Four Season Colors

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読書のよもやま(2024.12.02)

2024-12-02 | 雑文
「エンジェルフライト 国際霊柩送還士」佐
々涼子(集英社文庫)

ここのところ、著者の作品を立て続けに読ん
でおり、本作で3冊目の読み終りとなった。

現在、4冊目を読み進めているが、含めて著
者の作品の中では、本作「エンジェルフライ
ト」が断然、一番面白い。

本書は、国内の外国人の遺体、国外の日本人
の遺体を適切に処置して本国に送り届ける会
社の人々のルポルタージュである。

そういった内容であるから、面白いというと
誤解を招きそうでもあるが、間違いなく本書
が代表作といえるのではないか。

自分は、既読の「駆け込み寺の玄さん」と
「紙つなげ!」は、職業的ルポによる記録の
色が強いという感想だった。

しかし、本作は、著者も冒頭で述べるように、
元々著者が興味関心を持ち、拒否されても何
度も取材を依頼した題材となる。

ここには、決して依頼や探し出した題材では
ない対象への熱があり、既読の2作品よりも
明らかに対象に踏み込んでいる。

現代の日本では、大災害や大事故でもない限
り、死体に触れることは少なく、国内の外国
人、国外の日本人の死体は、言うまでもない。

国内の日本人の死者に比べれば、断然に少な
い数であるが、かの人々の死体は、確かに発
生して、多くは送還される。

しかも、多くは準備のない、予期せぬ死であ
り、送還する先の遺族もまた、準備のない死
の受け取りとなる。

であるから、国内外の関係者から絶大な信頼
を得るその会社による送還は、ただの送還で
はない。

死者と遺族のために、出来得る限りの最大の
処置を行い、細心の注意を払い送り届ける。

誰しもにできる職業ではないこの仕事に、妥
協なく従事する姿には感銘を受け、敬意しか
ない。

テーマは「死」と重いものであるが、知らな
い世界を知り、考えることができる、間違い
なくオススメの作品。