Four Season Colors

現代詩と映画、読書、ゲーム、スポーツなど雑文を掲載
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読書のよもやま(2024.02.12)

2024-02-12 | 雑文
「室町は今日もハードボイルド 日本中世の
アナーキーな世界」清水克行(新潮文庫)

日本中世史を専門とする大学教授の、一般向
け、実はまるまる系シリーズ。

探検系ノンフィクション作家である高野秀行
さんとの、ハードボイルド対談の書籍を経由
しての購入。

今の日本人はこうこうで、それは歴史由来と
も言われるが、中世日本の常識や倫理は、今
とは全然違うんだよ、というもの。

歴史資料などを裏付けに、学術研究から室町
時代の市民階級の生活などについて、具体的
な事件や出来事から紹介してくれる。

今と同じで、今と違う、物理的には同じ位置
や場所にある日本の、記録に残った昔の生活
文化は、基本それだけで面白い。

偶々に記録を残す、当時ありふれただろう、
村と村との過激な争い、男女問題に発するう
わなり打ち、とある地方の権力争い。

どれもこれも、ありふれた有名な歴史人物や
事件ではないのに、当時の様子がやけにリア
ルにイメージされる。

本書でも書かれているが、おおよそ歴史の有
名どころは網羅され、詳しいかは別として、
どれも飽和気味なことは確かで。

そして、時代めいた冗長な小説でもなく、表
現は現代的に、それこそ今に向いた軽快で短
か目のものとなれば。

という、面白い本書なのだけれど、読んでい
て気になるのは、著者の自我の部分がやや説
教くさいところ。

現代の出来事も例に、それって常識なの?正
義なの?、自分(著者)はそうは思わないけ
どね、的な説教が、ちょくちょく入ってくる。

ストレートに言えば、中世、室町の出来事や
社会が知りたいだけなのに、著者が出てきて
説教されると、まあ、醒める。

著者の内面は、不思議と文体に、表現に表れ
るもので、まあまあ控え目に言っても、自分
(著者)「は」分かってる感が、やや強い。

説教されたい気分の人は全然問題ないが、常
識を疑え系の説教は拒否したい人は、自我の
部分は読み飛ばしてしまうのが吉。

それ以外は、教養の身につく、良質な歴史物
娯楽として、年齢関係なくおススメ。

Score

2024-02-08 | 
他愛もないからこその

二十年来のやりとりと

必然もないからこその

二十年ぶりのやりとり

空白もないからこその

二十三十のこれまでと

拝啓もないからこその

二十三十代のこれまで

振り返るには今さらで

振り向くには今さらで

読書のよもやま(2024.02.05)

2024-02-05 | 雑文
「読むだけですっきりわかる世界地理 増補
改訂・最新版」後藤武士(宝島社)

現代日本においてとても一般的な、いわゆる
高等学校的なお勉強から離れて、不本意にも
長い年月が過ぎている。

なんだか最近は、これまで定着していた基礎
的な知識もあやふやになりつつあり、特に国
外、世界ともなれば、まず地図が怪しい。

大国はまだしも、(地理的な意味で)こまご
まとした地域は、位置と情報もそこそこ自信
なく、そもそも知識自体が古すぎる。

戦後のアジアについてを学ぶのもいいが、肝
心の今についていけなければ、である。

ということで、本屋で目に付いたので、知的
な好奇心というよりも、基礎知識の補強、ア
ップデートを義務目的な感じで購入。

本書はそうした期待通りに?、タイトルに相
違なく、学生向けにありそうな、楽しく学ぶ
何々、みたいな内容である。

それ以上でも、それ以下でもないのだが、今
ある国の成立、独立の経緯が端的に詳しく、
地理兼世界史総合的なお得感もあったり。

一つ一つの国についてはとても短いので、そ
うそう、この国はそうだよな、という感じで
サクサク思い出しと補強に勤しむ。

文体はフランクで読みやすいが、ややクセの
ある文体(ちょっとネットコラムっぽい?)
なので、合わない人はいるかもしれない。

仕方のないことであるが、地域による濃淡も
あるため、広く浅く、広く浅く、手っ取り早
く要点を知るための本。

こういう系の本を読んでいると、国外なんて
長らく行っていないし、特に具体的な意欲も
ないが、悪くないな、などと思う。

世界系の書籍の多くには、そうした魔力が籠
っている。

それはきっと、こうして得た知識を知識で終
わらせず、実として、それ自体を、そしてそ
以上を知りたいと思うから。

教科書から遠く離れてしまった自分たちのよ
うな中年世代も、こうした本で定期的に知を
得ることは、まだまだ楽しい。