ジェイン、出て行く。通りすがりに警官トミー、
捕まえた男を一人連れて登場。
トミー「レナードさん、おはようございます!」
レナード「よお・・・(捕まえた男を見て。)取り調べか?」
トミー「そうですよ。こんな朝っぱらから・・・。」
男「じゃあ止めりゃあいいだろ。」
トミー「煩い!!じゃあレナードさん!」
レナード「頑張れよ。」
トミー、男を連れて出て行く。レナード、
チャールズを認めて近寄る。
レナード「チャールズ!」
チャールズ「(顔を上げて。)レナード!俺も今日、おまえの所
へ行こうと思ってたんだ!それより・・・偉く早いじゃ
ないか。」
レナード「(チャールズのデスクの上に腰を下ろして。)彼女の
ことが分かったんだ。」
チャールズ「(思わず立ち上がって。)分かったって?そうだ!
こっちも見つけたぜ!極秘で捜索願いが出てた。」
レナード「捜索願い・・・?」
チャールズ「ああ。TMインターナショナルの社員からだ。名前
は・・・えっと・・・(書類を見て。)ダニエル・カーン・・
・」
レナード「彼女はそこの社長令嬢だ。」
チャールズ「社長令嬢・・・何だって!?それが何で!?」
レナード「そこの専務に何か裏があるらしい。おまえ、表から
探りを入れてくれないか?」
チャールズ「おまえは?」
レナード「勿論、俺はあの会社に潜り込むのさ!」
チャールズ「レナード・・・おまえ、昨夜彼女との間に何があった
か知らないが、やばいことには首を突っ込むなと
言ってあるだろ?」
レナード「彼女は親父さんの会社を守ろうと必死なんだ・・・。そ
んな彼女を、俺は放っておくことはできない・・・!!」
チャールズ「レナード・・・(溜め息を吐いて。)OK・・・俺も乗った
・・・」
レナード「チャールズ・・・」
チャールズ「・・・で?その専務にどんな裏があるって言うんだ
?」
レナード「ありがとう・・・」
2人、お互いの肩に手を置き合う。フェード・アウト。
カーテン閉まる。(カーテン前。)
――――― 第 6 場 ―――――
フェード・インする。と、椅子の上にトーマス
腰を下ろしている。
横にウィリアムス、ウィルソン、専務秘書ポーラ
立っている。
ウィリアムス「好い加減、会社は諦めたらどうだ。」
トーマス「・・・こんなことをして、ただで済むと思っているので
すか?」
ウィリアムス「こんなこと・・・とは?」
トーマス「これは明らかに犯罪ですぞ!」
ウィルソン「可笑しなことを仰るのですね。我々はあなたにただ、
任意退職を勧めているだけです。普通でもあなたは、
もう現役引退のお歳だ。亡くなった社長に何も義理
立てをして、娘のお守をする必要もないでしょう。今
あなたが黙って退職なさるなら、退職金も普通の倍
は出すと言っているのです。あなたにとっても全く悪
い話しではない筈ですよ。」
トーマス「私には、あなた方がどんな汚い手を使ってきても、社
長を裏切るような真似は絶対に出来ない話しです。」
ウィリアムス「全く、頑固な爺だ!!」
トーマス「お嬢様はどうされたのです!」
ウィルソン「(恍けるように。)さぁ・・・。あなたが何時までも、そ
んな頑なな態度を取り続けるのであれば、フランシス
お嬢さんも屹度、お辛いでしょうなぁ。」
トーマス「(思わず立ち上がって。)お嬢様に何をしたのです!
?」
ウィリアムス「(トーマスの肩を押さえて座らせる。)まぁ、まぁ・・・
。我々もお嬢さんに手出ししようなどとは考えていま
せん。ただねぇ・・・お嬢さんも頑固なお方ですから
・・・。(笑う。)まぁ、時間はいくらでもありますから。
また、ゆっくり考えてみて下さい。あなた自身にとっ
ても、お嬢さんにとっても、何がこれからの為に一
番良いことなのか・・・。(下手へ去る。)」
ウィルソン「では・・・(ウィリアムスに付いて去る。)」
専務秘書ポーラ、2人に付いて行きかけて、
再びトーマスの所まで戻って来、ポケットから
何かを取りだし、トーマスの手を取り、それを
渡す。
トーマス「え・・・?(思わずポーラを見上げる。)」
ポーラ「こんなものしかないけど・・・。キャンディー・・・」
トーマス「ありがとうございます・・・。」
ポーラ「けど・・・早く専務達の言うようにした方がいいと思い
ますわ。でないと何時までもこんな所に閉じ込められた
ままじゃ、トーマスさんの体が参ってしまいます。」
トーマス「(俯いて思い出すように。)私は・・・今まで亡くなった
社長には、言葉では言い尽くせない程の恩義を受け
てきたのです・・・。例え死ぬまでここから出られない
としても、私には社長の遺言を裏切ることなど、絶対
に出来ないことです。お嬢様のバックアップをしてお
守りすること・・・これが私に課せられた最後の仕事
だと思っています・・・。」
ポーラ「・・・そう・・・。それからフランシスお嬢さんですけど・・・」
トーマス「(立ち上がって。)えっ?」
ポーラ「逃げ出されました。」
トーマス「何ですと!?こんな高い場所からどうやって!?」
ポーラ「勿論、見張りのいるドアからは出られません・・・。多分
ベランダ沿いに非常階段を伝って・・・。」
トーマス「それでお嬢様は!?」
ポーラ「さぁ・・・専務達も必死で捜しているようですけど、まだ
今のところは・・・」
トーマス「そうですか・・・。お嬢様・・・どうかご無事で・・・!!」
暗転。
――――― 第 7 場 ―――――
カーテン開く。と、舞台はTMインターナショナル
ロビー。そこへアタッシュケースを持ち、スーツ
を着たレナード、登場。受付の方へ。
レナード「あの、営業課のダニエル・カーン氏に面会お願いで
きますか?」
受付嬢(マートル)「(レナードを見上げて。)分かりました。少し
あちらでお待ち下さい。」
レナード、窓際に並べられてあるソファーに、
腰を下ろす。横にあった新聞を取って、読む
振りをしながら回りの様子を見回している。
社員(チャーリー、ドナルド)話しながら登場。
マートルの方へ近寄る。
チャーリー「やあマートル、元気?」
マートル「ええ・・・」
チャーリー「僕、今日外回りは近場だけなんだ。」
ドナルド「だから何なんだよ。」
チャーリー「煩いな!ねえ、ねえ、だからさ、食事でも一緒に
・・・」
ドナルド「あー!!抜け駆けする気かよ!!」
マートル「私、今日は約束がありますから・・・」
チャーリー「えー!!本当に!?」
ドナルド「やーい!!」
チャーリー「煩いなー!!」
マートル「あの・・・仕事の邪魔になりますから・・・」
チャーリー「ちぇっ・・・またアウトか・・・」
チャーリー、ドナルド、入口より出て行く。
そこへウィリアムス、ウィルソン登場。立ち止まり
話しをしている風。レナード、2人に気付いて見入る。
レナード「あれが例の悪玉だな・・・」
そこへレオーネ、スタン登場。ウィリアムス達に
近寄り話す。
レナード「(身を屈めるように深くソファーに沈み込む。)おっと
・・・あいつらはこの間の・・・。矢張り専務達の手下だ
な・・・」
ウィリアムス、ウィルソン、入口より出て行く。
レオーネ、スタン、レナードとは背中合わせの
ソファーに腰を下ろす。
スタン「ねぇ、レオーネさん、後は一体何処を捜せばいいんす
か?もう、この辺りに女が一人で隠れていられそうな所
なんかないっすよねぇ・・・。」
レオーネ「煩いな・・・。それでも捜さなきゃならないんだよ!!
もし見つからなかったなんて言ってみろ!!俺達が
殺られるかも知れないぜ!!」
スタン「えー!!そんなー!!俺、まだ死にたくないっすよ!!」
レオーネ「馬鹿、俺だって同じだ!!」
そこへダニエル登場。受け付けでレナードの
ことを聞き、近寄る。
レオーネ、スタン、立ち上がり出て行こうとする。
ダニエル「営業課のダニエル・カーンです。僕に何か・・・?」
レオーネ、何気なしにその方をチラッと見る。
レオーネ「(新聞を置いて立ち上がったレナードの顔を見て、
一瞬不思議そうな顔をして、再びスタンと行きかけて
。)あれ・・・?あの顔は・・・」
スタン「レオーネさん、如何かしたんすか?」
レオーネ「あいつは確か裏通りのバーの・・・何でネクタイなん
か締めて、こんな所に・・・」
スタン「レオーネさん?」
レオーネ「まぁ、いいか・・・」
レオーネ、スタン、入口より去る。
レナード、舞台中央へ。ダニエル続く、
カーテン閉まる。カーテン前。
レナード「俺は裏通りのバーでマネージャーをしている、レナード
と言う者だが・・・」
ダニエル「そのマネージャーのあなたが何か・・・?」
レナード「君だろ?フランシスの捜索願いを極秘で出したのは
?」
ダニエル「(驚いて。)何故それを・・・!?」
レナード「彼女は無事だ・・・」
ダニエル「えっ!?(思わず。)お嬢さんは今何処に!?」
レナード「しっ!!」
ダニエル「すみません・・・。でも一体何処に・・・!?」
レナード「俺の店にいる。」
ダニエル「え・・・?」
レナード「彼女から大体の話しは聞いた。専務のことや、この
会社の中で誰が信用できる奴らかってこと・・・。俺は
彼女から親父さんの会社を守る為に、力を貸して欲し
いと頼まれてね。」
ダニエル「本当ですか?あの・・・ひょっとして、あなたは
“nothing”のレナードさんじゃ・・・?」
レナード「どうして俺のことを・・・?」
ダニエル「矢っ張り!!この界隈に住んでて、あなたのことを
知らない奴がいたら、そいつは潜りですよ!!誰の
為にも力を貸してくれる、正義の味方だと言われてる
んですから!!(嬉しそうに。)」
レナード「(照れ臭そうに。)参ったなぁ・・・。今はそんなことより
フランシスのことだ。」
ダニエル「はい!」
レナード「彼女とは、偶々逃げ出したホテルから俺の店が近か
ったと言うことで、入って来て知り合ったんだ。」
ダニエル「(安心したように。)よかった・・・逃げ込んだ所が、あ
なたの所で・・・」
レナード「いや・・・最初は逃げ込んだと言うより、ただふらっと
寄ったって感じだな・・・。兎に角俺は、専務の悪事を
暴く。君はその手助けをして欲しいんだ。」
ダニエル「僕は一体何をすれば・・・?」
レナード「なぁに、簡単なことさ。夜、俺がこのビルに忍び込む
のを手助けしてくれればそれでいい。後は俺が上手く
やる。」
ダニエル「分かりました!!任せて下さい!!」
レナード「(微笑んで、ダニエルの肩に手を掛ける。)頼んだぞ
!」
ダニエル「あなたのお手伝いが出来るなんて光栄ですよ!!
それもお嬢さんの為になるんだ!!」
レナード「よし、じゃあ俺はそろそろ行くよ。(行きかける。)」
ダニエル「レナードさん!!」
レナード「(振り返る。)」
ダニエル「(レナードに近寄って。)お嬢さんに頑張るように伝
えて下さい。」
レナード「OK。」
ダニエル「僕はお嬢さんのファンですから・・・。」
暗転。
――――― “レナード”4へつづく ―――――
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