りとるぱいんわーるど

ミュージカル人形劇団“リトルパイン”の脚本の数々です。

“君のために・・・” ―全6場―

2012年05月26日 22時10分40秒 | 脚本


        
          (左)クリフくん・(右)ジ―クくん

        2012年春公演作品の1本です(^^)v
   
       公演が終了したので、早速紹介して行こうと
       思います(^^♪
       また、公演日記と合わせてお楽しみ下さい^^; 


 ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪


    〈 主な登場人物 〉


    クリフ  ・・・  本編の主人公。
              芝居一座の少年。

    ジ―ク  ・・・  村の少年。

    ポーラ  ・・・  クリフの妹。 病気がち。

    森に住む魔法使い

    村の少年達

    ジ―クの母

    ジ―クの父

    芝居一座のおかみさん。

    その他


 ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪


         音楽流れ幕が開く。


    
                  村の様子。



    ――――― 第 1 場 ―――――

         1人の少年(ジ―ク)、上手より走り登場。

  ジ―ク「おーい!!芝居一座がやって来たぞー!!」

         村人達、嬉しそうに上手下手より
         それぞれ登場。歌う。

         “平和な村 争いもない
         だけど楽しみも 面白みもない
         心踊る楽しいことが
         一つでもあれば退屈を忘れる
         飽き飽きする程 平凡なこの村
         たまに訪れる夢を売る者達が
         退屈な日々を忘れさせてくれる
         キラキラ輝いて夢のような世界”


    


         (上手後方より芝居一座の行列が、ゆっくり
         登場。紙吹雪を巻きながら下手前方へ向かう。)

         ジ―ク、楽しそうに芝居一座の行列に見入って
         いる。

  ジ―ク「楽しそうだなぁ・・・」

         下手よりジ―クの母登場。

    


  ジ―クの母「(ジ―クの耳を引っ張る。)」
  ジ―ク「いててててっ・・・。何すんだよ、母ちゃん!!」
  ジ―クの母「何すんだよじゃないだろ、ジ―ク!!お使いはどう
         したんだい!?」
  ジ―ク「分かってるよ!!」
  ジ―クの母「ほら、見てごらん、あの色の白い男の子・・・。綺麗
         な顔してるねぇ。さすが夢を売る商売の子は、あんた
         とは大違いだ。(笑う。)」
  ジ―ク「煩いな、母ちゃん!!」

         芝居一座歌う。(手拍子入る。)

         “皆様ようこそ 我々夢一座
         楽しい芝居や美しい歌声を
         皆様に届け 楽しんでもらう為
         ここへ馳せ参じた次第”

         一番後ろを歩いていた少女(ポーラ)
         ジ―クの目の前で躓く。

  ポーラ「あ・・・」
  ジ―ク「君!(手をかける。)」

         先に歩いていた少年(クリフ)、ポーラに
         駆け寄る。

  クリフ「ポーラ!!」
  ジ―ク「大丈夫・・・(手を貸そうとする。)」
  クリフ「触るな!!」
  ポーラ「お兄ちゃん・・・」

         クリフ、ポーラを手助けしながら行きかける。

  ジ―ク「あ・・・おい、おまえ!」
  クリフ「(ジ―クを睨み付け。)ふんっ!!」

         ジ―ク残して紗幕閉まる。

    ――――― 第 2 場 ――――― A

  ジ―ク「ちぇっ・・・なんだよ、あいつ・・・」

         (紗幕前。)
         音楽流れ、少年達、上手より走り
         登場。歌う。


    
                      ※


  少年1「おーい、ジ―ク!!」
  ジ―ク「よぉ、みんな!」
  少年2「なんか楽しそうな芝居が、始まるらしいぜ!!」
  ジ―ク「知ってる、知ってる!」
  少年3「みんなで覗きに行ってみないか!?」
  ジ―ク「ああ!」
  少年1「よし、行こうぜ!!」
  ジ―ク・少年達「おお!!」

     少年達“楽しそうな芝居小屋
          平和なこの村に”     コーラス“楽しみなことが
                                あるんだ”

     少年達“やって来た楽しみな
          唯一の娯楽ごと”     コーラス“わくわくする”

         紗幕開く。と、芝居小屋の外。
         少年達、後ろを向いて、何かを覗いて
         いる風に。

  少年2「わぁーっ!!」
  ジ―ク「ちょっとどけよ!!見えないだろ!!」
  少年3「あっ・・・」
  少年1「ちょっと俺にも見せてくれよ!!」
  少年2「わあーっ・・・」
  少年3「へえーっ・・・すごいなぁー・・・」
  少年1「見てみろよ、あいつ!」
  ジ―ク「あ・・・あの野郎、さっきの・・・」
  少年2「女みたいだなぁー・・・」
  少年3「わあっ!!押すなよ!!」
  少年1「いてっ!!」

     ジ―ク“行こう    コーラス“芝居を見に
          すぐに          芝居を見に
          早く”           芝居を見に”
   
     少年達“こんなことは滅多にないんだから”

     ジ―ク“行こう    コーラス“芝居を見に
          行こう          芝居を見に
          行こう”         芝居を見に”

         そこへ下手より、桶を持ったクリフ登場。

  クリフ「(少年達に気付く。)おい!!何してるんだ!!」
  少年達「わあーっ!!」

         少年達、上手へ走りさる。(曲終わり。)

    ――――― 第 2 場 ――――― B

  クリフ「ふんっ・・・全く・・・」

         小屋が開く。と部屋の中。
         ポーラ、ベットに横になっている。


    



  ポーラ「あ・・・お兄ちゃん・・・。どうかしたの?」
  クリフ「ううん・・・なんでもないよ。どう?具合は・・・」
  ポーラ「うん・・・平気・・・(咳き込む。)」
  クリフ「あんまり喋っちゃ駄目だよ。」
  ポーラ「うん・・・」

  おかみさんの声「クリーフ!!さっさとしないと学校に遅れちまう
            だろ!!学校はただじゃないんだよ!!早いと
            こお行き!!」

  クリフ「はーい、おかみさん!!直ぐ行きまーす!!ポーラ・・・
     僕は学校に行って来るからね・・・。ゆっくり休んでいるんだ
     よ。」
  ポーラ「うん・・・」

         クリフ本を持って、行きかける。
         音楽流れる。

  ポーラ「お兄ちゃん・・・」
  クリフ「ん?」
  ポーラ「学校楽しい・・・?」
  クリフ「え・・・?」
  ポーラ「私も学校へ行ってみたいなぁ・・・」

         ポーラ歌う。

         “元気になって思い切り
         走り回る草原を
         それが私の夢なのよ
         誰も知らない”

         クリフ歌う。
  
         “この僕が代わることが
         できたならば
         辛い思いしなくてすむ
         僕だけが元気で”

         ポーラ歌う。

         “元気になって
         走り回る 夢の中だけ”
 
  クリフ「いつか必ず行けるから・・・」
  ポーラ「うん・・・」
  クリフ「おやすみ・・・」
  ポーラ「おやすみなさい・・・」

         (クリフ残して、紗幕閉まる。)


    



  クリフ「神様は不公平だ・・・。僕らは一生懸命生きてるだけなの
      に・・・」

         クリフ歌う。

         “今までだって沢山の
         辛いことを乗り越えて
         ただ頑張って生きてきた
         小さな幸せ”

         本を拾って、下手方へ。
         (途中、紗幕開く。と、村の様子。)

    ――――― 第 3 場 ―――――

         クリフ、下手方へ行きかけると、下手より
         ジ―ク登場。


    


  ジ―ク「(クリフを認める。)あ・・・よぉ。」
  クリフ「(無視して行こうとする。)」
  ジ―ク「おい!知らん顔すんなよ。」
  クリフ「煩いな・・・」
  ジ―ク「おい!どこ行くんだよ!教科書持って・・・。学校はそっち
      じゃないぜ。」
  クリフ「ほっといてくれよ。」
  ジ―ク「学校まで案内してやるから、付いて来いよ。」
  クリフ「(無視して行こうとする。)」
  ジ―ク「おいってば・・・(クリフの腕を掴む。)」
  クリフ「はなせよ!!」
  ジ―ク「なんだよ・・・分からずや!!」
  クリフ「どっちが分からずやだ!!僕がどこへ行こうと、何をしよ
      うと、おまえには関係ないだろ!!」
  ジ―ク「子どもは学校へ行くものなんだ!!学校の他に、おまえ
      が行くところなんて、きっとろくでもない・・・」
  クリフ「仕事に行くんだ!!」
  ジ―ク「・・・仕事・・・?」
  クリフ「病気の妹の薬代がいるんだ!!だから仕事してお金を
      稼がなきゃいけないんだ!!」 
  ジ―ク「お金って・・・おまえ芝居小屋の・・・父ちゃん、母ちゃんは
      どうしたんだよ。」
  クリフ「僕ら兄妹に父さんも母さんもいない・・・。あの一座に拾わ
      れたんだ・・・。そこで育てられた・・・。そのうえ僕は学校ま
      で行かせてもらってるんだ。だから薬代まで貰える訳ない
      じゃないか!!」
  ジ―ク「だったら尚更行かなくちゃ!!そうだろ!?」
  クリフ「行きたくても行けない奴もいるんだ!!幸せなおまえに
      は分からないだろうけど・・・。どうでもいい話しをさせない
      でくれ・・・」
  ジ―ク「学校へ行こうぜ・・・。これ・・・足りるかどうか分かんねぇ
      けどさ・・・。(クリフに手を差し出す。)」
  クリフ「(ジ―クから何かを受け取る。)なんだよ・・・」

         音楽流れる。

  ジ―ク「俺の昼飯代さ。」
  クリフ「お金・・・?施しなんかいるもんか!!(放り投げる。“チ
      ャリーン”)」  ※1

         クリフ歌う。

         “誰がほ施しなんか僕のこと
         馬鹿にするなよ おまえなんか
         幸せな生活を
         ただ送る奴に”

         ジ―ク歌う。

         “甘えた考えはやめるんだ
         自分ばかりが辛いなんて
         後ろ向き 俺を見ろ
         目を合わせるんだ”

         クリフ歌う。

         “おまえに何が分かると
         僕の今までが
         記憶に残っている
         辛い思い出”          コーラス“心に”

         ジ―ク歌う。

         “おまえに同情なんてする訳ない
         誰もが同じ権利がある
         学ぶこと妨げる
         それは不公平だ”

  ジ―ク「学校は行かなきゃ駄目だ!!父ちゃんがそう言ってた
      ・・・。子どもはしっかり勉強しなきゃ駄目だって・・・。でな
      いと大人になったら困るって・・・だから・・・」
  クリフ「余計なお世話だ!!おまえに何が分かるんだ!!父さ
      んも母さんもいない・・・妹と2人だけで生きてきた僕の気
      持ちが!!」

         ジ―ク歌う。

         “おまえも分かってる筈
         自分一人だけ
         辛い思いを抱かえ
         きたんじゃないと”

         クリフ歌う。

         “誰も僕らのことを        コーラス“離れた
         分からない                  2人の
         今までどんな風に2人           気持ちが
         肩寄せてひっそりと             今は
         生きてきたなんて              近く
                                  歩み合わせ
         ジ―ク歌う。                 分かり合う”

         “辛いことがあるなら
         言えばいい
         心の中に溜め込まずに
         吐き出せば
         きっとまた歩き出せる筈さ”









    ――――― “君のために・・・”2へつづく ―――――









   ※ この少年達、ジ―ク君以外は以前使用したお人形の
     使い回しです^^;
     どの子が誰か、分かりますか・・・?
    (答え、左より“未来の海へ”貝君、“未来の海へ”十海君、
     ジ―ク、“光の国のエリオット”マルコ少年。)

   ※1、“生チャリーン”、グーグル版“ワールド”で是非お聞き
      下さい^^;




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    (どら余談^^;)

    グーグル版“ワールド”に、“君のために・・・”の一部動画を
    投稿致しました(^^)v
    丁度、今日の脚本投稿辺りの場面になります(^^♪
    文字だけでなく、実際に音楽なども入ると、また違った感じ
    でお楽しみ頂けるのではないでしょうか・・・♥

    他場面も順次公開しようと思っていますので、またご覧くだ
    さいね(^.^)











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“マリア” ―全14場―

2012年05月24日 21時31分58秒 | 未発表脚本


         〈 主な登場人物 〉
   
     ジェシー  ・・・  泥棒一味の一人。
                 ずっと一人で生きてきた、人生に何処
                 か冷めた所のある無鉄砲者。

     マリア  ・・・  舞台女優を夢見る娘。

     ニック  ・・・  泥棒一味の一人。

     ラリー  ・・・  泥棒一味の一人。

     マイク  ・・・  泥棒一味の一人。

     スザンヌ  ・・・  マリアの入っている劇団員。マリアに何
                 かと対抗意識を持つ。

     シャロン  ・・・  ジェシーの働く店の歌手。

     バリー  ・・・  美術館の警備員。

     メアリ  ・・・  マリアの入っている劇団員。



 ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪


    ――――― 第 1 場 ――――― A

         静かな音楽で幕が上がる。(カーテン前。)
         薄明かりの中、地下道を吹き抜ける風の音。
         誰かが歩く靴音が響く。
         と、一発の銃声が辺りに響く。
         上手より一人の男、銃を片手に誰かを捜して
         いるように登場。

  男(ラリー)「(舌打ちをして。)ちっ!何処に行ったんだ、あの野
         郎!!一年前のあの時以来、姿を暗ましやがって、
         よくものこのこと、この町に戻って来れたものだ!!
         見つけたらただでは済まないぞ!!」

         男、再び誰かを捜すように下手へ去る。
         一時置いて、腹部に傷を負った男、ヨロヨロと
         本を片手に握り締め上手より登場。
         中央、痛みに顔を歪め、膝を付く。
         男の名前はジェシー。

  ジェシー「・・・マリア・・・もう直ぐ・・やっと、おまえの笑顔に・・・
       会えるんだな・・・。やっと・・・(フッと笑って。)・・・長かっ
       たなぁ・・・(咳き込む。遠くを見遣って。)・・・そう・・・忘れ
       もしない・・・おまえと初めて出会ったのは・・・一年前の
       今日・・・夏の・・・暑い・・・日だった・・・(倒れる。)」

         暗転。

    ――――― 第 1 場 ――――― B

         楽し気な音楽が流れてくる。カーテン開く。
         (ライト・イン)と、ニューヨークの下町。
         中央にポーズを取ったマリアと、数人の男女。
         満面の笑みを湛えながら、嬉しそうに歌い
         踊る。

         “明るい日差し浴びて
         初夏の清々しい微風
         ときめき逸るこの心
         何かの出会いの予感・・・
         何時か思い描いた
         未来の足跡
         何時か必ず叶うと
         未来を夢見た”

         マリア、希望に胸膨らませたように大空を
         見上げ、下手奥へ走り去る。
         入れ代るように上手より、スーツ姿のジェシー、
         ゆっくりと無表情で登場、歌う。

         “前を歩くな 横切るな
         視界の入るな 目障りだ
         今まで自分の為だけに
         これからだって変わらない
         俺は遣りたいように遣る
         誰から何と言われても
         人のことには興味ない
         それが例え人間の
         生きる道から外れても
         誰がどれ程泣こうとも
         俺の知ったこっちゃない
         俺は遣りたいように遣る!!”

         カーテン閉まる。

    ――――― 第 2 場 ―――――

         カーテン前。
         下手より、黒いシャツに黒いズボン、黒い靴に
         黒い帽子を手に持ったニック、ズボンのポケット
         に片手を突っ込んでゆっくり登場。続いて同じ
         格好をし、帽子を深く被ったラリー、マイク登場。

  ラリー「おい、ニック!先週盗んだ・・・」
  ニック「(ラリーの言葉を遮るように。)ラリー!!そう言う言葉を 
      軽々しく口に出すな。今は中だからいいようなものを、気
      を付けておかないと、うっかり外でも喋ってしまうぞ。」
  ラリー「(肩を窄めて。)そうだな。で、如何なった?」
  ニック「(ニヤリと笑って。)凄い札束に変身して、店の金庫で眠
      ってるさ。」
  マイク「おお!!それで、俺達の分け前は?」
  ニック「そう焦るな。一先ず俺が預かっといて、何時でも必要な
      時、必要なだけ用意してやるから。」
  ラリー「けどジェシーの奴、見つかったら殺されるとか、全く心配
      しないのかねぇ・・・。」
  マイク「そうだよなぁ。俺は嫌だな、捕まるのは・・・。」
  ラリー「誰もおまえを当てになんてしてないさ。」
  ニック「そう言うことだ。あいつがいるお陰で、俺たちゃ随分、助
      かってるんだぜ。あいつが囮になってくれるお陰で、俺た
      ちゃ楽々と獲物に在り付けるって訳だからな。」
  ラリー「だけどあいつ、何だってよりによって自分から一番危ない
      役を遣りたがるんだろ・・・。」
  ニック「さあな。」
  マイク「ところで今日の獲物“聖母マリアの肖像”って言ったら、
      時価数億円は下らないって?」      ※
  ニック「ああ。あれに目をつけたのもジェシーなんだぜ。あのニュ
      ーヨーク一、警備の頑丈な美術館を狙うなんてね・・・。そ
      れに盗みに入る時間も、閉館後直ぐだなんて・・・。」
  ラリー「どうもチャレンジ精神旺盛らしいな。」
  ニック「・・・って言うか、自分を無理矢理窮地に追い込むような
      所がある奴だとは思うがね・・・。」
  マイク「へぇ・・・」
  ニック「あいつが俺達の仲間に加わって、もう一年位になるが、
      未だに掴みどころのない奴なのは確かだね。」
  マイク「あいつ、自分のこと余り喋んないしな。」
  ニック「ああ。おまえと違って、自分の方から聞かれもしないこと
      を、ベラベラ喋ったりはしないな。」
  マイク「酷いなぁ。俺だって何も聞かれもしないことを、自分から
      喋ったりは・・・あんまりしないようにはしてるんだけど・・・
      。偶にはするかも・・・。」
  ラリー「(笑って。)自分でもよく分かってるじゃないか。」
  マイク「ちぇっ。」

         そこへ下手よりジェシー、ニック達と同じ
         ように黒の上下に身を包み登場。

  ジェシー「まだ出ないのか?」
  ニック「(振り返って。)ああ、ジェシー。いや、もう出ようと思って
      た所だ。」
  ジェシー「なら、もう準備はいいぜ。」

         ニック、ラリーとマイクに目で合図して、
         行くように促す。

  ラリー「OK。」

         ラリー、マイク上手へゆっくりと去る。ジェシー
         2人に続く。

  ニック「よお、ジェシー・・・。」
  ジェシー「(振り返る。)」
  ニック「(手に持っていた帽子を被りながら。)おまえにとって、一
      番怖い物ってなんだ・・・?」
  ジェシー「怖い・・・?」
  ニック「ああ。例えば死ぬのが怖いとか・・・誰かを傷付けられる
      のが怖いとか・・・。」
  ジェシー「くだらない・・・。」  
  
         ジェシー、上手へ去る。ニック、首を傾げ
         ながらジェシーに続く。

    ――――― 第 3 場 ―――――

         音楽でカーテン開く。と、閉館前の美術館。
         一枚の大きな肖像画の前でマリア、見上げ
         るようにその絵に見入っている。

  スザンヌの声「あなたも今度の舞台の主役オーディションを受
           けるんですって!?(笑い声。)あなたは自分の
           実力を知ってて、そんな無謀なことを考えている
           のかしら?この劇団のスターは私よ!!私よ・・・
           (木霊する。)」

         マリア、涙を拭うような仕種をする。
         一時置いて、警備員バリー、上手より
         登場。マリアを認めて近寄る。

  バリー「やあ、マリア、また来てたのかい?」
  マリア「(振り返ってバリーを認める。)バリーさん・・・。」
  バリー「熱心に見入っている所、申し訳ないが、もう閉館だよ。」
  マリア「もうそんな時間だったの?(回りを見回して。)本当、何
      時の間にか私一人ね・・・。」
  バリー「全く、おまえさんはこの絵が好きだねぇ。・・・何か・・・あ
      ったのかい?」
  マリア「え?如何して・・・」
  バリー「(微笑んで。)おまえさんは、劇団で何か嫌なことがある
      と、必ず決まってこの絵を見にくるからね。何も口に出さ
      なくても分かるよ。」
  マリア「(再び絵に目を遣って。)何故かしら・・・この絵を見てる
      と、とても心が穏やかになるの。外でどんな嫌なことがあ
      ってもね・・・。」
  バリー「そうか。屹度、おまえさんのこの絵を見る気持ちが穏や
      かだから、そう感じるのかも知れないな。」
  マリア「(微笑んで、バリーを見る。)それに、バリーさんと話しも
      出来るし、元気になるのね!」
  バリー「それは嬉しいね。」
  マリア「頑張らなくっちゃ!!もう直ぐ、次の公演の主役オーデ
      ィションがあるの!!今夜も今から自主稽古よ!!」
  バリー「ほう・・・。じゃあ応援しないとな。」
  マリア「ありがとう!!おやすみなさい!!」

         マリア、バリーに向かって手を振り、上手へ
         走り去る。バリー、微笑ましくマリアの後ろ姿
         を見詰める。
         去るのを見計らって、ゆっくり回りを見回しな
         がら、下手へ去る。回りはライトを消したよう
         に薄暗くなる。と、怪し気な音楽が静かに流
         れ、回りの様子を窺いながら、忍び足のニック、
         ラリー、マイク其々歌いながら登場。 

         “人が皆 寝静まる
         頃には少し早いけど
         今が俺らの稼ぎ時
         夜の闇が辺りを包み
         この緊張感が堪らない
         一歩一歩踏み締めて
         守る者の待つ場所へ
         導くものがあるように
         黙って歩みを積み重ね
         俺らは闇の帝王さ!”

         3人、其々絵に近付き、外し具合を
         見たり回りを見張ったりしている。
         その時、遠くでバリーの声が聞こえる。

  バリーの声「泥棒ー!!」

         ニック、ラリー、マイク、思わず身を
         縮めるが、お互い顔を見合わせ、頷いて
         再び絵を外しにかかる。

  ニック「ジェシーの奴、上手くやったようだな。」

         暫くすると、絵が壁から外される。
         3人、再び顔を見合わせて、ニヤリと
         笑う。
         音楽で紗幕閉まる。

    ――――― 第 4 場 ―――――

         カーテン前。
         上手より、レオタード姿のスザンヌ、メアリ、
         話しながら登場。

  スザンヌ「全く、信じられないわ!!如何して今度の舞台に限
        って、主役がオーディションなの!?何時もは私に決
        まってるのに!!」
  メアリ「フランスから有名な演出家が来るらしいから、その先生
      のお眼鏡に適った主役ってことじゃないかしら・・・。」
  スザンヌ「・・・にしてもよ!!私はこの劇団の看板スターよ!!
        私抜きにして、お客が入るかしら!?」
  メアリ「さあ・・・。でも、その辺のところは、勿論考えているでしょ
      う?だから、あなたの主役は決まってることよ。」
  スザンヌ「(得意気な顔付になる。)・・・そう・・・ねぇ・・・。まあ、
        誰が受けても私に敵う女優がいるとは思わないけど
        ・・・。」

         その時下手より、練習着に身を包んだマリア、
         台本を抱えて登場。スザンヌ、マリアを認め
         近寄る。

  スザンヌ「あら、マリア。台本を抱えて、こんな遅くまで自主レッ
        スン?」
  マリア「・・・ええ・・・。」
  スザンヌ「へえ。本当に頑張ればオーディションに受かると思っ
        てるんだ。たいした自信ねぇ。」
  マリア「自信なんて・・・」
  スザンヌ「今まで、この劇団のどの舞台を成功に導いたのも、
        私の実力と人気があってのことだって分かってるの
        かしら?」
  マリア「・・・それはもう・・・」
  スザンヌ「だけど敢えて挑戦するなんて、その心構えは立派よ
        ねぇ。まぁ、精々頑張って頂戴!!」

         スザンヌ、スタスタと下手へ去る。
         メアリ、スザンヌに続いて行きかけて、振り返り
         マリアに駆け寄る。

  メアリ「スザンヌの言ったことなんて、あまり気にしない方がいい
      わ!」
  マリア「メアリ・・・」
  メアリ「私はあなたの実力を知ってるもの!あなたなら必ず、オ
      ーディションに合格するわ!!確かにここに来た当初の
      あなたの演技は荒削りで、そりゃ酷いものだったけど、今
      は違う!!私、あなたが毎晩レッスンが済んでから、一人
      で頑張ってたの知ってる・・・。その頑張りがあれば、絶対
      大丈夫よ!!」
  マリア「(嬉しそうに。)メアリ・・・ありがとう。けど、あなたも・・・」
  メアリ「(マリアの言葉を遮るように首を振る。)ううん!私は駄目
      ・・・。自分の実力は自分が一番よく知ってもの。私はダン
      スで一場面貰えればラッキーだと思ってるの。だから頑張
      って!!私はあなたを応援してる!!そして一度あのス
      ザンヌの鼻をへし折ってやって!!」

         メアリ、下手へ走り去る。

  マリア「(走り去るメアリの背後を、暫く見ている。)メアリ・・・。」

         マリア、微笑みを洩らして上手へ去る。

    ――――― 第 5 場 ―――――

         カーテン開く。と、夜の町の公園。
         遠くにビル街の明かりが見える。
         中央にジェシー、佇み歌う。

         “一体何をしているのか
         自分の身をすり減らし・・・
         一体何の為だと言うのか
         有り余る危険を冒し・・・
         この世には何も魅力はない・・・
         ただ生かされるこの身のその為だけに・・・
         俺は突き進む・・・

         一体何があると言うのか
         この歩いていく向こうに・・・
         一体何が見えると言うのか
         この道の果てには・・・
         何もある筈はない・・・
         ただ何処までも続く平坦な道を・・・
         俺は歩き続ける・・・”

         ジェシー、溜め息を吐いて中央に後ろ向きに
         置いてあったベンチへゴロンと横になる。
         一時置いて、下手よりマリア、鞄を担いで手に
         は本類を持ち、練習帰りの出で立ちで、幾分
         疲れたように登場。
         中央、立ち止まり鞄を下ろし、回りを見回す。
         誰もいないのを確認したように、手に持って
         いた台本を開いて大声で叫ぶ。

  マリア「(息を吸って。)キャーッ!!キャーッ!!」

         ジェシー、思わず驚いて、寝ていたベンチ
         から飛び起き立ち上がる。










       ――――― “マリア”2へつづく ―――――










    ※ 今回、態と日本円の表示に直させて頂きました^_^;




 ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ 


        (おまけフォト^^;)

        
    
      犬バージョンのプッチくん、作りなおしてみました^^;

      ご覧の通り、ジョンより若干大き目の、同じタイプの
      お人形です(^^)v
      何故作りなおしたか・・・と言うと・・・前回のプッチくん、    
      直ぐに関節からポロッと手足が落っこちてしまうのと、
      ジョンで練習をしてみたところ、意外とこのジョンくん
      が可愛らしかったので、同じようなお人形にしようと
      思ったからです(^^)v
      今回は、串刺しにせず、お腹の部分を手で持って、
      動かす予定です(^.^)



   (どら余談^^;)

   いよいよ2012年春公演が明日に迫ってまいりました(>_<)

   今日は一日ドタバタと過ごしていた為、とても眠いのでブログ
   の更新はお休みさせて下さい
   春公演が終われば、そちらの2作品の公開も合わせて行って
   いこうと思っていますので、また公演日記共、楽しみにお待ち
   下さい(^^)v

   それでは明日、頑張ります(^^♪


                                  どら。












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“ジェフリー” ―全11場― 完結編

2012年05月06日 20時10分08秒 | 未発表脚本


         アイリーン、淋しそうに微笑む。そこへリン、
         下手より登場。

  リン「・・・アイリーンお嬢様・・・。ブライアン氏がお迎えに来られ
     ました・・・。」
  アイリーン「(リンを認めて。)そう・・・じいやが直々に・・・。ありが
         とう・・・。(何か思い出したように。)何時だったかしら
         ・・・。あなたとじいやが外で会っているのを、モーリス
         に見られたことがあって・・・あの時、私は慌ててあな
         たとじいやが兄妹だなんて変なこと・・・。(クスッと笑
         う。)」
  リン「(つられるように笑う。)まぁ・・・ブライアン氏と私が・・・?
     40も歳の違う兄妹って、本当にいるんでしょうか?」
  アイリーン「リン・・・ごめんなさいね・・・。あなたまで私の我が儘
         に付き合わせてしまって・・・。」
  リン「(首を振って。)いいえ、お嬢様・・・いいえ・・・。(明るく。)楽
     しかったですわ!ほんの2週間足らずでしたけど、お嬢様
     の親友が出来て・・・。」
  アイリーン「リン・・・。」
  リン「さぁ、お嬢様・・・そろそろ参りませんと・・・。」
  アイリーン「・・・はい・・・。(ジョナサン、ハドソンを見て。)・・・さよ
         うなら・・・。」

         アイリーン、リン、ゆっくり下手方へ行きかける。
         そこへ上手より慌てた感じのジェフリー、続いて
         モーリス登場。ジェフリー、躊躇ったように立ち
         止まる。

  モーリス「(ジェフリーの肩を突く。)ほら!」

         2人の気配に気付いたアイリーン、リン、
         振り返る。

  ジェフリー「・・・あの・・・」
  モーリス「ジェフリー!」
  ジェフリー「(諦めたように溜め息を吐いて。)行くな・・・(小さな
        声でボソッと。)」

         アイリーン、再び下手方へ行こうとする。

  ジェフリー「分かったよ・・・。アイリーン!!聞こえなかったのか
        !?行くなって言ったんだ!!」

         アイリーン、立ち止まりゆっくり振り返る。

  ジェフリー「・・・明日の入団テストを受けずに、おまえは夢を諦
        めるつもりなのか!?」
  アイリーン「・・・だって・・・」
  ジェフリー「この間は酷いことを言って、すまなかったと思ってる
        ・・・。(アイリーンを見詰めて。)行って欲しくないんだ
        ・・・。」

         優しい音楽流れる。
         モーリス、嬉しそうに微笑んで上手へ去る。
         ジョナサン、ハドソン、顔を見合わせ微笑んで
         モーリスに続いて去る。
         リン、嬉しそうに下手へ去る。

  アイリーン「・・・嘘・・・」
  ジェフリー「(溜め息を吐いて。)嘘なもんか・・・。白状するよ・・・。
        いいか・・・!?今まで他人に自分の気持ちを見せた
        ことなんて一度もなかったこの俺が、最初で最後の本
        音を言うんだ。よく心して聞いておけよ!!・・・今・・・
        俺は自分自身がみっともなくなる位、焦ってたんだ・・・
        。おまえがいなくなったらどうしよう・・・って・・・。おまえ
        の笑顔がもう・・・見れなくなったら・・・って・・・。おまえ
        のお陰で、もう一度夢見る心を知ったんだ・・・。愛して
        いる・・・。だから・・・側にいて欲しいんだ・・・。(微笑む
        。)」
  アイリーン「・・・ジェフリー・・・(涙が溢れる。)」
  ジェフリー「おまえの夢を叶えよう・・・。(手を差し出す。)」
  アイリーン「ジェフリー・・・!!(ジェフリーの胸へ飛び込む。)」

         ジェフリー、アイリーンを抱き締める。
         音楽大きく。ジェフリー、アイリーンの手を
         取り、優しく見詰め歌う。

         “優しくなれなかったことは・・・
         本音の裏返し・・・
         思い続けたことへの
         貫き方の一つ・・・
         だけどおまえの背中が見えた時
         初めて気付いた心に
         焦るこの思い・・・

         優しい思いが心を過り
         暖かな温もりが頬を過ぎる・・・
         胸を締め付けられるような
         未来への期待が
         迸る泉のように溢れ返る・・・
         それが今生きてる一つの証
         過去に残した思いの丈を
         今新たに見詰め直す・・・
         その時側に期待に包まれ
         明るい明日への
         道案内に導かれ
         希望の扉を今開こう・・・”

         ジェフリー、アイリーンにそっと口付ける。









           ――――― 幕 ―――――






   
   
   



   それでは、そろそろここら辺で、次回掲載作品のご紹介を
  しておきたいと思います(^^)v

  次回は、今回と同じ舞台を夢見る女の子のお話しを一つ・・・
  設定は全く異なるお話しですが、“夢を追う”・・・と言う姿勢に
  共通するところがあるかな・・・と、夢つながりでご覧頂こうと
  思います(^.^)

  では次回、“マリア”(本当はジェシーと言う男性が主人公な
  ので、ジェシーとするところですが、前に同じ名前の主人公
  作品があったのではないかと思いますので、今回はそのお
  相手となる、“マリア”さんと言う、女の子の名前を題名代わり
  させて頂きます^_^;)お楽しみに♥








 ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪


   (どら余談^^;)

   春公演まで、後一週間と迫ってまいりました・・・(>_<)
   準備は万端・・・では、まだありませんが、何とか間に合わせ
   ることが出来るように、頑張って進めているところです^^;
   
   そんな中、二度目の外泊で子どもが帰宅しているので、
   いつになく明るい家の中で、のんびりとプログラム作りに
   (こんな間際に・・・^^;)励んでいるところです(^.^)

   きっと、皆様にはご満足頂ける公演になると思っていますの
   で・・・是非、足をお運び下さいね♥














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“ジェフリー” ―全11場― 4

2012年05月05日 18時20分27秒 | 未発表脚本



  ジョナサン「ダイアナ!!(アイリーンの方を向いて。)アイリー
         ン!!気にするなよ!!」
  ハドソン「ダイアナさん!!」

         ジョナサン、ハドソン、ダイアナの後を追って
         上手へ去る。

  アイリーン「・・・私のせいなの・・・?私がジェフリーを独り占めに
         したから・・・。そうなの?ねぇ、リン・・・。」
  リン「そんなこと、ありませんわ・・・!!第一、踊りを教えてくれ
    ると最初に言ったのは、ジェフリーさんの方です。」
  アイリーン「・・・でも・・・それは良い結果を生まなかったのね・・・
         。」

         その時、ジェフリー下手より登場。アイリーンを
         認め近寄る。

  リン「例えそうだとしても、それはアイリーンお嬢様のせいじゃ、
     ありません!!」

         ジェフリー、リンの言葉に驚いたように
         立ち止まる。
         アイリーン、ジェフリーに気付く。

  アイリーン「ジェフリー・・・」
  ジェフリー「・・・お嬢様・・・?(鼻で笑う。)・・・お嬢様って、如何
        言うことなんだよ・・・。」
  アイリーン「・・・ジェフリー・・・(返答に困ったように。)」
  ジェフリー「・・・答えられないってことは・・・そうか・・・おまえは、
        “お嬢様”と呼ばれる女性だった訳だ・・・。(リンを見て。
        )彼女は親友でも何でもない、本当にただのおまえの
        世話係だったんだ・・・。入団希望の用紙に書いてあっ
        たことも、全部嘘だったんだ・・・。」
  アイリーン「ジェフリー!!違うの!!私・・・!!」
  ジェフリー「何を隠しておまえはここへ来たんだ・・・。ここはお嬢
        様の道楽で来るような所じゃない・・・。皆夢を持って、
        必死でその夢に向かって頑張ってるんだ・・・。おまえ
        が如何言うつもりでここへ来たのか知らないが、中途
        半端な気持ちでここへ来たんなら、そう言う人間に対し
        て失礼だと思わないか・・・。」
  リン「あなたの今までの数々の無礼!!お嬢様に対して、本当
     に失礼なのはあなたの方ですわ!!」
  アイリーン「止めて、リン・・・!!いいの・・・」
  リン「でも・・・!!」
  ジェフリー「・・・否定もしない訳だ・・・。(フッと笑って。)したくても
        できないか・・・。理由がないんだからな・・・。」
  アイリーン「・・・何と言われても・・・自分の素姓を隠してたのは
         事実です・・・。でも・・・皆と同じにスタートしたかった
         ・・・。父の・・・目の届かない所で・・・。」
  ジェフリー「・・・父親・・・?」
  アイリーン「・・・私の名前はアイリーン・・・ハーマン・・・。」
  ジェフリー「・・・ハーマン・・・?」
  アイリーン「(ゆっくり頷く。)」
  ジェフリー「・・・カスト・ハーマンの娘・・・?・・・そうか・・・父親に
        頼めば、踊れようが踊れまいが、おまえなら即S・Y・K
        の看板スターにしてもらえたのに・・・!!何も態々、こ
        んな所へ・・・!!それともスパイか何かのつもりか!
        !」
  アイリーン「違うわ!!」
  ジェフリー「さっさと帰れよ!!暖かなお家へ!!」

         ジェフリー、怒りに興奮したように、上手へ
         急ぎ足で去る。

  リン「お嬢様・・・。」
  アイリーン「・・・違うわ・・・違う・・・」

         アイリーン、スポットに浮かび上がり、涙を
         堪えるように歌う。

    ――――― 第 9 場 ――――― B

         “私にとっても・・・
         一つの夢・・・
         未来に託した希望・・・
         願い・・・憧れ・・・夢見た明日・・・
         私にとっても・・・
         変わりはない・・・
         どれ程・・・溢れ返るこの心・・・
         何にも堪え難い
         たった一つの私の意志・・・
         思いに涙した昨日までを
         笑顔で迎える時がくる為に
         やっと飛び出した自由の草原へ・・・
         ただ独りぼっちの私が・・・
         矢張り誰にも分からない・・・
         たった一人の私の陰が・・・
         今は悲しく佇むだけ・・・”

         フェード・アウト。

    ――――― 第 10 場 ――――― A

         カーテン開く。と、音楽が静かに流れる
         カフェ・バー。
         中央に一つのテーブルと椅子。
         ジェフリーとモーリス、向かい合うように座り、
         酒を飲んでいる。

  ジェフリー「(半分酔ったように。)畜生・・・あいつは俺達を騙して
        たんだ・・・。何も知りません・・・って顔してな・・・。」
  モーリス「・・・そんな器用なこと、出来るようには見えないけど
       ・・・。」
  ジェフリー「(モーリスをチラッと見て。)甘いな・・・。(グラスの中
        の酒を、一気に飲み干す。)」
  モーリス「(呆れるようにジェフリーを見て。)で?一体おまえは
       彼女の何に、腹を立ててるんだ?俺には、さっぱり分か
       らんよ・・・。」
  ジェフリー「・・・俺は彼女の一生懸命さに打たれたんだ・・・。こ
        の俺がだぞ!?滅多に人の言動に惑わされることの
        ない・・・俺が・・・彼女の一生懸命な姿に・・・つい昔の
        ・・・初めて俺が劇団の扉を叩いた時の姿をダブらせ
        てしまって・・・彼女の力になりたいと・・・そう思ったの
        が間違いだった・・・!!(酒をグラスに注ぐ。)」
  モーリス「要するに、惚れた女が何もかもさらけ出してやって来
       たんだと思ったら、実は彼女は秘密のベールを一杯被っ
       てたってことが、気に入らなかったって訳だ・・・。」
  ジェフリー「・・・だっ・・・誰が惚れたなんて・・・!!」
  モーリス「昔からおまえはそうだったよ。こと恋愛に関しては、如
       何してそう我が儘なんだろうね・・・。もっと自分の気持ち
       に素直になれよ・・・。」
  ジェフリー「(笑って。)俺が何であんな奴に惚れなきゃならない
        んだ、全く・・・。(グラスに口を付ける。)」
  モーリス「俺は彼女が何処の誰であろうと、関係ないと思うけど
       ね・・・。例えS・Y・Kの回し者だとしても、ダンスが苦手
       で・・・だけどワルツは優雅に踊りこなす・・・。言葉はい
       やに上品で、素直に人の言うことをよく聞く・・・。その彼
       女がうちへ来た時の、輝いた瞳は本物だと思ってたけ
       どな・・・。」
  ジェフリー「・・・俺もそう思ったさ・・・。初めから彼女が本当の自
        分で来ていればな!!」
  モーリス「本当に・・・?」
  ジェフリー「ああ・・・!!」
  モーリス「俺にはおまえが、“金持ちのお嬢様のお遊びに付き合
       ってる暇はない!!”とか何とか言って、彼女を追い返
       すのが目に浮かぶけど・・・。」
  ジェフリー「煩い!!」

         そこへ上手よりリン登場。ジェフリー、モーリス
         を認め、2人の側へゆっくりと。

  リン「(2人の横へ立つ。)・・・あの・・・」

         ジェフリー、モーリス、リンを認める。

  モーリス「やあ、リン・・・。如何したんだい?こんな所へ一人で
       ・・・。」
  
         リン、黙って下を向いている。

  モーリス「まあ、お座りよ。(空いていた椅子を勧める。)」
  リン「・・・すみません・・・。(腰を下ろす。)」
  モーリス「・・・何か話しでも・・・?」
  ジェフリー「・・・お嬢様の言い訳でもしに来たか・・・?」
  モーリス「ジェフリー!」
  リン「あの・・・昨日は失礼しました・・・。(頭を下げる。)ジェフリ
    ーさんのことを無礼だなんて・・・。」
  モーリス「ほう・・・無礼ね・・・。その通りなんだから、謝らなくても
       いいよ。」
  ジェフリー「一々頭にくる奴だな・・・。」
  リン「お嬢様は、決して中途半端な気持ちで、皆さんの所へ来
    られた訳ではありません。」
  ジェフリー「・・・へぇ・・・?」
  リン「普段は従順なお嬢様は、以前、旦那様に一度だけ我が儘
    を聞いて頂いて、お許しを貰い、生まれて初めて舞台と言う
    ものを、見に行かれました・・・。その時の舞台の衝撃につい
    て、お嬢様は後で私に“丸で稲妻にでも打たれたようだ!!
    ”と仰られていました・・・。」

         ジェフリー、テーブルの一点を見詰めたまま。

  リン「その時からお嬢様は、舞台の虜になられ、何としてもその
    世界へ飛び込んでみたいと思われるようになり、一生懸命
    旦那様を説得され、余りの執拗さに、旦那様が折れられたの
    が初めて見た舞台から、3年経った2週間前でした・・・。けれ
    ど、折れられたと言っても、全面的にお許しになられたのでは
    なく・・・1ヶ月の内に、自分の夢を掴めるチャンス・・・自分の
    進むべき道が、見極められなかった時には、夢をきっぱり諦
    め、旦那様の言う通りにすることを約束させられているので
    す・・・。」
  モーリス「でも、何故うちへ・・・?」
  リン「旦那様も、舞台関係の仕事がしたいなら、S・Y・Kにしろと
    仰られたのですが・・・お嬢様は・・・3年前に見た舞台の素晴
    らしさに胸打たされたこの劇団へ・・・この劇団のスターさん
    にずっと憧れて、絶対この劇団へと熱望されて・・・。」
  ジェフリー「・・・3年前・・・?」
  リン「はい・・・。初めて見た舞台は“フォーエバー”・・・その憧れ
    続けたスターさんは、ジェフリーさんです・・・。」
  モーリス「それで・・・。」
  リン「お嬢様はジェフリーさんが、人生の岐路を違えた舞台が“
    フォーエバー”だと知って、それはそれはショックを受けてお
    いででした・・・。」

         ジェフリー、思わず立ち上がる。

  モーリス「ジェフ・・・?」
  ジェフリー「・・・馬鹿・・・だ・・・。何が憧れてた・・・だ・・・。何が“
        フォーエバー”だ・・・。あいつは馬鹿だ・・・!!」
  モーリス「(立ち上がって。)ジェフリー!」

         ジェフリー、モーリス残して、カーテン閉まる。

    ――――― 第 10 場 ―――――

  モーリス「好い加減、素直になれよ・・・。おまえが怪我をしてか
       ら、何に対しても否定的になるのは仕方がないと思って
       いた・・・。けど、さっきおまえも言ってたじゃないか。彼女
       の一生懸命さに打たれたって・・・。おまえの心に割って
       入る者が現れたんじゃないか・・・。」

         モーリス、ジェフリーに訴えるように歌う。
         ジェフリー、呼応するように歌う。
         (2人、掛け合いの歌。)

     モーリス“今ここに立ち尽くす
          大地に根強く足を添わせ
          今やっと未来が輝く・・・
          そんな予感が広がらないか”

     ジェフリー“一体何が未来なのか
           暗闇の世界に一筋の光
           一体その光の向こうは
           輝ける明日なのか違うのか・・・”

     モーリス“考えているばかりで
          たった一歩を踏み出せない
          自分の心に鍵を閉めたのは
          確かに過去の自分なのだから・・・”

     ジェフリー“過去の自分は何の躊躇いも
           迷いもなくただ真っ直ぐに
           希望に満ちた明日を信じた
           それは永遠に続くものと・・・”

     2人“その通りなんだ
        信じた心が真実に
        迷いは深く深く沈み込む
        心を開いて見詰めれば
        見えてくる筈 夢へと続く
        ただ一本の道が・・・
        目を逸らした昨日の間違いに
        屹度気付く筈・・・”

         瞳を輝かせ、彼方を見遣るジェフリー。
         そんなジェフリーの様子に、安堵の表情を
         浮かべるモーリス。
         フェード・アウト。

    ――――― 第 11 場 ―――――
  
         カーテン開く。と、稽古場。
         来た時と同じワンピースに身を包み、
         鞄を肩から提げたアイリーン、中央に
         佇み歌う。
         途中、上手よりジョナサン、ハドソン登場、
         淋しそうに歌うアイリーンを見ている。

         “ありがとう・・・
         夢を見させてくれて・・・
         希望に満ちた輝ける日々よ・・・
         今までの人生で・・・
         一番自由に私らしく・・・
         歩めたほんの少しの日々よ・・・
         忘れない・・・
         決して忘れない・・・
         あなたのことを・・・”

  アイリーン「(溜め息を吐いて、愛おしそうに回りを見回す。)・・・
         さよなら・・・。」
  ハドソン「・・・本当に行っちゃうの?」
  
         アイリーン、振り返って2人を認める。

  ジョナサン「何も出て行かなくても・・・!折角、入団テストまで漕
         ぎ着けたってのに・・・。」
  アイリーン「(首を振る。)今まで・・・短い間でしたけど・・・本当に
         ありがとうございました・・・。」
  ジョナサン「何も最初から、俺達を騙すつもりで来たんじゃないん
         だろう?」

       








    ――――― “ジェフリー”完結編へつづく ―――――











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       (おまけフォト^^;)

       

     犬バージョンの“プッチくん”と、グーグル版“ワールド”
    で、音声をお聞き頂いた中に登場していた“ジョン”くん
    です(^^)v

    プッチくんは、関節をつけて、手足が動くように作ったの
    ですが・・・分かりますか・・・?左後ろ足の関節から下
    部分が取れてしまってます~・・・^^;
    
    


   

   (左より)魔法使い・アナベル・ジュリー・プッチ・村長・犬3

    昨日の練習後に、プログラム用に撮った写真です(^^)
   本当はこの倍以上のお人形が、このジュリーちゃん作品に
   は登場します^^;
   こう見てもジュリーちゃん、やっぱり中々の美人さんです♥
   終演後にはお見送りに出ます(^^)vぜひ間近で、この
   ジュリーちゃん、ご覧になりにいらして下さい(^.^)









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