落ち込んでばかりもいられないので、昨夜は武蔵小杉での夏祭の練習にでた。
岡田さんが大隅智佳子さんを招聘してつけてもらった1番の稽古。冒頭の27小節で声の出しかた、歌いかた、気持ちの入れかた、などディテールを叩きこまれた。
とこんなふうに書くと、とんでもなく厳しかったと思われるかもしれないが。実際には練習が進むにつれウイットやユーモアに富むさまざまなヒント、アイデアによって私たちは導かれ、大いに笑うこともあった。
しかし笑いながらも、そうかこんなふうにかとイメージを膨らませ、私たちはこれまでやったこともなかったふうに歌った。そしてその27小節で会得したものをそれに続く小節を歌う際にも応用していた。そんな感覚があった。
パートごとに修正されたとき、他パートがまるで違った声に変わった瞬間が何度もあり驚いた。
笑いもあり和やかでもあったが、与えられたヒントにしたがって歌うのは楽ではなかった。姿勢からまったく違っていてハンパなくものすごく集中していたから。
歌った小節数は多くなかったが、この偉大なブラームス作品を歌う心構えを叩きこまれた気がした。
2018年から参加した夏祭で最も印象に残る稽古だったが、終了後に先月観たホフマン物語のプログラムにサインをもらえたことも嬉しかった。イオランタ、フィガロ、ホフマンと大隅さんがタイトル、重要キャストを務めた新国立オペラの3演目を私は観ていたが、大隅さんがあのような素晴らしいアリアを歌うために行っているであろうものすごい練習や努力の一端を、今日の稽古で想像できた。忘れがたい夜でした。
私にとっては辛い想いから逃れることができた時間でも。