――――― 第 11 場 ―――――
カーテン前。
リチャード、下手より俯き加減で登場。
シェイラ、それに続く。
シェイラ「あの・・・リチャード・・・どうしたんですか?何か話しが
あるって・・・」
リチャード「(立ち止まり振り返る。)あの・・・さ・・・シェイラ・・・」
シェイラ「(微笑んで。)はい。」
リチャード「(シェイラを見詰め、口籠る。)・・・君・・・本当に綺麗
になったね・・・」
シェイラ「・・・リチャード・・・?」
リチャード「君・・・本当に営業課のバーナードと付き合ってるの
・・・?」
シェイラ「・・・え・・・?」
リチャード「いや・・・あの女なんか選り取り見取りの奴が、本気
でシェイラと付き合ってるとは思えないんだ!!・・・
あ・・・ごめん・・・酷い事言って・・・」
シェイラ「(首を振る。)リチャードがいつも私のことを心配して
くれているのを知っています・・・(下を向いて。)私って
ドジだから・・・それで他の人に迷惑を掛けて叱られて
・・・落ち込んだりした時に、いつも励ましてくれたのは
リチャードだわ・・・。だから今回も心配してくれている
のね・・・ありがとう・・・(微笑む。)」
リチャード「・・・そんな・・・僕は君に礼を言われるような・・・そん
な立派な奴じゃないんだ・・・」
シェイラ「え・・・?」
リチャード「そんな風に言わないでくれよ・・・(シェイラに背を向け
る。)」
シェイラ「リチャード?(リチャードを背後から覗き込むように。)」
リチャード「僕は・・・ずっと前から君のことが好きだった・・・好き
だけど、同僚たちから除け者にされるのが怖くて・・・
ただ側で見ていることしか出来なかった・・・。それが
・・・君が綺麗になって、あのエリート社員と付き合って
るって聞いて・・・あの男に嫉妬してる・・・ただの格好
悪い男さ・・・」
シェイラ「・・・リチャード・・・そんなことないわ・・・」
リチャード「(振り返る。)え・・・?」
シェイラ「あなたは格好悪くなんてないわ・・・。私はあなたのお陰
で随分、力付けられたもの。本当よ。」
リチャード「シェイラ・・・」
シェイラ「あなたが・・・そんな風に私のことを思っていてくれたな
んて、全然知らなかったから・・・ごめんなさい・・・。それ
で・・・矢っ張り・・・ありがとうしか出てこないな・・・(微笑
む。)でも嬉しいわ・・・」
リチャード「(思わずシェイラの手を取る。)」
シェイラ「(驚いて。)リチャード・・・」
リチャード「僕の方こそ・・・ありがとう・・・(ハッとしてシェイラの
手を離す。)本当は・・・あのエリート野郎の悪口でも
君に吹き込んで、別れさせてやろうと考えてたんだけ
ど・・・ごめんよ・・・僕の方こそ、いじけた奴だな・・・」
シェイラ「(首を振る。)」
リチャード「頑張れよ!!僕は失恋だけど・・・(笑う。)」
そこへ、ジェラルド達、庶務課の男子社員
上手より入って来る。
ジェラルド「(リチャードとシェイラを認めて、近寄りながら。)おい
おいリチャード、抜け駆けか?」
リチャード「(振り返って明るく。)そうです!!でも振られましたけ
どね。(シェイラに向き直って、片手を上げて。)じゃあ
!!」
リチャード、ジェラルドたちの横を通って、
上手へ出て行く。
ジェラルド、ジョー、ビリー、スティーヴ、
シェイラの回りに集まる。
スティーヴ「あいつ、前からシェイラに惚れてたんだ。」
ビル「前から!?」
ジョー「本当に?」
スティーヴ「ああ。それがシェイラが綺麗になって、少し焦っていや
がったからな。」
ビリー「(シェイラに。)誘われた!?」
シェイラ「(下を向いて首を振る。)」
ビリー「よかった・・・」
ビル「何がよかったんだよ!」
ジョー「(横から割り込むように。)ねぇ、シェイラ!!たまには俺
とデートしない!?」
スティーヴ「おい!!何、割り込んでんだよ!!」
ジェラルド「(シェイラの肩を抱いて。)矢張りここは大人の魅力
で・・・」
ビリー、ビル、ジョー、スティーヴ声を揃えて「課長!!」
シェイラ、困ったような面持ちになる。
そこへバーナード、硬い表情で上手より
入って来る。
シェイラを認め、歩み寄る。
男子社員、バーナードに気付き、気まずい
面持ちで、一寸シェイラから離れる。
シェイラ「(バーナードを認め、嬉しそうに。)バーナード!」
バーナード「(思わずシェイラの頬を叩く。)」
シェイラ「(驚いて頬を押さえ、バーナードを見詰める。)・・・バー
ナード・・・?」
スティーヴ「(シェイラの肩を抱いて。)行き成り、何するんだよ!!
」
ビル、ビリー、ジョー口々に「本当だ!!」など。
ジェラルド「(焦って。)・・・君・・・!!バーナード君!!何があった
か知らないが、女性の美しい顔に手を上げるとは、なに
ごとかね!!」
バーナード「(誰の話しも、存在も気に入らないように、シェイラに
向かって。)・・・見えていなかったなんて・・・嘘だった
んだな・・・おまえは・・・俺を・・・裏切ったんだ!!」
シェイラ「・・・バーナード・・・?」
バーナード、シェイラから視線を捥ぎ取り、
下手へ出て行く。
シェイラ、頬を押さえて呆然とバーナード
が出て行った方を見詰める。
スティーヴ「大丈夫かい?」
ビル「全く、何考えてるんだよ!!」
シェイラ、下を向いて溢れる涙を拭う。
ビリー「あ・・・泣くなよ・・・」
ジョー「畜生、何て野郎だ!!」
シェイラ「(呟くように。)バーナード・・・どうして・・・」
音楽で暗転。
――――― “バーナード”8へつづく ―――――
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