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河原忠之さんの日本オペラ界についての論考が素晴らしい

2021-09-01 22:50:00 | 森谷真理
“偉大なる”河原忠之さんのFB投稿、二期会ルルと日本オペラ界等についての論考が素晴らしい。
こんなルルを2回しか演じられないとは、出演者はもちろん、スタッフ、関係者の方々は如何にも物足らないだろう、残念だろう、と思った。

森谷さんがこのキャストで10公演はやりたい云々と書いてたのを読んだときも。
そうだろう、森谷さんを含む全関係者の、この公演に費やした莫大な努力、時間、エネルギーを想像するに、2公演では釣り合いがとれないよなぁと。

河原さんがいう「このリハーサルに時間をかけて、個々の意識を高め集団で同じ方向を向けるまで辿り着く事ができるのが、日本人ができる日本のオペラだ」というのもその通りで、このルルや先日のファルスタッフこそ、ぼくらが求めているもの、観たいオペラだ。

これからも、こんなに素晴らしい日本のオペラを観たい、いや絶対に観れるはずだ、と河原さんの投稿を読みながら思った。

【河原忠之さんのFB投稿】
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二期会ルル。最終日拝見致しました。
とにかく素晴らしいの一言。
色んな事が全部良い方向に変わる事ができた。
これがこの公演の感想です。
自分のバースデーコンサートの時に1幕を少しだけ色んな後輩の力を借りてやった事があるだけに、どれだけこれを演奏する事が難しいか僕なりにわかってはいます。
2幕版にした理由の一つに上演の難しさを演出家はあげていました。延期をして歌手全員が消化する時間を頂けた事で、3幕版でもこの水準を保つ事ができたでしょう。しかしながら、この2幕版を先程言いましたように消化仕切って全員が演じる事が出来たこと。これが奇跡のまず一つ。
そして、小屋が文化会館から新宿文化に変わった事。この事により、オケとの一体性が増しました。決して小さくは無い編成ですが、このオペラの室内楽的響音の要素が浮き出ました。オペラにおいて歌手とのバランス。これがいかに難しいかを僕はオケでやった時に思い知らされた経験があるので、この小屋の特性と指揮者の実力が、先程言った一体性を産むことが出来たこと。これが二つめの奇跡。
内容としてもとても難解であるのに、3幕までいかない終わり方の難しさ。この中で、グルーバーの演出は、映像やダンサー、マネキンを使う事で聴き手のイマジネーションを創造させる事ができました。彼女の力でしょう。女性が創る女性像。表面上、社会的規範から外れていて、女性から見ても嫌いな女性像の典型にも見えますが、彼女の生きてきた人生そのものを想像すれば、彼女には色んな事が欠落しているだけであり、そしてその最たるものが愛だという事により、ああいう人間が創られてしまったのだと理解すれば、そこに哀しさが浮きでます。LINEの返信がなく無視されたと感じ硫酸を顔にかけたり、夫の浮気相手を許せず殺してしまい、当の夫も自分のせいなのに殺しに加わってしまったりする人間も、常識からすればとんでもなく許されない事でありますが、彼らの生きてきた人生がどんな人生だったのか、どういう人生があんな行動を起こしてしまったのかを考えると、その人生に興味が湧きます。変われる何かがあったはずだし、これからも辛いですがこの罪を背負いながら人生について考え生きるチャンスはあります。

話が逸れましたが申し訳ありません。
先日のファルスタッフと今回のルル。
今の二期会には、先人の素晴らしいパイオニア達が始めた素晴らしい日本のオペラというものを、今の日本人が受け継ぎ、世界に堂々と胸を張れる水準まで日本人の歌手でここまでできる、ということを、証明してくれました。
ある演出家が、ウィーンシュターツのように、少しのリハーサルで色んな演目をできるし、それをしなければ、と言っていましたが、僕は、このリハーサルに時間をかけて、個々の意識を高め集団で同じ方向を向けるまで辿り着く事ができるのが、日本人ができる日本のオペラだと思います。財政という難しい問題があるのは重々分かっています。しかし、この様な上演を新国立劇場が国の威信をかけて1ヶ月公演するくらいの士気があれば、日本のオペラは変わる、変えることができる、と心から思います。

歌手全員素晴らしかったですが、特に、主役の森谷さん、3週間でこの難曲をものにした加耒君、我らがリーダー浩司君。涙が出るほど素晴らしかった!

すごく元気を頂きました。
ありがとうございました。
次は藤原の清教徒。
楽しみです。
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