覚悟していたような戦争の悲惨さ、むごさは
あまり描かれていない。あくまで控えめで静かだ。
大泣きするようなシーンもない。
(人によってはあっただろうが)
静かで控えめだからこそ、心の奥の鉛が重みを増した。
「太陽の子」というタイトルの意味は
太陽の持つエネルギーを開放しようとしている人々のことかと
解釈させてもらいました。
春馬氏、柳楽優弥氏、有村架純さんについては
京ことばはとても自然に。
(有村さんは関西出身なので頷ける)
春馬くんの何気ない「ありがとう」の
イントネーションも完璧だ。手紙の部分も完璧だ。
ただ、見た目が「ただいま」の時は胸板が厚く
堂々としているのに、
家の中のシーンでは痩せていて目がギラギラして
見えたので、いつもの優しい春馬くんとは
かけ離れて見えた。役作りの成果か?
撮影の時系列がわからないのだが・・・
表面的には静かな魅力が感じられたが、
あの表情からは、もう「その覚悟」が
出来上がってしまっているようにさえ感じられた。
柳楽優弥氏(修)の迷いや苦悩は妙心寺天井画の龍でよく表されている。
クライマックスともいえる、海辺の入水未遂シーン。
朝陽が昇る関係で、一発撮りだったという。
春馬くん、柳楽くん、子役の頃から
共演やオーディションを重ねてきたふたり。
ふたりを抱きしめる、朝倉世津役の
いつもは柔らかい雰囲気の有村架純ちゃんの
一番の渾身の演技を見たようにも思う。
抜群の組み合わせで撮影できた満足感が
あふれていた。
田中裕子さんの、大切な息子のための
必死な思いで持たせるおにぎりを結ぶ表情。
いよいよ送り出す時の耳をさわるしぐさ、
本当は抱きしめたいのに、
当時はそんなことを許されない辛さがひしひしと伝わってきた。
自分が応援してきた長男の修(しゅう)の仕事が
多くの人を殺傷してしまうものだと知って、
自分だけ、科学者の母親として逃げるわけにはいかないという
必死で耐えようとしている表情。
来年公開の映画の一部として受け取れた。
来年を待ちたい。
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