石ノ森章太郎の未完に終わったシリーズ「サイボーグ009」。
悪魔の組織によって、サイボーグに改造された9人。
009島村ジョーはじめ、国籍も年齢も違う彼らは、
哀しみを背負いながら、戦い続ける・・・
今から半世紀以上もまえの1968年、
(↓)テレビアニメ化され夢中になって観ていた。
(画像はアマゾンからおかりしました)
その中でも忘れられないのが
第16回放送「太平洋の亡霊」だ。
まずは、ざっくりと、あらすじを。
(以下、記事中にはネタバレあり)
ーー戦後30年の12月8日。
ハワイ・真珠湾への攻撃を皮切りに、
突如、旧日本軍が復活、アメリカへの攻撃を始める。
彼らは何者なのか。
どんなに攻撃されても無傷のまま、
逆にアメリカへ軍への攻撃を続け、壊滅させてしまうからだ。
零戦、特殊潜航艇、月光、桜花、回天・・・
ついには大和、長門まで。
とりわけ戦艦・長門は、敗戦後、アメリカのビキニ環礁での
水爆実験に利用され、放射線を浴びている。
蘇った長門は、アメリカ・サンフランシスコを目指す・・・
このままでは、核の惨劇が起こる・・・
旧日本軍を蘇らせたのは天才科学者・平博士の念力だった。
一人息子を特攻で亡くした博士は言う。
「世界は、あの戦争に懲り懲りし平和を誓ったはずなのに、
今、各国が軍備増強にしのぎを削る・・・
死者の無念を晴らすため、旧日本軍を復活させたのだ」と。
サイボーグ戦士には為す術もない。
それを救ったのは・・・意外にも・・・ーー
この回は、BGMから画面まで、よく覚えている。
とりわけ、印象深いのは、博士による現代社会への批判。
BGMは東映動画おとくいの女声ハーモニーだ。
(「魔法使いサリー」などでもお馴染みの曲♫)
画面には、広島、長崎の原爆公園と、沖縄ひめゆりの塔が現われ、
ついには憲法「第9条」の文字が絵柄いっぱいに重なる。
あのときの強烈な衝撃は、今も忘れられない。
当時は小学校に上がったばかりくらいながら、
いやその年齢だったからこそかもしれないが、
幼い心の正義感に火が点いたのだろう。
今、わたしが戦跡めぐりで各地を訪ねる原点は、
ここにあったのかとw、最近感じている。
(以前も記事にしたが)
さて、最近、アニメやマンガに疎くて、気づかなかったのだが、
今年は石ノ森章太郎「サイボーグ009」60周年で
盛り上がっているそうだ。
先日、書店でフラフラしていて、
この『サイボーグ009 太平洋の亡霊』(秋田書店)↓を見つけ
知った次第。もちろん単行本は即買いした❣
この本は、私がエンエンと語ってきた「伝説回」を、
当時の辻真先シナリオから、
早瀬マサト(石森プロ)が作画、この春、コミカライズしたもの。
辻真先のオリジナルアニメシナリオまで収録されている。
コミカライズ版にはアニメにはない、
004アルベルト・ハインリヒの物語が挟まれる。
彼はドイツ出身、冷戦下のドイツで壁を共に越えようとして、
恋人ヒルダを喪っているのだ。
そして彼は爆弾を組み込まれたサイボーグになってしまった・・・
このアルベルトのエピソードは、
1968年版、子ども向けアニメにはない。
アルベルトが人気キャラなことも大きいだろうが、
いわば特攻兵と同じ人間爆弾となった彼の想いは、
物語を膨らませてくれる。
さすが、令和!?
一方で、オリジナルシナリオも、しっかりと突っ込んでいた。
戦後30年のこと・・・戦争の記憶は、まだ生々しい。
だからだろうか?
亡き特攻兵とのやりとりや、アメリカ人である002ジェットの言葉は
批判たっぷりである。(内容はここでは伏せるが)
今の世で、これをしたら、炎上間違いなしだろう。
時は流れ、来年には「戦後80年」を迎える。
わたしが、このアニメを観てからですら、半世紀以上も経ったのだ。
「戦後」がこれほど長く続く国は珍しいという。
一方で、今が「戦前」になってほしくないとも思う。
戦後30年の「009」の時代も、今も、
とりあえず、この国の平和は守られている。
「太平洋の亡霊」で平博士は、
戦争で「死んだ息子を弔う道」として、旧日本軍を蘇らせた。
単なる架空の人物、絵空事として見るべきではあるまい。
深く示唆に富んでいる・・・と、思う。
「不戦こそ、最高の慰霊です」
現在105歳、旧ビルマで戦った元兵士の言葉だ。
(遠藤美幸『戦友会狂騒曲』地平社 164頁)
📷 台風がまだ遠かった朝、虹がでました。(冒頭画像)
*****************
おつきあいいただき、どうもありがとうございます。
本当は「009」を見つけて、嬉しくて嬉しくて
そんな想いを書くつもりだったのに長くなってしまいました。
(当時、島村ジョーに、どんなに胸キュンしたか・・・❣)
本記事には私の勘違いや間違いなどあるかもしれませんし、
ご不快な方もいらっしゃるかもしれません。
個人の感想文と言うことでお許しください。
この回はYouTubeでも観られるのですが、
カットが多くて、少々がっかりしました。