特別版セイネンキゼロ/ポリシー 序章
彼は「小さな蛍の輝く光」を見た時から夢を見る事が多くなった。その輝く光は、彼に宿命を与えたのかもしれない。当時、3人で見つめた光は、人の器(うつわ)というものを教えてくれた。彼を残し、2人は時と共に、若くして永遠の別れとなる。独りぼっちとなった彼は、研ぎ澄まされた心深くに、怒りと悲しみをしまいこんだ。鍵をかける事なく閉まった感情、いつでも怒りと憎しみの思いと救われたい思いを引き出してしまう。
彼は、自分を信じるはずが自分を恐れる事になる。彼はある事で、怒りと憎しみを心深くにしまい、鍵をかけることができた。仲間がいても彼の孤独感は、心から消し去る事は出来ない。時が過ぎていく事に、更に孤独感は増えていく。多くの仲間が彼の周囲を囲んでいても、怒りと憎しみの思いによって再び自分を信じる事だけになってしまう。忘れたい思いと救われたい思いが、彼の心が立ち止まったままの中で「勇気」が欲しかった。
彼は、ある時、立ち止まる事ではなく、立ち向かわなければならない限り、忘れる事は出来ないのだと気づく。忘れる事は、自分の一部として全て受け入れなければならなかった。彼の器は、小さいものだったが、仲間たちや出会う者(環境)が、彼の器を大きくしていたのだ。その時代、仲間達にとって彼の存在は必要不可欠だった。彼の存在と、できごとに関わることで、仲間たちは何かを学んでいた。もちろん、教師も彼から学ぶ事が多かった。彼の言葉は、何故、相手の心に響くのか?彼の言葉は、ただの言葉ではなかった。これは、ある教師の話しだが「光を透す波」すなわち「光透波(ことば)」であるという。彼の研ぎ澄まされた深い心音(こころね)だからこそ、響かせる事が出来ていた。永遠に失った「友」の分まで、生きていかなければならない覚悟は、いつしか彼の「ポリシー」となった。彼は、犠牲の中で見つけたポリシーで成長を促し遂げていく。彼は、自分だけを信じてきた「プライド」を捨てる事になる。いつまでも、多くの仲間達を包み込んでいく彼の姿。その彼に、ついていく彼女の姿。
傷だらけの彼と彼女、そして仲間が、いつかきっと「幸せ」が感じられるように。
この頃には「柔道」「剣道」「空手教室」「ボクシング」等があった。直也はボクシングを選んだ理由は、2つの理由があったのかもしれない
直也と由子(ユウコ)の関係とジム経営は、由子の叔父である事だ。由子の気持ちを知っている直也は、この時は誰かにすがりたかったのだと思う。直也と由子は、保育園の頃からの友だった。由子の伯父のボクシングジムへ通う事により 由子は必ず直也のもとへ足を運ぶ。直也と由子の間には言葉はなく由子の恋にすがった。直也にとって由子の恋に、すがる事は絶対してはいけないと思っていたはず。この時の直也は、由子の恋に、どうしてもすがるしかなかったのだ。ボクシングを学ぶ事によっ、怒りと憎しみを大きなサンドバックに全てをこめる。無心になりサンドバックを全力で、殴りつける事で全てを忘れる事が出来る様になる。そんな直也のいるボクシングジムの部屋のベンチには由子が必ず座り由子は直也を見つめている。由子は直也を見つめながら、幼き頃の事を思い出していた。直也がジムに通い始めて、スパーリングの相手をする事になる。相手はプロテスト前の人物だ。3ラウンドで直也のマウスピースは宙に飛んだ。意識を失い横になる直也の横には由子の姿。「ばか」小さな由子の声。
直也は天井を観ながら、自分よりも強い相手とのスパーリングで自分に何かを感じる。この日から早すぎる3か月後アマチュアの試合があり、直也はその試合に出場する事になる。スパーリングを観た、会長とコーチは直也の素質を見抜いていたのだ。直也と由子の間には、無言の約束があった。由子の思いは直也が優勝する事である。直也の思いは、どれだけ冷静に試合に臨む事が出来るか?2人の思いの中で共通するものは、直也の自分との戦いである。ボクシングジムでは会長やコーチによって、試合に臨む直也の調整に入っていた。
前へ進む為に直也の思いは・・・
そんな直也を見つめる由子の思いは・・・
直也は久美子が作った「どりーむきゃっちゃー」を毎日握りしめていた。どりーむきゃっちゃーを握りしめる直也の姿を見つめる由子は、直也の久美子への深い思いを感じ取っていた。 直也の仲間達のカバンには、どりーむきゃっちゃーが縛り付けられている。久美子の作ったどりーむきゃっちゃーが、直也と仲間達を結びつけている事を感じる由子。由子は直也のどんな行為も許す事が出来たのは直也の悲痛と苦痛を受け止めていたからだった。いよいよアマチュアボクシングの試合が近づいてくる。
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