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「私の本棚2022.5.24」

2022-05-24 11:32:52 | 経営コンサルタント
  • 今日のおすすめ

『LIFE SHIFT 2「100年時代の行動戦略」』

                       (アンドリュー・スコット、リンダ・グラットン著  池村千秋訳  東洋経済新聞社)

  • テクノロジーの進化と長寿化を「恩恵」にしよう(はじめに)

 紹介本の共著者リンダ・グラットン(ロンドン・ビジネス・スクール経営学教授;人材論・組織論の世界的権威)は2011年に、14年先の2025年に想定される働き方を示す『「ワーク・シフト」-孤独と貧困から自由になる働き方(2025)』を出版しました。「ワーク・シフト」の中でグラットン教授は、『働き方に影響する「5つの要因」(①テクノロジーの進化、②グローバル化、③人口構成の変化と長寿化、④女性活躍など社会の変化、⑤エネルギー/環境問題の深刻化)』と『働き方に影響する「32の現象」(①世界の50億人がインターネットで結ばれる、②地球上のいたるところで“クラウド”を利用できるようになる、③“人工知能アシスタント”が普及する、④持続可能性を重んじる文化が形成されはじめる、⑤デジタルネイティブY、Z世代の活躍と長寿化など)』から生じる『働き方を変える「3つのシフト」(①ゼネラリストから“連続スペシャリスト”へ、②孤独な競争から“協力で成し遂げるイノベーション”へ、③お金の為ではなく“情熱を持って働く働き方”へ)』を提言しています。

 グラットン教授は「ワーク・シフト」に続き、2016年には『「LIFE SHIFT(ライフ・シフト)①」-100年時代の人生戦略』、2021年には『「ライフ・シフト②」-100年時代の行動戦略』をアンドリュー・スコット(ロンドン・ビジネス・スクール経済学教授)との共著で出版しました。

 「ワーク・シフト」で示した時代の変化を、「ライフ・シフト①」では「人生戦略(新しい人生とその課題)」として示し、「ライフ・シフト②」では「行動戦略(新しい課題への対応策)」として示します。二つの戦略を個人・社会が「新しい社会的開拓者」として新しい社会的発明を実現し、テクノロジーの進化と長寿化を「警告・警戒」ではなく「恩恵」にすべきと訴えます。

 さて、グラットン教授の、一つの研究が有ります。それは、「日本で、2007年に生まれた子供については、107歳まで生きる確率が50%」です。この研究を踏まえ、2017年9月に内閣府の「人生100年時代構想会議」が発足し(現在は活動停止中)、グラットン教授は有識者議員に就きました。

 50%が107歳まで生きる今年の高校1年生(2007年生まれ)の世代が明るい「人生100年時代」の「恩恵」を得ることが出来る社会の実現に向けて、『誰が、どの様な社会的開拓・発明をすべきかの「行動戦略」』について次項で考えてみましょう。

  • 明るい「人生100年時代」を創る

【紹介本が想定する「人生100年時代」とは】

 紹介本が想定する「人生100年時代」は、「人生80年時代」からの脱却です。平均寿命が20年延びるだけでなく、医療は予防医療が重視され健康寿命が延び、生産年齢世代の人口減少による人手不足は、AIなどのテクノロジーの発展と高齢者の就業参加により解消され、高齢世代が生産年齢世代の負担になる負のイメージが解消されます。退職年齢・年金給付開始年齢は75歳へと徐々に変っていき、これにより「支えられる世代(65⇒75)/支える世代(64⇒74)」は2065年2.4と2017年の2.1とほぼ同じになります。(2018年9月経済産業省「人生100年時代に対応した生涯現役社会の実現」より。下記URL参照。)https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/2050_keizai/pdf/001_04_00.pdf

 一方、働き方は現在の3ステージ型(教育、一つの仕事-40年-、引退)からマルチステージ型(教育、幾つかの仕事-60年-、引退)に変わります。

 この様にして、『人類の並外れた発明の能力を生かし、個人は新しい人生の在り方を切開き、社会は社会規範と慣行と制度を根本から作り変える「人生100年時代」』を、個人・社会の行動戦略の実践により創出できると紹介本は示します。

【「人生100年時代」への行動戦略①―人生の再設計】

 テクノロジーの発展と長寿化から必然的に到来するマルチステージ型の人生は、生活水準を確保することに加え、変化・変身しても変わらない有意義なアイデンティティ(私は何者かの答え)を持ち、人生の花を開花させることが大切とします。

 特に、「物語―人生のストーリーを紡ぐ―」、「探索―生涯を通じた学習と新たなステージへの変身・挑戦―」、「関係―家族・仲間・コミュニティーとの深い絆を育む―」の3つの行動戦略を実現し、人間としての可能性を開花させることが大切とします。(「物語」「探索」「関係」については紹介本をお読みください。)

【「人生100年時代」への行動戦略②―企業の対応】

 「人生100年時代」は、テクノロジーの進化に伴う業務プロセスの変化により、ビジネスモデルや仕事の内容の増減など、仕事の在り方と企業環境が根本から変わります。人材の流動性の高まり、マルチステージ型の働き方などが進行します。

 加えて、長寿化の進展により、生涯現役観など人々の仕事観が大きく変容していきます。

 この様な変化に対応するための企業の行動戦略として、紹介本は、入社年齢の多様化、年功序列などの年齢差別の撤廃、年齢に縛られないリスキリング(学び直し)の機会の提供、終身雇用の見直し・新たな退職の形などの就業慣行・制度の改革、柔軟な働き方を構築できる子育て・介護者の支援の改革、などを推奨します。

【「人生100年時代」への行動戦略③―政府、教育機関の対応】

 紹介本は、政府がとるべき行動戦略を次のように定義しています。「政府は発想を変えて、マルチステージの人生と100年ライフの時代に即した政策を実行する必要がある。既存の規制・制度を見直し、好ましい結果を最大限拡大しなくてはならない」と。上記、経済産業省「人生100年時代に対応した生涯現役社会の実現」の通り、政府は着々と新しい時代への対応を推進していると期待したいです。

 教育機関の行動戦略については、紹介本は、生涯学習の世界最先端を行くハーバート・エクステンション・スクールのランバート学長の提言を“例示”として紹介しています。「私が目指しているのはただ一つのこと。それは、知識経済に参加するために学び直しを必要とする2000万人のアメリカ人と世界の30億人のために、我々のような生涯学習機関が貢献できるようにすることである」です。

 日本の大学も、学び直しの生涯学習のニーズに応え、大学の赤字を解消するなど活性化のチャンスではないでしょうか。

  • 「少子高齢化」の呼称は止めて、「人生100年時代」と言おう(むすび)

 紹介本は、負のイメージの「少子高齢化社会」を国民一人一人が、自身、企業、政治、教育機関を社会的開拓・発明・意識変革により革新することで、明るい「人生100年時代」の「恩恵」を得ることが出来る道筋を示しています。

 最早「少子高齢化社会」を恐れず、「人生100年時代の社会」への明るい希望をもって前進しましょう。

【酒井 闊プロフィール】

 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。

 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。

  http://www.jmca.or.jp/meibo/pd/2091.htm

  http://sakai-gm.jp/

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