最近、アメリカの株高に引っ張られて日本の株価も急上昇しているのですが、その原因がトランプ次期大統領への期待です。
とくに、トランプ氏がそれでなくても低い大企業と富裕層への税金をさらに減税するとしていることに対する期待から株が買われているのです。
ウォール街を占拠せよ運動以降、1%対99%の争いと言われているのですが、トランプ氏が支配層1%の味方であることは同氏自身が大富豪であることからも明らかです。
そのうえ、人種差別・女性差別主義の人権無視発言を連発。ヒラリー・クリントン氏が1%の味方で、トランプは反エスタブリッシュメント(支配層)だなどと言ってトランプ氏を支持していた人は、トランプ氏の「組閣」人事を見てどう思うのでしょうか。
トランプ次期政権のメンバーは、大富豪(Gazillionaire)、巨大証券会社ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)、将軍(General)という三つの特徴が見られ、頭文字から「3G」政権と呼ばれています。
ほぼ固まったトランプ新政権の陣容で、目をひくのは大金持ちが多いことです。
閣僚でもっとも金持ちなのは教育長官に就くベッツィ・デボス氏。義父が直販大手アムウェイ創業者で総資産は51億ドル(約6千億円)。投資家のウィルバー・ロス次期商務長官の総資産は25億ドル。トランプ氏本人も37億ドル。
グローブ紙によると、2016年に内定した閣僚の総資産の合計は少なくとも131億ドル(約1兆5300億円)に及び、ブッシュ前政権(末期)の34倍にもなります。
次に目立つのが、ヒラリーが講演して批判を受けた金融大手ゴールドマン・サックス(GS)出身者です。
国家経済会議(NEC)議長に、ゴールドマンサックスのゲーリー・コーン前社長兼最高執行責任者(COO)を起用。財務長官には、元GS幹部でスティーブン・ムニューチン氏が決定しています。
大統領上級顧問兼首席戦略官に就くのはスティーブン・バノン氏。米海軍やGSを経て、過激な記事が並ぶニュースサイト「ブライトバート・ニュース」の会長でしたが、同サイトは白人至上主義や人種差別的とされる記事も多数掲載しており、「避妊は女性を醜くし、狂わせる」などと女性蔑視の記事で物議を醸したこともあります。
さらに目立つのは、将軍(ジェネラル)・軍人で、国防長官には、イラク戦争などで指揮を執り、「狂犬」の異名を取るジェームズ・マティス元中央軍司令官(元海兵隊大将)を起用。外交・安全保障政策を統括する国家安全保障担当大統領補佐官に元国防情報局長のマイケル・フリン氏(元陸軍中将)を持ってきています。
同氏は国元陸軍中将で、イスラム主義に敵意をむき出しにしています。ツイッターで「イスラム教を恐れることは理にかなっている」と発信。講演でも「イスラム教は宗教ではなく、政治だ」「イスラム主義は悪質ながんだ」などと述べています。
これほど元将軍を重用するのは、南北戦争後の1869年に発足したグラント政権以来と言われています。
これでも、トランプ氏が99%の味方で反エスタブリッシュメントの旗手だと言い張る人がいるのでしょうか。
そもそも人種差別主義者で女性蔑視なので大統領になるべきではないひとですが、そのうえ、反エスタブリッシュメントの触れ込みも嘘だったということです。
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将軍と金融、富豪の「3G」=史上最も裕福なトランプ次期政権-米
【ワシントン時事】トランプ次期米大統領は13日、国務長官に石油大手エクソンモービルのティラーソン会長兼最高経営責任者(CEO)を指名すると表明し、次期政権の主要閣僚が固まった。目立つのは「将軍(ゼネラル)」と金融大手「ゴールドマン・サックス」出身者、大富豪を意味する「ガジリオネア」の重用だ。それぞれの頭文字を取り「3G政権」(民主党のマカスキル上院議員)とやゆする声が上がる。
米メディアによると、トランプ氏と閣僚候補の合計資産は少なくとも120億ドル(約1.4兆円)を超え、「米史上最も裕福な政権」になる見通しだ。
要職に就く元将軍は3人。国防長官に海兵隊出身で通称「狂犬」のマティス元中央軍司令官が指名されたほか、国家安全保障担当大統領補佐官にフリン元国防情報局長官、国土安全保障長官にケリー前南方軍司令官が決まった。
トランプ氏は能力、経験から「将軍たちは素晴らしい」と絶賛するが、文民統制を危ぶむ声がある。3人はいずれも強硬派と目され、オバマ政権が模索した国際協調路線を転換し、「米国第一主義」に基づく対ロシア政策や同盟国との安全保障政策を打ち出す可能性がある。
ゴールドマン出身者は3人が起用される。コーン社長兼最高執行責任者(COO)を国家経済会議委員長に指名。次期財務長官のムニューチン氏、首席戦略官・上級顧問に就くバノン氏もゴールドマン勤務歴を持つ。
商務長官に就く著名投資家ロス氏の個人資産は29億ドル、次期教育長官デボス氏の義父は直販大手アムウェイ創業者で50億ドルの資産を持つとされる。国務長官に決まったティラーソン氏は1億5100万ドル相当のエクソン株を保有するとみられ、外交政策との「利益相反」が懸念されている。
トランプ氏は大統領選で民主党候補ヒラリー・クリントン氏の資産やゴールドマンとの「癒着」を批判。「エスタブリッシュメント(既成勢力)打倒」を訴えたが、選挙後は態度を一変させ、金融機関や巨大企業寄りの政策を検討し始めた。
「3G」登用は民主党が激しく反発し、共和党内にも、ロシアと強いつながりを持つティラーソン氏の国務長官起用に懸念が出た。閣僚就任には上院の過半数による承認が必要であり、曲折も予想される。(時事通信 2016/12/14-14:26)
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金持ち優遇なのは変わりありませんからね
アメリカ人はやはりサンダースを選ぶべきでした
http://www.bbc.com/japanese/video-38554395
「この国で最も尊敬される席に座ろうとする人間が、
障害のある記者を真似した姿でした」
「そして権力者が立場を利用して他人をいたぶると、それは私たち全員の敗北です」とストリープ
(転載以上)
トランプは、メリルさんのことを「過大評価された女優」と個人攻撃。
最低な人間性。
ご当主の新年、年末からの快調な諸記事がうれしいです。
気が向いたら、雑感・駄文を寄せさせていただこうとも思っています。今年も、没になることが多いだろうけどね。ということで……
* * *
朝日新書『トランプは世界をどう変えるか? 「デモクラシー」の逆襲』(エマニュエル・トッド著/佐藤優著) を昨晩手にとり、一息に目を通しました。
http://ehon.cloudpages.jp/viewer/asp/9784_02_2736994
かるく紹介すると、3つのパートからなる本で、(目次より)
○E.トッド氏──
民主主義がトランプを選んだ
起きて当然のことが起きた 白人のための民主主義
トランプ現象を恐れることはない 体制順応ではないエリートが必要
自由貿易への異議申し立て 教育という大きな不平等
現実を見ないでおこうとしたエリートたち 人々の不安や意思の表明はポピュリズムではない
「プロレタリア」に選ばれたトランプ (♂) 米大統領は王様ではない
○トランプ氏──資料 共和党候補者指名受諾演説
○佐藤優氏──「トランプ現象」の世界的影響、そして日本は
トッド氏への小インタビューだけでも一読の価値があるのではないかと思った。
上記のe-honで見られるのは5頁ほど。全27頁で、さわりはそのあとにある。
関連して、2つ記してみる。
・引用2つ
ひとつは、トッド氏が、米国の経済学者は「現実が見えていなかった」と書いていること。
日本の経済学者は? と思って、わずかに名を知る中のひとりだけ、ぐぐってみた。
「トランプ現象は世界をどう変えるか?」など、昨春からコラムで書いていた。「現象」を取れば、この本の標題と同じである。トランプ当選の可能性を予見していたのだと思った。中谷巌氏である。ひとつだけ引用する。
〈ヨーロッパでは、国境を越えた自由なヒトの移動(とりわけイスラム系移民、難民)に対する反対論が中心的テーマだが、トランプ氏は移民のみならず、グローバリズムそのものに対する反対にまで議論が及んでいるかに見える。結局、アメリカ人の多くが新自由主義の落し子である貧困の増大や格差拡大に耐えられなくなっているのだ。これは皮肉にも、第2次世界大戦以後、アメリカが強力に進めてきた新自由主義政策に対して、アメリカ人自身が反対し始めたということである。〉その他、共感できることがあった。ご当主の今年の連続記事とも合わせて、教えられる。
ついで、トランプ当選当日にみた、志位和夫氏のツイート。
〈トランプ氏の勝利は、格差と貧困の拡大、中間層の没落等に苦しむアメリカ社会の矛盾と行き詰まりの一つの反映であり、多国籍企業中心のグローバル資本主義の陥っている深い矛盾を示している。トランプ氏は移民問題など危惧される発言を行っているが大統領としての政策を注視していきたい〉
以上、まとめの一文もなく引用してみたが、すでに見えてきたものもあるなかで、わたしの気分としてはこんな感じの一面もあり、そして、トランプ氏でなく、この現実もまた、その矛盾の矛先がどこに向かうのかなど、合せて考えを誘うものがあるだろう。
この本は、白字に赤い線の朝日といういつもの朝日新書とちがって、まっ赤なデザイン。赤瀬川原平氏を思い出した……。装幀が「アカイ、アカイ、アサヒ」新書だからである。