〈 主な登場人物 〉
うらら ・・・ 引っ越し先の新しい町に、中々
馴染めない少女。本編の主人公。
松太郎(しょうたろう) ・・・ 松の木の精霊。
ケン
少年、少女達。
その他。
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――――― 1 幕 ―――――
静かな音楽流れ、幕が開く。
と、だだっ広い野原に、中央に松の木が
1本立つ風景。
(爽やかな風がそよぐ。)
声(松太郎)「僕はいつもここにいる・・・。そして君をただ待って
いる・・・。大好きな君が、僕のところへやって来て
・・・沢山の僕の知らない話しを聞かせてくれること
・・・いつの頃からか、僕はただ・・・君が来るのを、
心待ちにするようになったんだ・・・。」
明るい音楽に変わり、上手下手より、
子ども達走り登場。楽しそうに歌う。
“楽しい毎日が
やってくること
明るい明日を
愉快に過ごすんだ
退屈な毎日
そんな気持ちは
今の僕らには
無縁なことだぞ
さぁ 楽しもう!
さぁ 皆で手を取り
先生に怒られたって
皆と一緒なら
笑って過ごせるんだ!”
ケン「さぁ、向こうの公園へ行って遊ぼうぜ!!」
少年2「うん!!明日から待ちに待った夏休みだもんな!!思
いっきり遊ぼうぜ!!」
少女1「楽しみだわぁ!!一体毎日どうやって過ごそうかしら!
!」
ケン「何言ってんだよ!そんなこと考えなくたって、皆で集まりゃ
何やったって楽しいに決まってんだ!!」
少年3「そう言うこと!」
少女1「そうか!そうよね!!」
ケン「毎日、皆で楽しもうぜ!!」
子ども達「うん!!」
少年、少女達、楽しそうに話しながら
下手へ走り去る。
入れ代るように、上手より一人の少女
(うらら)、その様子を見ていたように
ゆっくり登場。歌う。
(音楽静かに。)
“私だって・・・
皆と同じに
楽しく遊んで笑いたい・・・
いつも一緒に・・・
手を取り合って
明るくはしゃいで過ごしたい・・・”
うらら、中央、松の木に寄り掛かる。
うらら「(明るく。)ねぇ、松太郎・・・!!私、今日もらった通知簿、
オールAだったのよ!!凄いでしょう!!これでママにずっ
とおねだりしてた、犬のぬいぐるみを買ってもらえるわ!!
明日から夏休みよ!!何して遊ぶ!?私、朝の勉強が終
わったら、毎日ここへ来るわ!!その後、2人で一日中遊
びましょう!!楽しみねぇ・・・夏休み!!あああ・・・毎日、
何して遊ぼうかしら・・・」
いつの間にか木の後方より、一人の少年
(松太郎)登場。うららの横に、木にもたれ
かかり立っている。
松太郎「そうだなぁ・・・僕は君と一緒にいられるなら、何だって
いいよ。」
うらら「(松太郎に気付いて。)・・・誰・・・?」
松太郎「うららが呼んだんじゃない。松太郎だよ。(笑う。)」
うらら「・・・松太郎・・・?だって・・・だって松太郎って、私の空想
の友達なのよ・・・!?この松の木が私の松太郎・・・」
松太郎「(微笑んでうららを見る。)空想なんかじゃないよ。ほら、
僕はこうしてここに立っている。足だってあるし、お化け
じゃないよ。(笑う。)」
うらら「(松太郎の足元を見て。)・・・本当だ・・・でも・・・」
松太郎「いいじゃないか、うらら!僕は君と友達になりたいんだ
!」
うらら「友達に・・・?」
松太郎「うん!!一緒に一杯遊ぼうよ!!」
うらら「・・・本当・・・?本当に私と友達になってくれるの・・・?」
松太郎「うん!!」
うらら歌う。
“嘘みたい・・・
転校してきて初めてよ
こんな風に声かけて
今まで誰もこなかった・・・
友達なんて
この場所で
出来るなんて思わなかった・・・
まさか・・・なのに・・・”
うらら「そうだわ!!えっと・・・(背負っていたランドセルを下ろし
、中の何かを探すように。)」
そんなうららの様子を、嬉しそうに見ていた
松太郎、歌う。
“嘘じゃないさ
僕は本当にここにいる
僕だって信じられない・・・
君と友達になる為に
ずっと遠くからやって来た・・・”
うらら「え・・・?」
松太郎「あ・・・ううん!!(首を振る。)」
うらら「はい、これ!(ランドセルから取り出した、小さな飾りを、
松太郎の方へ差し出す。)」
松太郎「(うららの差し出した飾りを受け取り。)何・・・?」
うらら「私の宝物なの!新しい学校で、友達が出来たらプレゼ
ントしようと思って、ずっとカバンの中に仕舞い込んであ
ったのよ。」
松太郎「友達に・・・」
うらら「そう!誰にもプレゼントせずに、夏休みになっちゃうとこ
ろだったわ。(笑う。)」
松太郎「(飾りを見て。)・・・これは・・・」
うらら「松の実よ!」
松太郎「え・・・」
うらら「前に住んでた家の庭に、大きな松の木があったの。その
木の実で私が作ったブローチよ!私、何故だかその木の
側にいると、とても落ち着いたの・・・。その松の木が大好
きだったのよ・・・。」
松太郎「(呟くように。)うらら・・・」
うらら「あ・・・男の子にブローチなんて変だったかしら・・・」
松太郎「え・・・ううん!!そんなことないよ!!・・・大事にする
よ・・・ありがとう・・・」
うらら「喜んでもらえて良かった!!・・・ねぇ・・・明日から毎日、
遊べる・・・?」
松太郎「うん!」
うらら「明日から毎日、一緒にいられるのね?」
松太郎「うん!」
うらら「わあーっ!!私、新しい学校で出来た友達と遊ぶのは
初めてよ!!」
その時、鐘の音が聞こえる。
うらら「いっけない!!今日はお出かけするから、寄り道せずに
真っ直ぐ帰って来なさいって、ママに言われてたんだった
。じゃあ松太郎くん!!また明日ここで!!」
松太郎「うん・・・!!」
うらら「(下手方へ行きかけて振り返る。)さよーならー!!(大き
く手を振る。)」
松太郎「(少し照れたように手を振り返す。)・・・うらら・・・また明
日!!」
うらら、下手へ走り去る。
松太郎「また明日・・・。うららが僕に気付いてくれた・・・気付い
てくれたんだ・・・!!」
その時、松の木の精霊の主の声が聞こえる。
精霊の主の声「松太郎・・・」
松太郎「松の木の精霊・・・」
精霊の主の声「いいか、松太郎・・・。夏休みの間だけだぞ。夏
休みが終われば、おまえはまた・・・ただの松の木
に戻り・・・元の家へと帰るのだ・・・。分かったな・・
・。」
松太郎「・・・はい!!分かってます!!・・・分かってます・・・。
それでも・・・僕に少しの間、人間の体を与えてくれて・・・
ありがとう・・・!!」
音楽流れ、松太郎歌う。
“僕は松の木・・・
これは僕の仮の姿
大好きな人とほんの少し
目を見て話してみたかった・・・
いつも いつもただ横で
君の笑顔に癒されて・・・
でもただ一度だけでいい
君に気付いて欲しかった・・・
ただ一度だけ
名前を呼んで欲しかった・・・
その願いがやっと叶った
今・・・”
(辺りはいつしか夜になり、再び朝へと変わる。)
“日は巡り・・・
いつまでも続く今日と言う日
朝陽が昇りゆく限り
僕の願いは変わらない
ただ一度だけ・・・”
松太郎「うらら・・・(下手方を見て。)あ・・・!!誰か来る・・・」
松太郎下がる。
そこへ下手より、子どもたち走り登場。
少年2「わあーい!!今度はケンが鬼だぞー!!」
ケン「待てーっ!!」
少年2、松の木へよじ登る。
ケン「おい、卑怯だぞー!!木の上に登るなんて!!」
少年2「やーい、ケン!!ここまで来てみろよー!!」
ケン「畜生!!よーし・・・(松の木へよじ登ろうとする。)よっ・・・
と・・・」
少年2「おっと!!危ねぇ!(木の上から飛び降りる。)へへー
んだ!!残念でした!!(笑う。)」
ジェフ「くっそう!!(木の上から飛び降りる。)待てーっ!!捕ま
えてやるーっ!!」
少年3「わあーっ!!(笑う。)」
少女1「キャーッ!!(笑う。)」
ケン「待てーっ!!(笑う。)」
子ども達、松の木の回りを楽しそうに走り回り、
上手へ走り去る。
音楽流れ、一時置いて下手より、うらら息を
切らせ走り登場。
うらら「松太郎くーん!!松太郎くーん!!」
うらら歌う。
“どこにいるの私の友達
初めて出来た大切な
憧れだった素敵な友達”
木の影より松太郎登場。歌う。
“ここにいるよ君は友達
いつもただ見詰めてた
いつか僕に気付いてくれると・・・”
(うらら、松太郎に気付き、嬉しそうに。)
2人、歌う。
“夢にまで見た心の友達”
うらら「松太郎くん!!捜したわ!!ねぇ、今日は何して遊ぶ?」
松太郎「うん、僕は何だって構わないよ、うららと一緒なら・・・。」
うらら「そうねぇ・・・あなたと友達になって一カ月・・・。毎日この
木の下で遊んでばかりだわ。夏休みも残り少なくなってき
たし・・・ねぇ、どこか別の場所へ行かない?」
松太郎「え・・・?」
うらら「公園とか・・・図書館とか・・・プールもいいわねぇ!!ね!
!そうしましょうよ!!」
松太郎「・・・僕・・・ここがいいな・・・」
うらら「・・・(松太郎を見る。)」
松太郎「僕・・・この松の木の側が好きなんだ・・・」
うらら「そう・・・」
松太郎「ごめん・・・」
うらら「いいのよ!私もこの場所は大好き!この町に越して来て
、新しい見知らぬ土地で、とっても不安だったけど、この木
を見た途端、前の家にあった大好きな松の木と同じだと
思って、とても安心出来たのを覚えてる・・・。だから毎日、
学校の帰りに必ず・・・この木に会いに来たのよ。」
松太郎「・・・知ってるよ・・・(呟くように。)」
うらら「え?」
松太郎「あ・・・ううん・・・(首を振る。)そうなんだ・・・。」
優しい音楽流れ、うらら歌う。
“私が不安だった時
この木が取り除いてくれた・・・
私が落ち込んだ時
この木が慰めてくれた・・・
私が嬉しい時も
この木がいつも側にいた・・・
私が笑顔でいられるように
見守ってくれた
だから何故か何時の間か
必ず私はここにいた・・・
そんな・・・優しい思いに
満たされ癒された
いつも・・・”
松太郎「うらら・・・」
うらら「あなたに出会うまで、この木が私の友達だったの・・・。」
その時、上手より工事現場の作業員達、
話しながら登場。
(松太郎、いつの間にか下がる。)
男1「おお、ここだ、ここだ。」
男2「この木か・・・」
男1「ほう、中々立派なもんだなぁ。本当にバッサリやっちゃって
いいのかねぇ。」
男3「好きにしていいってたんだ。構やしないだろう。」
男1「切るしか他に、方法はないしな・・・」
男3「そう言うことだ・・・。」
男2「(うららに気付いて。)お嬢ちゃん、ここ危ないよ。」
うらら「え・・・?」
男1「明日からこの場所は、立ち入り禁止になるんだ。」
うらら「どう言うこと・・・?」
男3「この場所には、来年、大きなマンションが建つんだよ。」
うらら「マンション・・・?マンションが建つの・・・?」
男2「そうだよ。」
うらら「・・・この木はどうなるの・・・?」
男1「明日、切り倒すんだ。」
うらら「・・・切り倒す・・・?切り倒すですって!!そんなの駄目
よ!!」
男3「駄目ったってねぇ、ここの持ち主がもうそう決めて、土地を
売っちゃったからねぇ。どうしようもないんだよ。」
うらら「駄目・・・駄目よ!!ねぇ、松太郎!!(振り向くが、松太
郎がいないことに気付いて。)・・・松太郎・・・?松太郎?」
男2「誰か一緒にいたのかい?」
うらら「私と同じ年頃の男の子よ!!今までここにいたじゃない
!!」
男1「今まで・・・?」
うらら「おじさん達も見たでしょ?」
男2「さぁ・・・(首を傾げる。)」
男3「(他の男達に。)見たか?」
男1「俺達がここに来た時には、お嬢ちゃん一人きりだったぜ。」
うらら「嘘よ・・・」
――――― “うららかな思い”2へつづく ―――――
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(どら余談^^;)
昔の作品を読み直す機会が増えて、気付いたことが一つ
・・・^_^;
「え」と言う台詞の前後に付ける「・・・」、以前は前が多かった
のが、最近の作品では後ろに付けることが断然多いのです
(^^)
たかが「・・・」されど「・・・」と言うことで、読まれる時に、読み
方を注意してみて下さい(^^)vこの「・・・」が前後入れ代る
だけで、「え」を言う人物の雰囲気が変わります(^.^)
http://milky.geocities.jp/little_pine2012/index.html
http://ritorupain.blogspot.com/
http://blogs.yahoo.co.jp/dorapontaaponta