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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

歴史教科書採択問題 ありのままに事実を見つめる勇気と落ち着きを 子ども未来法律事務所通信10

2011年08月17日 | 子ども未来法律事務所通信

 

米軍に助け出された子ども達のほっとした顔を見るだけで、いかに沖縄の人々が日本人を守るはずの日本軍に虐げられ、支配されていたかが感じられます。

中国の人民「解放」軍が天安門やチベットで中国人民を殺すのと同じですね。

 沖縄での集団自決に日本軍が関与していたことを否定する人々は、沖縄の人はことのほか臆病だから、強制されなくても自ら死を選んだのだとでも思っているのでしょうか。

 

東京都杉並区では、定評のある帝国書籍の歴史教科書に変更があったものの、東京の中高一貫校に続いて、横浜での公立中学校が、そっち系=「新しい歴史教科書を作る会」系の教科書になってしまいました。

そっち系の教科書では、神話で歴史を教えるというようなトンデモぶりが有名ですが、つい最近も、10年も前の東京書籍の歴史年表を盗用したり、広島と長崎の原爆を間違えて写真を載せたり、そもそも歴史教科書たり得ていない実態が明らかになっています。

教科書検定もそっち系の教科書には甘いのではないかと思わざるを得ません。



 


どうして質が悪くて受験に不利な教科書が教育熱心な日本で採択されてしまうかというと、これはねっちこい草の根保守運動が続いているからですね。

その象徴として、日本の侵略戦争についてつぶやいた、北海道長万部町のゆるキャラまんべくんが私がブログに書いて24時間以内にツイッター禁止になってしまいました。まんべくん擁護運動は間に合いませんでした(涙)。

このことにもあらわれているようにそっち系の人々は、歴史の事実を直視する勇気を持ちません。

 

たとえば沖縄戦での「集団自決」への日本軍の強制・誘導の実相について。

これらは沖縄県史や市町村史等でもすでに明らかにされており、その後多く戦争体験者の貴重な証言も新聞等で発表されています。さらに「大江岩波沖縄戦裁判」では、慶良間諸島での戦争・軍隊の実相が明らかにされ、今年4月21日に最高裁判所において上告棄却となり大江・岩波側の勝訴が確定しました。

だからこそ、3月末に公表された中学校歴史教科書検定結果は少なからず衝撃をもたらすこととなりました。

「新しい教科書を作る会」系(「新しい歴史教科書をつくる会」(以下つくる会)及びそこから分裂した「日本教育再生機構」「改正教育基本法に基づく教科書改善を進める有識者の会」(以下教科書改善の会)の教科書が今年3月教科書検定に合格したからです。


これらの教科書は、沖縄戦の実相についてほとんど記述されておらず、「米軍の猛攻で逃げ場を失い、集団自決する人もいました」と、米軍によって「集団自決」に追い込まれたとする一面的で、沖縄戦の実相を反映していない記述となっています。

今回中学校歴史教科書は全部で7社検定を合格しています。教科書によっては厳しい検定意見の制約の中、沖縄戦の実相を子どもたちに伝えるために努力している教科書も見られます。しかし、上記の2社の教科書は太平洋戦争を大東亜戦争とし、沖縄戦の事実を意図的に歪曲した記述があり、大きな問題です。


 

「集団自決」についてみると、育鵬社は「米軍の猛攻で逃げ場を失い、集団自決する人もいました」、自由社は「米軍が上陸する中で、追いつめられた住民が、家族ぐるみで集団自決」とし、日本軍の関与には触れず、米軍によるものと記述しています。

  

 一方、教科書出版最大手の東京書籍は「日本軍によって集団自決に追いこまれた住民もいました」、教育出版では「日本軍によってスパイと疑われて殺害されたり、集団で自決を強いられたりした人々もいました」と、日本軍の関与に踏み込みました。

 

 帝国書院は「戦場となった沖縄」「沖縄戦と家族」という項目で1ページを割き、沖縄戦を解説し、その中で「人々は集団死に追いこまれたり、禁止されていた琉球方言を使用した住民が日本兵に殺害されたりもしました」と記述しています。

 

清水書院は「兵士や役人などから配布された手榴弾(しゅりゅうだん)などを用いて、家族を殺して一家自決をしたり、地域でまとまった集団自決へと追いこまれていった人もおおぜいいた」と記し、関連資料として、「集団自決」の体験者の証言を盛り込んでいます。

 

 日本文教出版は「6月には日本軍の組織的な抵抗が終わりましたが、集団自決をせまられた人もあり」と記載しています。(沖縄タイムズより)


 

 

 

 

 

沖縄での 「9・29県民大会」で、高校生の代表が、「歴史教科書の記述が正しいとすると、オジイ・オバアが嘘をついたことになるのか、沖縄戦での真実を知りたい」との発言がありました。

もし、歴史を歪曲した歴史教科書が学校現場に採択され、教科書通りに指導すると子どもたちに嘘を教えることになります。事実を教えるにしても、「教科書の記述は嘘だ」ということになり、教科書の信頼性を大きく傷つけることになります。

また、軍隊が実際に犯した罪を歪曲化し、戦争の実態を見つめないことは、結局、次の戦争への道を開くことになります。


反省なくして改善なし。

 「公民」では7社中、育鵬社だけが沖縄の米軍基地について本文中で一切触れていないそうです。

 

過去を見つめられない者は現在も見ようとしない。子どもだちにそんな大人に育って欲しいですか?


 



 

 私は、子どもたちに正しくこの国の歴史を伝えることのできる教科書を採択すべきであると考えます。戦争の実相を具体的に学べる教科書採択が、市民の願いであると思います。

 

 

 

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「集団自決」軍関与触れず 自由社、育鵬社の教科書

自由社の教科書(左の2冊)と育鵬社の教科書(右2冊)

2011年8月14日 琉球新報

教科用図書八重山採択地区協議会をめぐる問題で、採択される可能性が取り沙汰されているのが、自由社と育鵬社の中学校歴史教科書だ。
 自由社は「新しい歴史教科書をつくる会」、育鵬社は「教科書改善の会」の主導で「歴史」と「公民」の教科書を発行。両社とも「愛国心」や「公共の精神」を強調した内容が特徴だ。
 今春、教科書検定に合格した中学歴史教科書の多くで沖縄戦や「集団自決(強制集団死)」に関する記述が増えた。
 しかし両社は「集団自決」について日本軍の強制・関与に触れず「米軍が上陸する中で、追いつめられた住民が、家族ぐるみで集団自決する悲劇が起こりました」(自由社)、「米軍の猛攻で逃げ場を失い、集団自決する人もいました」(育鵬社)と記述している。
 自由社の2012年度版の中学歴史教科書は、日本史年表のほぼ全部を東京書籍の教科書から流用していたことが判明し、文部科学省の注意を受けている。
 両社の教科書採択をめぐっては、全国各地で議論が紛糾している。横浜市は今年、育鵬社採択反対の署名運動の中、同社の中学歴史、公民教科書を採択した。一方、05、09年と「つくる会」系を採択した杉並区は今回、両社の教科書を採択しなかった。

 

 

原爆投下時の写真説明を誤記


 

 2011年8月9日 中国新聞

「新しい歴史教科書をつくる会」が主導する自由社(東京)の2012年度版「新しい歴史教科書」で掲載した、長崎の原爆投下時の写真説明を「広島に投下された原子爆弾」と誤記していたことが8日、分かった。自由社は近く文部科学省に訂正を申請する。

 自由社によると今月、外部からの指摘で発覚した。長崎への原爆投下時のきのこ雲を撮った写真だったが、執筆者が広島だと思い込んで説明を書いた、という。教科書は今春の教科書検定に合格。各教育委員会が来年度の教科書を選ぶための見本の段階で、使用している学校はない。

 この教科書をめぐっては、日本史の年表のほとんどを東京書籍(東京)の教科書から流用していたことが判明したばかり。自由社は「大変申し訳ない。現時点で学習上の支障はなく、写真説明を訂正する」としている。5月に発売した市販本は回収を進めている。

【写真説明】長崎の原爆投下時の写真に「広島に投下された原子爆弾」との説明を記載した、自由社の歴史教科書の見本

 

 

 

継続使用に疑問の声、年表盗用の自由社中学校歴史教科書/横浜

2011年8月4日 神奈川新聞

東京書籍の教科書から年表を盗用していた自由社版の中学校歴史教科書を使っている横浜市内8区の73中学校では3日、今後もこの教科書を使い続けることが分 かった。市販本は回収を始めた自由社が、教科書では新版(2012年度版)の年表差し替えにとどめ、現行版(10、11年度版)については措置しないた め。社会科教諭たちからは「子どもに教えるのにふさわしいのか」と疑問の声が上がっている。

■ほぼ引き写し

 自由社は年表について「以前からほぼ引き写しであり、東京書籍の著作権を侵害した」と認め、東京書籍と協議し(1)市販本の回収(約1万冊)(2)各自治体の教育委 員会に送った新版見本本の年表差し替え(3)横浜市立中学校など現行版を使用している中学校長へのわび状送付―の措置を取るとした。各教委で現在行われて いる採択の対象である新版についても、文部科学省に訂正申請し差し替えるという。

 一方、中学生が使っている現行版について、自由社は 「年表自体は間違っておらず、差し替えなどは逆に混乱を招く恐れがある」と対応を検討していない。東京書籍側も、盗用は遺憾としながらも「権利関係など、 あくまで(自由社と)2者間の問題。他者を巻き込むことは是としない」と、新版に限って年表の差し替えを要求している。

■「信用できぬ」

 取り残されてしまったのは、横浜市立中学校の3万人近い生徒たち。10年度から使用されている教科書は、卒業まで使うことが決まっている。

  「これでは教科書が信用できなくなってしまう」。自由社の歴史教科書で教える市立中学の50代男性教諭はため息交じり。昨年、掲載内容に誤りがあったとし て正誤表が配布されたばかりで、「子どもに教える教科書としてふさわしいのか疑問だ」。ただ生徒たちにそう伝えるのは「あまりにも忍びない」。副教材も活 用し授業展開を模索しているという。

■「問題はない」

 横浜市教委は「現行の教科書を使い続けることについて、文科省も問題ないとしており、法に照らしても市教委として取るべき措置はない」としている。

 横浜市教委は09年8月、市内8区で現行版を採択。4日、全市一括採択に制度変更した12年度から使用する中学校の教科書採択を行う。

 

 

 

 


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1 コメント

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歴史観の多様性と教科書 (冥王星)
2011-09-17 02:58:21
 私見ですが、
私は歴史教育を生業とする立場としては、「つくる会」系の教科書は、受験対策としての価値は相当低いと断定していますし、歴史観として適切さにかける部分が多いとは感じます。
しかしながら、明確な違法性がある歴史観・事実認識が存在しないからこそ検定に通過したものである以上は、問題ある歴史観であっても、その出版の自由・教育の自由が認容されることは決して否定だけで論じるべきではないと思います
つまり、歴史観の多様性を尊重する上で明確な違法性のない内容の教科書が多数出てきたことは好意的に評価していいと思います。
 ところで、つくる会系の教科書は、育鵬社・自由社と二社ありまして、盗用・誤記・誤認が頻発しているのは「自由社」がほとんどです。
「つくる会」系と一緒にして論じるに適しないほど自由社版には問題が多く、もう一方の育鵬社と比肩するのは適切ではない、と思いますので、付言したいと思います。
 
さて、沖縄集団自決記述に関しては、先日最高裁で「出版当時において集団自決があったとする認識はその公共性の兼ね合いから是認しえる」という判断(争点が出版当時の真贋)がある一方で、”現在において事件の真贋について揺らいている”と指摘しています。
従って、判例上において「軍命令による集団自決があった」と断じているわけではないのであって、教科書記載の是非は、編纂者の裁量として考える一方で、記載しないことの妥当性は生じえるものと思います。
 もっとも沖縄と本州の戦争に対する温度差のような問題を象徴する事象として教科書に記述する価値は十分にあると思います。(事件の当否を留保して記述するのが適切、と考えます)

 個人的には、伝習館高校事件訴訟などを思い出して教科書の教育価値について再検討しながら、家永裁判まで立ち返って国民的議論が行われることを期待していますが、現在進行形の八重山教科書問題含めて難しい問題だと少ない脳ミソが沸騰しそうな思い(想い)です。
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