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特別版セイネンキゼロ11話

2017-07-01 17:50:33 | 特別版セイネンキゼロ


『直也は勝てる、こんなとこで負けちゃいけないのよ!』
ユウコの心の叫びと反対に、会長やコーチ達は直也に大声で叫んでいた。
「もう無理だ、直也!立つんじゃない!立つな直也」
ユウコは決して目的の為ならあきらめない直也を想像していた。
ユウコの叫びで、直也はレフリーのカウントダウンの声が消えた。
時間が止まったように、直也はユウコのドリームキャッチャーを見ながら、幼き頃の事を思い出していたのだ。
春樹と久美子、直也の3人で、小さな輝く蛍の群れを見ている。
3人は輝く蛍の灯火を見て、びっくりしながら笑顔で見ている。
蛍の群れの後に見ているものは、夜の海辺で見る月明かり、月は海に灯りをともし、その灯火は、3人の歩いて行く道のように一本の線だった。
灯された一本の線が消え去ると、そこには、海の中に蛍の灯火。
ホタルイカの大群は海の中で輝きを見せていた。
まるで夢の中にいるかのような直也だった。
その夢の中で、春樹と久美子を見つめた直也は、ユウコが手を伸ばし「ドリームキャッチャー」を直也に近づけると、直也は深いため息をつきながら、よろけながらも立ち上がった。
「ファイブ、シックス、エイト・・・」
直也は立ち上がりレフリーに腕を上げ、試合は続行と知らせる。
レフリーは、審義員達や直也のコーナーを見て、試合続行を伝えていた。
『なんだアイツ何で立ちやがるんだ!ハァーハァー』
直也が立ち上がると、相手の選手は息を荒くし首を振り虚ろな目つきで直也を見つめ、ゆっくりとリングの中央まで歩き、直也を待っていた。

「大島直也!大島直也が立ちました!」
このアナウンスを観客達や応援団のサポーター達は聞くと、これまでで最大の声援が起きたのだ。
椅子に座る観客達は誰一人いない、立ちながらの声援だった。
その声援によって、残り2分、直也はどう戦うのだろうか?
直也にとって、この最終ラウンド判定負けになってしまうのか?
直也は永遠の別れとなった、春樹と久美子の姿を見た時、そして、ユウコが見せてくれた「ドリームキャッチャー」によって、直也の気力は復活し本能のまま、ボクシングが進んでいく。
おそらく相手の選手は、そんな直也を見てノックアウトKO勝ちはあきらめ、判定勝ちを狙っていたのだろう。
直也は無心の中、そんな相手を見て軽いフットワークで軽いジャブを出している相手を見逃す事はなかった。
『俺は、大島直也だ、俺は、俺は絶対に勝つ!』
直也は限界を超えていたが、一瞬の瞬発力で相手の懐へ入った。
相手の選手は嫌がり、クリンチで時間を稼ごうとする。
前回の試合で学んだ、タイミングを武器として、何度も繰り返し、相手の懐へ何度も入り込む。
偶然なのかわからないが、直也の強いボディ一発が相手の動きを止めた。
残り1分をきったところで・・・。
直也のボディが炸裂した。
相手は逃げるが直也は逃がさない。
逃げる相手をどこまでも追い詰めていく。
「いける!イケ!直也!ボディ!ボディ!ボディ!」
直也のコーナーサイドからの声に合わせるかのように、コーチやヤスシの声に合わせ、直也のボディは相手の選手の全てを奪い、リング上に沈めていた。
観客席は静まり返り、リング上を見つめる。
直也はロープに寄りかかり目を閉じていた、そして、レフリーのカウントダウンが始まった時だった。
相手のコーナーサイドからタオルが投げられたのだ。
「大島!直也!大島!直也!大島!直也!・・・」
そして観客達は直也に向けて大きな声援一色になった。
『あの馬鹿、本当に勝ちやがった・・・』
『直也は、やっぱり約束を守ってくれたんだ・・・』
ヤスシとユウコは直也を信じて良かったと言葉にはせず胸の内で思っていた。
リング上では直也の右腕が上げられ、この日、直也はボクシングトーナメントのチャンピオンになったのだ。
コーチは直也の代わりにチャンピオンベルトと優勝トロフィーを受け取った。
直也はもうろうとしながら、コーナーの椅子に座り気を失い救急車で病院へ運ばれた。
直也が病院で目を覚ましたのは、運ばれた日から2日目、3日目には退院し、自宅へは戻らずジムの空き部屋で7日間の休息をとっていた。
直也が入院している間は、ユウコは学校を休み付き添っていた。
直也の両親も付き添いをするはずだったが、ユウコは直也の付き添いには自分がしますと言い、直也の両親はユウコに任せる事になる。
直也の両親もユウコの両親も2人の気持ちを知っていた。
ユウコは、子供同士は子供同士で乗り越えていくという考え方で、直也と同じ思いだった。
精密検査では脳への異常もなく、左腕は一週間ほどで治るだろうとの事だ。
病院から退院後はジムの空き部屋で試合の時のドクターが訪問治療する事になった。
直也がジムに泊まっている間、ユウコは学校へ通い授業が終わると直也に逢いに行っていた。
直也の回復力は早く、ジムに泊まり3日後には普段と変わりなく動いていた。
直也が休みをとっている間、学校では直也がボクシングの優勝者になった事が広まっていた。
動けるようになった直也はユウコの言う、あとは直也の言葉だけ・・・と言われた事を考えていた。
ユウコは担任の教師に、直也が戻ってきたら『全学年集会』を開くようお願いをしていた。
きっとユウコは全学年集会の場で、直也に何かを話させようとしていたのだろう。
何を話すかは直也しだい。
ユウコは、何を言うべきかなど、直也には何も話す事はなかった。
ユウコは、とことん直也を信じていたのだ。
全学年集会で何を話すのか、ユウコには予測するなどできなかった。
それからユウコは直也に全学年集会が開かれるのを話す事はなかった。
学校内、いや市町村内外でも『大島直也』の噂は拡がっていく。
学生達の両親達や教師達は、全学年集会で何が起こるのかは知る事はなかったが、学生達の見守りを強化しながら学生達に任せてみようと、教育委員会や教師達、PTAの両親達等は思っていたのだ。
ボクシングトーナメント優勝した直也がとった行動と存在感は、地域の多くの人達をも巻き込んでいく事になる。

ジムに泊まり込み最終日、ドクターは直也の状態を見て驚くばかりだった。
一般的に考えて直也の回復力はとても速かった。
左腕の痛みは軽減していたものの、顔面や腕、身体の腫れは全て消えていた。
ドクターは会長やコーチに、直也の怪我は問題ない、ただ左腕が痛むようなら病院で治療をするよう伝え帰っていった。
「直也、プロになって見ないか?」
「いいえ、俺は約束を果たしたし、高校決めなきゃ」
「ねえ、直也の約束って何?」
「さあね、俺だけの約束かなあ」
ドクターが帰った後、薄暗いジムのリングの上で、直也とユウコ、会長は話をしていた。
直也の約束は久美子と春樹の為、そしてユウコの為の約束。
直也はユウコに何も話す事はなかった。
このボクシングでの優勝体験は、直也の心を成長させた。
『心のもろさ』『心の強さ』このバランスを持たなければ、これからの直也が消えてしまう事を学んだのだ。
明日は直也の病みあけの登校日、午後から全学年集会がある日であった。
直也は以前よりも明るい表情で登校した。
よっ!と仲間達と声をかけあうが、直也がボクシングの優勝者になった事を口に出す仲間達はいなかった。
仲間達は「優勝者」になった事等関係なかった、ただ直也に戻って来て欲しいと願っていただけだった。
仲間達にとっての直也は、いつもと変わらない直也でしかなかった。
この日、午前中は自由時間で直也と仲間達は、いつものように笑いながら話が尽きる事がなかった。
直也は何も話す事無くただ笑いながら仲間達の話を聞いていた。
そして仲間達は、直也がいない間に仲間達だけで『いじめや暴力』に立ち向かっていた事を知った。
仲間達は、いじめや暴力と立ち向かう秘訣を見つけていたのだ。
直也は1人で全クラスをまわり様子をうかがっていた。
『登校拒否』をしていた生徒が、どういうわけか登校し笑っていた。
直也は教師達がきっと、関わりを持ちながら仲間達と何かをしたに違いと思いつつ昼食時間が過ぎると、全学年集会が体育館で行われた。
直也は不思議そうに思いながら体育館に仲間達と向かった。


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