Four Season Colors

現代詩とスポーツ、エンタメ、時事など雑文を掲載
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STARLING

2023-06-29 | 
興味ないような素振りで

必死に片隅に姿を収める

無垢な憧憬の1ショット

意識し過ぎてぎこちない

ピースであいだを埋める

無垢な宝物の2ショット

焦燥を努めて隠しながら

まだひとり幼さを留める

無垢な透明の3ショット

透明なままの1ショット

憧憬のままの2ショット

宝物のままの3ショット

読書のよもやま(2023.06.26)

2023-06-26 | 雑文
「こどもホスピスの奇跡」石井光太(新潮文
庫)

日本初の小児ホスピスであるTSURUMI
こどもホスピスについて、設立までと2年目
までを主に追うノンフィクション。

特定の人物を追うのではなく、小児ホスピス
というテーマを中心にすえ、過去と経緯は異
なるが、そこに関わる人たちを書く。

場面が続くのではなく、背景とインタビュー
を交えて短く区切っていくため、どちらかと
いうとドキュメンタリーに近い。

よくある感動の設立秘話のようなものではな
く、良い意味で淡々と事実を記録していく。

著者の作品は何冊か読んでいるが、この良い
意味で淡々というイメージはこれまでもあり、
本作のつくりに合っている印象。

穏やかに終わりに向かうのではなく、あった
はずの当たり前を享受できる場所。

知識により進歩する分野は、10年どころか
5年前の当たり前が当たり前でないことが多
い。

医療も同じようで、成人のホスピスですらそ
うであるのに、子供の、小児のともなれば、
である。

そして表に出る結果は、時に唐突であるが、
進歩の「歩」は、時に迷い、停滞し、場合に
よっては後退すらする。

自分たち一般が、そういう時代だよねなどと
簡単にコメントすることの大半は、当然に簡
単な経緯の結果ではない。

この小児ホスピスは、一人のカリスマによる
のではなく、多くの人々の苦悩と献身より存
在している。

それは全てが良かったことの積み重ねではな
く、むしろ無力と後悔と悲しみの結果の方が
多いのだろう。

このホスピスは、意志も過去もなく、ただつ
くることを目的としたものではない。

しかし、そうではない意味ある施設となるに
は、5年10年ではない過去と意志が必要と
なる。

奇跡とは、しかも一つではないそれら必要な
パーツが、必要な過程を経て意志をもって集
ったことなのだと思う。

HOLE OF DREAM

2023-06-22 | 
まよいこんだ にぎわいから

のぞきこんだ ちいさなあな

うつりこんだ かがやきから

ながれこんだ ちいさなゆめ

さがしだした みちすじから

めざしだした おおきなあな

そだちだした あしあとから

おどりだした おおきなゆめ

読書のよもやま(2023.06.19)

2023-06-19 | 雑文
「恐竜まみれ 発掘現場は今日も命がけ」小
林快次(新潮文庫)

恐竜の化石発掘を職業として行う、北海道大
学総合博物館教授による、日本と海外での恐
竜化石発掘記。

世間一般のイメージとは異なり、アカデミッ
クな恐竜発掘現場は、地味で過酷だけど楽し
いぞということを紹介している作品。

なのだが、自分は子供の頃に特段恐竜に強い
興味を持つことがなく、その知識(と言わな
いが)は所詮ジュラシックパーク。

近年、随分研究が進んでいるようであるこの
分野が全く分からず、本書に出てくる恐竜の
名前も種類もほとんどがはじめてのもの。

であるから、正直なところ恐竜化石という点
においては、面白さが十分伝わっているとは
言えない。

それでもこの本を面白く読めたのは、フィー
ルドワークに冒険の要素がふんだんにあるか
ら。

冒頭のエピソードにある、アラスカでのグリ
ズリーとの遭遇にはじまり、ゴビ砂漠という
冒険そのものの過酷な自然環境。

そして、単純に地理的には未知ではないが、
著者の現場は化石発掘という点において未知
なる空白を埋め続けている。

本作の中でも、そうした未知への冒険性に触
れられており、その本質は、極地冒険家であ
る角幡唯介のそれと重なる部分がある。

つまり、化石発掘という題材を主題においた
冒険モノのノンフィクションといっても大げ
さではない。

そこに大学の先生という文章を書く能力も一
定保障されているとなれば、それはつまらな
いものになるわけがない。

恐竜化石にすでに詳しいような人であれば、
ちょっと物足りないと思われる、どちらかと
いえば初心者入門向けは間違いがない。

ただ、本書は単に化石発掘の初歩を気軽に学
ぶ以上の面白さが確実にある。

内容の難しさは皆無であるし、300ページ
もない分量なので、テーマも併せて若い世代
におススメ。