りとるぱいんわーるど

ミュージカル人形劇団“リトルパイン”の脚本の数々です。

大人になったキャシー ―全5場― 2

2014年02月21日 21時12分48秒 | 未発表脚本



  

  男性「君は他の女子社員と違って、実に責任感に溢れた優秀
     な人物だ。その上、君のセンスの良さは我々上層部も注目
     しているところなのだよ。」
  キャシー「そんな・・・」
  男性「よって次のプロジェクトの責任者は君に任せることにする
     。」
  キャシー「え・・・?」
  男性「そのセンスの良さを存分に発揮して、プロジェクトを成功
     へと導いてくれたまえ。」
  キャシー「私が・・・」    

         後方段上下手スポット、フェード・アウト。
         入れ代わるように、後方段上中央
         スポットにジョシュ、浮かび上がる。

  ジョシュ「あの・・・僕・・・ずっと・・・君が入社した時から君のこと
       が・・・好きだったんだ。もしよければ、僕と付き合って欲
       しい・・・。」
  キャシー「私・・・今度、大事なプロジェクトを任されたの・・・。そ
        んなことを考えてる余裕がないわ・・・。」
  ジョシュ「そうなんだ・・・凄いじゃないか!僕への返事は急がな
       くていいから・・・先ずは仕事を頑張って!応援している
       よ・・・キャシー・・・」

         後方段上フェード・アウト。
         キャシー、歌う。

        “何が大切かなんて・・・
         誰も分からない・・・
         皆それぞれ思いは別
         だから何が一番かなんて・・・
         人それぞれ違う筈・・・”

         (舞台上の人々、動き出す。)

  花の妖精「それで?今のあなたにとっては何が大切なの?」
  キャシー「・・・分からないわ・・・」
  花の妖精「まぁ・・・」
  青年「キャシー・・・」
  キャシー「ずっと仕事して仕事して・・・仕事して・・・でも本当は
       他の女の子たちのように恋をして、お洒落をして・・・結
       婚して・・・そんな普通を心のどこかで求めてる・・・。でも
       そうやって得たものが大切?いいえ・・・任されたプロジ
       ェクトを成功させることも大切だわ・・・」
  花の妖精「そう・・・。何だか大人になって、余計な葛藤が色々と
        生まれているようね。昔の・・・子どもの頃のあなたは、
        自分がこうだと思ったことを大切だと、私がいくら、くだ
        らないと言っても、そう私に自信を持って訴えてくる力
        強さを持っていたのに・・・」
  キャシー「え・・・?」
  花の妖精「だからここへ来たのね。」

       コーラス“ここは不思議の森
             誰の心にもひっそり潜む
             不思議の森”

  花の妖精「まぁ、自分の心が分かるまで、この森でゆっくりして
        行くといいわ。じゃあね。」
  青年「さようなら。」

         花の妖精、下手へ去る。

  キャシー「私・・・ゆっくりしてる時間なんてないのに・・・」
  青年「いいじゃないか、キャシー。焦ったってここに来た理由は
     分からないよ。。」

         青年、歌う。

        “焦らないでキャシー
         分かるまでここにいればいい
         時間なんて気にしないで
         屹度見つかるに違いない
         君が求める答えがそこに”

  青年「さぁ、次へ行こう!」
  キャシー「・・・ええ・・・」

         2人、上手へ去る。(紗幕閉まる。)

    ――――― 第 3 場 ――――― 

         (紗幕前。)音楽流れる。
         上手、下手より会社員風の男女、書類を
         手に忙しそうに歌いながら行き交う。

        “ああ忙しい忙しい
         毎日毎日どうしてこんなに忙しい
         残業残業
         今日も時間内に終わらない
         仕事に追われて帰れない”

         紗幕開く。と、中央一人の偉そうな男性
         (部長。)、列を成して並んでいる社員たち
         が、手に持つ書類に流れ作業のように
         判子を押している。
         その時、上手下手より其々社員(ウインド、
         アース。)登場。
         他の社員を押し退け、部長の前へ急ぎ
         進み出る。

  ウインド「部長!!次のプロジェクトは是非この私にお任せを!
       !」
  アース「部長!!こんな奴より私の方が絶対に相応しい!!プ
      ロジェクトの責任者にこの私を!!」
  ウインド「何を!!」
  アース「何だと!!」
  部長「ええい、煩いぞ2人共!!そんなことは先ず今の仕事を
     きちんと済ませてから考えることだろう!!」
  
         ウインド、歌う。

        “私の方が相応しい”

         アース、歌う。

        “私の方が相応しい”

         2人、歌う。

        “あんな奴より私の方が出世する筈”

  ウインド・アース「フンッ!!」
  部長「やれやれ・・・」

         2人、上手下手方に分かれ、其々仕事を
         始めたように。
         そこへ上手より青年、続いてキャシー
         登場。

  キャシー「ねぇ・・・ねぇ、あなた!」
  青年「え?どうしたんだい、キャシー。」
  キャシー「ここは・・・どこ・・・?なんだか・・・」
  青年「なんだか?」
  キャシー「・・・私の・・・会社みたい・・・」
  青年「そうなんだ。」
  キャシー「皆とても忙しそうだわ・・・」
  青年「うん、そうだね。」

         上手、下手に分かれて仕事をしていた
         ウインド、アース、再び部長の前へ
         書類を手に急ぎ足で進み出る。

  ウインド「部長!!出来ました!!」
  アース「部長!!判子を!!」

         ウインド、歌う。

        “私の方が早かった”

         アース、歌う。

        “私の方が手際がいい”

         2人、歌う。

        “あいつなんか
         私の足元にも及ばない!”

  ウインド「部長!!是非、次のプロジェクトの責任者をこの私に
       !!」
  アース「何、抜け駆けしてんだよ、ウインド!!」
  ウインド「いいだろ、アース!!」
  部長「(溜め息を吐く。)2人共、そんなに仕事熱心だったとは。」
  ウインド「勿論、仕事が一番大切ですからね!!」
  アース「当たり前ですよ、部長!!仕事がなけりゃ食べていけ
      ないですからね!」
  部長「ほう・・・では2人で次のプロジェクトを成功させるべく頑張
     ってみるかね?」
  ウインド・アース「本当ですか!?」
  部長「ああ。」
  ウインド・アース「やった!!」
  部長「その代わり・・・」
  ウインド・アース「・・・その代わり・・・?」
  部長「仕事量は今の倍、残業は勿論、休日出勤も厭わないので
     あろうな?」
  ウインド「・・・残業・・・?」
  アース「・・・休日出勤・・・?」
  部長「それ程自分たちを売り込んできたおまえ達だ。さぞかし心
     内はやる気に溢れているのだろう?」
  ウインド「・・・あ・・・」
  アース「いや・・・」
  
         ウインド、アース、チラッとお互いを見合う。

  部長「どうした?」
  ウインド「わ・・・」
  アース「私たちは・・・」
  部長「なんだ?」
  ウインド「就業時間内で頑張りたいだけで・・・」
  アース「何も自分たちの自由時間を削ってまで・・・」
  ウインド「だって・・・デートだってしたいし・・・」
  アース「遊びにだって行きたいし・・・」

         その時、終業ベルが鳴り響く。

  社員1「わーっ、終わったーっ!!」
  社員2「終わりだ終わりー!!」 
  社員3「さぁ帰ろうぜーっ!!」
  社員4「終わったわー!!」
  社員1「お疲れ様ー!!」
  社員2「お疲れー!!」

         社員たち、上手下手へ其々走り去る。
         ウインド、アース、顔を見合わせ大きく
         頷く。

  ウインド・アース「さぁ、帰ろうぜー!!」
  ウインド「明日は待ちに待った休日だ!!」
  アース「イエーイ!!」

         ウインド、アース、飛び跳ねるように
         上手下手へ走り去る。
         社員たちだ去り、薄明かりになる。
         辺りはシーンとしている。 
       
  部長「やれやれ・・・(机の上の書類を整えながら。)社員たちに
     とって仕事など所詮、生きていく為の手段の一つに過ぎな
     いのだろう・・・。安心してプロジェクトを任せるに値する社
     員を探し出すのは・・・(首を振る。)中々、骨のいる仕事だ
     な・・・。」

         部長、立ち上がり帰り支度をしようとして、
         脇に立つキャシーに気付く。

  部長「おや?君はまだ帰らないのかい?もう終業ベルはとっく
     に鳴ったぞ。」
  キャシー「え・・・?私・・・」
  部長「何だ、花の金曜日に残業でもするつもりかね?」
  キャシー「いえ・・・」
  部長「だが皆が競って社を後にするのに、最後まで残っている
     とは中々やる気のある優秀な社員だな。君の名前は?」
  キャシー「・・・あの・・・」
  部長「(少しキャシーに近寄り、気付いたように。)キャシー・・・君
     はキャシーじゃないか。」
  キャシー「・・・あなたは・・・?」
  部長「・・・フォッフォッフォッ・・・忘れたかの・・・?わしのことを・・・
     」

         (部長、長老の姿に代わる。)

  青年「長老だよ。」
  キャシー「・・・長老・・・?」
  長老「おお、おまえも一緒に来ておったのか。」
  青年「はい。」
  長老「どうしたんじゃ、キャシー。何か心に迷いがあるようじゃな
     ?」
  キャシー「・・・別に・・・私・・・」
  長老「ここへやって来たと言うことは・・・そう言うことなんじゃよ。
     」
  キャシー「え・・・?」
  長老「迷いから抜け出すには、心を解き放つことじゃ。そうすれ
     ば何が本当に自分にとって必要で大切か・・・よく分かるじ
     ゃろうて。」
  キャシー「おじいさん・・・」
  長老「大人になると言うことは、色々な迷いが生まれると言うこ
     とじゃ。そしてその迷いの出口を見つける方法を、自分なり
     に考え出すことが出来るのも、大人になったおまえさんな
     んじゃよ、キャシー。昔、石に頼って自分を見つけたように
     な・・・」
  キャシー「石に頼って・・・(自分の手を見る。)私・・・そう言えば
       ・・・」
  長老「まぁ折角来たんじゃ。ゆっくりしていくが良い。フォッフォッ
     フォッ・・・」
  キャシー「・・・はい・・・ありがとうございます・・・」
  長老「(その言葉に少し驚いたようにキャシーを見る。)随分・・・
     成長したのぉ、キャシー・・・。では後のことは頼んだぞ、ク
     ルト。フォッフォッフォッ・・・」
  青年「はい、長老!」

         キャシーと青年残して紗幕閉まる。

  キャシー「(呟くように。)・・・クルト・・・?(思わず青年を見る。)」
  青年「さぁ、行こうか、キャシー。」
  キャシー「え・・・ええ・・・」

         青年、下手方へ歩き出す。
         キャシー、青年について行きかけるが、
         立ち止まる。

  キャシー「ねぇ・・・」
  青年「え?(立ち止まり、振り返る。)」
  キャシー「花の妖精に質問された・・・“大切なもの”って・・・私が
       今まで幸せになる為に頑張ってきた仕事だったり・・・付
       き合いだったり・・・お金もそう・・・そんなものが大切なん
       だって、今まではそう信じて疑わなかったわ・・・。でも・・・
       今見た、この会社で働く人たちは、仕事は仕事・・・自分
       の時間とは一線を画して自分らしく生きてたわ。屹度、
       彼らには大切なものはもっと別にあるのね・・・。仕事な
       なかじゃなくて・・・」
  青年「キャシー、どうして君は仕事が大切だと思ったんだい?」
  キャシー「それは・・・」
  青年「本当はもっと違うものが大切なんだと、心のどこかで感じ
     ているのに・・・」
  キャシー「私・・・」

         音楽流れ、青年歌う。

        “屹度分かっている筈
         本当に大切にしたいものを
         だから素直な心に従ってごらん
         無理をしないで
         違う種類の大切を
         天秤にかけたりしないで
         間違った選択をしない為に”

         キャシー、歌う。

        “私の心は一つ
         初めから決まっているの
         なのに迷路に迷い込んだように
         色々な思いに振り回される”

         2人、見詰めあい歌う。

        “自分の心に向き合えば
         きっと分かる筈・・・”

         フェード・アウト。

    
     
         
  




 ――――― “大人になったキャシー” 3へつづく ―――――









    2月21日(金)

    最近、ここへ来れない日が時々ありますが、
    ごめんなさい<(_ _)>

    来週水曜日にある、保育所公演の作品完成に向け、
    ただ今奮闘中の為なのですが、こんな調子で本当に
    大丈夫なのか・・・と不安になりながらも「頑張る」しか
    ないので、もう暫くドタバタと・・・ここへやって来たり
    来なかったり・・・と、なると思いますが、どうかお許し
    下さいませ(>_<) 
















    (おまけフォト^^;)


       16日に公演してきた時のフォトです(^^)v

    








― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪



   (どら余談^^;)

   昨日は新作台詞練習日でした"^_^"

   今回は短編と言うこともあり、練習も何回も出来るからか、
   比較的メンバーに余裕がある雰囲気で、次回録音である
   にも関わらず、和やかに進んだ練習日となりました♪





   2月1日(土)

   子どもが車椅子生活になって早2年・・・
   最近に限らず、こんな状態であるからこそ分かることが
   できた、沢山の人たちの親切に・・・
   改めて感謝の気持ちに溢れかえる今日この頃であります。






























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