石破政権がトランプ化。男系男子に皇位継承を限る皇室典範の改正を勧告されたことに対抗措置。国連人権高等弁務官事務所に支払っている任意拠出金の対象から、国連の女性差別撤廃委員会を除外するよう求める(阿呆)
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2025年1月29日に外務省の北村俊博外務報道官が記者会見で発表したところによると、日本政府は国連の女性差別撤廃委員会(CEDAW)を日本の拠出金の使途から除外することを決め、国連側に伝えたことを明らかにしました。
日本政府は女性差別撤廃委員会の事務を担う国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)へ毎年拠出金を出しているのですが(ただしG7では最低金額の人権後進国)、その使途から女性差別撤廃委員会を除くように同事務所に伝えたというのですね。
その理由が恐るべきことに、女性差別撤廃委員会が2024年10月に「男系男子」の皇位継承を定めた皇室典範の改正を勧告したことへの抗議の意図を示す狙いだというのです。
どんだけ天皇教なんですか、現代日本!
ジェンダーフリーと性的マイノリティの人権カテゴリ参照
この勧告で、女性差別撤廃委員会は男女平等のために王位継承法を改正した他国の事例を参照し、皇室典範を改正するよう日本政府に求めたんです。
そもそも日本を含めて各国で王政がまだ存続していること自体が、近代立憲主義の大原則である個人の尊厳や国民主権原理や法の下の平等の理念に反することです。
それでも、各国で形式的にせよ王政が続いていてその国の国王が国の象徴となっているわけですから、男女平等のそれこそ象徴として女系ないし女性天皇が男系ないし男性天皇と同じように扱われるのは当然のことです。
なにしろ、日本国憲法第1条には
天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。
と明記されているのですから、日本だってその天皇制が女性排除という男女不平等の象徴になっていたらダメでしょう。
そもそも、象徴天皇制を定めた日本国憲法には天皇が男系じゃないといけないとか男性に限るなんてことは一言も書いていません。
それなのにここまで政府が法律と同等の効力しかない皇室典範の女性差別制度にこだわるとは、さすが世界ジェンダーギャップ指数113位の日本だと言わざるを得ません。
同委員会の勧告について、日本政府は
1 「皇位につく資格は基本的人権に含まれていないことから、皇室典範において皇位継承資格が男系男子に限定されていることは女性に対する差別に該当しない」
2 「皇位継承のあり方は国家の基本に関わる事項であり、女性差別撤廃条約に照らし、取り上げることは適当でない」
と反論していました。
確かに1については、天皇制自体が差別的制度で国民みんなが天皇になれるわけではありませんから、皇位につく資格は人であればだれもが享有している基本的人権ではないこと自体はその通りです。
しかし、法の下の平等は以下の条文で明らかなように、基本的人権だけを平等にすればいいという原則ではないのです。
第14条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない
そもそも世界にまだこれだけプリンセスがいるというのがおかしいのだが、それにしても女性国王は当たり前。
ニューズウィーク 『「これからは女王の時代」...ヨーロッパ王室の6人のプリンセスたち』より
そして日本の市民も男系だの男子だのの天皇制に全然こだわってないじゃん。というか8割前後が女性天皇や女系天皇に賛成。
東京新聞 『女性・女系天皇 「支持」が高く 天皇に「親しみ」58%』より
例えば、選挙権は未成年者には認められないので、生まれながらにして人であればだれにでも認められる基本的人権ではなく、一つの重要な「権利」とされています。
ですが、選挙権・被選挙権に関して、日本国憲法上当然、性別はもとよりあらゆる差別が禁止されています。
憲法第44条 両議院の議員及びその選挙人の資格は、法律でこれを定める。但し、人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によつて差別してはならない。
これについて皇位継承権についてみると、天皇になれる資格も一つの権利であり、それが皇族の中で男系男子だけに認められているのは明らかな女性皇族への差別なのです。
外務省の担当者に対抗措置の撤回を求める申し入れ書を手渡す「女性差別撤廃条約実現アクション」の浅倉むつ子共同代表(左)=東京都千代田区で2025年1月30日午後0時14分、塩田彩撮影
2については、「皇位継承のあり方は国家の基本に関わる事項」だからこそ、男系男子にしか皇位継承を認めないという皇室典範が、日本における女性差別の象徴になってしまっているわけです。
女性は日本国統合の象徴である天皇になれないという制度が、日本社会における女性差別撤廃に深刻なダメージを与えていることは論を待ちません。
例えば、国技と言われる大相撲で、大阪場所の優勝力士への表彰について、女性である太田房江大阪府知事が優勝力士に土俵上で賞状や賞品を手渡しすることが許されなかったことがあります。
女性は不浄だというとんでもない信念に基づく「伝統」なのですが、これで女性首相が誕生したらどうするんですか?
これに対して、同じようなそういう間違った女性排除の習わしが続いてきた各地の祭りでは、女性の参加が認められる例が相次いでいますよね。
まして国の統合の象徴と憲法で規定されている天皇に女性はなれない、女系天皇はなおさらなれない、という皇室典範がそれでなくても男女不平等が指摘される日本社会に及ぼす悪影響は大相撲や祭事の比ではありません。
だからこそ日本も批准している女性差別撤廃条約に照らせば、むしろイの一番に改正されるべきなのが女系ないし女性天皇を排除している皇室典範なのです。
参考記事 kojitakenの日記さんより
象徴天皇制の存続を危うくする「男系天皇」への固執と宮中祭祀の「血の穢れ」のタブー
そして、大きな問題は、国連の委員会から受けた勧告の内容が気に入らないからと言って拠出金を出さないというやり口が、アメリカの暴君トランプ大統領のやり方とそっくりだということです。
例えば、トランプ大統領は自分が第1期政権で新型コロナ対策に失敗した責任を世界保健機構(WHO)に転嫁するために、理屈をつけてWHOからの脱退まで宣言しています。
そして、石破政権はこの勧告への抗議として、予定されていた女性差別撤廃委員会委員の訪日プログラムまでをも取りやめました。
さらい驚くべきことに、過去20年、日本政府は女性差別撤廃委員会にはそもそも拠出金を全く支払っていないことを外務省は認めていて、今回の政府の措置は国内向けのパフォーマンスなのが明らかなんです。
女系女性天皇を許容しろと言われたのをそのままにしておくとまた右派から突き上げられるということで、保守層の人気取りのために、同委員会に強い姿勢を見せた石破政権は、やっていることが来週会談するトランプ大統領のミニチュア版です。
地球温暖化否定の陰謀論者トランプ大統領が就任初日にパリ協定からの離脱を表明。莫大な献金を受けている石油関連業者のため化石燃料や鉱物などの開発を大幅規制緩和。これはまだ「トランプの悪夢」の序章に過ぎない
そして、同委員会が勧告した中には選択的夫婦別姓制度の採用もあります。
この勧告なんてもう4回目です。
今回の任意拠出金拒否は表向きは天皇制に口を出されたからということもありますが、自民党内部でも意見が割れている選択的夫婦別姓制度など、日本社会で男女平等を実現するために誰が見ても必要なことを勧告されるのがことごとく嫌だ、邪魔だ、余計なことはするなという自公政権の意思表示ではないでしょうか。
参考記事 村野瀬玲奈の秘書課広報室さんより
国連に繰り返し選択的夫婦別姓導入を勧告される、法的に強制されなければ民主主義に沿った振る舞いのできないみっともない日本国
参考文献
編集後記
九州大学の憲法学の教授である南野森先生がこの件について
「国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ」(日本国憲法前文)と謳う我が国にはそぐわない、むしろ我が国の国際社会におけるイメージダウンにつながる振る舞い」
と評しておられますが、まさに今回の石破政権の突飛な行動はトランプ大統領に刺激されたのかというような、憲法の国際協調主義に反する暴挙と言えるでしょう。
国連の各委員会は国際法や国際社会の実態に鑑みて勧告をしてきているのです。
それに対してこんな感情的な反発をしているようでは、ロシアや中国などの専制国家に対して「法の支配に従え」などという日本政府の言い分はますます説得力がなくなります。
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政府は29日、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)への日本の任意拠出金の使途から国連女性差別撤廃委員会を除外するよう伝達したと明かした。皇室典範を巡る記述の削除要請に応じなかったことへの抗議の意を改めて示した。
拠出金を特定の目的に使わないよう求めるのは異例の措置だ。同委員会の委員が日本の男女共同参画などへの理解増進のために実施してきた来日も、2024年度は取りやめると決めた。外務省の北村俊博外務報道官が29日の記者会見で、27日に同委員会に伝えたと説明した。
同委員会は24年10月に公表した日本の女性政策についての最終見解で、皇室典範は「改正により男女の平等な皇位継承を保障すべきだ」と勧告した。皇室典範は同委員会の審査対象ではないとする日本政府の立場に触れながら、継承を男系男子に限るのは女性差別撤廃条約に反すると指摘した。
日本政府は委員会に強く抗議し、記述の削除を要請してきた。皇位につく資格は基本的人権に含まれず、皇位継承資格が男系男子に限定されていることは同条約第1条の「女子に対する差別」には該当しないとの見解だ。
OHCHRは同委員会の事務を担う。日本は近年OHCHRの北朝鮮やカンボジアの人権状況の調査、ハンセン病の差別撤廃活動に使用する目的で年間2000万〜3000万円ほどを任意で拠出しているが、確認できる05年以降で女性差別撤廃委員会に支出した記録は残っていない。
国連の女性差別撤廃委員会が去年、皇室典範について「皇位継承における男女平等を保証するよう改正すべき」と勧告したことをめぐり、外務省は29日、対抗措置を発表。委員会の事務を担う国連人権高等弁務官事務所に対し、日本が支払っている任意拠出金を委員会の活動に使わないよう伝えました。
今回の措置について、岩屋外務大臣はきょうの会見で、皇室典範に関する記述の削除が受け入れられなかったことを重く受け止めたもので、「経済的威圧という指摘は当たらない」と説明しました。また、女性の活躍は日本社会の持続的な発展に不可欠だとして、今後も委員会との協力は続けていくとしています。
◆異例の対抗措置 委員の訪日も取りやめに
◆「稚拙で強硬的、国益を損ねる」
◆日本も締結している女性差別撤廃条約
◆皇室典範だけに注目すると、多くの知恵が埋もれる
◆マイノリティーにとって「必要なプロセス」
◆勧告には「沖縄米軍」性暴力の解決も
◆「和人たちがまたアイヌ民族の声を無視」
◆「姿勢の後進性を世界に向けて明らかに」
◆「お金で脅し、理事国としての適性を欠く」
◆デスクメモ
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