経営コンサルタントの知見

経営に役立つ知見をgoo blogで

「私の本棚2022.4.26」

2022-04-26 16:38:17 | 経営コンサルタント
  • 今日のおすすめ

「スモールM&Aのビジネスデューデリジェンス実務入門」

                     (寺嶋 直史、斎藤 由紀夫著 中央経済社)

  • 実践・体験で得られた「ビジネスDD」を経営改善・革新に活かそう(はじめに)

 紹介本は、共著者自身の中小企業のM&Aアドバイザーとしての実践・経験を基に書かれた貴重な知見書です。著者は、広く経営者・経営関係者、経営コンサルタント・アドバイザーに向けて、状況把握・課題設定・課題解決を通して企業価値を高める、「ビジネスDD」を明らかにしています。

 本書の私流の読み方を発見しました。「ビジネスDD」の全体像が10章『「ビジネスDD」の全体構成』に記述されています。「Ⅰ会社概要」は10章に、「Ⅱ外部環境分析」は9章に、「Ⅲ経営分析」は6章~8章に、「Ⅳ内部環境分析;1.経営・組織活動、2.営業・販売活動、3.製造活動」は11章~13章に、「Ⅴ総合評価」は15章に記述されています。14章は「小売店・飲食店・サービス業の『ビジネスDD』」の別枠章。最終章の16章は、6章~15章(除く14章)の結果を踏まえた「事業計画書+PMI(買収後の経営改善・革新計画)」について記述されています。Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ・Ⅴ・16章の順番で読んでいくと体系的に頭に入ります。

 さて、本書の知見を経営にどのように生かしたら良いのでしょう。それは、「ビジネスDD+PMI」の手法を、‟まねび”(真似を通じた学び)を通して、自社版「経営自己診断(調査・分析)⇒課題抽出⇒経営改善・革新計画・行動計画⇒PDCAによる実行・管理」として創出することです。

 本書の‟まねび”から創出した、自社の経営改善・革新計画(以下「経営計画」と略称)を、実行・振返り・改善行動により経営改善・革新の成果を上げることができます。

 次項では具体的な“まねび”と、さらには一歩一歩レベルを上げる“守破離”について記します。

  • 本書を‟まねび”、‟守破離”へと飛躍し、経営改善・革新を実現しよう

【本書を‟まねび”、その上で、自社の経営計画を策定する】

 まず、「経営改善・革新プロジェクト・チーム」を立ち上げます。上述のⅠ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ・Ⅴ・16章「事業計画+経営計画」に沿って、担当委員とリーダーを次のように決めます。「Ⅰ会社概要」は総務部員、「Ⅱ外部環境分析」は調査部員、「Ⅲ経営分析」は経理部員、「Ⅳ内部環境分析」の1.経営・組織活動は経営企画部員、2.営業・販売活動は営業企画部員、3.製造活動は製造管理部員、「Ⅴ総合評価」と「事業計画+経営計画」はリーダーが担当します。こうして6名の担当委員とリーダーが決まりました。リーダーは兼社内コンサルタントを務めます。

 早速‟まねび”をスタートします。“まねび”のゴールは、本書のⅠ~Ⅴと「事業計画+経営計画」を自社版経営計画として創出し、経営会議において発表し、同時に「経営改善・革新会議」をスタートさせることです。

 担当委員とリーダーが創出する経営計画の作成に於いて大切なことは、チーム・メンバー&リーダー間のコミュニュケーションと共助です。

 具体的な作成ですが、「Ⅲ経営分析」は本書の購入者がダウンロード出来る『「経営分析」シートのフォーマットExcel』を活用します。このフォーマットに自社の財務計数を入力することで、本書の「Ⅲ経営分析」の図表が自動的にアウトプットされます。加えて財務評価指標については、同業の平均値との比較が可能になります。

 「Ⅲ経営分析」の図表を除くと、‟まねび”により創出する「図表」の要作成数は42個です。経理部員を除く5名の担当委員とリーダーで割ると、一人当たり平均7個を作れば完成です。自社版「図表」に伴うコメント・課題・対応策も同時に作成します。

 これで‟まねび”による、「経営計画」の創出は完了しました。創出した「経営計画」の一貫性と精度を高めるため、リーダーがファシリテートをし、チーム全員で一つ一つの「図表&コメント・課題・対応策」をチェックし、一貫性と精度を確認、修正します。

 更に「経営計画」を具現化・行動化する全社と部門・現場のKPI(重要業績評価指標)を作ります。これで「経営改善・革新会議」に提出する段取りは完了です。

 この様にして、毎月1回の「経営改善・革新会議」がスタートします。回数を重ねるごとにプロジェクトの内容を一歩一歩レベルアップすると共に、「経営計画」を行動に移しPDCAによる実行・管理を進めます。

【次のステップは‟守破離”の実施】

 スタート当初は、‟まねび”により創出された経営改善・革新のスキームをベースとした活動です。大切な次のステップは、このスキームに独自のアイデアを積み重ね、更新・革新していくことです。つまりスキームの守破離を実現することです。守破離の‟守”は‟まねび”で確立されました。次は‟破離”です。次に‟破離”の例を示します。

【‟破離”の例①―経済産業省経営改善ツール「ローカルベンチマーク」の活用―】

 ‟まねび”で作成した「経営計画」の内容を、「ローカルベンチマーク」のシート(下記sheet URL)に、ガイドブック(企業編)(下記guide URL)に従って入力・記入してください。

 Ⅰの財務分析は評価指標が同業基準値と自社数値の基準値比の点数が表示され、また、主要評価指標の自社数値の推移がレーダーチャートで表示され、新たな気づきを得ることができます。

 Ⅱの非財務では、「a業務フロー」「b商流」「c 4つの視点」を総括することで、新たな気づきを得ることができます。

 Ⅰ、Ⅱの気づきを纏め、「経営計画」に反映しレベルアップを計れます。

https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/sangyokinyu/locaben/guide.html

【‟破離”の例②―中小機構「経営自己診断システム」の活用―】

 ‟まねび”で作成した「経営計画」の会計数値を「診断システム」に入力しましょう。

 入力の結果は、自社27経営指標と同業種の中央値と上位30%値が線グラフに表示される「個別指標分析結果」、27指標を5総合指標に纏めレーダーチャートが表示される「総合分析結果」、デフォルト企業の経営10指標と自社指標とが棒グラフと安全性得点で表示される「倒産リスク分析」として活用できます。

 これらの分析から新たな気づきが有ります。(中小機構「経営自己診断システム」は下記URL)

https://k-sindan.smrj.go.jp/viewpoint

【‟破離”の例③―企業価値を向上する「ROIC経営」の導入―】

 「Ⅲ経営分析」の課題を的確・効率的に実現するのが『企業価値を向上する「ROIC経営」』です。ROIC逆ツリー展開により現場におけるKPIの設定とPDCAの実行によりROICを高める手法です。(詳細は「経営士ブログ」下記URL参照。)

https://ameblo.jp/keieishi17/entry-12698434783.html?frm=theme

【‟破離”の例④―「CVP分析」に代えて「SCP分析」を導入する―】

 CSV分析(Cost Volume Profit;損益分岐点分析)は線形分析のため、実態と乖離しており限界があります。CSV分析の欠陥をカバーするのがSCP分析(Sale Cost Profit;タカダ式操業度分析)です。

 SCP分析は「戦略ファイナンス 高田直義著 日本実業出版 P250~P265」を参照し、Excelシートを使いフォーマットを作り、フォーマットが正しい数値を算出することを確認した上で、実数値を入力してください。

 CSV分析とSCP分析の結果を比較してください。SCP分析が実用的・的確なことが分かります。SCP分析の結果を踏まえ、予算操業度売上(操業度率100%の売上)への兆戦、Dead Costの低減などの課題に的確に対応できます。

 尚、上記著書の「ソルバー」の説明はExcelバージョンが古いので、「ソルバー」の使い方は下記URLを参考にして下さい。

 又、SCP分析に関する解説は下記URLを参照ください。

<「ソルバー」の使い方URL>

https://www.wanichan.com/pc/excel/2016/8/31.html

<SCP分析に関する解説ⅰ 高田直義 日本公認会計士協会研究論文URL>

https://userdisk.webry.biglobe.ne.jp/000/226/80/N000/000/000/156676835734712860552.pdf

<SCP分析に関する解説ⅱ「私の本棚2014.9.23」URL>

https://blog.goo.ne.jp/sakaigmo/e/a90352cf8862b5b15039a70aec36dbfc

【‟破離”の例⑤―「ミドル・アップダウン・マネジメント」の導入を―】

 マネジメント組織としては、トップ・ダウン・マネジメント・モデルとボトム・アップマネジメント・モデルの欠点を意識し、長所を取り入れた「ミドル・アップダウン・マネジメント」が最適と言われています。つまり、ミドルがトップとボトムの「架け橋」「結節点」になることにより、はじめて機能的な組織になります。

 このミドルの役割を「経営改善・革新プロジェクト・チーム」が果たします。

 同時に「トータル・リワード戦略」の取り込みです。「この会社で働いてよかった」「この人たちと一緒に仕事が出来てうれしい」「社会に貢献できてうれしい」と、現場が心から思える戦略です。現場の有意義な情報に対し、アワード(金銭的報酬に加え、非金銭的報酬を与える)することで「ミドル・アップダウン・マネジメント」がより有効に機能します。(「知識創造理論」「行動科学マネジメント」より。それぞれの解説は「私の本棚2014.7.22」「私の本棚2014.6.24」URLは下記。)

https://blog.goo.ne.jp/sakaigmo/e/23b7b692d42029c86214438e236b5fda

https://blog.goo.ne.jp/sakaigmo/e/b0d399527861a24d9937516f1ba7d42a

  • ‟まねび”と‟守破離”の先には明るい未来が(むすび)

 ‟まねび”と‟守破離”による経営計画の実践と経営の改善・革新には熱意と根気が必要です。しかしその先に明るい未来が開けることを覚えましょう。希望を持って前に進みましょう。

【酒井 闊プロフィール】

 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。

 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。

 https://www.jmca.or.jp/member_meibo/2091/

http://sakai-gm.jp/index.html

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「私の本棚2022.3.22」 | トップ | 「私の本棚2022.5.24」 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

経営コンサルタント」カテゴリの最新記事