心の貯金

　心の貯金

　息子たちが二十歳を超えたころ、
「心の貯金」の話をしました。

　父とは母、君たちが素直に元気に成長してほしいと願い、
　こんなことを大切にしてきたんだよ、と語りました。
　１年生のころ、学校でのあさがおの飼育が終わり
　家に持ち帰ってきたとき、子どもが水をやり花が咲いたとき
　「君が毎日コツコツ水をやり育ててきた結果きれいな花が咲き
　家族みんなが幸せな気持ちになっている、ありがとう！」
　（と記念写真を撮ったので見せながら）
　「硬筆でいつもクラスでは選ばれなくても、
　一生懸命書いたのなら我が家では金賞だ！」と
　壁に貼り金賞をはったことなど。

　　　

　息子たちはそんなこともあったな～と思い返していました。
　一通り事例を出して説明した後、
　「君たちは一人で生きているわけではない。
　その陰に父と母がいて祖父母、大勢の友達や
　関わり合った人たちが応援し見守っている、
　そのことを忘れないでほしい。
　それを我が家では心の貯金と言っている。
　父と母で協力して君たちに心の貯金だけは
　満額以上にしてきたつもりだ！」と話しました。
　息子たちは真剣に受け止めてくれたようで、
　「おとうさん、おかあさん、心の貯金ありがとう！」
　私は嬉しくなり、自己満足ですが胸が熱くなりました。
　息子達は心豊かに育ってくれたようです。
　父として母として親としてこんなに嬉しいことはありません。

　　　


　そして少し間を置いた後に長男が一言、さらに言いました。
　「それで・・・お金の貯金はいくらあるの？」
　「えっ・・・・」これが本音だったようです。
　熱くなった胸が急に冷めてきました。
　「なにっ、お金の貯金は自分で稼いで貯めるんだ！」
　と言い放つと、
　「お父さん、心の貯金も大切だけで、お金の貯金も大切だから
　　今からでも遅くないから貯めておいてね！」と。
　我が家の息子たちは、お金の貯金がないと
　ちょっぴり寂しいようです。