――――― 第 7 場 ―――――
カーテン前。
ハリー、書類を持って上手より登場。
後ろから追い掛けるようにサラ登場。
サラ「(息を切らせて。)編集長!!編集長!!」
ハリー「(振り返って。)何だ、サラ。そんなに慌てて・・・。特種
か?」
サラ「違いますよ!ロバートがベンバへ行ったって本当ですか
!?」
ハリー「何だ、そんなことか。」
サラ「そんなことかじゃないわよ、編集長!!どうなんですか
!?本当のこと!?」
ハリー「ああ、昨日キャロルと2人で発った筈だ。(再び下手方
へ歩き出す。)」
サラ「(ハリーの後を追い掛けて。)キャロルとですって!?どう
して2人でベンバなんか!!」
ハリー「知るか。こっちが聞きたいぜ、全く・・・。ロバートの奴、
来週号の記事どうする気なんだ。知らんか、サラ!?」
サラ「知る訳ないでしょ!!何でキャロルとなの!?何で2人で
ジェイのところなんか・・・そっか・・・ジェイに会いに行った
のね・・・。ね、編集長!!」
ハリー「ああ、そうだろ。」
ハリー、下手へ去る。
入れ代わるように上手より、マックス、ダニエル、
チャーリー、エイシー、アンナ登場。
マックス「よぉ、サラ。何、駄々捏ねてんだ?」
サラ「(マックス達に気付いて。)ああ、マックス!聞いてよ!!
ロバートったらキャロルと2人でベンバへ行ったのよ!!」
マックス「何だって?」
チャーリー「本当かよ?」
エイシー「皆、危ないとこが好きなのねぇ。」
サラ「冗談じゃないわよ!ロバートにもしものことがあったら私
はどうなるのよ!!」
アンナ「どうなるってあなた、ロバートと別れたんでしょ?」
サラ「それはそうだけど・・・私は別れたつもりなんてないんだ
から!!」
チャーリー「しつこい女は嫌われるぜ。」
サラ「放っておいてよ!!煩いわね!!」
チャーリー「おお怖い。」
ダニエル「ジェイさんに会いに行ったんすかね。」
マックス「そうだろうな。全く、あいつらは揃いも揃ってジェシー
が死んでから・・・」
エイシー「そうよねぇ・・・」
アンナ「ロバートもジェシーのことが好きだったの?」
マックス「ああ多分な。あいつは何も自分の口から喋ったりする
ような奴じゃないから、そんな話しは一度も聞いたこと
はないけど、あいつ見てたら誰だって分かるさ。」
サラ「そんな・・・」
暗転。
――――― 第 8 場 ―――――
カーテン開く。(絵紗前。)
ホテルのジェイの部屋。
ソファーに腰を下ろしているロバートの側を、
キャロル、落ち着きなく歩き回っている。
キャロル「驚くでしょうね。(嬉しそうに。)」
ロバート「当たり前さ。」
キャロル「怒鳴るかしら?」
ロバート「あいつのことだからな。」
キャロル「でも私、負けないわ!」
ロバート「(思わず肩を窄めてみせる。)強気だな。(微笑む。)」
キャロル「(フッと目を遣った鏡のところに挟んであった写真を
手に取る。)綺麗・・・」
ロバート「え?(振り返る。)」
キャロル「・・・これが・・・ジェシー・・・?」
ロバート「(立ち上がって、キャロルの手にしている写真を覗き
込む。)・・・ああ・・・」
キャロル「私に似ているなんて嘘よ・・・。私なんかと全然違って、
凄く綺麗な人だわ・・・。」
ロバート「確かに彼女は美人だったよ・・・。君に似てるってのも
本当だ・・・。」
キャロル「・・・え・・・」
ロバート「その写真の中のジェシーが輝いて見えるのは、その
写真には、ジェイの愛情が溢れる程、込められている
からさ・・・。」
キャロル「愛情・・・」
ロバート「以前から、人物を撮らせれば右に出る者はいない・・・
と言われ続けてきたジェイが、彼女を撮ったのはその
写真が最初で最後なのさ・・・。」
キャロル「心から・・・愛していたのね・・・」
ロバート「その直後にジェシーは死んだ・・・。それっきり奴は・・・
人にカメラを向けることがなくなったんだ・・・。それ程愛
していた・・・いや・・・愛し合っていたと言うべきだな・・・。
」
キャロル「何故・・・ジェシーは・・・?」
ロバート「偶々2人で出掛けて行った取材旅行先で、暴動に巻
き込まれて・・・」
キャロル「その時・・・ジェイは・・・?」
ロバート「あいつがジェシーに、現像する為のフィルムを取りに
行かせた時・・・でも・・・あれは事故だったんだ・・・!!
何もここまであいつが自分を責めることはないんだ・・・
!!なのに・・・」
キャロル「私の役目は重大ね・・・。」
ロバート「(ハッとしてキャロルを見、微笑む。)そうだな・・・」
その時、ドアが開いてジェイが入って来る。
キャロル、ロバート、ジェイに気付く。
ジェイ「矢張りおまえか!!」
キャロル「おかえりなさい!!」
ジェイ「おかえりじゃないだろ!!全く・・・ロバート!!何だって
こんなところにこいつを連れて来たんだ!!」
ロバート「仕方ないだろ。一人でも行くって言うんだから・・・。一
人でなんか行かせられる訳がない。」
ジェイ「今日はもう仕方ない。ロバート、明日の朝、こいつを連れ
て帰ってくれ。」
キャロル「嫌よ!!私、絶対に帰らないわ!!私はジェシーの
意思を引き継ぐ為に、ここに来たのよ!!あなたの側
にいる・・・。絶対に帰らない!!」
ジェイ「ここは女がいるような場所じゃないんだ。」
キャロル「そんなこと、まだ来たばかりで分からないじゃない!!
それに女の人だって、沢山生活しているわ!!こう見え
ても、私って結構柔軟性があるんだから!!」
ジェイ「おまえな・・・」
キャロル「ね!お願い。あなたの側にいさせて・・・」
ジェイ「(思わず呆っとキャロルを見詰め、呟く。)・・・ジェシー
・・・」
ロバート「ジェイ、こんなに言ってるんだ。追い返すこともないだ
ろ?それに心配だって言うんなら、彼女には俺が付い
てるし・・・」
ジェイ「おまえまで・・・(溜め息を吐いて。)・・・仕方ないな・・・
だが、何があっても知らないぜ。」
キャロル「大丈夫よ!!ありがとう!!そうと決まったら、部屋
に帰って荷物を解いてこなくっちゃ!ね!ロバート!!
私達、同室なの!」
ジェイ「(少し驚いた面持ちで。)おい・・・おい!!同室って・・・
おまえ、ロバートと一緒の部屋に泊まるつもりなのか・・・
!?」
ロバート「キャロルがおまえと夫婦なんて言ったものだから。そ
れに空き部屋も一つしかなくて・・・。」
ジェイ「馬鹿野郎!!(溜め息を吐いて。)若い女を、血の気の
多い奴と一緒の部屋になんて放り込めるか!!」
ロバート「血の気の多い奴で悪かったな。おまえと違って、俺は
紳士だよ。」
ジェイ「兎に角・・・仕方ない・・・。ロバート、俺がおまえの部屋
へ行く・・・。何が嬉しくて、野郎と2人で泊まらなきゃなら
ないんだ・・・。」
ロバート「(少し肩を窄めて。)同感。」
暗転。
――――― 第 9 場 ―――――
ライト・インする。と、リンゴー、ルチアの結婚式。
中央に設けられた祭壇の前に、
厳かに跪くリンゴーとルチア。
その2人に祝福を贈るマルティンとエルバ。
周りには村人達が手に楽器などを持ち、
見守っている。
誓いの儀式が終わると同時に、村人達、
待っていたように楽器を打ち鳴らし、祝福の
踊りを踊り始める。
中央ではリンゴーとルチアが幸せそうに
踊る。歌手パケットの歌。
下手よりジェイ、キャロル、ゆっくり登場。
キャロル「わあ・・・盛大ね!!私、こんなの初めてだわ!!見
て見て!!素敵な花嫁さんね!!なんだか私まで、
興奮してきちゃった!!ね、ジェイ!!」
ジェイ「おまえは黙ってるってことを知らないのか、全く・・・」
マルティン、ジェイ達に気付き近寄る。
(音楽、少し静かに。)
マルティン「よく来られた。今日はめでたい日だ。一緒に祝って
やってくれ。さぁ、もっと中へ。」
ジェイ「はい。じゃあ・・・(キャロルの背中を軽く押して促す。)」
マルティン「そちらのお嬢さんは、君の恋人かね?」
キャロル「あ・・・そう見えます?今はまだ違うんですけどね。近
い将来は・・・。小父さん見る目がありますね!」
ジェイ「おい、馬鹿!!この人はこの村の村長だぞ!!」
キャロル「村長さん?ごめんなさい!!私ったら・・・」
マルティン「(笑って。)いや、構わんよ。中々快活なお嬢さんだ
。」
キャロル、2人より一寸先に出て、結婚式の
様子を呆然と憧れの眼差しで見詰める。
ジェイ「はぁ・・・」
マルティン「ルチアが君に無理を言ったと聞いたが、こんな可愛
い娘さんがおるんじゃ、最初から分かり切ったことだ
な。」
ジェイ「いえ・・・彼女は本当にただの同僚で・・・」
マルティン「(微笑んで。)分かっておるよ・・・」
ジェイ、キャロル、マルティンに勧められて
村人達の輪に加わり、周りに座る。
再び音楽盛大に。中央に踊り出た一人が
これと思った相手の前に進み出て、相手の
手を取り順番に踊り出す。
ルチアの番が来て、中央に進み出、周りを
見回し、心に決めていたように踊りながら、
ジェイの前に立つ。
ルチア、ジェイに手を差し出す。ジェイ、
それに応えるように手を出し、踊りの相手を
受ける。
周りの者、少し驚いた面持ちをするが、嬉し
そうに手拍子をする。
ルチアとジェイの踊りが終わりジョテファの番、
周りを見回した後、呆っとしながらキャロル
の前へ立つ。
少し、音楽小さくなる。
ジョテファ「・・・君は・・・?」
キャロル「キャロル・タナー・・・」
ジョテファ「俺と踊ってくれるかい・・・?」
キャロル、思わずジェイの顔を見る。
ジェイ、微笑んで頷くのを見て、嬉しそうに
ジョテファの差し出す手を取って、踊り出す。
2人の踊りが終わると、全員の総踊り。
ジェイ、キャロルの腕を取って踊りながら、
上手へ去る。
盛大に盛り上がって決めのポーズ。
カーテン閉まる。
上手よりジェイ、一寸下がってキャロル登場。
(カーテン前。)
キャロル「楽しかったわね!!あんな素敵な結婚式。なんだか
羨ましくなっちゃった。幸せね、花嫁さん!」
ジェイ「ああ・・・。早く結婚したくなったとか・・・?」
キャロル「そうね・・・。でも私はまだまだよ!もっともっとやりた
いことが山ほどあるもの!!」
ジェイ「やりたいこと?」
キャロル「ええ!だって今までアイスクリームパーラーの売り子
してて、他の世界に目を向けたことなんて一度もなかっ
たのよ!!今、私は発見だらけで毎日がとても充実し
ているの!!ここへ来れたこともそう!!あんな素敵
な結婚式を見ることが出来たり、今までの私からは、
想像も出来ないことだらけを経験しているのよ!!信じ
られる!?ああ、なんて素敵なの!!」
キャロル、ジェイの手を取って嬉しそうに歌う。
“毎日が新鮮で 毎日が発見だらけ
見たことも聞いたこともなかったような
驚きばかりで目が回りそう・・・
こんなことが信じられる?
ああ なんて素晴らしいの!!”
ジェイ、思わず微笑んでキャロルを見詰める。
暗転。
――――― “ジェイ・スペンサー”5へつづく ―――――
― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪
http://milky.geocities.jp/little_pine2012/index.html
http://ritorupain.blogspot.com/
http://blogs.yahoo.co.jp/dorapontaaponta
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます