
少年ほど警察がたやすく「誘導」して虚偽自白をさせやすい存在はなく、少年事件ほど冤罪事件が多い刑事事件はない。
そもそも美人局という警察見立ての事件の構図自体が本当かどうかもわからない。
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SNSで知り合った20代の男性から金を奪おうとし、逃げようとした男性をビル4階から転落させて死亡させたとして、大阪府警は2024年3月7日、大阪市中央区の中学2年の少女(14)と堺市北区の中学3年の少年(15)を強盗致死の疑いで逮捕したと発表しました。
事件当時13歳だった大阪市中央区の中学2年の少年(14)も強盗致死の非行内容で児童相談所に通告したということです。
被害者の方も若い身空で亡くなり、本当にお気の毒です。
ところで、大阪府警は「美人局(つつもたせ)」の手口とみている、ということで、ネットは大荒れなんだそうです。
美人局とは女性との性交渉を餌に男性をおびき出して、金品を脅し取る恐喝ないし強盗の手口のことです。
しかし、それはまだ警察がそういう嫌疑で子どもたちを検挙したというだけのこと。
それでも、ネットでは
《最近の未成年は私達が想像しているよりも大人びていると思います》
《犯罪の低年齢化、悪質性が酷くなっている。ネットなどで知識だけはつくけど、それに対する様々な事迄は考えてないと思われる》
《もう少年法は一桁年齢までで良いんじゃないかな?》
《悪知恵だけはあるんだろうね。悪法少年法を盾に実名すら出ないから何でも出来ると。いい加減法律変えなよ!》
という声であふれたというのです。
とにかく見出しがセンセーショナル。
そもそも、まだ事件は端緒についたばかりで警察の発表を額面通りに受け取って騒ぐのが間違っています。
それに実務法曹の端くれとして言わせてもらえば、この事件で強盗が成立するのか、そして強盗致死になるのかは非常に疑問です。
強盗の実行行為は被害者の犯行を抑圧するに足りる程度のものでないといけないのですが、この犯人とされる中学生たちがナイフなどの凶器を持っていたのか、どのようにして大学生から金品を奪おうとしたのか全く分かりませんから、そもそも恐喝なのか強盗になるのかがはっきりしません。
中学生の女の子に手を出そうとしたことを他人にばらすぞ、と脅した程度なら、恐喝にはなっても強盗にはなりません。
しかも、この子どもたちは大学生をビルから突き落としたのではなく、
「ビル7階から西隣の4階建てビルに飛び移って逃げようとした男性を転落させた」
ということで、被害者の大学生の方が逃げようとして誤ってビルから落ちてしまったようです。
どちらにしても大学生の被害者の方にとっては悲惨な最期で同情するしかないのですが、強盗致死といえるためには実行者たちの暴行・脅迫から直接被害者の死を招いたか、もしくは強盗の機会に起こるべくして起こったような死の結果でないと強盗致死にはならないのです。
そこはまだ真相が解明していません。
そして、恐喝(懲役10年以下)と強盗致死(死刑または無期懲役)とでは、その法定刑に雲泥の差があるのです。
これくらい詳しく自民党の不正を報道したらどうか。
それにもかかわらず、さも凶悪犯罪と決めつけているネットの議論には頭が痛いのですが、今回このブログで珍しく犯罪事件を取り上げたのは、FLASHという雑誌に出てきた弁護士コメンテーターが橋下徹氏並みにひどかったからなんです。
末尾に掲載したその記事に出てくる「少年法に詳しい」というY弁護士のコメント全文は以下の通りです。
少年法に詳しい山岸純弁護士は、本誌の取材に「『逆送』という手続きを活用し、正式な刑事裁判で罪を償わせるべき」と指摘する。
「政策によってころころ変わる行政法と異なり、民法や刑法といった国民生活に直結する法律は、1年、2年では変わりません。少年法も同じで、もし最近の少年事件の凶悪化を理由に厳罰化されるのであれば、10年単位の時間がかかります。
たしかに20歳未満でも、さまざまな情報に感化されてとんでもない事件を起こす者がいます。しかし、だからといって、簡単に成人と同じ刑罰を適用するわけにはいきません。
刑罰には、『犯罪に罰が科せられることを予告し、犯罪を思いとどまらせる』目的と、『罪を犯した者を反省させる』目的があるのですが、20歳未満の多くは、刑罰に詳しくないため 『罪の意識』が低いわけです。
罪の意識が低いまま刑罰を与えると、たんに 『なんか、つらいことを強制された』で終わってしまい、その目的が薄れてしまいます。なんだか納得できないような話ですが、法理論上はこのように考えられています。
では、どうすべきか。前述のとおり、法律を変えるには長い時間がかかるので、『逆送』という手続きをもっと活用すべきだと考えます。
20歳未満で罪を犯した者は、原則、家庭裁判所で審理されますが、それを例外的に検察官が通常の裁判所で刑事裁判する手続きを『逆送』といいます。要するに、『少年院などで教育し直すのではなく、罰を与えるべき』という考えによって、通常の刑罰を与えることができるわけです。
昨今の少年事件で、世間的にも凶悪で許容できない、被害が大きいといったものは、どんどん『逆送』の手続きをすることで、少年事件に対する国民の一般的な思いに近づけることは可能だと思っています」
とても少年事件や少年法に詳しい弁護士とは思えません。
実は、わたくしは少年事件を100件以上やっていて、うちのロースクールでは私が少年法の授業を担当していました。
被害者の方もご遺族も実名を出されたくなかった事件だと思う。
「・・・・ちゃん、今のあなたは最低な子じゃないよ」 子ども未来法律事務所通信26
少年事件が少年法で原則として全件家庭裁判所に送致して、家裁での保護処分に付することになっているのは、少年たちがまだ年少であり可塑性(良い方向に変わっていく性質)を持っていて、刑罰よりもむしろ教育をするほうが本人の更生にも役立つからです。
家裁や鑑別所や少年院という少年犯罪に特化した機関が少年の処遇を考えるほうが、基本的に刑務作業をさせるだけの刑務所に入れるよりも、よほど本人が立ち直りやすいということです。
またこのような少年に向いた各手続きをして本人が更生することで将来彼らが犯すかもしれなかった犯罪を減らすことで、社会もまた防衛されるのです。
現に、少年院に入った少年の再犯率は刑務所に入った大人の再犯率よりずっと小さく、諸外国の専門家が日本の少年審判の制度や少年院を見学に来るくらいうまくいっているのが日本の少年法です。
なんでもかんでも厳罰化すれば少年犯罪を抑止できるというのが素人的な思い込みです。
しかも、このY弁護士は
「最近の少年事件の凶悪化を理由に厳罰化」
と、さも少年事件が凶悪化していることを既定の事実のように論じていますが、少年犯罪の全体の数もそのうちの凶悪事件も、少年法の「改正」で厳罰化される前からどんどん減っているのが現状です。
そして、このY弁護士の言っていることが橋下弁護士並みに矛盾しているというのは
「罪の意識が低いまま刑罰を与えると、たんに 『なんか、つらいことを強制された』で終わってしま」
うと言いながら、家庭裁判所が事件を検察官に送致して地方裁判所で刑事事件として裁く逆送致をどんどん活用すべきだと
「『少年院などで教育し直すのではなく、罰を与えるべき』という考えによって、通常の刑罰を与えることができる」
といっているところ。
あんた、罪の意識が低いまま刑罰を与えたら、犯罪を犯した少年があまり反省せずに終わるといったばかりだろ!
少年法の理念や少年事件の実態なんか全然わかってないやんか!!
どんだけ報道するねん。この時間とエネルギーを自民党の国会議員追及に向けろ。
世間の人が少年が悪質になっている、少年犯罪が凶悪化しているという思い込みがあるとしたら、それは昔に比べて1つの突飛な事件が起きたときにテレビのワイドショーなどが全局で一斉にこれでもかこれでもかと報道し、ネットニュースでそれが流されるからなんですね。
さらにⅩなどのSNSで繰り返し繰り返しみんなが書き立てるので、1つの事件のインパクトが以前とは比べ物にならないほど大きく感じられるからなんです。
そこにもってきて、このFLASHのY弁護士みたいな、聞いたこともないような「少年法に詳しい」弁護士が出てきて、まだ事件の中身もはっきりしないのに厳罰化しろ、逆送しろ、
「どんどん『逆送』の手続きをすることで、少年事件に対する国民の一般的な思いに近づけることは可能だと思っています」
みたいなトンデモ意見を平気で述べるから、火に油を注ぐ結果になるんですよ。
本当にけしからんというか、少年事件をライフワークと思っていて「来い!来い!!」と思っているわたくしのような弁護士は、急に知らない専門家が出てきたので眩暈がしそうです。
少年法 ~その動向と実務~
少年法改悪・厳罰化に関する記事
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川崎中1殺害事件 週刊新潮が少年の実名と写真を掲載したことの問題点 社会的制裁では凶悪犯罪は減らない
法務省が保護観察中の少年を直接雇用 仕事がある少年の再犯率は無職の少年の4分の1だから厳罰は無駄
少年法の適用年齢を18歳未満に引き下げることに強く反対します。
文藝春秋が神戸連続児童殺傷事件の家裁決定全文を掲載したことに断固抗議する1
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警察に検挙された少年が13年連続で減少し史上最少なのに、再犯が史上最高と報道する「偏向」NHK。
【選挙権とは趣旨が違う】少年法の適用年齢の引き下げに反対する【少年事件は減っている】
Y弁護士の名前を検索して彼のHPを見に行ったら、弁護士会の子どもの権利委員会に入っているとか、逆に犯罪被害者救援委員会に入っているとかじゃなくて、PTAの相談に乗っているだって(-_-;)。
どんな少年法の専門家や。
しかも〇〇県知事選挙に出るのが夢とか書いてあって、HPの写真が選挙ポスターみたい!(笑)。
いや、ほんま、FLASHにどう売り込んだか知らんけど、自分がよく知らないことにくちばしを挟んでいい加減なことを言いふらすなよ。
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【速報】「中学生らが大学生から金品奪おうとしたか…」強盗致死事件で14歳の女子中学生ら逮捕 逃げた男性(22)は建物から転落死
2024/03/07 10:56 MBS
大阪府警は、14歳の女子中学生と15歳の男子中学生の2人を強盗致死の疑いで逮捕しました。
警察によりますと、中学生らは大学生の男性(22)から金品を奪おうと考えて、先月12日の午後、大阪市中央区のビルに誘いだしたものの、男性が隣のビルに飛び移るなどして逃げたため、目的を遂げませんでした。しかしその際に男性が転落し、死亡させた疑いがもたれています。
取り調べに対し、14歳の少女は「間違いありません」と容疑を認め、15歳の少年は「全然関係ないとは言わないが、逮捕されるようなことはしていないと思う」と容疑を一部否認しているということです。また、少女と同じ中学校の、当時13歳の男子中学生が児相送致されました。
中学生は任意の聞き取りに対して「SNSで被害者を呼び出した。金を取る話をしていた」などと話しているということです。
▼いわゆる「美人局」だった可能性も…
警察は、防犯カメラの映像から、男性がビルから転落する直前まで若い女性と行動していたことを確認したということです。
さらに男性と行動していた女性は、男性と会う前に別の2人の若い男性と行動を共にしていたことも確認しているということです。
警察はいわゆる「美人局」だった可能性もあるとみて、経緯を調べています。
女子中学生(14)が大学生(22)を転落死させた疑いで逮捕…「美人局」の可能性にネット大荒れ、専門家は「逆送で罪を償わせるべき」

中学生に脅され、大学生は室外機の上から転落したと見られる
14歳の女子中学生と15歳の男子中学生の2人が、強盗致死容疑で大阪府警に逮捕された。各社の報道によると、中学生は2月12日、22歳の大学生の男性から金品を奪おうと大阪市のビルに誘い出したところ、男性は逃げようとして転落死した。
現場には、少女と同じ中学校の当時13歳の少年もいて、こちらは児童相談所に通告されている。取り調べに対し、少女は容疑を認め、15歳の少年は容疑を一部否認しているという。
警察は、事件の直前、少女と大学生が行動をともにしていたことから、いわゆる「美人局(つつもたせ)」の可能性があると見て、経緯を調べている。報道を受け、ネットニュースのコメント欄には、少年法への疑問をはじめ、さまざまな意見が寄せられ、大荒れとなっている。
《最近の未成年は私達が想像しているよりも大人びていると思います》
《犯罪の低年齢化、悪質性が酷くなっている。ネットなどで知識だけはつくけど、それに対する様々な事迄は考えてないと思われる》
《もう少年法は一桁年齢までで良いんじゃないかな?》
《悪知恵だけはあるんだろうね。悪法少年法を盾に実名すら出ないから何でも出来ると。いい加減法律変えなよ!》
少年法は「少年・少女の健全な育成を図る」のが目的なので、「罰するのではなく、教育し直す」ことが主眼に置かれている。そのため、家庭裁判所により「刑罰」ではなく「処分」が付されることになる。18歳未満であれば、実名が出ることもない。
少年法に詳しい山岸純弁護士は、本誌の取材に「『逆送』という手続きを活用し、正式な刑事裁判で罪を償わせるべき」と指摘する。
「政策によってころころ変わる行政法と異なり、民法や刑法といった国民生活に直結する法律は、1年、2年では変わりません。少年法も同じで、もし最近の少年事件の凶悪化を理由に厳罰化されるのであれば、10年単位の時間がかかります。
たしかに20歳未満でも、さまざまな情報に感化されてとんでもない事件を起こす者がいます。しかし、だからといって、簡単に成人と同じ刑罰を適用するわけにはいきません。
刑罰には、『犯罪に罰が科せられることを予告し、犯罪を思いとどまらせる』目的と、『罪を犯した者を反省させる』目的があるのですが、20歳未満の多くは、刑罰に詳しくないため 『罪の意識』が低いわけです。
罪の意識が低いまま刑罰を与えると、たんに 『なんか、つらいことを強制された』で終わってしまい、その目的が薄れてしまいます。なんだか納得できないような話ですが、法理論上はこのように考えられています。
では、どうすべきか。前述のとおり、法律を変えるには長い時間がかかるので、『逆送』という手続きをもっと活用すべきだと考えます。
20歳未満で罪を犯した者は、原則、家庭裁判所で審理されますが、それを例外的に検察官が通常の裁判所で刑事裁判する手続きを『逆送』といいます。要するに、『少年院などで教育し直すのではなく、罰を与えるべき』という考えによって、通常の刑罰を与えることができるわけです。
昨今の少年事件で、世間的にも凶悪で許容できない、被害が大きいといったものは、どんどん『逆送』の手続きをすることで、少年事件に対する国民の一般的な思いに近づけることは可能だと思っています」
ネット世論の影響力が強まるいま、未成年の犯罪に対する当局の判断も変わるかもしれない。
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命の大切さや、その命が失われることで悲しむ人がいること、みんなが幸せに暮らせるように他人を悲しませたり、つらい思いをさせたりしてはいけないという基本的なことを、世界で教育し直す必要があるのではないかと思います。
ありがとうございます。