黒沢永紀オフィシャルブログ(旧・廃墟徒然草)

産業遺産と建築、廃墟、時空旅行、都市のほころびや不思議な景観、ノスタルジックな街角など、歴史的“感考”地を読み解く

軍艦島の建築的装飾 #06

2021-08-12 22:55:36 | 軍艦島(端島)
ほとんど建築的な装飾がみあたらない軍艦島の建物の中で、
かろうじて散見する時代を伝える建築装飾を、
シリーズでお送りしています。



シリーズでお送りしてきた軍艦島の建築的装飾。
最終回の今回は、島内で最も建築的な装飾が施されていた「昭和館」です。

昭和館は通し番号で50号棟とも呼ばれ、
1927(昭和2)年に建設された映画館でした。
島内で最も規模の大きな娯楽施設だっただけあって、
これまで見てきた集合住宅や鉱業所の施設とは桁違いに、
建築的な装飾が施されていました。



画像は炭鉱操業時の昭和館。
両端に施行された四角い柱に球体の装飾、
エントランスの軒上部にあしらわれたデンティル・コーニス(歯型の連続レリーフ)、
そして入口中央の上部に作り込まれた幾何学的なカッティングなど、
細部にわたって昭和初期の建築的装飾が鏤められているのがわかります。







残念ながら、その躯体のほとんどが煉瓦造だったため、
閉山後の1991(平成3)年に島を直撃した大型台風によって大破し、
現在はRC造だったエントランスの下部だけが残存し、
かろうじてデンティル・コーニスの跡が見て取れます。

また、黄色い豆タイルの貼られた柱の上部を見ると、
特に右に写る柱のものがわかりやすいですが、
以前にアップした総合事務所の持ち送りと同じ形をしているのがわかります。

軍艦島の建築物は、
基本的に三菱の建造物設計チームと清水建設によって建てられたものが多く、
時代的にも近いこの二つの物件は、
おそらく同じチームによって設計されたものだと思います。







画像は、隣接する寺院の跡地に吹き飛ばされた、
操業時の写真の左右の柱のてっぺんに載る球体の装飾。
球体の下が三段の蛇腹積みになっていて、
細部にまで細やかな装飾を施していたのがわかります。







画像は、エントランスと反対側に位置する、
ちょうどスクリーン舞台があった側の外壁の跡。
これはかなり前ですが、このブログで以前にも取り上げました。
下部に写る平らな面が外壁で、
中央付近の山型の部分が、外壁頂部の切妻にあたります。
こちらも四段の軒蛇腹が施行され、
昭和館がかなり凝った建築的装飾のある建物だったことがわかります。

台風で瓦解してしまったのが残念です。


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