域で当該国軍と共に活動する他国軍等に対する影響力につながります。軍→軍でのアプローチが容易になり説得力が増すという意義もありますし、トップダウン形式で軍内部への浸透を図れるという意味からも、軍高官がジェンダー視点を持ってこの問題に取り組むことは重要だと言えるでしょう。
ちなみに、国連では今年1月15日、「バーバーショップ会合」というジェンダー関連の会合が開催されました。ジェンダー平等の問題に関し、男性の視点から考えようという趣旨の会合です。当特別代表のFacebookページでも紹介されました。「バーバーショップ(床屋)」って、いかにも男性ばかり、という言葉です。そしてこの会合の発想は面白いですね。インターネットで、この会合でのスピーチの映像が見られるのですが、「真の男性は女性を怖がらせたりはしないものだ」というくだりには、思わずうっとりしました。
そして、うちの特別代表は、「バーバーショップをNATOでもできないかしら」という思いからか、「バーバーショップ」という単語を一時期連呼していました。私まで、町でバーバーショップの看板を見るたび、彼女の喜びようや会合のことを連想して、つい笑ってしまうようになりました。
ちなみに、ビンスキン司令官の副官(秘書官にあたる存在)は女性軍人です。私は以前、岩崎元統幕長の随行で東南アジアの国際会議に参加したことがありますが、この時各国軍トップの副官は男性ばかりで彼女は唯一の女性副官だったことを思い出しました。「ダイバーシティ(多様性)」を重視する豪州軍はこんな面でも先進性を発揮しているようです。NATOの各国軍ではどうなっているのか未確認ですが、各国の女性軍人の比率や女性高官の輩出状況などの状況や、NATOとしての働きかけなど、これから調べてみようと思います。
さて次回は、スウェーデン軍のジェンダー教育についてご紹介します。またぜひご来訪くださいね。
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ブログ
読む・考える・書くさんより
クマラスワミ報告に文句をつけたいならせめて報告書本文を読んでからにすべき
(前略)
さてそれでは、クマラスワミ報告がどの程度吉田証言に依拠しているのか、報告書本文[1]に基づいて具体的に見ていこう。
クマラスワミ報告は、まず冒頭の第一章「定義」において、なぜいわゆる「従軍慰安婦」を軍事的性奴隷と考えるのか、その判断の枠組を示している。
6.特別報告者は、戦時、軍によって、また軍のために、性的サービスを与えることを強制された女性の事件を軍事的性奴隷制の慣行ととらえていることをこの報告書の冒頭で明らかにしておきたい。
7.この点で、特別報告者は、東京訪問中に表明された日本政府の立場を知悉しているが、日本政府は、1926年の奴隷条約第1条(1)に従って、「所有権に帰属する権限の一部又は全部を行使されている人の地位又は状態」と定義される「奴隷制」という用語を、現行国際法の条項の下で「慰安婦」事件に適用するのは、誤りであるとしている。
8.しかし、特別報告者は、「慰安婦」の慣行は、関連国際人権機関・制度によって採用されているところによれば、性奴隷制及び奴隷様慣行の明白な事例ととらえられるべきであるとの意見を持っている。この関係で、特別報告者は、差別防止少数者保護小委員会が、1993年8月15日の決議1993/24で、現代奴隷制部会から送付された戦時の女性の性的搾取及びその他の強制労働の形態に関する情報に留意し、戦時の組織的強姦、性奴隷制及び奴隷様慣行に関する高度の研究を行うよう、同小委員会の委員の一人に依頼したことを強調したい。さらに同小委員会は同委員に、重大人権侵害被害者の原状回復、補償及びリハビリテーションへの権利に関する特別報告者に提出された情報――「慰安婦」に関するものを含むが、それをこの研究の準備に際して考慮に入れるよう要請した。
9.さらに、特別報告者は、現代奴隷制部会が、その第20会期で、「第二次大戦中の女性の性奴隷」問題に関して日本政府から受け取った情報を歓迎し、かつ日本政府が行政的審査会を設置することによって「奴隷のような処遇」の如き慣行を解決するよう勧告したことに留意する。
10.最後に用語上の問題で、現代奴隷制部会の委員並びにNGO代表及び学者によって表明されたものだが、女性被害者は、戦時の強制売春及び性的隷従と虐待の期間中、連日の度重なる強姦と激しい身体的虐待に耐えなければならなかったのであって、「慰安婦」という言葉がこのような被害を少しも反映していないという見解に、特別報告者は完全に同意する。したがって、特別報告者は、「軍事的性奴隷」という言葉の方が、はるかに正確かつ適切な用語であると確信する。
性奴隷かどうかの判断基準は、まず第一に国際法としての奴隷条約(1926年)であり、また慰安所において性的サービスの提供を強制された女性たちの状態である。募集・徴募の段階で首に縄をつけて拉致するような「強制連行」が行われたかどうか、などではない。
そして、クマラスワミ氏が被害女性の置かれた状態を「性奴隷」と判断した主な根拠は、慰安所の運営規則をはじめとする残された文書類と、氏を含む調査団が日本、韓国、北朝鮮の三国を訪問して直接収集した被害女性たち自身の証言である。
19.日本帝国のさまざまな場所にあった多様な慰安所規則類の記録といっしょに、いろいろな状況下での慰安所や「慰安婦」自身の写真さえ保存されている。徴集方法の証拠として役立つ文書記録は僅かであるが、この制度の運営の実態は時を経て残った記録類により広範に立証できる。日本の軍部は売春システムの詳細を細かく記録したが、それをたんなる一つの遊興施設とみなしていたようにみえる。上海、日本の沖縄その他の地方、中国およびフィリピンにあった慰安所の規則はまだ残っており、なかでも衛生規則、利用時間、避妊、女性にたいする料金およびアルコールと武器の禁止を細かく規定している。
20.これらの規則類は、戦後に残された文書のうちでももっとも罪深いものである。それらは日本軍がどの程度まで慰安所にたいし直接の責任があり、その組織のあらゆる側面と深く関わっていたかを疑いの余地なく明らかにしている。そればかりでなく、慰安所がいかにして合法化され制度化されたかをも明白に示している。「慰安婦」が適正に扱われるようにすることにおおくの注意がはらわれたように見える。アルコールと刀剣類の禁止、利用時間の規定、合理的な料金、その他礼儀作法または公正な取り扱いらしいものを課そうとする試みは、実際に行われたことの野蛮さ、残酷さと鋭い対照をなしている。このことは軍事的性奴隷制のシステムの異常な非人間的性格を照らし出すのに役立つだけである。このシステムのなかで、筆舌に尽くしがたいほど心を傷つけられることもおおい状況の下におかれながら、大勢の女性たちが「売春」に身をゆだねつづけることを強制されたのである。
52.その人生のうちでもっとも屈辱的で苦痛に満ちた日々を再び蘇らせる意味をもつに違いないにもかかわらず、勇気をもって話し、証言を与えてくれた全ての女性被害者にたいして、特別報告者ははじめに心からの感謝をささげたい。特別報告者は、非常な感情的緊張のもとにありながら自分の経験を話してくれた女性たちに会ったことで、深く心を動かされた。
53.特別報告者は、この報告の紙数が限られているため、三国すべてで聞いた16の証言の僅かしか要約できなかった。しかし特別報告者は、全ての陳述についてそれらを聞くことができたことの重要性を強調しておく。そのことによって当時一般的であった状況のイメージを作り上げる事が可能となったからである。以下の証言は軍事的性奴隷の現象のさまざまな側面を例示するために選ばれたもので、そうした軍事的性奴隷制が日本帝国陸軍の指導者たちにより、またその認知のうえで、組織的かつ強制的に実施されたことを特別報告者に信じるに至らしめたものである。
被害女性の証言が根拠と聞いた瞬間に、被害者を嘘つき呼ばわりする者たちが湧いてくるのがこの国の残念な現状だが、被害者証言とはそのような軽いものではない。とりわけ、被害を受けた時期や場所の異なる多数の被害者の証言が一致している場合、その指し示す事実の信憑性は極めて高いのだ。
23. 第二次世界大戦の直前及び戦争中における軍事的性奴隷の徴集について説明を書こうとする際、もっとも問題を感じる側面は、実際に徴集がおこなわれたプロセスに関して、残存しあるいは公開されている公文書が欠けていることである。「慰安婦」の徴集に関する証拠のほとんど全てが、被害者自身の証言から得られている。このことは、おおくの人が被害者の証言を秘話の類とし、あるいは本来私的で、したがって民間が運営する売春制度である事柄に政府をまきこむための創作とまでいって退けることを容易にしてきた。それでも徴集方法や、各レベルで軍と政府が明白に関与していたことについての、東南アジアのきわめて多様な地域の女性たちの説明が一貫していることに争いの余地はない。あれほど多くの女性たちが、それぞれの目的のために公的関与の範囲についてそのように似通った話を創作できるとはまったく考えられない。
では次に、クマラスワミ報告書の中で吉田証言がどのように取り上げられているかを見てみよう。
29.一層おおくの女性が必要になった場合には、日本軍は暴力やむきだしの武力、狩り出しに訴えた。そのうちには娘の誘拐を阻止しようとした家族の殺害が含まれていた。国家総動員法が強化されたことで、これらの手段をとることは容易になった。この法律は1938年に公布されたが、1942年までは朝鮮人の強制徴集に適用されなかった。おおくの軍「慰安婦」たちの証言は、徴集に際して広範に暴力と強制が用いられたことを証明している。さらに戦時中におこなわれた狩り出しの実行者であった吉田清治は、著書のなかで、国家総動員法の一部として労務報国会のもとで自ら奴隷狩に加わり、その他の朝鮮人とともに1000人もの女性たちを「慰安婦」任務のために獲得したと告白している。
たったこれだけである。その上、吉田証言を虚偽だとする秦郁彦の主張のほうが、吉田証言そのものよりはるかに長々と取り上げられている。
40.特別報告者は東京の歴史家、千葉大学の秦郁彦博士が「慰安婦」問題にかんする幾つかの研究、とくに済州島での「慰安婦」の状況について書いた吉田清治の著書に反論したことを指摘しておく。博士の説明では、彼は1991~92年に大韓民国の済州島を史料収集のため訪れたが、「慰安婦犯罪」の主犯は実際には朝鮮人区長、売春宿の持ち主及び少女自身の親たちでさえあった。教授の主張では親たちは娘の徴集の目的を知っていたというのである。議論の裏付けとして秦博士は、1937年から1945年にかけての慰安宿のための朝鮮人女性徴集システムの二つのひな型を示した。どちらのモデルも朝鮮人の親たち、朝鮮人村長および朝鮮人ブローカーたち、すなわち民間人たちが日本軍のために性奴隷として働く女性たちの徴集に協力し、役割を果たしたことを知っていたことを明らかにしている。秦博士はまた大部分の「慰安婦」は日本陸軍と契約を結んでおり、月あたり兵隊の平均(15~20円)の110倍(1000~2000円)もの収入を得ていたと信じている。
仮にクマラスワミ報告書を「修正」するとしたら、吉田証言も、秦郁彦の言説も、どちらも削除すべきというのが私の意見だが、そうしてみたところで、報告書全体の趣旨も、結論としての日本政府への勧告も、何一つ変わることはないのである。
日本政府は、国際社会に無反省ぶりをアピールするだけの愚かな策謀に費やす時間があったら、以下のクマラスワミ勧告の実現に向けて努力の一つもしてみてはどうか。そのほうがはるかに、あなたたちが毀損し続けてきた日本の名誉を回復する助けになるというものだ。
137. 日本政府は、以下を行うべきである。
(a)第二次大戦中に日本帝国軍によって設置された慰安所制度が国際法の下でその義務に違反したことを承認し、かつその違反の法的責任を受諾すること。
(b)日本軍性奴隷制の被害者個々人に対し、人権及び基本的自由の重大侵害被害者の原状回復、賠償及び更正への権利に関する差別防止少数者保護小委員会の特別報告者によって示された原則に従って、賠償を支払うこと。多くの被害者が極めて高齢なので、この目的のために特別の行政的審査会を短期間内に設置すること。
(c)第二次大戦中の日本帝国軍の慰安所及び他の関連する活動に関し、日本政府が所持するすべての文書及び資料の完全な開示を確実なものにすること。
(d)名乗り出た女性で、日本軍性奴隷制の女性被害者であることが立証される女性個々人に対し、書面による公的謝罪をなすこと。
(e)歴史的現実を反映するように教育内容を改めることによって、これらの問題についての意識を高めること。
(f)第二次大戦中に、慰安所への募集及び収容に関与した犯行者をできる限り特定し、かつ処罰すること。
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読売新聞に止まらず日テレまで完全に安倍の広報機関と化したなと確信しました。
たった一つの疑義を「多く」と言う読売。
どっちが捏造なんだか。
高い賃金貰ってた売春婦だと思ってましたが、韓国に言わせると、何でも強制になっちゃうんですね。
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安倍は、NATO加盟国でもないのに、もう、”我が軍”の女性将校をブリュッセルにbrought and forced shineなんですな。
聞く所によると、女性と軍事を巡る国連決議が最近出たそうで、それについての会議を政府が開いたんだそうです。で、防衛省は非常にやる気で複数の女性将校を送って「4月からやれないか」と発言、前のめりだったとか。軍事分野でも女性はSHINE!のようで。
あと、シュツットガルトの米アフリカ軍団司令部にも、自衛隊から複数の将校を送っているそうです。最初の名目はエボラ対策で一人だけだったのですが、一段落したら撤収どころか人数を増やした由。
むかし、多趣味な方に「すごいね」と言ったら、「いろんな趣味を持っているといろんな人が誘ってくれるからいいんだよ」と教えてくれました。安倍の場合は参戦したくて、侵略好きのヤバい連中にみんな声をかけているようにしか見ないです。
高額の報酬を与えていれば人権無視で暴力により性奴隷にしても構わないと言うのはおかしな話で、売春婦ならば嫌な客は断れますし、何処に行くのも自由で、軍と行動を共にする謂れは無い筈です。
さらに高額の報酬が有ったとしても、軍内部でしか利用出来ない軍票だった筈で、敗戦で紙切れに成っています。
慰安所・慰安婦に軍が関与していた事は「中曽根元総理」や「フジサンケイグループ総帥鹿内」が述べていたり自伝で書いている他、靖国の資料としても展示されていた筈です。